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書庫卑劣 短編小説

卑劣で甘く優しくて 短編小説の書庫です
年下下僕攻×傲慢年上受 健全+R15

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どんな場所でもオーラを放つ人間──。

持って生まれたものか、人生に刻まれた内から溢れるものか知らないが、今まさに、その人が目の前にいることに、将孝は感嘆する。

渋谷スクランブル交差点。

ネオンサインの乱反射と音の大洪水に溢れる雑踏で、光の微粒子を纏う絢人は、神々しいまでに眩かった。
恋人の欲目ではない。
信号待ちの無彩色の群集の中で、彼は虹色に輝いている。

「先輩」

将孝が呼びかければ、マルチビジョンを眺めていた絢人は、視線をゆっくり上げる。

「ん?」

「キスしてもいいですか?」

わずかに目を見開き、絢人が将孝と周囲を見比べる。

「ここをどこだと思ってんだ?」

「これだけ人が多くて音が凄いと、誰も気づきませんよ」

「そういう問題じゃない」

ピシャリと言い捨てる言葉は、だけど想定内だ。
絢人は我侭だが、礼儀正しくモラルがあり、何気に常識人。
人目の多い街頭でキスを気軽に出来る性質ではない。
そういうところも惚れた一因だが。

でも、たまにはちょっとくらい、外で恋人っぽいこともしたいぞ、と将孝が少々非常識に考えれば──。

指先にふわりと触れる優しい温もり。
おや? と思えば、絢人がチラリと上目遣いをして、頭を将孝の肩にコロンと載せた。

「これくらいなら、許す」

触れた指先がしなやかに絡み付き、じんわり体温が混ざり合う。
他愛ない手つなぎだが、それは春の花がゆるく開花するような嬉しさがあって……。

「大好きです、先輩」

囁いて、ぎゅっと手を握り返せば、絢人は「そうか」としか言わないが、その頬が淡く染まるのを、将孝は見逃さない。

マルチビジョンに点灯するのはLOVEの文字。

信号が青に変わり、絢人と共に交差点へ踏み出した時、将孝は発熱する光の甘いシャワーを泳ぐような気分だった。



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絢人と将孝の
ほのぼの短編です
どうぞお目にしてくださいね


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リンゴをもらったから──と、キッチンで声がした。
見れば、すでにフロを済ませてパジャマ姿の絢人が、リンゴの皮むきに苦戦しているようだった。

絢人は包丁を握るのが苦手だ。
容姿端麗で、頭も良く、他はほぼ完璧にこなすが。
料理は作ってもらうのが当然で、慣れないらしい。
今まさにデコボコに削がれつつあるリンゴに、将孝は吹き出しそうになった。

「皮むき、かわりましょうか?」

フロから出たばかりだが、将孝は絢人に声をかける。
が、笑いを堪える将孝にムッとしたのか、絢人は憮然と口を尖らせた。

「これくらい、俺がやる」

きっぱり言い切る声とともに、分厚く削がれるリンゴ。
「あ」と絢人は固まり、将孝は笑い声を噛み殺すのに苦労したほどだ。
とはいえ、慣れない手つきでペティナイフを握る姿は真剣そのもので、ひどく可愛いらしい。
一方、不慣れなナイフで怪我でもされたら大変と思うので、将孝は絢人の背後から手を伸ばした。

「なら、一緒にやりましょう。リンゴをむくときは、ナイフをこうやって縦に当てて」

後ろから抱きしめるように手を優しく重ねると、絢人の表情が和らいだ。
ゆっくり力を加えれば、ナイフを素直に動かしだす。

ケーキ入刀みたいだと、将孝は思った。
誰より愛しい絢人との共同作業。
しかも互いにフロ上りで、その上密着した状態とあって、ウキウキせずにいられない。

「そう、上手です。そのまま親指を添えて、手首を軽く回転させる感じで」

「これだとぶつ切りにならないな。皮がキレイにつながる」

「でしょう? コツを掴めば、丸ごと一個皮をつなげたままむくことだってできますよ」

「あ〜、家庭科の時にソレやってるヤツがいたな。うらやましかった。俺もやってみたい」

俄然やる気をだす絢人に、将孝はますますウキウキする。
リンゴを見つめる目は真剣で、楽しそうで、果物と洗髪後の絢人の髪の香が鼻孔をくすぐって……。

「できますよ、先輩なら」

吸い寄せられるように、将孝は絢人の横顔にキスをした。
正直、リンゴより絢人を食べてしまいたいと思うから……。
しかし、その途端、華奢な身体がビクンと強張り、絢人はリンゴをむく手を止めると、将孝を肩越しにジロリと見た。

