軍事評論家熊谷直の社会評論

アジアを中心にした社会・軍事の情勢やニュースの分析

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  国連の発表によると10月末で世界の人口が70億人を突破するとのこと。世界は第二次大戦後の約10億人の人口から毎年、乗数的に急激な人口上昇をしてきている。それ以前は100年以上の間に、先進国で多くてもせいぜい2倍の上昇であり、低開発国では横ばいであった。戦後、特に目立って人口が増加してきたのが中国やインドであり、戦前の3倍、両国で世界の37パーセントを占めているのであるから、異常である。
 現在、低開発国と言われている国々でも、すべて、先進国並みに一人当たりの所得を伸ばす方向で世界は動いている。富める人々と同じ生活をしたいというのが普通の人の欲望だからである。しかし食糧生産の効率は、ハウス栽培や魚の養殖のような形で効率を上げたにしても限界があろう。これまで工業化により先進的に、国家としての生産効率をよくして、それによって得た富で食糧やサービスを手に入れて贅沢を楽しんできた先進国と同じ生活をすることは、低開発国にはできない相談になっているのではないか。地球上で生産できる食糧の量には限界があると思われるからである。
 現在、先進国は不況に見舞われている。先進国の国民は過去の経済成長率と同じような率の経済発展を求め、低開発国に追いつかれることを警戒して自国が有利になるような経済協定や金融の動きをしている。しかしそれが成り立たなくなってきているのが、世界の状況であろう。中国やインドは人口が多いだけに国内に富める者と貧困層の両者を抱えているが、中国の富める者の人口は、同程度の収入を得ている日本人の人口を抜きつつある。一方で貧困層は生産性が悪い土地にしがみつく生活から抜け出すことが難しく、今後は、中国全体として大幅な経済拡大をすることが難しくなりつつある。日本は一億総中流と言われたように、先進国であり国土も狭いため、一億人が歩調を合わせて発展してきたが、経済的な発展は終末期に近づきつつある。かつてのようなGDPの伸び率が10パーセント近い状態は、永久にやってくることはあるまい。中国も政策的にこの伸び率が10パーセント以下に収まるように調整しているが、あと10数年もたてば、伸ばしたくても伸びなくなるであろう。そうなると中国国内の低所得層が上層に上ることは今より一層難しくなり、10億総中流のような状態になることはほとんどあり得ないことになるのではないか。インドも中国よりは遅れるにしてもいずれ同じようになるであろう。つまり船に乗り遅れたものは、そのままだと永久に歩かなければならなくなる。
 これは宇宙船地球号が収容し食べさせていくことができる人口に上限があるとは考えられるからである。つまり世界の総人口の伸びがほとんど停止する50年ぐらいのちには、世界の経済状態はその時の状態で足踏みすることになるのではないか。その状態に不満な下層の人々は、その途中で暴動を起こすかもしれないが、国連から生きていくことができるぎりぎりのものを保障され与えられて、多くの人はそれで我慢することになるのではないか。いずれにしろ世界はそのような将来を見据えて、自国や持てる者だけを有利にするのではない世界的な政策を推進していく必要があろう。環太平洋経済連携協定(TPP)への日本の参加は、日本の目先のGDP拡大だけを考えるのではなく、また食糧を生産している現在の日本の高齢農民層への配慮だけではない、将来の着陸点を見定めたものであることが望ましい。ただ、アメリカが特許制度や保険制度、遺伝子組み換え農産物の輸出など自国の制度をアジアに押し付ける動きをして、当面の経済利益を得ることに血眼になっていることには警戒が必要である。
 
 
 

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