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Sweet Patio
C95ありがとうございました♡

書庫卑劣 only for you

卑劣で甘く優しくて 続編
〜only for you〜作品1話目→http://blogs.yahoo.co.jp/kuma20kuma/65742091.html?type=folderlist
卑劣で甘く優しくて
卑劣1作品1話目→http://blogs.yahoo.co.jp/kuma20kuma/64672608.html?type=folderlist
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「俺の汐見さんが……」

小声でボヤく藤井に、仲谷はテーブルの下で肘打ちする。

「お前のもんじゃないだろう」

「でも、何も、見せつけにこなくてもいくないっスか?」

「こいつらにそういうつもりはないって。どう考えてもお前は蚊帳の外だし」

もう一度肘打ちすると、仲谷はテーブル越しの絢人と将孝に視線を向ける。

成田空港。 
ターミナル、一八時。

出発ロビーを見下ろせるカフェに、四人はいた。
今夜ドバイへたつ仲谷と、その見送りの絢人と将孝と、仲谷が強制的に呼びつけた藤井と。

しかし、まったくこいつらときたら……。

旅情色豊かな空港の洒落たカフェの一角で、仲谷は妙にくすぐったい気分になっていた。
目の前には宝塚の男役かとみまがう美形の絢人と、ハリウッドスターなみに男臭い将孝のツーショット。
タレントと勘違いした観光客が写真撮影を頼みにくるほど、いるだけで華になるが。

それほど目立つ二人は、人目もはばからずにいちゃいちゃ……しているように、仲谷には見えた。
普段、他人に関心や感動は余り持たない性質だが、将孝がベッタリ寄り添い、絢人は嫌がるふうもなく艶冶な流し目をくれるあたり、絢人の色気に目を見張りっぱなしの藤井でなくても当てられそうになる。

とはいえ、見送りに来てくれたことは、嬉しかった。
二人を交互に見ると、仲谷は言った。

「せっかくの休日に、ありがとな。わざわざ来てくれて」

「こっちこそ。急に来たけど、時間は大丈夫か?」

「九時の便だから余裕だよ。そっちは何か予定はないのか?」

「暇だから気にするな。しばらく会えなくなるから、お前を見納めにきたんだ」

涼しげな声を出す絢人を、将孝がうっとり見つめていた。
仲谷の隣に座る藤井が、ぼそっと呟く。

「俺も汐見さんの隣に座りたいなぁ」

「藤井さんとは、昨日しっかりお話ししましたよね」

ゆっくりと、将孝が藤井を向き、そこにはやけに凄みのある笑顔。
藤井が降参したように、肩をすくめた。
その様子を見て、仲谷は安心する。

昨日のことを含め、将孝と藤井にヘンな確執が生まれなければいいと思っていたが。
それは将孝と藤井の間で解決したのだろう。
穏便でなによりだ。

などと呑気に思えば、将孝が背筋を正し、おもむろに仲谷を見た。

「俺、先輩と住むことにしたんです」

「え?」

一瞬何のことか分からず仲谷が聞き返せば、将孝はとても堂々と言った。

「同棲します」

絢人が焦ったように将孝を見る。
仲谷はぽかんと口をあけ、それから意味を理解すると、たちまち笑顔になった。

「そうか」

絢人と将孝が恋人同士なのは、知っていた。
そして同性愛と異性愛に垣根を感じない仲谷としては、二人が一緒に暮らすことを、当然の成り行きだと思うのだ。
そのことを自分に報告する将孝が、後輩として可愛いとも。

「倉城はたいしたもんだな、大学時代からの片想いを、ついに実らせたか」

将孝は嬉しそうに「はい」と答え、素直に返事をするあたり、仲谷は将孝を、やはり憎めないヤツだと思う。
絢人はといえば、若干動揺は見えるが、心は決まっているのか、何か言う様子はない。

