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Sweet Patio
C95ありがとうございました♡

書庫卑劣 Strawberry

卑劣で甘く優しくて番外中編
大学時代の絢人と将孝です


卑劣で甘く優しくて本編一話目は
http://blogs.yahoo.co.jp/kuma20kuma/64672608.html?type=folderlist
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はにかむように、目許がうすく染まっていた。
将孝は目眩がしそうになる。
他の人には言えなくても、自分には言ってくれるという彼に、もはやノックアウト同然だ。

「水くさいですよ、そんなこと。俺には、本当に俺には、どんな遠慮もしないでください」

列に並ぶ将孝は、雲の上を歩く心地であった。
ガラスケースに陳列するジェラートは色とりどり種類があり、そんなこともハッピーになる。

「どれを買いますか?なんなら全種類買いましょうか?せっかくだから食べくらべてみるのも……」

彼が欲しいというのなら、この国も、この世界も、宇宙の果てまでも、全部買い占めたい。
本気で将孝は、ジェラートすべてを買い占める気になるが、横に立つ絢人はわずかに目を見開き、首を振った。

「すこし食べたいだけだから、全部は……」

苦笑すると、カラフルなガラスケースへ目をやり、それから将孝を見る。

「イチゴの、かな、お前もそれでいい?」

拒否などしようもなかった。
ちょうどオーダーの番になり、将孝が金を出そうとするのを制して、絢人はイチゴのジェラートをひとつ注文すると、手早く会計を済ませる。

ジェラートは期間限定の手作りイチゴミルクというものであった。
紙カップに桜色の氷菓が盛られ、摘みたてと思しきイチゴがふたつ、脇に入っている。

近くに丸太の椅子があったので、肩を並べて腰かけた。
将孝には狭い木の椅子だが、絢人はすっぽり収まり、優雅に足を組んでいる。
彼は角度をかえてカップを眺めると、楽しそうに言った。

「イチゴづくしだ」

「季節限定らしいですね、イチゴ狩りの時期だけの」

「先食べる?」

「とんでもない、先輩から食べてください。余ったぶんを俺はいただきますから……」

簡易スプーンは一本しかなかった。
透明なプラスティックのそれでジェラートをすくうと、絢人は静かに口へ含む。

木苺を思わせるちいさな唇が、可愛く結ばれた。
思わず将孝が見惚れれば、絢人は思案するような顔をしてから、コクンと喉を嚥下させた。

「……冷たい」

「そりゃあ……」

「あっさりしているな、イチゴと牛乳を、そのまま冷やした感じだ」

さらにふたくちほど口へ含むと、絢人はカップを差し出した。

「はい」

「もういいんですか?」

「うん、味見したかっただけだから」

ポケットへ手をつっこむと、満足するようにうすく微笑む。
怜悧を滲ませる眸が長い睫毛にけぶり、面積の広い虹彩が淡く揺れていた。
その様子にも釘付けになれば、何か気づくように、彼は腰を上げた。

「スプーン、新しいのもらってきてやる」

「い、いいです、これで、ぜんぜん大丈夫です」

慌てて引きとめると、絢人は「そうか?」と呟き、腰を下ろして再び足を組む。

間接キス―――という言葉が、将孝の脳裏をかすめた。
何を馬鹿なことを、と己を戒めるが、頬がしまりなくゆるんで垂れ下がりそうになる。

冷たい菓子は淡雪のようで、だけど、味などまったくわからなかった。
天にも昇る心地で何度もスプーンを口へ運べば、一心不乱にジェラートを貪る将孝を、絢人は愉快そうに見た。

