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くまモンの色彩学

 
  九州新幹線全線開業キャンペーンのキャラクターとして、はじめてくまモンが紹介されたとき、私は、なんか地味ーなキャラクターだなと思いました。だって、色が黒と白、ワンポイントでほっぺに赤が使ってあるだけで、こりゃ目立たないゆるキャラになるんじゃないのかなー、と先行きを心配さえしたものです。
 それが、あれよあれよという間に、熊本はおろか全国区までに知名度がひろがり、皆に知られる有名な「ゆるキャラ」になってしまいました。
 私は、その途中で気付いたのですが、このくまモンの色使いは、ちゃーんと計算されたものだったのです。これほどまで、くまモンが世の中に広まり、あまつさえ昨年度(2011年度)のゆるキャラグランプリで1位になったのは、くまモン本人(?)の資質と努力の賜物(たまもの)ではありますが、その色使いも要因のひとつであったのです。
 
 ということで、今回は、くまモンの色の秘密にせまってみます。題して、「くまモンの色彩学」です。
 ま、「学」といえるほどたいしたものではありませんが。
 
 ここでいきなり問題です。
 「くまモンと同じように、黒と白を基調とした世界的に有名なキャラクターはなんでしょうか?」
  簡単な問題ですね。答えは、この記事の最後のほうで。
 まず、例として以前の記事で紹介した、「くまモントランプ」の化粧箱のイラストをみましょう。
はい、これです。
 
イメージ 1

 背景に熊本を代表する事物が描かれています。説明するまでもないのですが、あえていいますと、九州新幹線、熊本城、くまもとラーメン、阿蘇と温泉です。この背景は、色数が多いことに注目してください。細かく書きますと、色の彩度(あざやかさ)・明度(明るさ)は同じように統一されていますが、色相(色あい)はバラバラです。
 普通、このように色数が多いイラストでは、色がそれぞれ個性を主張して、派手ではありますが、全体としてまとまりにくく、まさしくバラバラなものになってしまいがちです。しかし、このイラストでは統一感があって、落ち着いています。なぜでしょうか?
 答え、書いちゃいますね。
  それは、主人公・くまモンの色が、黒と白だからです。
  黒と白の組み合わせ(配色)は、「他の色の暴走を調整する」という役割があるのです。

 では、「くまモン」が黒白でなかった、と仮定して上のイラスを修正する「実験」をしてみましょう。ここのくまモンは、濃い茶色にしてみました。本物の熊は、こんな色でもおかしくないですよね。しかし・・・・
 
イメージ 2

  どうです? なーんか、落ち着かないですよね。 黒白のときは、くまモンはピシャと決まっていたのに、茶色にするとダラーんとゆるんで見えます。
 (「ゆるキャラ」だから、ゆるくていいんじゃない?と突っ込まないでくださいね。)
それにともなって、背景の色が主張を始めて、バラバラで目ざわりに感じます。
 
 この実験でわかるように、黒と白は、(今回の場合は特に黒が)、他の色の暴走を抑え、全体を引き締める働きをしているのです。
 
 「他の色の暴走を調整する」という役割は、逆にいえば、どんな色との組み合わせでも、マッチングするということが言えます。黒はオールマイティなんですよね。
 ご存知のように、くまモンのキャラクターは、申請すれば無料でだれでも利用できます。いろんな商品のデザインにも利用できます。くまモン、上で書いたように、どんな色にも合いますので、くまモンのデザインをもってきて、従来のパッケージの上に付け加えるだけ、それだけで、お手軽でそれなりにカッコ良く作れちゃうのです。
 イラストだけではなく、生くまモン(?)もそうです。彼は、いろんなイベントに呼ばれていますが、この黒と白は、なまじ色を使うものより、よほど目立つのです。まさしく、主役をはれる配色ですね。
イメージ 3
くまモンがいると、他のキャラの色も映える。
 
 以上、さも自分で考えたように書きましたが、これらは、元ネタがあります。もう10年以上前に買った「配色イメージコレクション」(視覚デザイン研究所・編集室)という本に書いてあるんです。
イメージ 5
長いこと愛読している「配色イメージコレクション」
その割には活用していない。
 