「なら、住所がかわるわけだな。やっぱり倉城の家に住むのか?」

「そのつもりです。ね、先輩」

「俺の住んでいるところは独身寮だから……。お前のところに居候させてもらうのが」

「居候なんて水くさい。あのマンション、実は一棟全部俺の名義なんで
先輩の名前に名義変更しても」

仲谷は驚いてしまった。
絢人もびっくりした顔をして、軽く溜息をついた。

「その必要はない。家賃は払うから、ルームシェアにしてくれれば」

「でも、寝室は一緒ですよね」

藤井がむせた。

仲谷も手で顔を覆い、手の端からチラッと二人を覗き見た。

「仲が良いのは分かったから……そういう話は二人だけでしてくれないかな」

またたくまに、絢人が頬を朱に染めた。
それは征服欲と庇護欲を同時にそそる顔で、将孝と藤井が抱きつきそうな勢いで凝視する。
それを見て仲谷は、年頃の娘を持つ父親の心境はこういうものだろうか。
いや待て絢人は男だ。
と、複雑な気持ちになるが―――。

その時。

将孝が絢人の頬を恭しくなでた。
何か大切なものにふれるように、ひどく優しい眼差しで。

その視線を受けとめ、絢人は安心したように口許を綻ばせると、花が蕾を開くように淡く微笑する。
どれだけ隠しても滲みだすような、恋の甘い微熱を漂わせて……。

ああ、そうか、と仲谷は思った。

―――絢人と将孝は幸せなんだ。

だから、一緒にいるだけでくすぐったい気分になる。
そう感じるのは藤井も同じらしく、ぼーっと二人を見る目は完全に当てられている。

「そろそろ行くわ」

そう言って腰をあげた時、仲谷は不思議な幸福感に満たされていた。
口には出さず二人にエールを送ると、出発ロビーへおりて、セキュリティチェックへ向かう。
その後ろ姿を見送り、絢人と将孝は、車で来たという藤井と別れて、自分たちの車を停めた駐車場へ向かった。
絢人は友人の海外赴任に一抹の寂しさを感じたが、その分、再会を心待ちに思いながら。

ターミナルを出れば、外は空港の眩いライトの隙間に夜の帳が浮かんでいた。
腕時計を見て、絢人は隣に歩く男を見る。

「夕食、していくか?」

間をおかずに、将孝が口を開いた。

「ちょっと遅くなりますが、家で食いませんか?俺がご馳走を作ってあげたいんです。なんてたって、今日は先輩と同棲一日目ですから」

にこっと微笑む顔は楽しそうで、つられて絢人もクスッと笑う。

「じゃあご馳走してもらおうかな、お前の手料理」

「任せてください。腕によりをかけてすごいのを作りますから」

「お前がそう言うと、本当にすごそうだ」

「頑張ります」

将孝は深呼吸をすると、華奢な肩に手を置き、蕩けそうな目で絢人を覗き込んだ。

「まだ夢みたいです」

「何が?」

「先輩がOKしてくれるなんて」

「ふふ……よろしくな」

将孝と一緒に暮らす―――。

悩みに悩み、最後は感覚に導き出された答えに、迷いはなかった。
リスクはあっても、それを恐れて我慢するより、一緒にいたいから。
ピンチが訪れるなら、それと向き合い、自分でアクションを起こして、時には盾となって、将孝との時間を築いていくつもりだから。

