『みすゞと雅輔』(松本侑子・新潮社)を読みました。

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 大正末期から昭和初期にかけて、投稿詩人として多くの童謡を発表し、戦後全集が編まれて全貌が知られ再評価が進み、多くの人に愛誦されている金子みすゞ(1903-1930)の伝記小説です。
 この本の特徴は、実弟・上山雅輔の日記を読み解くことによって、みすゞの自死の事情から生涯の実像に、新たに迫っていることです。雅輔の日記は、これまで所在不明でしたが、2014年に発見されました。
 金子みすゞは、いうまでもなく「こだまでしょうか」「私と小鳥と鈴と」「大漁」「明るい方へ」などで知られる夭逝した詩人です。みすゞが活躍した童謡とは、大正デモクラシーの息吹の中から生まれ、リベラルな立場から子供の心を自由にうたうものでした。
 「みんなちがって みんないい」とか、大漁で浜が沸いているときに海の中では魚が弔いをするだろうとうたうのは、現代につうじる、個性の尊重と自然と人間の関係への深い洞察を示していると思います。
 みすゞと雅輔は数奇な糸でつながれた姉弟でした。一歳になる前に父に死なれた雅輔(本名・正佑)は、子供のなかった母・ミチの妹・フジと夫の上山松蔵夫妻の養子となりました。二人はイトコとして育ったのです。
 みすゞ(本名・テル)は実の姉であることを知っていましたが、幼くして養子に行った雅輔は知りませんでした。これが二人の運命をもつれさせることになります。
 二人とも家業が本屋でしたから、若くから読書しては文学などで親しく語り合い「同志的」な感情で結ばれた仲の良い「いとこ」でした。
 芸術的志向のつよい雅輔は家業を継ぐことを嫌い、養父・松蔵は仕方なく、みすゞと見込んだ店員・宮田敬一を結婚させて後継者にしようとします。憧れの従姉をとられたと思い込んで荒れる雅輔と、敬一、松蔵の関係はこじれていきます。雅輔は上京して文芸春秋社で古川緑波とともに映画雑誌の編集に進み、のちに古川が芸人になると、雅輔は脚本家などスタッフとして支えます。
 一方、みすゞの童謡投稿家としての活躍の舞台は、時代の暗転とともに狭まり、自由な童謡の人気も軍国化の中で下がっていきます。みすゞが師と仰いだ西条八十は歌謡曲に転身し、軍国歌謡に傾いていきます。
 雅輔とみすゞも、二人とも芸術・創造の分野に身を置いたこともあり関係はもつれていきました。
 みすゞの自死に責任を感じ深く傷ついた雅輔は、離縁した宮田敬一を責めますが、敬一もまた傷ついていることを知り、親の反対をおしきり、みすゞの死に顔に敬一が面会する労をとります。
 雅輔と敬一の年賀状の交換がその死まで続いたこと、数十年後敬一が再婚して築いた家族にみすゞの写真を見せ、昔妻だった人だが西条八十にも認められた立派な詩人だったのだと語ったという話には、なにかほっとさせられます。
 この本については、『しんぶん赤旗』日曜版4月23日号で知りました。著者の松本侑子氏は「赤毛のアン」の全訳でも知られ、氏が『しんぶん赤旗』2014年5月11日付に書いた、「アンの成長とともに、アンを育てることでマシューとマリラも大人として成熟していく」という趣旨の文章に魅せられ、作品の舞台のカナダのプリンス・エドワード・アイランドまで行ってきました。

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