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アメリカの新国防長官J.N.マティス退役海兵隊大将が日本を訪問して、日米間の安全保障政策は、トランプ大統領のもとでも基本的にはこれまでと変わらないであろうことを稲田防衛大臣や外相、安倍首相に約束したことで、とりあえず安倍首相が訪米する道が開けたといえる。しかしトランプと安倍の会談がどういう結果になるのかは、会談が終わってみないとわからない。ただ経済問題が話し合いの重点になるであろうことは予想がつく。
ところで安全保障、特に具体的な戦略や戦術問題については、日本では自衛官やそのOB(OGはまだ玄人の域に達していない)でなければ、語る資格がないといってよかろう。かつて旧軍人や自衛官がメンバーの中心であった防衛学会が防衛庁関係の文官や庁内の学者により政治学や国際関係を主な論点とする 国際安全保障学会に衣替えさせられてしまったことがある。その後立場を失った上級自衛官たちが新防衛学会を復活させたが、両者の関係に円満だとは言いかねる問題が残っている。しかし時間の経過により佐官以上の自衛官に上智大学や慶応大学、筑波大学などの大学院に国内留学したり、アメリカのマサチューセッツ大などで修士・博士の学位を得たり、米国防大学など国防省内の大学院で学んで学位を得たりするものが出てきたので、自衛官学者といえる人物も育ってきている。防衛大学校にも大学院の課程が設けられていて、逆に部外のジャーナリストで特に許可を得てここで学んだ人もいる。なお陸海軍時代には工兵将校や海軍機関将校から選抜されたものが東大、京大、九大などで学んでいたが、自衛隊では初期に防大卒の何名かが帝大系の大学院に進んだが、その後帝大系は反自衛隊になり、兵器の開発には協力しないといいだし、最近もその傾向を強めている。
しかし一般の人はこのような事実を知らない。高校卒で最下級の自衛官として入隊して、苦労しながら国内留学により博士になった人もいるが、防衛省内でも、そのような人には冷たいのが現実である。そのためか銃を持って走り回っている隊員たちだけが自衛官のすべてだと思っている人が少なくない。特に防大卒の自衛官は卒業時に幹部候補生の曹長になり一年ののちには三尉(少尉)に任官する。曹長は警察でいうと警部補相当であり、小隊長として小部隊を指揮する資格を与えられている。比較的名が通っている大学を卒業してから幹部候補生の試験を受け、合格して防大卒と同じように一年後に三尉に任官する制度もあるが、最近は日大卒程度では試験に合格するのが難しくなっているらしい。警察も自衛隊も、たとい東大卒でも、このような試験に合格しない限りは佐官に昇進するのさえ難しく、入隊時の資格が一生付きまとうのである。そのため米国留学は言うに及ばず国内留学の資格さえ得るのは、容易ではない。
ところでマティス退役海兵隊大将は、数千冊の蔵書を持っていると噂されていることからもわかるように、軍人学者ともいえる能力を持っているようだ。単なる戦場での暴れ者指揮官ではない。軍人に大学院卒相当の学識を与え始めたのはアメリカであった。
マティスは陸軍士官学校や海軍兵学校といった上級・高級の軍人コースを出たわけではない。ただ第一次大戦のときに始まった将校不足を補うためにはじめられたROTC(予備将校養成のための幹部候補生教育コース)と呼ばれる大学教育の単位をワシントン州の大学で受講していて、自衛隊の幹部候補生と同じ程度のものを身に付けていると公的に認められていたようだ。そのために、大学卒業時に海兵隊の予備役少尉に任官することができた。湾岸戦争のときの米中央軍司令官シュワルツコフ陸軍大将もやはり、ROTCの出身である。マティスは湾岸戦争のときは海兵隊の大隊長を務めていた。かれらは戦場で戦うことだけにたけていたわけではなく、政治的な戦況判断を適切に行えるだけの学識も身に付けていたのである。
そのような人物が米国防長官として軍事全般にかかわることになったので、日米安全保障についての政策で日本が、彼に頼ることになるのは避けられまい。普天間の移設問題で軍事についての体験や知識がない翁長沖縄知事がアメリカに行って、相手にされなかったのは当然であろう。日本人は意図的に戦後、軍事から遠ざけられていたので、自衛隊の現状についてはもちろん、世界の軍事についても初歩的な知識がない。そのためマティス大将のことを猛将指揮官としてしか認識していないようだ。
日本のテレビで安全保障について語る人物の半数以上は、軍事を体験したり学んだりしていない大学教授級の人物が多いが、私自身は防大や統合幕僚学校などで軍事史を教え、若い時にはキューバ事件などのときに日本列島に接近してくるソ連機などと対峙してスクランブル処置をした目で状況を見るので、彼らはいい加減な発言をしていると思うことが多い。最近は米欧に公的に留学して安全保障について学んだ元将官級の人も発言し、ひげの隊長こと佐藤参議院議員のようにそのような経験に加えてイラクの第一線に派遣された経験から発言する人も増えている。そのような目でマティス長官を理解することも必要であろう。戦争体験がある沖縄民という発言をする、そうではない沖縄の基地反対者(偽物)の言をそのまま信じてしまうのは、非常に危険だ。中国のために基地反対を口にしているような沖縄地元のジャーナリストや学者の話を聞くときは用心する必要がある。
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