「新生活一日目、か」

ふわりと、絢人は甘えたように頭を将孝の肩にすりつけた。
将孝は足を止めて固まると、絢人の腰を引き寄せ、シャツの胸ポケットから何か取り出して……。

「これを、先輩にもらって欲しいんです」

そう言って将孝が差し出すのは、ふたつの鍵。

「俺の家のキーと、マンションのマスターキーです。指紋認証の登録もして欲しいですが、これがあれば家の出入りは自由なんで」

「……うん」

ライトに照らされて煌めく鍵を、絢人は丁寧に受け取った。
将孝はとても嬉しそうに目を細めると、愛しい絢人に囁いた。

―――俺たちの家に帰りましょう。


卑劣で甘く優しくて〜only for you〜【 完 】


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将孝の立場を考えれば、世間体は無視できなくても。

毎日の通勤のように。
仲谷や細野のように、人の興味や考え方は様々あるから。
何より、将孝が喜ぶだろうから。

OKしても、いいのだろうか―――……。

と、絢人は同居に傾きかけるが。

「遠慮はしないでください、ベッドのサービスこそ、力をいれますから」

鼓膜に流れ込むのは、楽しそうな声。
将孝は絢人の背をなでると、悪戯っぽい顔をした。

「先輩は、とても淫乱じゃないですか。たくさんしないと
欲求不満になっちゃいますよ?」

「は?」

「さっきのオナニーも、ヤバいくらいエロかったですし」

「な……」

その時のことを思い出し、絢人はぱぁ…と頬を染めるが、その反応は将孝の悪戯心をむくむくと昂ぶらせる。

「先輩って、先っぽ弄るのが、本当好きですよね。自分でスル時は
いつもアソコばかり擦るんですか?」

「……〜し、知るか」

絢人は耳朶まで朱に染まった。
もともと奥手で、下ネタは苦手なのだ。
最中でも強烈な羞恥が伴うのに、平常時にそんなことを言われたら、死んでしまいたい。

だから、真っ赤になりながらも将孝を睨むが、将孝に動じる様子はなく、それどころか「教えてくれないと、襲っちゃいますよ?」などと首にキスするものだから、絢人は心底焦ってしまう。

「自分でなんて……最近はしてない。いつもお前がしつこいから
一人でいる時にそういう気は……」

やっとの思いで、絢人は言った。
将孝はにこっと、やけに嬉しそうに笑った。

「俺とのエッチで、たっぷり満足してくれているんですね」

「そ、それは……」

「なら、やっぱりサービスはしっかりしないといけませんね。
色々なプレイに挑戦して……オナニーも、これからは俺が一部始終見てあげますから
積極的にやってください。先輩が自分で弄って善がる姿は
シャレ抜きにゾクゾクくるんで」

「へ、変態っ、馬鹿、スケベ!」

せっかく同居のことを真剣に考えていたのに。

せめてもの仕返しに、絢人は密着する厚い胸板をぽかぽか叩いて、その場から逃げるそぶりをするが。

それは見せかけだけの……甘い抵抗。

そんな絢人を、将孝は目を細めて、眩しそうに見た。

「先輩って、やることなすこと、全部可愛いんですけど」

「お、俺は怒っているんだからな」

「怒っても、先輩が俺から離れずにここにいてくれることが、すごく……嬉しいです」

「だって……」

以前なら、後輩の不埒な発言など、許さなかった。
意地でも抗議しただろうが。

今は、将孝の腕にいたいから。

甘えて……しまいたいから。

「仕方ないじゃないか、好きなんだから……」

拗ねた目をしながらも、絢人は将孝の肩に、頬をすり……とすりつける。

将孝は硬直して、もどかしそうに囁いた。

「先輩、可愛いすぎですよ……。本当に、どうしたら、一緒に暮らしてくれますか?
というか、ここに閉じ込めたい」

そんなことを言われるのも嫌ではないから。

「そうしたら、お前に心配……かけないな」

絢人がぼそ……と呟けば、将孝は顔を輝かせた。 

「先輩もそう思いますよね。なら、さっそく今から」

「ま、待てよ、まだ気持ちの整理が」

将孝は絢人の顔を上げさせると、両手で優しく挟み込んだ。 

「心配だから、というのは、理由付けにすぎないですし
先輩と暮らしたい理由はたくさんありますが……。一番の理由は、一秒でも長く
先輩といたいことなんです。俺は、先輩がいるだけで、幸せですからね。
だから俺は、先輩と一緒に暮らしたいんです」