 この本では、「黒と白を基調とした世界的に有名なキャラクター」を例にとって書いてあります。はい、最初の問題の答えを言っちゃいましょう。それは、ミッキーマウスです。
 本の中では、ズバリ「ミッキーマウスの配色計画」となっていました。
イメージ 6
「ミッキーマウスの配色計画」の見開きページ
ミッキーの仲間は、色相いが強い個性的なメンバーがいますが、ミッキー(黒と白)がいることで、安定感がうまれるのです。ミッキーとその仲間たちが、世界的に有名なキャラクターになった要因のひとつは、そんな配色の妙にあるのかもしれません。

 
 さて、再びくまモンです。くまモンをデザインされた、アートディレクタ 水野学さんは、熊日(熊本日々新聞)の紙上にて、「こんなに世の中にひろまるとは驚いている。そう言えば、世界中に広まっているミッキーマウスも黒と白ですね。」(私の記憶で書いているのでちょっと違っているかも)と語っています。さも後から考えついたようなことを話されていますが、これはどう見ても、最初から、「狙っていた」としか思えません。
 「くまモンを世界的観光振興キャラにするためには、商品のパッケージ、イベント、他のゆるキャラとの共演、そういったことを場面を想定して、『黒と白』を基調にデザインすべきだ!」
 そういった話が、熊本県庁の地下100階にある県上層部しか知らない秘密会議室「(秘)くまモン普及戦略会議(仮称)」でやりとりされていたことでしょう(100%想像)
 
 さて、さて、さて、この後は余談になります。
 上で書いたように、くまモンの色彩による戦略性はミッキーと同じです。一方、キャラクターの使用許可については、ディズニーが非常に厳しいのに対し、熊本県は実質フリーと、真逆です。このため、くまモンは様々な商品、メディアに登場し、まさしく爆発的に知名度、人気をあげました。
 しかし、うつろいやすいのは世の中の常。はやりすぎると、その分すたれてしまうのも早いかもしれません。今は良くてこの後の「くまモン人気」は、どうなるかわかりません。
 一気にゆるキャラのスターダムに昇りあがったくまモンの知名度を、県観光振興にどのように生かしていくのか、熊本県の次の「くまモン」戦略で、その真価が問われると思います。(と、新聞調でしめくくりました)イメージ 4
 
 追記8月11日:
 「(くまモンの黒と白は)どんな色との組み合わせでも、マッチングするということが言えます。」
と書いていましたが、良く考えてみたら、「合わない色」ありました。
 それは、同じ「黒と白」です。
 くまモンのオフィシャルホームページ「くまモンブログ」にて、JR九州のマスコットキャラクター「クロちゃん」とのツーショットの画像がありますが、彼も黒と白だけのキャラクターなので、お互い全然映えていません。
  まあ、しかし、黒と白だけのキャラクターはほとんどいないので、これは特別な場合といえます。これ以上心配しなくて良さそうです・・・ はっ、ミッキーマウスとの共演があるとすれば、どうなるのだ?
 
 追記:8月27日
 くまモンについては、これだけは書いておきたかった。
 九州大学で天文学を教えるY先生は、くまモンそっくり!!
 
 追記:9月30日
  面白い記事を見つけました。
山口浩さんの
です。私が上で「くまモン人気」への心配をかきましたが、山口さんは、「ゆるキャラ」全体に話を広げて、彼ら彼女らのサバイバルの道を書いています。
「ゆるキャラ」についてこれ以上語ったものは、他にありません。「ゆるキャラ」の将来について不安を感じている方(そんな人いるのか?)、必読です。
 
    追記:2013年5月2日
 新井 克弥さん(関東学院大学文学部 )のブログ「勝手に社会論」に、
「くまモンは、ゆるキャラではない!」という、眼から鱗の興味深い記事がありました。私の記事でも、くまモンの「戦略性」についてもちょこっと書きましたが、さらに掘り下げて記述されています。
 
 
おまけ画像:
イメージ 7
 「こんなくまモンは、いやだー」
某大学の立て看板から
 
 

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