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5月9日のNHKスペシャルで、佐藤栄作首相の沖縄返還交渉についての番組を見た人は多いだろう。元産経新聞記者で当時総理秘書官を務めていた楠田実氏の残した史料に基づいている。返還交渉にあたり、当時の沖縄に米軍が保管し使用準備がていた中国向け戦略ミサイルメースをどうするのか、核抜き返還にするのかということが、返還交渉の重要なポイントとして番組編成がされていた。
この問題はすでに交渉関係者の若泉敬氏の著述などにより明らかにされているところでもあり、現代史の研究者にとって珍しい事実ではない。進行中のベトナム戦争のなかで共産中国は、アメリカにとって冷戦の中での敵であった。核ミサイルのメースの沖縄への存在は沖縄の人にとっても知られていた事実であり、その事実を知りながら沖縄の人は本土への復帰を待望して、本土の佐藤政権に復帰交渉を進めることを要望し、核ミサイルの存在は二の次のことと感じていた。ただ米兵による少女暴行事件などが起こると基地返還についての民衆運動が起こり、米軍当局者は、目下の最重要問題であるベトナム戦の軍事よりも、民事対策にエネルギーをとられることにいらだっていた。
その結果、沖縄の民政を日本政府に移管して、アメリカは沖縄の基地を使用できる権利だけを手元に残しておきたいと考え出したとしてもおかしくない。その結果として日米政府と沖縄の人々3者の考えが一致して、沖縄返還交渉がまとまったと、私は記憶している。防衛実務の中でそのことを感じる機会がしばしばあったのは確かである。佐藤首相が日本の安全保障のために、沖縄の基地使用だけでなく、本土の基地についてもいざという場合に米軍に使用権を与えると密約をせざるを得なかったとしても、当時の事情からしてやむを得ないことであったろう。
日本の敗戦70周年にあたり、アメリカを中心とする旧連合国が国連で、日本が戦争を始めたのであり敗戦後に国連に加入することを認められたくせに、そのことを歴史のかなたに葬り去ろうとしているのはけしからんと主張しているのは、彼らにとっては当然の考えに基づくものであろう。悪い奴らに原爆を投下したことで、アメリカ人が非難される道理はないというのと同じ彼らの理屈からである。
ただこれは、アメリカの政治家が、戦争結果を自分たちの有利に利用しようとする外交手段として主張していることも多いのであり、日本も反論して、主張すべきことは厳然として主張せねばなるまい。歴史としてみるならば、私の考えでは先にアジアに進出してきたのは欧米である。日本はむしろ中国民衆を助ける側に立っていた。日露戦争勝利はその結果である。単なる侵略ではない。ただ満州事変はどうかと言われれば問題があるが。
中国で、清国崩壊後の動乱のなかで後から出てきた共産党中国政権は、民主的に選ばれた政権ではない。またチベットや新疆を不法に支配した過去と現在を持っている。ソ連に至っては、ヒトラーと戦う前はフィンランドに戦争を仕掛け、日本が大戦に敗れる寸前に勝手に満州地域や樺太・千島に進出し、その結果、対日戦勝国になっただけである。靖国問題は純粋に日本の国内問題であり、それがだめなら戦勝国の戦勝記念行事は日本の誇りを傷つけるものとして、参加をボイコットするだけでなく、関係国の無名戦士の墓や戦争指導者の墓苑に日本の首相などが献花することも、一方的になるとして拒否することになると、外交上の話し合いをすべきことになるのではないか。しかしこれは日本人の心象として、そのような死者を冒涜することはしたくないというのが、本音であろう。
中国や韓国が日本に、歴史を正しく認識せよというのであれば、日本も、このようなことを含めて対等にものを言うべきであろう。しかし現実問題として現在の日本が世界で周辺国と対等に外交交渉を進めるためには、アメリカに頼らねばならない。そうでなければ共産党中国にのみこまれてしまう恐れがある。 呑み込まれたいという人は、日本人であることを自ら否定しているといえよう。敗戦国として米軍の駐留をある程度認め、対米外交の取引材料としてこれを使っていくことは必要であろう。もちろんその中で、集団的自衛権行使として米軍や豪軍を支援する武力行使の問題も取引材料になる。単に平和主義とだけ唱えていれば安全だという現実を無視した議論は、議論とは言えないだろう。佐藤首相の沖縄返還の秘密交渉は、そのような交渉の中でやむを得ない現実的な選択であったと事実を認識して、現在のわれわれは、そのなかで今後をどうするかを議論すべきであろう。
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