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TPP環太平洋経済連携協定への参加問題で民主党内は混乱している。党外で賛成を推進しているのは経済団体であり反対しているのが農業団体である。確かに食糧の自給体制を確保しておくことは国家安全保障体制構築の重要問題であり、私もその意味ではこの問題を軽々しく扱うべきではないと思っている。かつての日米戦争中に日本の海上輸送が米軍の潜水艦や爆撃機による機雷の散布で途絶えてしまった影響を、肌身で感じた世代だからである。戦争中の日本は、戦場と軍需産業に若い元気な農村の働き手を出してしまったために、主食のコメの生産力が落ちていた。そのうえ海上輸送の担い手である船舶が沈められたため、海外からの物資の輸入が途絶えてしまった。なかでも食糧がなくなり、必要量の半分しか手に入れることができなくなった非農家の家庭では、子供たちが現在のアフリカ難民の子供のような栄養状態になっていた。私自身もそのひとりであり、そのころから戦後にかけてもう少し栄養を取っていれば、現在の若者の平均的な身長や体重に育っただろうと思うことが多い。戦後生まれの弟は、180センチを超す身長に育ったので、遺伝的には悪くないものがあったはずだからである。
北朝鮮の人々の飢餓状態が報道されている。これは支配者の農業政策の誤りや異常気象が主な原因だとしても、アメリカをはじめとして日本も行なっている経済制裁にいくらかの原因があることも考えられる。食糧を外国に頼っていると、経済制裁で食糧難になる場合もある。そのことを考えておくのが国家安全保障政策のひとつの方策であり、TPPについてもその配慮なしに目先の利益だけで加入を進めると、かつて私が体験したような状態になりかねない。特に何かというと経済制裁をもちだすアメリカとの付き合い方は、慎重でなければなるまい。
アメリカの歴史は原住民の広い土地を侵略的に開発し、人口密度が日本とは比べ物にならないほど小さいなかで築かれてきた。そのためか人と人の付き合い方に日本の田舎に見られるような密度の濃いものが見られない。彼らアメリカの白人は体質が日本人と異なり、遺伝的に強靭なものがある。肉を食べすぎたからといって日本人のように、健康に悪いと言って心配する人は少ない。また、このような歴史や地理的風土のためか性格的にフランクな態度をとる人が多い。そのため日本人はついそれに甘えてしまうとともに、彼らの方式が正しいものと思い込んでしまう。しかし現在の不況の始まりが、アメリカの金融界が開発した担保性が薄い住宅証券であり、日本では竹中蔵相がアメリカ的な経済政策をむやみに推進して、貧富の両極に日本人の世帯を追いやったことが国民生活の問題の根底にある。このことをわれわれは反省してみるべきであろう。
特に個人の付き合いを離れた、アメリカ人の国と国との交渉には冷たいものが見られる。他人を警戒する開拓者そのもののようなところがある。イスラム国家と対立的になるのはそのためであろう。過去にアメリカの軍人や学者をとおして公的なアメリカ人を観察してきた一方で、娘の結婚相手の家族や武道の稽古を通じて市民としてのアメリカ人にも接してきた経験から、このようなことを考えている。
野田首相が述べているように、TPPへの参加をアジアの国々との関係を大切にする形で検討することは必要であろう。同時に、影響力があり、また性格的に自国の国益を過度に前面に出しがちなアメリカ人との交渉には十分注意すべきである。中国のことはここでは取り上げないが、アメリカ以上に手ごわい相手であることはもちろんだ。
ただそのようなことをすべて拒否した形で、高齢化した日本の農業の現状に目をつぶった党利党略的な参加反対論をぶつ人たちは、国家安全保障政策のかけらもない将来が見通せない人ではないかと不信感を募らせている。最近ある政治団体や国会議員と接触して、今の政治家への不信感をますます高めた。政治家、特に国会議員は利益代表ではなく、国民の代表であることを肝に銘じてほしい。
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2011年11月10日
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