最愛の、あなたと。

「将孝……」

トクン……と、胸の鼓動が波立つのを、絢人は感じずにいられなかった。

その気持ちは寸分たがわず同じだから。

だけど……、どうしよう。

ふと気づけば、オーダーをしたピザを取りに行く時間は、かなりすぎていた。
絢人はチラッと時計を見て、視線を将孝に戻した。

「ピザの時間……」

将孝は軽く溜息をつき、頭をガリッと掻いた

「ですね。これ以上店を待たせるのは……。ちょっと、行ってきますね」

そう言うと、絢人の額に、名残惜しそうなキスをする。

「俺も……」

一緒に行くと絢人は言いかけたが、将孝は「先輩は外出るとヤバいから、留守番してください」―――と、それは彼なりの気遣い。

だけど。

将孝が身体の向きをかえ、温もりの気配が消えた時。
絢人はたまらなくなった。

離れたくなくて。

テイクアウトのピザを取りに、たかだか数分不在するだけなのに。
将孝がいなくなると思うだけで、空気中から酸素がなくなったように苦しくて。

世間体や立場や年上としての矜持よりも何より。

いつも一緒にいたくて。

将孝を、感じたくて……。

「……お前と」

それは説明のつかない衝動。
けれど、心のとても素直で、大切にしたい感覚だから。

絢人は上体をあげると、今まさに床へおりようとする将孝のパジャマの背に、縋りついた。

「一緒に、暮らしたい……」

「先輩?」

将孝が驚いたように振り返り、すぐそれは歓喜を内包した笑顔にかわっていく。

「もちろんです、今すぐ一緒に暮らしましょう。
いつだって、ここは先輩の場所ですから」

「将孝……、ぁ……」

腕を掴まれ、背が軋みそうなほど強く抱きしめられた。
逆戻りするようにシーツに押し倒され、ふりそそぐのはキスの甘い嵐。

「ピザが……」

と、絢人は気にしたが、それは将孝の熱にかき消された。

―――今はここで、あなたを感じさせてください。

鼓膜に囁かれ、優しく奪われて。

深夜のベッドで。
二人の体温は濃密に交じり合い、その温度は、いつまでもさめそうになかった。

◇◆◇

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言葉にも、視線にも、絢人はうろたえずにいられなかった。

その目が好きでも。

いっそ、好きだから。

強く射竦められ、睫毛を伏せるしかできない。

「それに関しては…、俺がお前を、心配だから……」

ようやく喉から押しだした声は、やけに不安定だった。

「俺の立場を考えたら、男同士の同居は、リスクがデカイ、というヤツですか」

絢人がコクンと頷けば、将孝は絢人の顎をつまみ、ちいさな顔を上向かせた。

「でも、偏見や差別というやつは、肌の色が違うだけでも、生まれますよ?」

「それは……」

絢人は何も言えなくなってしまった。
その通りだからだ。
そして、間近で見る将孝の鋭い目に、全身の機能が縛りつけられたように麻痺してしまうから。

……―――言い返せない。

頼りなく睫毛を震わせる絢人に、将孝はちょっと困ったような顔をして、そうしてから静かに微笑んだ。

「俺も先輩も、お互いがお互いを、心配しあっていますね」

そう言うと、絢人の頬を、今度は左右両方一緒にむにむにとこね回すものだから、絢人はびっくりしてしまった。

「なにするんだ」

「なにって、先輩の顔で遊んでいるんです」

「や、やだ、おい、むぐ……」

「先輩、ヘンな顔」

端正に整う絢人のよじれた顔を見て、将孝はくくっと笑った。
それは楽しそうな笑顔にかわり、絢人も可笑しくなって、つられて口許を綻ばせる。

くすくすと、シャボン玉が弾けるような優しい声音を輪唱させて……。

ベッドの上、二人でひとしきり笑いあうと、将孝は絢人の額に、己の額をコツンとすりつけた。

「好きですよ、先輩」

「ん……」

「いつも本当に、すごく…可愛い」

そういう形容詞が照れくさくて、絢人はじわっと頬を染め、ちいさく唇を尖らせる。
その唇に、将孝はふれるだけのキスをした。
絢人はかすかに身じろぐが、抵抗はない。
そのまま淡く染まる頬をなで、手をすべらせて背を引き寄せると、しっかり抱きしめた。

「偏見や差別は……俺は気にしません」

穏やかな体温と同じ、穏やかな声。

「お前はそうかもしれないけど…、実際そうなった時に、スキャンダルになるのは」

「先輩は、俺がスキャンダルごときにヘコむと思いますか?」

絢人は口ごもり、首を横にふる。
将孝はさも当然とばかりに「でしょう?」と、にっこり笑った。

「それより、俺は先輩のほうが気になって気になって……。
なので、先輩は俺を心配させないために、俺と一緒に暮らす必要が
これはもう義務として、同居をするべきだと思いますが」

