軍事評論家熊谷直の社会評論

アジアを中心にした社会・軍事の情勢やニュースの分析

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 被災した発電原子炉の制御が少しずつ可能になりつつある。しかし今後の風評被害が怖い。原子炉から20キロ圏外の放射能は、1カ月浴び続けてもレントゲン検査を1回受ける量よりも小さい。放射線治療の場合は1回にその数倍の放射線を浴びるようだが、私自身が二カ月近く毎日その治療を受けた経験があるが、その後の検査で白血球異常のような障害が出ていない。このことから考えて、現在出されている事故原発放射能の避難・注意呼びかけの圏外に住む人は、それほど神経質になることはないと思われる。
 福島や茨城産の野菜に弱い残留放射能が検出されたとしてスーパーが取り扱いをやめているが、東京付近の人は、野菜をよく洗って汚染物質を洗い流して食べるなどすれば普通の野菜とほとんど同じように考えてよいようであり、これも神経質になるべきではあるまい。外国人の放射能汚染風評による帰国ラッシュが始まっているようだが、風評被害の一つの表れであろう。アメリカは日本内でも自国の基準を適用して50マイル(80キロ余)を米国人の立ち入り制限距離にしている。しかしアメリカは土地が広大で人口密度が希薄なので、この距離に制限しても混乱が起こる可能性が日本よりも少ない。日本には日本の事情や環境がある。ゆとりがあるアメリカの基準を日本に適用されたのでは、日本人は困る。
 政府が情報を出し渋っているとする風評も流れている。しかし縦割り組織のためと総合的な危機管理組織が不完全であるために、総合的な情報が中央に届きにくくて、出したくても出せなかったのが現実ではないか。戦争中の大本営発表は国民の士気が落ちないように、または逆に鼓舞するために意図的に、日本軍の損害を少なく米軍の損害を大きく発表するという情報操作もあったことが明らかになっているが、今回、民主党政権の失敗を隠す意図から情報を出さなかったとは考えにくい。しかし無用の混乱を招かないために、情報をいくらか統制することはあってもよいとおもうが、情報も施策も全てを内閣が統制しようとしたためにいろいろな面で遅れが生ずるのでは本末転倒というべきであろう。ただ危機に直結する情報はやや確度が低くても早めに出すべきであろう。その意味で気象庁の地震津波情報が早めに出されていることは、仮に空振りに終わったとしても非難すべきではあるまい。その他の施策も、緊急のものについては、とりあえずの処置をすべきであろう。被災地で車などの所有権の問題で片付けが進まない点については、緊急立法で対処するのが政府と国会の責任であろう。
 かつて原発は、ソ連や共産中国の影響を受けている左翼を中心にした勢力が、反対運動を盛り上げていた。その背景に広島、長崎での被爆体験があることはもちろんだが、それとエネルギー政策は切り離して考えるべきであろう。反戦平和、反核・反原発運動の中で、日本政府に核の三原則を宣言させたことは、当時のソ連にとって、日本の左翼系勢力への働きかけを強めた自国戦略の成功であったといえる。菅総理が昔、若気の至りでそれに手を貸したかもしれないことは、現在の危機の中では、不問にしておくべきであろう。しかしそのような運動のために原発側は、反対運動を恐れて必要な情報を発表しない体質になってしまった。とうぜん改善施策も、他からの意見が入らない自社だけのものになってしまった。この点はこれからの反省が必要ではないか。
 被災地で活躍している自衛隊は、過去に民主党内の左翼系の人々が存在を否定してきた組織である。災害派遣のための国土防災隊に改編せよという意見を述べていた人もいたが、つるはしとスコップ、せいぜいがブルドーザーの組織では、今回のような活躍はできない。戦争という混乱の中で活躍できる組織になっており、装備や訓練もそのような事態に対応できるようになっていたからこそ、今回のような応用的な活動ができる。ヘリコプターや飛行場火災用の放水車が原発事故の現場で行っている活動やそれに必要な放射能防護は、全て応用的なものであり、もしめったに起こらない戦争用のものだから無駄という観点から、装備や訓練に経費をかけていなかったとしたら、今回のような活動はできなかっただろう。だからといって、必要以上に予算をつけよということではない。
 かつて起こった政府の実験原子力船「むつ」のいわゆる放射能漏れは、今回の避難圏外放射線量程度以下でしかなかった。設計者によると、その程度の漏れは計算の範囲内であったという。それが大きな事故のように報道されて原子力の利用がつまずき、発展しなかったのは、日本にとってマイナスであった。最小限必要な物の研究や装備・訓練には、無駄のように見えても経費を投入しておかなければならない。現在は理性的に国民が考え原発の今後について考えることができる環境になっているので、過剰反応は起こらないと信じているが、人々が風評に惑わされないことを祈っている。。
 この災害体験のため、日本人が過度に原発をマイナス視するようになることをおそれる。原発は国民の監視のもとで当面は必要な電力供給源になるべきであり、危険を生じないように監視して、必要な対策を、電力会社や政府、国民がいっしょに議論すべきものであろう。被爆体験や今回の事故経験だけで、国民が原発反対に向かわないように祈っている。電力が風力や太陽光の発電だけで需要を満たすことができないことは、今回の停電で国民もわかったことと思う。国民は理性的な判断をして欲しい。
 

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危険だからって火を使わないの?
飛行機墜落確率0%でないから使用しないの?
原発と何が違うのか?
40年たってるから再建設しようとしたが反対された、つまり反対派による人災。
女川原発は福島原発よりひどい揺れだったのに普通に停止してる。
40年近く前に建てられた原発が想定より強い観測史上最大の地震、津波が来ても一瞬で崩壊してないだけでも評価できる。

火力は燃料と環境コストが高い。
水力はダム建設反対されるし雨降らないとどうなる?
風力は低周波公害と設置する場所がUSAみたいにない
地熱はコスト高いし温泉団体反対されてる。
太陽光、曇りの時は停電でいいの?発電量低いし。

原子力発電以上に24時稼動・コスト安・CO2を出さないのないでしょ?
M10地震・30m津波にも絶えれるものを作り、
安全対策・危機管理を高めて利用していく以外ありえないと思う。
実は原発は場所・コスト・24時・CO2の理由で世界中の経済発展に必要とされている。

2011/3/20(日) 午後 0:31 [ 国際平和人権寄付団体 ]


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