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Sweet Patio
C95ありがとうございました♡

書庫卑劣 one day

卑劣で甘く優しくて番外編
絢人と将孝の、恋人になって1ヵ月目くらいのお話です

お話一話目は
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卑劣で甘く優しくて本編一話目は
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と思うが。
将孝は気にするふうもなく、絢人に笑顔を必要以上に寄越してくる始末。

その様子を見て、草壁が絢人を、面白くなさそうに睨んだ。
不躾につきささる視線を感じ、絢人は嘆息する。
将孝は楕円テーブルの空いた席に腰を下ろすと、ようやく周囲を見た。

「通常業務とは別に、みなさんお疲れさまです」

部署の正式発足は来春だが、それにあわせ、週の三日はここでミーティングをすることになっている。新規部署なので、資料作成や雑務が多く、それに加えて取引先のリサーチや挨拶回りも結構大変だ。

「今年一杯でだいだいの準備を終わらせ、来年一月には新フロアに入居、そこからは通常業務として仕事を開始し、三月には正式部署として総合企画室発足となります。いろいろ忙しいですが、みなさんの力添えよろしくお願いします」

そう言う将孝にヘンな驕りやへりくだりはなく、あるのは自然と滲み出す経営者としての風格。

絢人の二歳年下の彼は、部署の一番最年少だが、ポジションは一番高い。
倉城グループ創業者の直孫だからだが、とはいえ、その肩書きを誇示することはい。
生来の穏やかさと人当りの良さがあるため、目上の人間の上に立っても嫌味がない。
部署全員が彼より年上かつキャリアもあるが、将孝をボスと仰ぐのに、反発はなかった。

「ええ、頑張って部署を盛り立てていきましょう」

と、元人事部長で今は常務取締役の松崎という男が言った。
追従するように、部署の一同がうんうんと頷く。
年若き未来の幹部を暖かく見守る……そんな表情に溢れている。

絢人は何かくすぐったいような、誇らしいような気分になった。
以前は、後輩に傅くことに抵抗があったが、今は惚れた男の堂々とした様子が心地良い。

俺も将孝に負けないように頑張らないとな──。

そんな殊勝なことも思えてくる。
草壁をはじめ、部署メンバーが自分を快く思っていないのは分かるが、ならばやはり仕事で実績を出して認めさせよう。
そんな奮起をすれば、「それで、さっそくですが」と、将孝が全員を見た。

「今夜、丸の内倶楽部の会合に出席するので、準備をして欲しいのですが」

そこで言葉を切ると、将孝は絢人と松崎を交互に見た。

「松崎さんと先輩に、同行を頼みます」

丸の内倶楽部とは、倉城銀行を含む周辺企業で構成される親睦組織だ。
四半期に一・二度、食事会が開かれる。
部長級クラス以上の参加者が多いため、現役員と秘書を伴うのは、おかしなことではない。

「分かりました」

松崎が返事をし、絢人も頷くが。
瞬間、草壁が絢人を露骨に睨み付けた。
ほとんど凶悪的な視線を寄越すと、おもむろに挙手した

「倉城室長」

将孝が視線を向ければ、草壁は声も高らかに言った。

「俺も同行させてください」

「え?」

呆気にとられたように、その場がシーンと静まり返った。
絢人も戸惑うが、草壁に引く様子はない。

「俺は営業に自信があります。俺なら、単なる食事会でも、有益な仕事に繋げることができますから」

「ええと、今日の参加は三人と先方に連絡しているので」

「なら、汐見さんを外せばいいじゃないですか」

これには絢人もムッとした。
草壁は将孝に自己アピールしたいのだろうが、コケにされて黙っていられるほど、呑気な性質ではない。

「お言葉ですが、俺も、単なる食事会を有益な仕事に繋げるくらい、簡単です」

すかさず絢人が言い切れば、一瞬草壁は怯んだが、すぐ凄い形相で睨み付けてくる。
その場の空気が悪くなっていた。
マズイと思ったのか、将孝が口を開きかけたが、先に言葉を発したのは最年長の松崎だった。

「まあまあ二人とも落ち着いて。仕事への熱意は分かるが、これはもともと汐見くんに割り振られた仕事だ。草壁くんは次回にしてはどうだろうか」

「しかし」

「それに今日の会合は、先日法人部が新規獲得した客先が来ることになっている。それもあるから、汐見くんが適役だと思うよ。たしか邦新建設の」

その社名を聞いた途端、将孝の顔つきが変わった。

「やはり今日は先輩でなく草壁さん……、いや、出席は二人にして、俺と松崎さんだけで行きましょう」

は──?