「お前って、何でも旨そうに食べるよな」

「それは……」

「見ていて、楽しい」

何の気なしのその言葉に、将孝は体温が二、三度上昇するのではないかと思った。

「お、俺も、とても、楽しいです。イチゴは旨いし、花もたくさん咲いているし、これも……」

カップの中身はほとんど空になっていた。
イチゴがふたつ粒、残るのみである。

「これ……」

果実をひとつ、将孝は指で摘んだ。

「イチゴは、よかったら先輩が食べてください」

手渡そうとすれば、絢人は目を瞬かせ、そうしてから、手をポケットへ入れるまま、ゆっくり屈んで顔を近づける。

パクッと、朱みを帯びるちいさな唇が、イチゴを咥えた。
上体を起こすと、絢人はツンと顎を上げ、悪戯っぽい顔をした。

「あと一個は、お前が食べろよ?」

清麗で、高慢で、ふるいつきたくなるようなあでやかさであった。
将孝は卒倒しそうになる自分を、自覚せずにいられない。

カップに残るのは、紅く瑞々しく、弾けそうなほど新鮮なひと粒のイチゴ。

まるで絢人の唇のようだ―――と、将孝は思った。

そっと摘んで口へ触れれば、つま先から頭のてっぺんまで、甘美な痺れが貫いた。
目の前には二つ年上の綺麗な人がイチゴのような唇を綻ばせ、これが夢か現か、それすら分からなくなりそうだ。

この人の唇にふれることはできなくても。
絢人に見つめられて食べるイチゴは、心も身体も潤いで満たされるような、幸せの味がした。
 

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最後までお目にしていただき
(*^^)/。・:*:・°★,。・:*:・°☆ありがとうございました
お目にしてくださいますみなさまに
すこしでも甘いBLをお届けできていますことを







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「俺の言うこと、何でも聞く後輩だもんな」

端正な顔も大真面目に、絢人は言うが。

途端、仲谷が吹き出した。
将孝も、相違ないと思いつつ、面と向かって言われると、ひどくくすぐったい。
うっかりヘンな誤解をしてしまいそうで、その点、絢人を恨めしく思うくらいだが、とはいえ、彼の自分への認識は、とても満足いくものであった。

他の誰かに同じことを言われたら、即刻訂正するだろう。
だけど、絢人にそう思われることは、喜ばしく、誇らしい。
手軽な使い走りと思われているにかわりなくとも、安心してもらっていると、感じられるからだ。
正直、額づいて歓喜を表したいくらいだが。

絢人は憤慨する様子であった。
「何だよ」と、艶美な目を吊り上げ、けれど、その表情がどれだけ愛くるしいかなど、まるで分かっていない。

「苦労するなぁ、倉城も」

可笑しくてたまらないというように、仲谷が喉を鳴らした。

「いえ、特には……」

どうしても顔がニヤつけば、絢人から、仲谷と等分に肘打ちされる。
おどけるように、仲谷はその場から立ち去った。
将孝はといえば、もちろんそんな勿体ないことなどできずに、ゆるみそうになる頬を一生懸命たしなめる。

「まったく……」

憮然とするポーズで絢人は呟き、将孝を一瞥した。
口の端がかすかに綻び、本気で怒っているわけではなさそうだ。
すぐ絢人は土産物へ視線を移し、依然、周囲に侍る女性と談笑を始めるが。

「なあ」

ふと何かに気付く様子で、絢人が顔を上げた。

「あのアイス」

―――アイス?

絢人の視線を追えば、喫茶コーナーの片隅に、手作りジェラートと書かれる木の看板の置かれたジェラート屋があり、客が列をつくっている。

「ここの名物、みたいですね」

看板に踊る文字を将孝が読むと、どこかためらいがちに、絢人が言った。

「お前……食べる?」

「いや、今は……」

腹はイチゴで十分満たされている。
そう思うが、いつもと違う様子の絢人に、何となく、将孝は予感があった。

おそらく、絢人はあのジェラートを食べたいのだろう。
だけど、甘い物を買うことに抵抗があるか、周囲の目が気になり、素直に買うことができない。
というわけで、かわりに買って欲しい、というところだろうか。
そして、そんな使い走りを仰せつかるのも、将孝はまるで苦にならないのだ。

「先輩が食べたいなら、買ってきましょうか?」

言うと同時に、足を動かし出すが。

「食べたいことは、食べたいけど……」

煮え切らない調子で絢人は言うと、遠慮がちに―――ここへ来た時にちらりと見せた表情で、将孝を見る。

滅多にないことだが、そういう顔をする時の彼を、将孝はすこし知っていた。
我が儘で、強気で、傍若無人とも思える言動が多い絢人の、おそらくそれは、信用してくれているからこそ見せる無防備な表情―――。

