読書==『敵国人抑留--戦時下の外国民間人』小山まゆみ著  を読みました。

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 戦時下に在日した敵国の民間人はどういう扱いを受けたのか、という話です。

 1941年12月8日、日本がアメリカなど連合国との戦争を開始した時、日本にはまだ、少なくないアメリカ人、イギリス人はじめ連合国の国籍を持つ人々がいました。開戦の可能性が切迫してくると、帰国した人々も多数いましたが、自分の意志で残留したり、あるいは出国するにも出国できない事情を抱えた人もいました。

 横浜や神戸などには、日本に来て2〜3代にわたって貿易などの営業を営み、日本に根付いて生活していた人がいました。多くは、日本人と通婚し、母親が日本人、妻も日本人、したがって、日本人の親戚も多い、という人もいました。国籍が、アメリカやイギリスなどにあるといっても、生活の基盤も交際範囲も日本にあり、「母国に帰国」というわけに行かない人もいたのです

 もう一つ、残留を選択した人々に、宣教師、修道士、修道女などキリスト教関係の人たちがいました。彼らのなかには、日本に骨を埋めることを神に誓ってきていた人がいたので、自分の意志として残留しました。

 開戦すると日本政府は、これらの人々を「防諜と保護」という名目で抑留します。最初は、青壮年の男性だけが対象でした。住んでいた都道府県別に抑留所をおき収容しました。面会や差し入れも一定認めましたので、妻子と会え、経済力に応じた品物の入手も可能でした。

 次の段階になると、抑留の範囲が広がり、女性や高齢者も対象になります。抑留所も整理され、数か所にまとめられました。

 次に問題になったのが、日本軍が占領したところにいた敵国人です。この人たちが日本に送られ抑留されるようになります。

 さて、開戦時にアメリカやイギリスにいた日本人も、当然いました。外交官やジャーナリスト、留学生や学者など、こうした人たちは、日本にしても、米英などにしても、当然敵国にいた人たちがお互いにいました。これは、相互主義の立場で、交戦相手同士だとしても、交換しようということになり、いわゆる交換船が運行され、相互に帰国が行われました。
 これは、帰国する敵国人を乗せた船を、中立国ポルトガルの植民地だったアフリカ西岸の今のモザンビークの港に送り、そこから自国人を引き取って帰ってくるというやり方でした。

 それでも、残留を選択した人々がいたのは、先に述べたような事情があるからです。

 戦争末期になると、日本国民自体が食料や生活物資の不足に襲われましたから、抑留者も待遇は悪化し過酷なものとなり、少なくない死者を出しました。これには、抑留所の職員自体が苦しんでいて、抑留者の食料などの横領、横流しなどが横行したことが、拍車をかけました。

 また、戦争末期になり、イタリア、ドイツが敗北すると、同盟国人だったイタリア人、ドイツ人が、今度は敵国人となるという奇妙な事態に至ります。もっとひどい話もあるのですが、ここでは省きます。

 こうした混乱のうちに、敵国人抑留政策は破綻し、終戦を迎えます。

 敵国人抑留政策は、戦時にはどこの国でも行われることで、アメリカやカナダの多数の日本移民が、収容所に送られたり、圧迫を受けました。アメリカは日本人への扱いの不当性を後に認めました。

 敵国人抑留をいま振り返り、知ることは、今日的に大きな意味をもっていると著者はいいます。こんにち、グローバル化が進み、外国で生活している人は、お互いに急増し、第二次世界大戦当時の比ではありません。もし、いま戦争が起こるようなことになったら、敵国人抑留という問題は、はるかに大きな厄災を巻き起こさずにはおかないからだというのです。
 「人道的な戦争などありえないように、人道的な抑留もありえない。平和に勝るものはない」という著者の言葉をひいて、本の紹介に代えます。

 

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