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「汐見さんの仕事は、気楽でいいですね」

揶揄含みに言ったのは、隣に座る男だ。
草壁尚之(くさかべなおゆき)という。
絢人と同い年で、支店営業では全国トップの敏腕営業マン。

短く刈り込まれた黒髪とがっちりした体躯を持ち、やや大きめの猫目と思春期の名残のあばたが特徴的な、体育会系の男だ。

大学時代、将孝も体育会系の活動をしていたが、将孝が秋田犬なら草壁は土佐犬という感じだろうか。

しかし、その顔に犬の純朴さはない。
営業トップの自信と、コネもどきで肩を並べる同僚への、上から目線。

「俺もそっちの仕事が良かったなぁ。スケジュール管理なんて、スマホひとつで適当にできますもんね」

わざとらしく大声で言い、おどけたように鼻を鳴らす

「小学生でもできる楽な仕事で、本当うらやましい。持つべきものはコネか〜」

絢人の仕事を、コネで得た、子供でもできるお気楽な仕事と、馬鹿にするようだった。絢人は不快を覚えたが、顔には出さずに口を開いた。

「運も実力のうち。コネも似たようなものかもしれませんね」

「は? まさか君は、この部署に抜擢されたのが、自分の実力と思ってるんですか?」

「実力というのが何を指すかによりますが。俺の人事異動の理由が運やコネだとして、それが草壁さんに何か影響しましたか?」

「影響はありませんよ、しかし」

「それに、秘書業務に関していえば、俺のミスは、そくボスのミスになりますから、気楽とは無縁です。まあ、どんな仕事も仕事である以上、緊張なしにはできませんので、あなたのように、業務中に人の仕事を優雅に観察できる余裕こそ、うらやましいですね」

もちろん嫌味である。

絢人は表情をかえずに言い切ると、草壁を冷やかに見る。
白皙の美貌がす……と冴え、それだけで周囲の温度が二・三度下がっていく。

仕事に優劣はないと、絢人は思っている。
たしかに法人部の仕事と秘書仕事は畑違いだ。
将孝の公私混同には文句のひとつも言いたいが。
組織人として与えられた仕事を、何かの物差しで計る気持ちはまったくない。

一瞬、草壁は気圧されたように息を飲んだ。
すぐ表情を改めると、猫目を眇めて顔を険しくする。
馬鹿にした相手に逆手を取られ、悔しいようだ。
体育会系の自信家のせいか、些細なことで熱くなる性質らしい。
唇をへの字に曲げると、身を乗り出して何か言いかけるが。

「失礼します」

滑舌の良いバリトンとともに、フロアの扉が開いた。
隙間から顔を覗かせたのは、この部署のボス。
将孝はフロアに入ってくると、すぐ絢人を見つけて満面の笑みを浮かべ──。

にこっと当然のように笑顔を寄越す将孝に、絢人は力が抜けそうになった。
彼の笑顔は嫌いではない。
それどころか、笑顔も真顔もどれも好きだ。
それに、会社でも家でも、将孝の場所を選ばない親密さは今に始まったことでなく、咎めても効果がないことくらい、分かっている。

だが、今はコネを気にする同僚がすぐ隣に座っているので、

タイミングが非常に悪い──。


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ガラス越しに広がる緑が、爽やかだった。
一〇月の空は澄み渡り、皇居の杜を彩るのは穏やかな陽射し。
倉城銀行本店一六階──午後四時。

絢人はデスクを整理すると、椅子から立ち上がった。
上司の細野に「プレルームへ行ってきます」と声をかけて歩きだす。

倉城銀行法人部企業一課、それが絢人の、現在の所属部署だ。
企業法人の口座管理や新規開拓、それら法人向け融資や資産運用の提案を行っているが。

そのまま向かったのは、一つ上の階の、個室に仕切られた役員室が並ぶ役員室フロア。
その一室の扉にはアクリルプレートが貼られ、記載されているのは「総合企画室プレルーム」