「先輩」

甚だ自分勝手な解釈だと分かっていても、将孝は抑えられなかった。

「俺はあなたの言うことを、何でも聞く後輩でしょう?」

今さっきの絢人の言葉を、そっくりそのまま言ってみる。
絢人は目を見開くと、照れるような顔をした。

「そうだと……俺は思っているけど」

「なら、先輩のいいように、何でも言いつけてください」

「……」

逡巡するように絢人は睫毛を下げ、思いきるように深呼吸した。

「じゃあ、俺が買うから、半分食べて」

「半分?」

「さすがにお腹いっぱいだから全部は食べられないけど、買ってそれだともったいないから、誰かに食べて欲しくてさ。でも、他のヤツに半分食べてなんて、言いづらいから……」



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「甘い、ですね」

口へ広がる豊潤な味わいに、思わず将孝が感嘆すれば、絢人はふ……と口許を綻ばせた。

「美味しいな」

「はい」

果物より甘い絢人の笑顔に、目尻がこれ以上なく垂れさがるようだ。
一緒にいるからだろうか、水分と糖分を十分含むイチゴが尚更旨く、どんな馳走より贅沢に感じられる。

空腹を覚えたので、将孝は絢人と並んで、もりもり食べ始めた。
食べるペースの遅い絢人は楽しそうに眺め、粒の実る場所を探しては将孝に教えて、満足しているようである。

将孝は天に昇る心地であった。
二人きりではないが、まるでデートのようだからだ。
汗ばむような室温と、フレッシュなイチゴと、二つ年上の優美な人と……。

しばらくそうしてイチゴ狩りに没頭すると、大学のメンバーが、ちらほらビニールハウスの外へ移動していた。
そろそろ制限時間の三十分が経つようであった。
行こう、と絢人に促され、将孝は名残惜しさを覚えつつも、イチゴ狩を終了して外へ出る。

外では、大学のメンバーが、一面の菜の花畑で寛いでいた。
人気者の絢人はすぐ友人に囲まれ、わずかに将孝は疎外感を感じるが。

「これさ……」

軽く手招きして、絢人が将孝を呼んだ。

「菜の花、持ち帰っていいらしい」

イチゴはその場で食べるのみであるが、菜の花は摘み放題の持ち帰りOKらしかった。
周囲を見れば、大学のメンバーは二、三本摘んだり、なかには自前らしいビニール袋にたくさん詰め込んだりしている。

「おひたしや天麩羅にすると旨いですよね」

菜種色のちいさな花を眺めて将孝が言えば、絢人が驚くような顔をした。

「食べられるの?」

「ですよ。油も作れますし……」

「へ〜〜」

感心するような声を上げると、絢人は何本かを摘み、仕舞うものはないかとキョロキョロする。

「持ちましょうか?」

将孝が訊ねれば、彼は考えるような顔をし、ぬっと手を差し出した。

「ポケットに入れといて」

将孝の着る、絢人のベンチコートのポケットへ仕舞って欲しいということらしかった。
ポケットは底が深く、ハガキが余裕で入るくらいのおおきさだ。
快く引き受ければ、絢人はウキウキする様子でさらに菜の花を摘んでいく。
たちまちポケットはパンパンに膨らんだが、その重みが将孝は心地よかった。

菜の花畑ですごすと、一行はログハウスへ移動した。
その間も、絢人は将孝に何かと話かけ、将孝をひとりにすることはなかった。
三年生だけのイベントに急きょ参加させた責任を感じて……という殊勝な理由かどうかは分からないが、どんな理由であれ、将孝には嬉しいことである。

農園のなかの一番おおきなログハウスへ行くと、土産の購入とトイレ休憩をすることになった。
丸太を積み上げ、自然光をふんだんに取り入れる平屋造りのログハウスは、栃木の土産や地元の野菜や果物を販売しており、一角には喫茶もある広い造りだ。
そこでも、絢人は将孝の傍にいたが。

土産コーナーで限定品の菓子を物色していると、絢人の周りに女性が数人群がってきた。
将孝と絢人の間に女性が割り込み、何となく、距離が出来たことを将孝は残念に思うが、ポテトチップスやチョコレートの限定品にたわいない話が咲き、ふと傍らを見れば、仲谷が様子をにこにこ眺めている。