「危ないじゃないか」

「ああ、すみません、ついうっかり」

「刃物を使ってる時にそういうことをするのは危険」

「ですよね、危ない、危ない」

それでなくても絢人は不慣れ。
ということは分かっているが──将孝は絢人に、もっとキスをしたかった。
頬だけでなく唇にも、唇だけでなく艶やかな胸にも、それだけでなく自分しか知り得ない魅惑の場所まで。

──困ったぞ、せっかく先輩がリンゴにやる気なのに。

そんな懊悩を感じれば、絢人が長い睫毛を伏せ、すぐ視線を戻してリンゴとナイフをまな板に置くと、将孝の腕の中でくるりと向き直った。

「お前が一番……危険だったな」

拗ねたように言いながらも、絢人はつま先立ちをして、

ちゅっ♡

与えられた温もりは、全てを許すようにたおやかで……。
その温度に無上の幸福を感じながら、将孝は絢人だけの甘い危険物になるのだった。


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「……驚かすなよ」

絢人はほっとした。
将孝の意識がないからできることだ。
年下の男にこっそり戯れているとは、絶対知られたくない。
とはいえ、眠りこける将孝からすぐ離れるのは惜しかった。
ふたたび頬にふれ、髭の剃り跡と輪郭をなぞっていく。

「ヒゲ……濃いな、ざらざらだ」

寝ても精悍さを損なわない男に微妙な嫉妬も沸くが、心の襞をくすぐるのは甘い感覚。
規則正しい寝息が小憎くらしく、将孝を自由にできることが嬉しくて……。

「今夜はたくさんしたかったんだけどな、スケベなこと……」

誰も聞いていないから、大胆なことも平気で言える。
しばらくその場にいれば、名残惜しさが募った。
だけど、一晩中そうするわけにもいかない。

今夜はゆっくり休め。

心で呟き、もう一度、絢人は将孝に接吻した。
互いの唇がふれ合うだけの、優しいキスを……。

その時、がしっと肩を掴まれた。
不意打ちだった。
絢人は飛び上がりかけるが、間髪入れずにぐいっと力強く引き寄せられる。
目を開けた将孝はとても愉快そうに笑った。

「本当ですか?」
「お、お前、起きて」 

絢人が激しく焦れば、将孝はにっと悪戯っぽく目を細める。

「いつから起きてた!?」
「さっきから……先輩がクマがどうのとか言ったあたりからずっと起きてます」
「な、な……」

瞬時に全身が熱くなるのを、絢人は感じずにいられなかった。
あろうことか、頬ずりやキスやヘンな独り言まで全部バレていたことになる。

「信じられない、寝たふりなんて」

文句を言うが、将孝は絢人をひょいと抱えあげ、自身の上で抱きしめた。

「先輩からキスしてくれるなんて、感動でした」
「それはっ……」

将孝に伸し掛かる状況にも焦って絢人は耳朶まで真っ赤になるが。

「頬も、先輩の頬はスベスベだから、うっかり寝落ちそうになるくらい気持ちよかった」
「そのまま寝ろよ、朝まで起きるな、帰ってすぐ寝たくせに」
「そうなんです、すみません、あなたを退屈させるなんて猛反省です、恋人を退屈させるなんて……ね」
「ッ……」

独り言を揶揄され、絢人は抗議もできなくなる。
寝ていると思ったから言えたことだ。
恥ずかしくて、すぐこの場から消えたかった。
なのに、将孝にがっちり抱きしめられ、身動きもままならないことが悔しい。