ここは、将孝を室長とする新設部署の準備用仮設部署だ。
その部署に、絢人は室長専属秘書として引き抜かれていた。
将孝の公私混同にしか思えない人事だ。
とはいえ、一介の行員として、正式な内示を拒むほど幼稚ではない。

将孝と同じ部署というのも、正直、嫌ではない。
仕事は仕事として割り切るだけの分別はあるから、それがどんな業務でもやりこなす自信はある。
厄介が、ないわけではないが。

ドアノブに手をかけると、絢人は無言でドアを開けた。
プレルームは白い壁が清潔な、広い部屋だ。
中央には壁と同じ色の楕円のテーブルが置かれ、内示をもらった行員が七名。

総合企画室の主な業務は、倉城銀行のキャンペーンや四半期ごとの事業方針を、当該部署と連絡を取りつつ社外の、特に大手取引先や省庁にコマースすること。
そして、近い将来、経営陣にくわわるであろう将孝を、社内外に広くアピールする目的を兼ねている。

なので、部署立ち上げに選ばれたメンバーはいずれおとらぬ精鋭だ。
元人事部長で現役員の重役から支店営業では全国トップの猛者まで、倉城銀行を担うそうそうたる顔ぶれが揃っている。

だけど、その中において、絢人の立場は少々微妙なものだった。
無論、絢人も法人部企業一課での成績は悪くない。
否、群を抜いているといっていいだろう。
自分の仕事に妥協はしないので、成績が良く顧客からの評判も良い。
未来の経営者のブレーンとして働くのに、問題はないが。

将孝と仲の良い大学時代の先輩。

この肩書きが、実力者揃いの集団においては、いささか厄介だった。
隠すつもりもないが、どう考えてもコネ人事としか映らないから──。

絢人がフロアに足を踏み入れると、そこにいた全員の視線がつきささった。
胡乱気に、冷やかに、いずれも好意的とはいいがたい。
すぐ視線はそれ、絢人の存在を、まるで最初からなかったかのようにふるまう。
仕事のできる面々だ。
自分への厳しさはもとより、他人への評価も辛辣極まりない。
どうせコネ人事、そういう侮蔑に満ちている。

絢人は内心溜息をついた。
しかし、そんな負の感情など知ったことではなかった。
もともと我侭で、傲岸不遜な性格だ
煩わしさは感じても、子供じみた嫌がらせに、微塵も動じるつもりはない。

絢人はしっかりした足取りでテーブルまで行くと、キャスターつきの椅子におもむろに腰かけた。将孝は不在のようだった。むしろその方が都合良い。

同僚として認めないなら、認めさせるまでだ。
仕事で実績をつくればいい。

そう思い、専属秘書としての役割──絢人のここでの仕事はもっぱら将孝のスケジュール管理──を廉直にこなそうとした時。


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だから絢人は、将孝の悪戯な手を引きはがそうとするが。

「先輩……」

それは甘くセクシーな音。
背がゾクゾクするような呼び声に、プライドも矜持も脆く崩れそうになる。

それでなくても情事の余韻に燻る身体が、再度火照り始めていた。
トロリと綻びる絢人に、将孝は微熱交じりに囁いた。

「もう一度、先輩が欲しいな」 

「さっきまで、あれだけしたのに……」

咎める声は、だけど、淫靡に掠れている。
愛しい男だから、つっぱねることができなくて。
主導権など関係なく、むしろ自分こそ、彼を欲しいと思ってしまうから……。

「……ベッドがいい」

それだけ言うと、絢人は将孝を拗ねたように見る。
いつもは凛と澄んだ目は、蜜を含むようにしっとり濡れていた。
将孝が硬直し、食い入るように凝視すると、尻から指を引き抜き、絢人の膝裏を抱え上げて……。

「ッ……」

横抱きにされていた。
いわゆるお姫さま抱っこをされ、さすがに絢人は焦ってしまった。

「ちょ……、なんで」

「すぐベッドに行きましょう」

「自分で歩ける」

「分かってます。でも、せっかく二人きりだから、イチャイチャしたいんです。仕事の時はできませんから」

「そうでない気もするけど……」

来春、将孝は新設部署の室長になる。
その人事に伴い、絢人は室長専属秘書になるよう内示をもらっていた。
倉城銀行経営者一族である将孝の、私情込みだ。
絢人は仕事とプライベートの区別はするが、将孝はそうでないところがあり、暗にそのことをチクンと言うが。