「仲谷さん」

将孝が声をかければ、仲谷は将孝を見て、ぷっと鼻を鳴らした。

「なんか、すごい格好になってるなぁ」

「ああ、まあ……、ですよね」

サイズのあわないベンチコートは窮屈で、その上、左右のポケットは膨れ上がり、菜の花が賑やかに覗いている。

「本当に、倉城は大変だね〜」

あまり真剣味もなく仲谷が言えば、人垣の向こうから絢人がひょいと顔を出した。

「何が大変なんだ」

「こっちの話」

絢人はむっとするように唇を尖らせると、将孝と仲谷の間に割って入ってくる。

「いいんだよ、こいつは俺の……」

そこで言葉をきると、将孝へ視線を向けた。




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「い、いや、まずいですって、本当に……」

目のやり場が、ヤバすぎる。

「何がまずいんだよ」

不思議そうに絢人は将孝を見上げるが、上目使いのその視線にもノックアウトさせられそうになり、将孝は目を白黒させた。

「あ、あのですね、その、先輩が……、風邪をひくとまずいかと……」

ほとんど不審者のように、しどろもどろだった。
わずかに絢人は訝る顔をするが、気にする様子もなく、にやっと笑った。

「イチゴ狩りのビニールハウスって、すごく暑んだよ、絶対荷物になるから、むしろ着て欲しいんだけど」

つまり、荷物持ちをしてくれってこと。

そう言って、悪戯っぽい顔をする絢人に、もはや将孝は抵抗できなかった。
降参よろしく、下賜されたベンチコートに恐る恐る袖を通す。

とはいえ、絢人のコートを借りるのは、小躍りしそうになるほど嬉しいことであった。

荷物持ちでも何でもいい。
このままこっそり持ち帰りたいくらいだ。

もちろんそんなことはできないし、口にも出せないが、ラッキーが倍増されるようである。

絢人にゆったりめのコートは、どこもかしこもちいさすぎたが、ほんのり残る温もりが、心を優しくくすぐるようであった。

「お〜い、遅れるぞぉ」

すこし離れた場所で、仲谷が笑っていた。

「行こうぜ」

将孝に声をかけ、絢人が足早に歩きだす。
その後ろ姿を追って着いた先は、菜の花畑に囲まれるビニールハウスだ。

ビニールハウスは縦横五列に並び、そのすべてにイチゴが栽培されている。
なかへ入ると、たしかにむっとする暑さであった。
二十五メートルプールほどのスペースに、腰の高さくらいのイチゴ棚がずらりと列をなし、緑の葉の合間から大小さまざまなイチゴがこぼれんばかりに実っている。

その棚を泳ぐように、大学のメンバーがイチゴ狩りを始めていた。
絢人と仲谷はすぐその集団へ紛れ、やや躊躇ってから将孝もつづけば、わずか先を行く絢人が、くるりと戻ってきた。

「これが練乳で、これがヘタ入れ」

絢人の両手にはチューブ入りのコンデンスミルクと、紙コップが握られていた。
彼はそれを将孝へ押し付けると、棚のイチゴへ視線をやり、ほどよく紅い中ぶりのイチゴを、ひょいっと摘み取った。

「こうやって……イチゴはヘタのとこを軽く捻って取るんだって。それから、練乳はつけなくても十分甘いから、飽きたら使うといいらしい。あと、制限時間三十分だから、はやく食べよう」

そう言うと、イチゴをポンッと口へ入れ、モグッと頬を動かすのだが。
言動のすべてに魅入られ、将孝は手も足も口も、すべて動かなくなってしまった。 
朝食がまだなので、空腹ではあるが、手渡しの練乳も、紙コップも、イチゴ狩りの説明も、絢人が自分に世話を焼いてくれることが、心臓を爆発させそうなほど、嬉しくてたまらない。

