RUTIO&PANDA

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ハルはアン大学に行ってしまった。今はいない。
英語で言えば、Haru has gone to Anne college.
高校生のクセして、何で大学にいってんだか。
ハルは私に『冬眠みたいなもんだよ』と笑って言っていた。
『桜の咲くころには帰る』って、あの私が好きになってしまったちょっとはにかんだ様な笑顔で言っていた。

まったく、仙台の桜はゴールデンウィークだぜ。
今はまだ3月。
先はまだまだ長いよねぇ。
私たちもとうとう受験生になっちまうぜ。

ハルと初めて会ったのは、高校一年生の時。
桜も散った5月のゴールデンウィークの終わった頃。
真っ青に晴れた朝。
ハルは転入生として先生に紹介されていた。
私は気にせず窓の外の青空を窓の額縁からぼんやり見ていた。
飛行機雲が教室の窓を切り裂くように見えた。
何で今頃転入生なんだか。
私は特に興味がなく、二本目の飛行機雲を眺めていた。
周りの子たちはキャーキャー騒いでいる。
私が2週間で友達になることを断念した子たち。
男どもは小声でゴチャゴチャ言っている。
私が3日で関わりを持つことを拒否したエロザルモンキーども。
高校生にもなって、転校生イベントでなぜこんなにステレオタイプの騒ぎ方ができるのかが不可解だ。

最初は、ホント、ハルに興味もなかったのにね。

その頃私は、昼食を一人で食べていた。
秘密の場所で。
ホントは屋上に上がって青空の下で食べたかったんだけど、
やはり屋上は出入り禁止だった。
だから、私は管理棟校舎の4階の女子トイレの窓からベランダに出て、i―podをスピーカーにつないで聞いていた。ここなら誰もいないし、先生からも見つからない。
ベランダの前はちょっとした川があるが、ドブ川に見えなくもない。
臭いは別にしないし、モウマンタイ。

6月になった頃だったと思う。
ハロウィンの≪EAGLE FLY FREE≫がスピーカーから流れていた。
私はまだこんな地べたを這っているのにね。
いきなり、後ろのほうから窓の開く音が聞こえた。
あぁ、とうとう先生に見つかったかと観念して後ろを向いたとき、
トイレの窓から出てきたのはハルだった。
『えっと、高田君だっけ?』
私は動揺を隠すように、努めて素っ気なく言った。
『あ、ゴメン、邪魔だった?ハロウィンが聞こえたから、つい。』
ハルはちょっと困ったような顔をして言う。
『いや、別にいいよ。』
ホントにどうでもよかったのだ。
まぁ、ハロウィンを知っているからいいか、とか思っていた。
私はおにぎりをほおばり空を見上げた。
『国東さんって、いっつも空を見てるよね。』
ハルはあのはにかんだ笑顔で私に言った。
今思うと、あの瞬間だったのかもしれない。
『アキでいいよ。国東って名字好きじゃないんだ。』
『じゃぁ、僕もハルでいいよ。高田って名字あまり好きじゃないんだ。』
二人の眼が合った。なんとなく、ほほ笑んでいた。

それから、なんとなく二人でベランダに椅子まで出して昼食を食べるのが私たちの日常になった。
案外、悪い気分ではなかった。
私がハロウィンの素晴らしさを延々演説をぶつと、
ハルはボブ・ディランの高潔さをこれまた延々演説した。
私が、ボブ・ディランを好きになったのはハルのせいだ。


冬が近づく11月。
さすがにベランダに出るにはハーフコートが必要になっていた。
ベランダには、机が増えていた。
『もう、ここで食べるのも限界かな。』
少しぬるくなったコーヒーを飲みながらつぶやいた。
『そうだね。』
ハルは同意をした。
ただ、さらに何かを言いたそうな顔をしていた。
少し困ったような。
でも、真面目な顔。
あぁ、告白でもされるのかな。と私は困っていた。
私たちは別に付き合っているわけではなかった。と思っていた。
そもそも、付き合うってのがどうにもピンと来ないのだ。
恋愛音痴の女子高生ですよ。
ハルも『自分もそうだ』言っていた。
ハルのことは、もちろん嫌いではない。
でも、周りの子たちみたいに付き合っただの別れただの修羅場だので盛り上がっているのがよくわからなかった。
それに対して、自分がどうしたいのかもわからない。
でも、胸がドキドキなっていた。
『なに?』
私の声は少し上ずっていたと思う。
ハルは私の眼をじっと見ながら、ちょっとはにかんだ笑顔で言った。
『僕、12月から、たぶん半年ぐらい、ここには来れないんだ。』
『私だって、雪の降るなかここでランチはできないよ。』
なんだよ、告白じゃないのかよ、と心の中で突っ込んでいる私がいた。
『いや、そういう意味でなく、あの、高校には来ないんだ。』
今、巷で流行っているドラマや映画ではこういう事を言う奴は病気で死ぬんだよな。
『どこ行くの?』
私はハルから目を逸らし、空を見上げた。
秋の雲は確かに遠い所にいる。
『ちょっとね、遠い所に行くんだ。来年の春には帰ってくるよ。桜も見たいし、僕、花見をしたことないからさ。その頃までには帰ってくる。』
ハルの視線が私の頬を貫いているのを感じた。
『いってらっしゃい。お土産よろしくね。』
私は、ハルに向き直り、精一杯の笑顔を見せた。
この瞬間に私は自覚したんだと思う。