「いやいやいや、会社にいる時は、我慢のしっぱなしですよ? すれ違った時なんか、本当はキスとかしたいけど、ぐっと我慢してるんです」

「それは、当然だ」

「はい。だから、家にいる時は、会社の分もあわせてたくさん仲良くしましょう」
 
ね、先輩。

と、笑ってズンズン歩きだす将孝に、絢人は気恥ずかしさが込み上げ……何も言えなくなる。

寝室までの逆戻りは、数秒とかからなかった。
自分をシーツに横たえる男は、まるで犬がじゃれつくように性急で……。
それがくすぐったくて、甘酸っぱい気分になるから、絢人は彼を、自ら引き寄せる。
キスをせがめば、将孝が拒むことはなく、ふわりと押しつけられる弾力に肌が再燃し、濃厚な愛撫に身体を開かれて──。

夜半過ぎの寝室は、濡れた音と熱っぽい吐息に彩られ、いつ果てるとも知らずに甘く発酵していった。


※※※


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「先輩が戻ってこないから、迎えに来ちゃいました」

「迎えって、同じ家の中じゃないか」

「だからこそです。同じ家なのに別の場所にいるのがもったいなくて」

甘めのバリトンで囁くと、将孝はパジャマの上着だけ羽織った絢人を、うっとりした様子で眺める。

シャンパンゴールドのパジャマの裾からは、真珠色の脚が晒されていた。
わずかの間、将孝はそこに釘付けになると、ゴクリと唾を飲み下した。

「身体、大丈夫ですか?」

「……?」

言葉の意味を絢人が図りかねれば、将孝は絢人の腰をする……と撫でる。

「激しかったかもしれないので、心配なんです」

ここが……。

もう一度、パジャマの上着越しに絢人の尻を撫で、優しげに目を細める。

意味を理解して、絢人は頬をじわっと朱に染めた。

「いちいちそういうことを……」

みっともないくらい動揺していた。
なのに、将孝は絢人の動揺などかまわず、シャツの裾に手を忍ばせ、じかにふれるのは白桃のような尻。

「おい……」

大きな手の感触に、絢人は身体を強張らせる。
将孝は絢人の薄い肩を引き寄せると、まろみを揉みながらゆっくり言った。

「あなたは俺の大切な人ですからね。万が一怪我でもされたら大変だ」

「してない。だから、手、離せよ」

「ならたしかめさせて下さい。本当に大丈夫かどうか」

「そんな必要、あっ、どこに手を……」

するっ……と男のごつい手が尻の割れ目に入り込み、指がアナルをくすぐった。
そこはさっきまでさんざん愛された場所だ。
男の楔を穿たれ、幾度となく、気が遠くなるほど熱を叩き込まれて……。

とはいえ、そこは人目を憚る秘部。
受け入れるのに抵抗はなくても、やはり恥ずかしい。

「も、何考えて……」

「少し、熱を持ってるかな」

そこを二本の指で開いて、将孝が言った。
絢人は腰を捩って逃げようとするが、肩をがっしり抑え込まれて身動きままならない。
将孝は絢人の動きを封じると、指を穴に埋めながら腸壁をくいっと抉った。

「ッ……」

「濡れてますね、ココ。気持ち悪いでしょう?」

「悪くないから、あ、動かすな……」

「でも三回は出したから、このままだと溢れそうだ」

「なら抜けよ。あっ……ん」

ぐちゅ……と指が狭道をかきまぜた。
それだけで体内に淫らな感覚がよみがえり、絢人はうろたえる。

その感覚は、いやではなかった。
好きな男の感触だから……心に灯るのは甘だるい焔。 

しかし、セックスの時、乱されるのは自分ばかり。
相性のせいか、将孝が上手いのか、ベッドで、絢人は将孝に翻弄されっぱなしだ。
それに不満はないが、主導権を握られているようで気分は複雑。
なので、それ以外は毅然とありたいのだが……などと思うのは、プライドの高さと年上の矜持ゆえだが、こればかりは性格なので仕方ない。


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