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愛し合った者同士が家庭をつくる。そういう家族モデルへの信頼が弱まったから、腕力で家族を支配するような現象が起きはじめたのでしょうか?
信田:いいえ。妻を殴る夫たちの弁明は、「愛しているから殴る」です。彼らの言い分は、「自分は君のために懸命に働いて疲れている。なぜ家庭にいるときくらいゆっくり寛がせてくれないんだ」「本当に僕を愛してくれるなら、ちゃんと笑顔で出迎えてくれるのが当然だろう」といったものです。 つまり、「僕はこんなに彼女を愛しているのに、なぜ言うことを聞かないんだ」というわけです。彼らの理屈からすれば、妻が間違っているわけです。
「家庭を持ったことで責任感が出てきた」という評価もされますね。 信田:確かに表から見れば「責任感が出てきた」とように見えます。でも、裏から見るとこの変化は「父権的、マッチョになった」ということです。 これまでの経験で言えば、男性には、「殴る男」と「殴らない男」の二種類しかいません。外見で両者は判断できません。会社では、やさしくて評判がよくても、家庭ではまったく違う態度をとっている。見事に使い分けている例がたくさんあります。 外では社会正義を訴えているような男性が、家では暴力を振るっている。カウンセリングには、そういう“表向きの顔はいい夫”から「僕の妻なんだから、言わなくてもわかるはずなのに、なぜわからない」という理由でことばや身体による暴力を受けた妻たちが多く来ているのです。
パートナーに対して「彼(彼女)は私のもの」という所有や支配の感覚に肯定感を抱き、うれしさを覚えるのも否定できません。 信田:そういう“甘い蜜の味”を否定しませんし、それはそれとしてある期間は存分に味わっていただきたいと思っています。 所有や支配の感覚が蜜の味でなくなるのは、「それは君の役割だろ」と自分の持っているフレームワークを強制したときです。 妻が子どもの世話をしていて、夫が「お茶が飲みたい」と言ったとして、「私も大変だから、あなたがいれてよ」と言ったときに「そうだね」と言えるかどうか。 特に出産し、妻が子ども優先になって、夫に構わなくなることに腹を立てることが多いようです。そう聞いても「そんなことはない」と思っている男性もいるでしょうが、「なんでこんな当たり前のことをわかってくれない」と怒鳴ったり、壁を殴ったりという例が本当に多いのです。子どもが生まれたら、家族は夫婦二者の意図を超えた関係になります。これまでの関係性を質的に変化させる必要があります。
※出典:日経ビジネスオンライン
信田さよ子(のぶた・さよこ) 1946年生まれ。臨床心理士。原宿カウンセリングセンター所長。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。駒木野病院、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室を経て1995年に原宿カウンセリングセンターを開設。各種の依存症やドメスティック・バイオレンス、子どもの虐待などに悩む本人や家族へのカウンセリングを行う。
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