12月になると、ホントにハルはいなくなった。
周りの噂を総合すると、ハルはアン大学に行ってしまったらしい。
っていうか、「何で高校生が大学なんぞに行ってるのか」とか
「アン大学のアンってどんな漢字なんだろう」とか、いろいろと不思議なことはあった。
それでも、確かに、ハルは5月中旬に帰ってきた。
花見には間に合わなかったけど。
また、二人で管理棟のベランダでランチを食べていた。
正直、その時には私は十分自覚していたが、なんせ極端なまでの恋愛音痴。
一体どうしたらいいのかわからず、とりあえず、研究として少女漫画を読み漁った。
でも、ハルも一緒になって読んでいるようでは、二人の関係が何かしらの変化を起こすことはなかった。
そして、去年の冬になるちょっと前に、またハルは行ってしまった。


だから、いま私は、待っている。
ハルの帰りを。
去年の夏のあの停滞を打破するために、この冬は漫画喫茶に毎週土日に通っていた。
もう研究は終わりだ。
実行の時期なのだ。
私の中でヘルメットをしたアジテーテターな私がハンドスピーカーで叫んでいる。
今年こそ満開の桜の下を二人で焼きトウモロコシを齧りながら歩きたい。


今はまだ3月。
春はまだ少し先だ。
ハルはまだ帰ってこない。

ハル、早く帰って来い。

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ところで、アン カレッジって何を勉強する大学なんだろ?

梯子

みんなには見えていない。

でも、私には見えている。

梯子は天に向かって延びている。

此処ではない何処かへ続く梯子に私には見える。

なぜ誰もこれに気がつかないのだろうか。


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山のあなたの空遠く、「幸」住むと人のいふ。

誰の言葉だか知らない。

でも、言っていることは好きなのだ。

ビルの間から天に向かっている梯子の先には

確かに幸があるような気がする。



何年か前、朝夕寒くなってきた秋が始まったころだったと思う。

土曜日の午前中は寝て過ごした私は、

午後からノソノソと起きてきて、朝食兼昼食をとる。

テレビをザッピングしながら

見るともなしにテレビを見る。

そんな時だった。

草原だと思う。

日本ではない何処か遠くの草原。

棒をふりふり手持無沙汰に振り回す少女。

日焼けで可愛い鼻とほっぺたの皮が少しむけていた。

幾重にも重ねた色とりどりの服を着ていた。

彼女は『いま何が望みなの?』という、心底どうでもいい質問に

はにかみながら

『学校に行って、勉強したい』

と答えていた。

あぁ、全ての人は、ただ手元にないものをただ欲しがるのだろうか。

私も含めて、そんな答えをいう子は私の周りには一人もいない。

私は彼女と立場を交代したかった。


梯子は天に向かって伸びている。

誰も気がつかない梯子。

その先には、私の持ち合わせていない、何かがあるような気がしてならない。


昔は、虹を渡りたかった。

小学1年生の頃、虹を見つけた私は、

自転車で虹のスタート地点を探しに出かけた。

ところが、どんなに自転車をこいでも、

虹には辿り着けなかった。

日が暮れるまで自転車をこいだのに。

無いものねだりは、今に始まったことではないようだ。


私は、梯子を探しに出かけた。

虹と同じだ。

どうせ辿り着けないと思っていた。

しかし、今度は見つけることができた。

町の交差点。

人通りはあまり多くはない。

その交差点のど真ん中にそれは確かにあった。

私は、嬉しさの余り、声を出して笑っていた。


梯子の下には、老人が立っていた。

なんという帽子なのかはわからない。

探偵物語で松田優作がかぶっていたような帽子。

三つ揃えの黒のスーツ。

丸目のサングラス。

彼は、笑っている私に向って言った。

『この梯子を登りたかったら、ハートを集めなさい。』

彼は番人なのだろう。

その一言が聞こえると、梯子が地面から5mぐらい消えていった。

老人とともに音もなく消えた。

梯子の下からジャンプしても届きそうもなかった。

しかし、梯子自体は、天に向かってまだ伸びている。

すべてが消えたわけではない。





2年がたった。

梯子はまだ私には見えている。

他の人には何も見えていない。

私は、まだ、ハートを集めている。


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今年は、カオルの種族の順番であった。

第3軌道上に船を乗せてすでに1億6500年が経過した。
カオルは制御室のモニターを眺めていた。
この一年で、安定させてもうこの制御室も封鎖ね。
だいぶ船も落ち着いた。
浮遊している小天体の数も大幅に減ってきた。
『もう、安定期だ』長老の言葉もおそらくホントであろう。

