軍事評論家熊谷直の社会評論

アジアを中心にした社会・軍事の情勢やニュースの分析

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  沖縄については、1993年に『琉球沖縄受難史』を新人物往来社からまとまった本として出版したほか、雑誌や新聞に発表した記事は数えきれない。沖縄に初めて行ったのは本土復帰から5年後であり、昭和57年(1982年)から2年あまりを現地の防空情報統括部隊の指揮官として勤務したこともある。その後も東京で統合幕僚学校教官(Joint Staff-Collage Professor)として教育・研究をしていたときは、学生たちを現地に連れて行き見学や教育をしたので、琉球・沖縄については一応の専門家になった。もともと防衛大でも教官を務めた軍事史軍事制度史の専門家であったので、現地滞在中に学問レベルで現地の人と付き合いを深めたほか、武道や尺八の関係でも現地の人との付き合いを深めたので、琉球人や沖縄人については相当に理解をしているつもりである。
 ただ70歳になるまでは頻繁に沖縄を訪問して人々との親交を温め、多くの現地情報を入手していたが、その後は体調の関係で自分の目で現地を見る機会がほとんどなくなった。しかし最近、『沖縄の不都合な真実』(2014年新潮新書)を通読する機会があった。日経新聞の那覇支局長を務めた大久保潤氏と経済学者で沖縄にも詳しい篠原章氏の共著である。沖縄の比較的最近の事情について詳しく述べられていて、私の欠けいる部分を補ってくれる記述が多かった。
 記述の方向としては、私のこれまでの思索と一致している部分が多いが、沖縄には右も左もないというこれまでこのブログでも何度も私が指摘してきたことを、うまくまとめて表現してある点に感服した。昔の藩政時代の本土と違い琉球・沖縄の侍(サムレー)は無茶苦茶に数が多く、その子孫・後進である教師や公務員と一部の大企業の幹部社員が支配階級として県を牛耳っているという指摘についてである。見方によっては琉球も今の沖縄も昔のサムレーが6割であり、それを残りの農民が養っていた、あるいは今も下層の生活者が養っているというのであって、昔の体制がそのまま現代に引き継がれているというのである。
 琉球王国を支配していた薩摩藩は西郷家などの城下の侍階級と陪臣といえる各地の郷士が計3割であり、その他の本土各藩の1割前後に比べて多かったので、西郷家なども農作業をしなければ食べていけなかったという。これは吉田松陰実家の20石余取の長州萩藩の杉家と似ている。長州藩は陪臣・足軽中間まで含めて侍が家族とも1割余であって多いほうであったが、薩摩は郷士である庄屋クラスまで含めて4割という侍大所帯であり、それよりも多いのが琉球王国であった。
 琉球では農民一人が侍(サムレー)2人を養う形になっていた。特に今の八重山・石垣地方は琉球王国の属領の形にされていたので、人々は搾取されていた。その支配形態がそのまま現在に残されているというのである。
 台湾に近い与那国島まで足を延ばしたことがある私には、その意味がよくわかる。沖縄の本土復帰の直後でさえ、八重山方面の小基地の指揮官として駐在した自衛官が、琉球王府から現地に派遣されていた役人と同じか、それ以上の扱いを受けていたというのである。沖縄本島では自衛官の子供が先生からいじめられていた時期の話である。まして県知事とその取り巻きは八重山方面の人にとっては、琉球王一家のようなもので、口をきくのも恐れ多いということになる。
 そのように支配階級の県の役人や昔の支配者の子孫たちが威張っているのと同じなのが現在の首里や那覇の有力者であり、日教組の退職者でさえ、辺野古(キャンプシュワーブ)の付近で毎日の生活をしている一般住民よりも格が高い扱いを受けるというのである。基地のゲートの入り口に毎日現れる年寄りは、そのような人だという。つまり東京の人が彼は右だ、左だという格付けをするのは意味がないということになる。
 中央から沖縄に派遣されてくる役人は、数年間沖縄の有力者と交際して有力者のおぜん立てに乗って行動していれば、任期を務めあげて中央に帰っていくことができる。下層末端の人との交際は、飲食街でというのがほとんどで、それで沖縄を理解した気分になる。鳩山由紀夫総理はそのような人から得た情報をもとに行動して普天間問題の解決法を誤ったのであろう。歴代の総理や関係大臣が一度や二度の在任中の沖縄訪問で分かった気分になるのも怖い。これは沖縄に限らず外国との関係についてもいえることだろう。
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たたき上げの田中角栄が最近見直されているのは、下積みからの体験の積み重ねがあったからだろう。親戚の建築関係の大学教授は新潟出身であったが、角栄が自宅に始終顔を出していたころの話をその一世代前の大叔母から聞かされている。有力者が下積みを経験しないままに、責任がある地位に就くマイナス面を、沖縄でも中央でも検証し反省してみる必要があろう。
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