「義務って……俺はお前を、そんなに心配させているか?」

仲谷にも、言われた気がする。
あいつに心配かけるな、と。

将孝はわざとらしくしかめ面を作ると、大仰に頷いた。

「心配だらけですよ。さっきも言いましたが、先輩は狙われやすいくせに
危機意識ゼロ。寿命が五万年くらい縮まる思いです」

「五……、どこの仙人だ」

「それくらい心配しているってことです。
なので、先輩が同居してくれたら、俺は安心ですし、先輩だって、安全ですよ?
同居なら、俺が先輩を、家でも会社でも、二十四時間年中無休フルサポート。
もちろんベッドでは万全のサービスを心掛けて、一日三回は」

「そ、そのサービスはいらない」

あわてて遮りながらも。
絢人は、当初より同居を身近に感じる自分に気づいて、くすぐったい心地になる。


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「藤井さんにも、目撃されたみたいですよ」

「え?」

「寮を覗いていたらしいです。…――先輩と一緒に帰った時に、偶然会ったことが
ありますよね。あの感じで、先輩の帰りを待ったり寮の玄関を見張ったり
していたそうです。で、そういう時に、色々見たって」

将孝は一旦言葉を切ると、軽く溜息をつく。

「覗き行為はしないように、釘はさしましたけどね。藤井さんも、もうしないと
約束してくれましたが」

「覗き…、釘をさすって…、何でそんなことをお前が……」

絢人は混乱しそうになった。
将孝は当然のように言った。

「そりゃあ、俺の先輩にちょっかいかけるヤツがいたら、潰す必要がありますから。
だから、昼メシの後、先輩と仲谷さんを待っていた時に、藤井さんに丁重にお話を
お聞きして」

「それって、脅したとか……」

話しを聞くだけではなく、脅迫まがいのことをしたのではないだろうかと、絢人は藤井が心配になる。
たまに将孝は、予想もしないような暴挙にでるから。

そんなことを考えれば、将孝が絢人の頬をぷにっとつねった。

「痛っ」

「藤井さんが心配だなんて、思っていないでしょうね」

「お、思って……ない」

何で分かったのだろうか。

将孝はもう一度溜息をつき、ふ…と表情を和らげた。

「まあ、さっきも言いましたが、俺、藤井さんの気持ちは、分からないでもないんで。
なので、お願いしたんです。先輩には手を出すなと、ね。
その時に、俺と先輩が、車でキスしていたのを見たと、聞いたんです」

「え?……あ」

いつかの夜に、将孝の車から見た人影を思い出す。
たしか将孝に同居を迫られ、車のなかで……。
あれは藤井だったのかと絢人は合点し、同時にいたたまれなくなる。

見られたり、聞かれたり―――。
単純に……恥ずかしいから。

絢人が下唇を噛めば、だけど、将孝は気にするふうもない。

「あえて見せたり聞かせたりしたいとは思いませんが、今回の場合は
それもアリかと俺は思いますよ」

「露出の趣味は……ないぞ」

ぼそっと呟く可憐な唇を、将孝は指の腹でなでた。

「なんでアリかというと、車でキスしている俺たちを見て
藤井さんは、先輩への気持ちに歯止めがかかったそうです。抑止効果ですね。
そう考えると露出も悪くないというか……。もっとも、先輩の色気にあてられて
ストーカー行為はやめられなかったみたいだから、それは困りますが」