それにしても、これで学校に一年行けないのか。
カオルはソレが少し残念だった。
中学の3年の今年は修学旅行として、第5軌道まで行くはずだったからだ。
みんなと一緒に行きたかったな…。

カオル達がなぜ宇宙を旅して、この恒星系に来たのかは
今となっては、誰も知らない。
理由が出来たのは、今から50億年も前のことだった。
その長い年月のせいで、理由はもはや失われていたが、使命だけは残った。
多種多様の生命をただただ増やすこと。
それだけだった。

安定している恒星を探す為に、大量の船が宇宙に進出したらしい。
この恒星系に到着したのは、カオルの船を含めて、4隻。
一番外側の第7軌道、最大の第6軌道、ほぼカオルの船と同型の第5軌道。
そして、カオルたち第3軌道だ。
第3軌道が落ち着くまで、簡単な道のりではなかった。
比較的新しいこの恒星系は浮遊隕石を引き寄せやすい。
第7軌道は、恒星到着後、70年で隕石の破壊に失敗して爆散した。
第5軌道も、カオルたちの第3軌道を守るために、粉々になった。
星としての機能へ一番近づいていたのだが、それが仇となった。

だから、現在残っているのは、カオルたち第3軌道と
新第5軌道だけだった。
そして、1億6500万年が経過した。

毎年、種族ごとに担当を決めて、一年間一切外に出ることもなく制御室で仕事をしてきた。
カオルたちの種族が前回担当したのは200年前だった。
そのときカオルは、まだ生まれたばかりだったので、当然制御室での仕事には係わっていない。
しかし、制御室の仕事は誇りのある仕事である。そう教わっていたので、実際担当が決まったときは嬉しかった。ましてや、カオルは学校の成績が良かったこともあり、制御室でもそれなりに重要な仕事を任されていた。はじめは、天にも上る気持ちだった。周りの友達からの祝福を受けていた。今年でおそらく、制御室を閉めると予測されていたので、その栄誉も授かっていた。
まぁ、修学旅行にいけなかったのは残念だったが。

そして、特に異常もなく半年が経過した。

カオルは、まもなく皆は修学旅行か、と考えながらモニターを見ていた。
第5軌道を勝手にモニターに映し出していた。
いま、カオル達がいる船の直径11倍の大きさの船が見えていた。
『やっぱり、大きいなぁ』とため息を付いた瞬間、異変に気が付いた。
重水素が漏れている?
第5軌道上の船の極地から大量のおそらく重水素があふれ出している。
ソレは、船の自重による重力に引き寄せられつつ、
渦を巻くように船を包み込んでいた。
『大変です、第5軌道が!!』
叫んだが、もうすでに手遅れだった。

それから1ヵ月が経過した。

第5軌道上の船の機能が完全に止まったことが確認された。
原因は不明だった。爆散しなかっただけマシなのかもしれない。
もし爆散したとしたら、第3軌道にも被害が出ていただろう。
これで、生き残ったのはカオルのいる第3軌道だけになった。

さらに2ヵ月後。

太陽系外から、直径10km級の小天体が向かっていることが発見される。
今までであれば、第5軌道上の防衛網により、第3軌道に届くことはありえなかった。
しかし、第5軌道が死んだ今、すでに隙間を通ることが予測されるその小天体を止める術は残っていなかった。
第3軌道のこの船のつくりをすでに大地に変質させていて、もう軌道変更もきかない。
大人たちは、種族の差を越えその対策に追われていた。

そして、カオルは制御室からの退出を許可された。
この一年は完全にこの制御室から出れないはずだったのに。
つまり、打つ手がないということだった。

隕石衝突後の計算結果が出た。
全滅。
ただそれだけだった。
船を大地に変質させた時に大量に有機ナノマシンを大量に散布し、
今では微生物にまで成長したものもあるのだが、
それすら、全て死滅するということだった。
この軌道を惑星として成長させて、生物の繁栄を作るのが彼女達の役目だったのに。
それも、もう叶わない。
ソレが残念だった。
『もう少しだったのに…』
カオルは涙を止めることができなかった。


隕石が落ちる日。
カオルは同級生達と丘の上に上がり、
空から降ってくる、その大きな隕石を眺めていた。
この軌道もこれで死ぬことになるだろう。
天を裂き、巨大な隕石が落ちてくる。
それは、なぜかゆっくり動いているように見えた。
『やっぱり、みんなで第5軌道に行きたかったな。』
カオルはそれだけが心残りだった。
『さよなら、第5軌道。』
カオルは、隕石を瞬きもせずに見ていた。


その衝突から6000万年後。

予想は一つだけ外れた。
死滅すると思われた有機ナノマシンは生き残った。
そして、その星には別の世界がスタートしたことを

カオルたちは、知らない。

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次回予告!!

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次回予告!!

なんですけど、ロゴがいつもと違うのに気がついた?

次は、S&Pです。

ラブリーに宙を舞います。

次回は、『さよならジュピター 次の世代で会いましょう』

でお会いしましょう。

あははははは。

『S』ってだ〜れだ。

当てた人には、何かプレゼントだぜぃ。

あ、Pはパンダなんですけどね。

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