軍事評論家熊谷直の社会評論

アジアを中心にした社会・軍事の情勢やニュースの分析

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  盆前に福島県の地震被災地をまわって復旧状況を確認してきた。津波で一面が野原になっている映像を見せられたり、原発の状況映像を見せられたりしているので、それが全部であるような頭へのすりこみが行われている。しかし現地で話を聞くと、地震と津波に会い自分の体験したことが忘れられない人は別にして、半年経って身の回りでいくらか復旧が進み元の生活に近い毎日を送っている人は、損害賠償という自分たち自身の損得勘定の方に目が向きつつあるのではないか。余震にも慣れてきて、12日の朝ホテルで大きな揺れを感じたときも、就寝中の人たちが起きだして騒ぐようなことはなかった。
 それにしても、復旧が急ピッチで行われているのは間違いないといえる。文化財のような古いものはさすがに一応の片付けだけで、残骸が放置されているが、道路のような生活に直結するものは、生活に支障がなく見た目にも問題がない程度に修理されている。目立つのは一割以下の数の、青いシートが棟にかけられている20センチ以上の暑さの重厚なカワラぶきの屋根だけである。とくに文化財級の古いものや建屋そのものの施工があまり良くなかったと思われる家は、新築であっても揺れで棟がわらが崩れ落ちている。この程度では半壊にも査定されず、よくても見舞金数万円で終わりになるらしい。
 福島県は、見た限りでは水田の被害はそれほどではなかったのではないかと思われる。宮城県のコメどころの水田の壊滅映像が頭に入っているので、それを判断基準にするところであった。海岸近くでも稲が青々と茂っている福島県を見て、日本全体としては、今年の稲作は大丈夫と感じた次第だ。
 ただ問題は原発関連の風評被害であろう。漁業ももちろん大きな被害を受けており、店頭に地元の魚は見られない。放射能は目に見えないので、どうしても過大な影響があると判断しがちだ。それを防ぐため、政府をはじめとして市町村役場にいたるまで、放射能についての情報の収集と発表に力を注ぎ、人々が正しい判断ができるように努めるべきであろう。東京都でさえ食品の放射能分析に手が回りかねているというが、小さな町は何もしていないと同じではないか。広島は原爆の投下があったために、私の子供のころは何年も死の町が続くとささやかれていたものだが、実際には翌年に活気が戻っていた。一般に放射能の知識がなかったので、直後に現地に入り、そのため原爆後遺症に苦しんだ人がいたのは事実だが、それと比べて原発の放射能汚染がどの程度のものであるのか、許容程度はどのくらいか、原爆の過去のデータも利用して、国民に詳しく理解してもらえるような分析と発表をしてもらいたい。
 それにしても現地の人たちは、あまり深刻に考えずに、自分たちの周囲だけを見ながら前向きに生きているというのが、私の感想である。政府は現地の人がそうだからと放置するのではなく、たとえば見舞金を収入に計上するような不作為によるマイナス施策をすることがないよう、自分たちができることは何かをもう一度洗いなおしてみるべきだろう。ただでさえ人手がなくて施策ができかねている現地の公務員やリーダーたちに、平時と同じ正確性と確実平等性だけに目が向いた行政の方針を押しつけ、全ての責任を現地におっかぶせるやり方をしていてはならない。
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