イチゴ畑でイチゴを口にする姿も、ひどく愛らしかった。
可憐なイチゴのような弱々しさはないが、果物のように瑞々しく、麗しく、所作のひとつひとつが可愛らしい。

そんなことを思って将孝が硬直すれば、絢人はどこか焦れったそうに将孝を覗き込んだ。

「おい」

「は、はい」

「聞いてた?制限時間三十分なんだってば」

「で、ですよね、あ〜……はやく食わないと、ですね」

起きぬけのように目を瞬かせると、将孝は大慌てで棚の一番手前へ手をやり、絢人の言う通りにイチゴを捻る。
粒のおおきいそれは、文句なしに旨かった。



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「お〜い、絢人」

窓越しにも聞こえる大きな声の持ち主は、絢人と同級生の仲谷という男だ。
絢人と仲がよく、サークルのリーダーを務めている。
やや長身で、厳つい体格の仲谷は、車の助手席側へ駆け寄ってくると、ニッと笑った。

「はやかったじゃん」

「ああ、こいつが飛ばしたからな」

助手席のドアを開けながら、絢人が将孝へ視線を流す。
仲谷はたれ目気味の目を下げると、将孝に向かって軽く手を振った。

「いや〜、本当に何というか……、倉城には同情する」

「どういう意味だ」

絢人が仲谷を睨めば、仲谷はおどけるように両手を上げた。

「別に絢人がどうと言ってるわけじゃねぇよ?ただ、毎度毎度付き合わされて、今日なんか朝っぱらから呼び出されて、倉城も不憫だな〜と」

「俺に付き合うと不憫なのかよ」

車から降りた絢人は、片眉を吊り上げて凄むが。
その表情は、友人への気安さと親しみに溢れている。
一方の仲谷も、嫌味っぽいことを言いながらも、本気で絢人を咎めるわけではない。
そして、将孝も―――。
将孝もまた、絢人の使い走りにされることを、これっぽっちも不満と感じていないのだ。

絢人は我が儘だ。
けれど、それは人を不快にする類の我が儘ではない。
たしかに、人の都合を気にしないところはあるかもしれないが。
将孝にとって、それはとても愛嬌を感じるものであり、その裏表ない勝手気ままの性格が彼の魅力である―――と、思うからだ。

絢人から礼の言葉はないが、無論、不満はなかった。

「じゃあ、俺は帰りますね」

彼を無事送り届けたことに満足し、将孝は軽く声をかけた。
ずっと傍にいたい気持ちはあるが、今日は上級生だけのイベントだ。
ここは潔く帰ろう―――と、カーナビを自宅へセットするのだが。
絢人は振り返ると、不思議そうに見つめてきた。

「お前、用事でもあるの?」

「は?」

たった今、とても重大な用事が終わったところですが。
しごく真面目に思えば、彼はどこか遠慮がちな顔をした。

「すぐ帰らないと、いけないわけ?」

「そういうことはないですが……」

あまり見慣れない絢人の珍しい表情に、将孝はドキッとする。
彼はホッとするように肩を下げると、ほがらかに微笑んだ。

「なら、一緒に来いよ」

「え?」

一緒に―――……?

当然ながら、将孝に拒否する理由は、どこを探しても見当たらなかった。
たとえ用があっても、即刻キャンセルするだろう。

「あ、あの、では、一緒させていただきます」

朝のドライブができただけでもラッキーであった。
くわえてイベントの同行まで許され、将孝は喜びを噛みしめずにいられない。

車を降りれば、三月も下旬だが、風はひんやり冷たかった。
大急ぎで外へ出たため、着のみ着のまま、パーカーにジーンズ姿の将孝は肌寒さを覚えるが、そんなことも気にならない。
イチゴ狩りが行われるビニールハウスへ、絢人と仲谷に並んで歩きだせば……。

「これ」

歩みをゆるめ、絢人がベンチコートをおもむろに脱いだ。

「着ろよ、その格好だと、寒いだろ?」

コートを差し出され、将孝はしたたかに戸惑った。

「ええと、それだと先輩が寒くなって悪いですから……」

絢人はVネックのリブニットを着ていた。
首が深く開くせいで、陶器のような白い喉許や、なまめかしい鎖骨のくびれが、しっかり目に飛び込んでくる。
吸い寄せられるように、将孝は釘づけになるのだが。




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夜中更新するつもりが、朝になってしまいました〜・°・(ノД`)・°・



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