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自民党安倍政権の発足準備が進んでいる。そうしている間にも世界は動いているのであり、安全保障分野では韓国の朴政権発足が決まって北朝鮮や中国との関係をどうするか、冷え込んだ日韓関係をどうするかのシグナルが出始めている。日韓は、韓国大統領が選挙対策のために竹島領有権を明示する行動に出たために、棚上げされていた問題が日韓のホットな問題になり両国の安全保障関係を非友好的なものにしてしまったが、修復の兆しが見える。しかし中国の理屈にならない尖閣領有権主張で日中関係がこじれたのを修復するのは、日韓関係よりも厄介である。沖縄の普天間問題も修復が容易ではないが、これはしばらく様子を眺めているほかあるまい。
中国の共産党関係者や一握りの経済人と、地方農民やウィグル、チベット人などとの、所得格差や待遇、役人の汚職からくる国内の騒動の火を、消し止めようとしたのが胡錦濤中国共産党政権のこれまでの政策であろうが、火を消し止めることは簡単ではない。日本や東南アジアに尖閣問題のような火事を発生させて、一時的に国内の火事から人々の目を外に向けさせたとしても、国内の火を消し止めることは難しい。なぜなら中国は、面積が日本や朝鮮半島の何十倍もあり、人口は10倍以上あるが人口密度は日本の三割強程度に過ぎない。そのため人々の接触度は日本や韓国の10分の1という小さなものになり、中央の権威や指令が末端まで簡単に行き届かないからだ。
IT時代というが、そのことが、面積が広いための情報の伝わりにくさを和らげる効果があるにしても、人の移動はやはり容易ではないので、中国ではITの影響度も日本の10分の1程度と考えてよいのではないか。そのため経済的な施策の効果にも限度がある。 テレビなどのメディアの影響度も同じように、日本や韓国よりははるかに小さいといえよう。それゆえ、社会的な発達度でいうと、中国は東京オリンピック当時の日本程度と考えてよいのではないか。日本の安保騒動や学園紛争のような社会的な騒乱事件が、これから起こる可能性は強い。それが広がるのも収まるのも日本よりは時間がかかると見なければなるまい。日本としては、状況を見ながら、辛抱強く中国の国内が治まるのを待つよりほかあるまい。
日本の国防問題で、三菱電機関係の兵器調達や陸自ヘリの調達の入札関係が問題になっているが、法的には談合は悪とされているので、防衛大臣が頭を下げ綱紀粛正を強調するのはとうぜんといえよう。しかし兵器生産を商業ベースだけで論じていると、安かろう悪かろうに、なってしまう危険性があることをいっておきたい。いざというときに役に立たない兵器になるのである。原発が安全に手抜きをする結果になってしまったのと同じように、反対者の批判を避けるための世間からの隠蔽体質の形成過程や、現場の、上層部からの利益優先要求がもたらした施策不足の結果と共通するものが出てくるおそれがあるといいたいのである。
アメリカやフランスでは、軍人が戦闘機のような特定の性能要求を出し、世界第一の性能のものを生産する現場に、使用者である軍人が介入することは当然視されている。ほんのちょっとした性能の優劣が戦場での生死を分け、ひいては国の運命を左右することになるからである。それを無視してアメリカで、ベトナム戦争時代のマクナマラ国防長官が空海軍共用の戦闘機を費用対効果だけの観点から設計製造させたところ、使用上の特性を無視していたため、手直しでかえって高くついたという教訓がある。現場で兵器を使用して戦うのは軍人であり、政治家ではない。
また第一級の技術者を抱えた兵器産業会社を大切に育てないと、国の運命にかかわる。軍用トラックのようなどの会社でも製造できるものの生産とはちがう原理が、先端の兵器生産に働いている。そのため官民の連携が行われ、戦前から日本でも陸海軍航空機は、いくつかの会社間に仕様書による設計生産競争をさせた後、軍が試験飛行などをしてもっとも優れていると思われるものを、採用していた。しかし需要が少ないので、競争に敗れた会社は、試作開発の費用が大きな赤字を生むことになる。それでは必要な企業をつぶしてしまい、大きな目で見て国のためにならない。そこで、部品の一部を競争に敗れた会社に生産させるなどの応急措置をして兵器産業を育ててきた。しかし陸軍専門の会社と海軍専門の会社があり、共通化を図るべき簡単な部品まで個別の仕様で生産させたことには問題があった。陸海軍の縦割りがそのまま影響したのである。
そのような伝統や兵器生産の特別の生産原理を無視して、「世界で一番でなければいけないのか、二番でもよいではないか」と、価格だけの競争で決めてしまうことには大きな問題がある。もちろん価格決定が公明正大でないと、田中角栄総理のF104ロッキード事件のような汚職事件になってしまう。アメリカもロシアも戦闘機を外国に輸出するときは、自国向けのものよりも設計性能をいくらか落とし、自国が戦時に不利にならないように気をつけている。輸出に議会の議決まで要求されている。難しいところがある問題であるが、防衛大出の自衛官は、学生時代からそれなりの精神教育を受けているので、一般の官僚よりは清廉だと思ってもらいたい。出世欲に駆られることはあっても基本的には国を危うくすることはしない。これは自民党石破元防衛庁長官も、民主党北沢俊美防衛大臣も、そのような意味のことを著書に書いている。それを曲げるのは政治であることが多い。政治による上命下服が習性になっているからである。
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