などと勝手なことを言うと、将孝は絢人を覗きこんだ。

「結局のところ、先輩が原因ですけど」

「なんで」

「そりゃそうでしょう?あなたは人を惑わせたり、惚れさせたり
ヤバイ気分にさせたり、心配させたり」

「し、心配かけたのは悪かったけど、他は」

勝手な思い込みもいいところだ。

絢人が訂正を求めれば、将孝はまた絢人の頬をむにっとつねった。

「痛いっ」

「俺はいつもそういうモンに、ヤキモキさせられていますけどね」

言葉の後につづくのは、長い溜息。

「やっぱり先輩は、自分自身の魅力……
狙われやすい体質ってことを、分かっていませんね。
これじゃあ、どれだけうるさく言っても、危機意識を持たないはずですよ」

「お、男だぞ、俺は。そんなに狙われるか。お前より年上だし」

「関係ありませんよ。立派な成人男子で年上でも
すぐ人に騙されるし、つけこまれるし、色気たれながしだし」

ふと将孝は真顔になり、眼光鋭い素の表情で、絢人を見た。

「だから、一緒に暮らしませんか?」


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ピザは電話でオーダーした。
それが済むと、将孝はシーツに横たわる絢人に寄り添い、背後から再び抱きしめる。

よこしまな気持ちは取り除くように、どうにか努力した。

絢人はすこし警戒したが、性的なニュアンス抜きと分かると安心したように身を委ね、それは……甘い温もり。

「ニ十分くらいしたら、ピザを取りに行きますね」

「ん」

「ピザ食って寝て、起きるのは昼過ぎですかね」

「そうだな。休みだから、寝坊してもかまわないし」

「たっぷり寝て……、起きたらまず、目覚めのエッチして」

「……馬鹿」

「いやそこは重要ですから。それから……、明日は、先輩は何か予定ありますか?
もしかして、仲谷さんの見送りに行くとか」

昼間、仲谷が藤井に言っていたことを思いだし、将孝は絢人に聞く。
絢人はわずかに考え、肩越しに将孝をチラッと見た。

「約束はしていないけど……。予定もないし、行ってみるか」

「抜けていますよ、大事な予定。俺と一緒に過ごすという、重大な予定が」

将孝が大真面目に言うので、絢人はぷっと吹き出してしまった。

「お前も一緒に行くんだろう?俺はそのつもりで話しているんだけど」

「よかったです、もちろん俺の予定は先輩と一緒にいることですから
行くのはまったくOKです」

「なら、行くか」

言いながら、絢人はふと考え、もぞっと身体を反転させた。

「仲谷……俺とお前のことを、知っていた」

将孝は目を瞬かせ、感心したように言った。

「先輩が、話したんですか?」

「俺が話すわけないだろう。理由は、お前たちが寮に泊まった時……」

その先を、絢人は言い淀む。

―――俺は耳がいいんだ。

仲谷のその言葉を、将孝に伝えかねるからだが。

「なるほど、分かりました」

察したように将孝は「エッチの声でバレたんでしょう?」と言い当て、できれば理由をうやむやにしたかった絢人を、すくなからず羞恥させる。

仕方なく、絢人は頷いた。
将孝はといえば、機嫌良さそうに、絢人のパジャマ越しの背を、指で字を書くように悪戯っぽくなぞる。

「俺としては、せっかくなら俺自身で先輩と付き合っていると報告したかったですが、
俺たちのことを知ってもらえたのは、嬉しいですね」

「仲谷なら知られてもいいけど、きっかけが……」

最中の声を聞かれるなんて、色々記憶を消してしまいたい。

「いいじゃないですか。
それに俺、仲谷さんには、聞かれてもかまわないと、思っていましたから」

「お前はかまわないかもしれないけど」

「先輩はすごく可愛く鳴きますからね、それを聞かれちゃうのは、恥ずかしいかな?」

「……〜ッ、信じられない……」

真っ赤になって絢人が憤慨すれば、将孝はにっこり笑う。

「でも、本当のことでしょう?」

「離せ、くっつくな、もう帰る」

「俺だって先輩のイイ声を、わざわざ誰かに聞かせたいわけじゃありませんよ?
あの時は仲谷さんにちょっと嫉妬したんで、それでまあ、聞かれてもかまわないと思ったんです。先輩と俺が、どれだけ仲良しか、ってね」

「だからって……」

唇を尖らせつつ、絢人は文句が言えなくなる。
将孝に嫉妬させたことは、悪かったと思うから。

「だけど、お前だって仲谷と……楽しそうだったじゃないか」

などと見当違いなジェラシーを口にして、将孝を嬉しがらせる。
しばらく将孝は絢人の反応を楽しみ、「そういえば」と、思い出したように言った。


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