「……帰る」
「今夜は泊ってくれるんでしょう?」
「泊まらない、気がかわった、お前だって寝不足だし、とにかく帰るから離せ」

ほとんど八つ当たりで目を吊り上げるが。 
美貌を朱に染めて睨む絢人は愛らしく、将孝は瞠目すると、絢人を抱く手に力を込めた。

「スケベなこと、いっぱいしてあげますから」
「う、うるさい、うるさい、お前、悪趣味すぎだ、盗み聞きなんて……」

腕を突っぱねて逃げようとすれば、手首を掴まれた。
将孝がひどく嬉しそうに見上げてくる。 

「照れなくてもいいじゃないですか」
「照れてなんて」

言い終わる前に、ふわりと唇を塞がれた。
それは優しい感触―――……。

優しいのに火傷しそうで、焦りや動揺を塗りかえて、やわらかい火照りを身体中に蘇らせる。

「今夜は先輩と一緒にいたいな」

唇付けの隙間を縫って、将孝が色気のあるバリトンで囁いた。

「眠いくせに……」

ボソッと咎める絢人は、はにかむように睫毛を伏せ、いつもは凛と澄む眸を艶冶に揺らしている。 

今夜の将孝は狡いと、絢人は思った。
そう思うことすら甘酸っぱくて……。

どちらからともなく、もう一度唇をふれ合わせた。
角度をかえて次第と深くなるキスの感触は、心ごと果てしなく愛撫されるように甘かった。



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最後までお目にしていただき
(*^^)/。・:*:・°★,。・:*:・°☆ありがとうございました
前後編、お楽しみいただければ幸いです
お目にしてくださいますみなさまに
すこしでも甘いBLをお届けできていますことを



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絢人は戸惑っていた。
芝公園ほど近くの将孝のマンションは、今夜も清潔に保たれている。
ベイエリアの夜景を臨むリビングはいつもとかわらず小奇麗だが。
家主の将孝が、部屋に戻るなりソファで寝てしまったのだ。

午後二三時。 
明日を週末に控え、泊りにきませんかと、やや強引に誘われたのだが。

「おい」

スーツの上着を脱ぎ、絢人はソファの脇に腰をおろした。
床暖房が入り、ラグマットが敷かれたフローリングは、冬でも暖かい。
「将孝」と呼びながら、スーツ越しのぶ厚い肩にそっとふれた。
けれど、淡いダウンライトの灯る部屋で、返ってくるのは静かな寝息のみ。

ふ……と、絢人は口許を綻ばせた。
人事部所属の将孝は、最近ひどく忙しそうだった。
某バンクの反社会勢力問題に伴い、行員のコンプライアンス強化に奔走していたからだ。
いかに体力がある男でも、週末を除く半月近く徹夜では、睡魔に襲われるというものだ。

「疲れているんだな、クマが……」

彫りの深い厳つい顔面には、下瞼の窪みに青みがかる色が透けている。

「目の下のクマと、クマ本体と、合計クマ三体」

瞼にふれても、返されるのはやはり寝息のみ。
至近距離で覗きこみ、絢人は将孝の瞼から頬にかけてゆっくりなでた。
ピクッと将孝がかすかに眉根を寄せるが、起きる気配はない。

「そんな無防備にしていると襲うぞ?」

ふと絢人は呟いた。
いつもは言わない冗談も、するりと口をつく。
髭の剃り跡が濃い頬から顎をなでた。
指を刺す感触が面白く、顔を寄せてすこし頬ずりしても、無反応だ。

「こういうのも悪くないな」

絢人は楽しくなってきた。
以前、将孝は下僕のような存在だった。
今も余りかわらないが、二人きりの、特に夜の主導権は握られっぱなしで、そのことを、絢人はほんのすこし拗ねていた。
年上としてのプライドがあるからだが。
何をしても無抵抗な後輩に……甘えたくなる。

わずかな間を置き、絢人は将孝の頬へキスをした。
何度か啄み、そのまま唇をすべらせ、彼の唇にちゅっと接吻する。
途端、甘酸っぱい疼きが、身体をじんわり火照らせた。
その感覚が甘ったるくて、絢人は将孝を咎めるように見る。

