軍事評論家熊谷直の社会評論

アジアを中心にした社会・軍事の情勢やニュースの分析

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 3年前、平成20年の2月に海自イージス艦あたごが、房総沖で漁船と衝突した事件の横浜地裁刑事裁判判決が、5月11日に下された。これは、23年前に横須賀港に入港しようとしていた潜水艦なだしおと釣り船が衝突した事件と重なって見える。舵を切っても容易に針路が変わらない大型艦と、小回りが利く小さな漁船の衝突事件という点からである。
 海上衝突予防法という法律がふたつの判決の基礎にあるが、潜水艦のときは、入港前で速度を落としていたために舵が利きにくくなっていた潜水艦に、法律通りに釣り船をよける義務を課してよいものかどうか、疑問を持った。最近の小回りが利く小型船のほうに、大型船をよける義務を課してもよいのではないかと思ったからである。私は法律が時代に合わなくなっているのではないかと思ったが、そのような意見の人もほかにいた。だが、その後法律が変更されることはなかった。そこにイージス艦の事件が起こったのであるが、このときは私も、衝突を避けるための艦側のレーダーによる監視について、監視が容易ではない意見を、新聞紙上でのべた。
 衝突を避ける義務は基本的には双方の船にあるのであり、単に「相手を右に見る位置にある方が衝突回避の義務を負う」という、法律の条文だけを適用して判断すべき問題ではあるまい。明け方の視界が悪い状態で、レーダーで完全に相手をとらえることができるわけでもない状態であるにもかかわらず、全面的にイージス艦側に全責任を負わせるのは問題ではないかという意見を私は持っていた。新聞へのコメントもそのようなニュアンスを含めて、述べておいたつもりである。
 実際に海上で航海してみるとわかるが、艦体が大きく灯火もたくさんつけている大型艦を視認することは、操業中でない限り漁船側の方がむしろ容易である。今回の判決事件のイージス艦当直航海士に全く過失がなかったとはいえないかもしれないが、漁船側が無過失であったとは考えにくい。だからこそ当直士官は刑事事件としての判断を裁判所に求めたのであろう。ただし判決はそのことについて判断したのではなく、証拠として検察側から提出された検察側作成の両艦船の航跡図が、不正確である可能性があり、いわば「疑わしきは罰せず」という刑事事件の原則に則って判断したものになっている。疑いが完全にはらされたから無罪というわけではないので、検察側が控訴する可能性がある。防衛省は、起訴された個人の当直士官の刑事事件だとして、これで一件落着と、高みの見物を決め込んでいるわけにはいくまい。
 この「疑わしきは…」の流れの上にある地裁判決は、検察官が厚生労働省の村木さんの事件を捏造したとされている事件があったので、出てきたものではあるまいか、司法の判断は世論に惑わされない厳格なものであるべきであろう。同時に、事件が起こると自衛隊側が常に悪いとする傾向があった過去の世論からも、脱却した厳正なものであってほしい。

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