「いいかげん何か反応しろ」

熟睡しているからこそ言えることだが。
それが分かるから、もう一度、絢人は将孝に頬ずりする。

「恋人が退屈しているんだぞ……」

囁けば、大柄の体躯がもぞっと動いた。
咄嗟に絢人は身体を離すが、動いたのは一瞬だけで、やはり熟睡するらしい。




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一つ前の短編「Crimson Night」
がビターテイストでしたので
甘いものが書きたくなり書いてみました
長さの関係で前後編の短編ですが
よかったら後編もお目にしてくださいませ


※画像は Futta NET さまからお借りしています



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「いや、だ、いや、ぁ」

切れ切れの拒絶は、痛ましいほど掠れていた。
けれど、拒否に交じる吐息は、匂い立つほど艶かしい。

「そんなこと言っても、あなたのここは感じているじゃないですか」

仰臥する絢人の股間へ手を伸ばせば、淡い茂みから勃起する小ぶりの性器。
そんな気になるのが滑稽なほど、将孝は残酷な気分だった。
ピンッと勃起の先端を意地悪く弾く。

「あっ、やッ」

尖った声を上げ、絢人が仰け反った。
ベッドの上、全裸にむかれた身体はどこもかしこも怒りと絶望と不本意な快楽に発熱して上気するようだ。

玲瓏な美貌は涙に濡れていた。
両腕を括られ、逃げ場を奪われ、凌辱され、さらに嬲り尽くされて……。

ひどいことをしていると、将孝は分かっていた。
人として、最低最悪な行為に及んだことは百も千も承知だ。
だけど、堰を切って溢れた激情は、もはや元には戻せない。

「先輩がこんなに淫乱だなんて、会社のみんなが知ったらどう思うでしょうね」

桜色に色づく耳に息をわざと吹きつける。
驚愕したように絢人が目を見開いた。
頬が強張り、唇をわななかせ……果実のようなその唇を、将孝は荒々しく塞いだ。
上下の唇をこじあげ舌を強引に差し入れる。

「んんッ」

絢人は顔を背けようとするが、細い顎を鷲掴みにして動きを封じた。
自由に貪れば、口内の強張りが溶解するようだ。 
湿った熱が粘膜に溶け、鋭く感覚へ滲み込んでくる。
そのまま手をすべらせ、むきだしの股間の奥をぞんざいに触れた。
ビクッと、絢人が全身を震わせるが、容赦はしない。
何度も征服した秘密の穴は、情けない滴りにぐっしょりぬかるんでいる。

「こんなに濡らして……」

言葉で辱めながら、己の男根をぬかるむ場所へあてがった。
幾度もの爆発が嘘のように、ソコは欲を凝縮して張りつめている。

「いやだ、いれるな、もう、いや、だ」

サラサラと髪を振り乱し、可憐なほど絢人は訴えるが。
拒否する唇を、もう一度塞いだ。
そのまま力を込め、年上の人の柔肌の奥地へ、熱く薄汚い滾りを捻じ込んでいく。

「い、やぁ……」

重ねた唇から漏れるのは、辛うじて音を形成する胸を抉られるようなかよわく悲壮な声。
その声を吸い取りたくて、将孝は唇付けを深く、口内を激しく蹂躙した。
上下左右に粘膜を舐り、珠玉の唾液を啜り、舌をすくい上げて存分に絡めて……幾度か熱を擦りつければ、絢人が涙に光る睫毛を弱々しく伏せた。
何か助けを求めるように、健気に舌を絡みつけてくる。
思いやりの欠片もないドス黒い欲望に汚された時間をつかの間、許すように……。

拒絶だけを吐く形の良い口の、唯一唇付けだけは従順だった。
それだけで、将孝は、愚かな思い違いと分かっても、歓喜に、命すら尽きていいと感じずにいられない。

地獄に堕ちてもよかった。
否。
もし奈落があるのなら、絢人と二人きり、このまま深淵まで堕ちていきたかった。



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最後までお目にしていただき
(*^^)/。・:*:・°★,。・:*:・°☆ありがとうございました

恋人になる前の
絢人と将孝を書きたくなり書いてみました
初めての夜の頃です
人物描写や背景描写はないですが
お目にしてくださいますみなさまに
すこしでも甘いBLを・・・

この短編は将孝の刹那的な心情を書ければと思い
甘さより苦しさが勝るかもしれませんが
お楽しみいただければ幸いです



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