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官庁や企業の不正行為、過誤に端を発する事故・不祥事が世間に知れるに至ったきっかけが
内部告発であったケースが幾つかある。事件の周辺の人々は前から事実を知っていたに違い
ないケースが殆どである。
事件の周辺にいた良心的な人々は、密かに心を痛めていたが、告発するだけの勇気がなかった
のだろう。これは自分がそのケースに当たった場合に、わが身が受けるであろう危険や不利益
を考えると、本当に告発するまでの勇気があったかどうか、自問自答してみれば分かる。
内部告発者保護法のような法制度が必要とされる所以である。
内部告発者保護法はアメリカ、オーストラリアなどで早く導入されているが、最近ではイギリス
で1998年に「公益開示法(Public-Interest Disclosure Act)」として導入されたので、
この法律の概要を述べておこう。
(参考:内部告発者の保護―イギリス1998年公益開示法―国立国会図書館 調査と情報、
第358号 平成13年4月17日)
1、開示の対象となる不正行為・過誤等
犯罪、法律上の義務の不履行、誤審、人の健康又は安全に対する危険、環境破壊、または上記の
いずれかに関する情報の隠匿
2、開示の相手先
組織の内部で告発に係わる事項を検討し、しかるべき措置を講じ、透明性を確保できるという考え
に基づき、内部告発の相手は、まず、内部ルートで、使用者など組織の責任者とする。
しかし、内部ルートの告発では告発者が不利益処分を受けるとか、もみ消しがなされる恐れがある
場合、または組織に内部告発の手続き(告発受理委員会やホットライン)がない場合は、外部への
告発が特別な要件のもとに保護されることになる。
ここでいう要件とは(1)私利私欲を図る目的でないこと。(2)使用者に開示すると不利益を
被るか、または証拠隠匿・損壊の恐れがあると開示者が合理的に信じていること。(3)使用者に
開示しても何らの対応も取られていないこと。
3、開示した者の保護
(1)この法律を排除する(守秘義務を課す)契約を無効化する。(2)開示によって不利益を
被らせない権利を明文で保障する。(3)雇用審判所への申立権を付与する。
情報公開法と内部告発者保護法は社会の透明性を高めるための制度の両輪であるが、日本に導入
する場合の問題点を列記しよう。
(1)雇用審判所、雇用権利法(解雇規制規定を含む)などの制度面の不備
(2)日本人に根強い「内部告発」への違和感。自民党は「密告奨励は日本社会に馴染まない」と
いう理由で1998年の公務員倫理法への内部告発者保護規定の盛り込みを頓挫させた。
(3)企業で予想される反発。11月末にお台場の日航ホテルで開催された「アシア太平洋地域に
おける反汚職会議」(アジア開銀・OECD主催)で、たまたま隣に座った製鉄メーカ・トップ企業
の法務部主幹者との雑談で、彼は「わが社には不正行為は存在しないし、内部告発は社内メールで
十分にその役割を果たしているから、そんな制度が必要なわけがない」と豪語していた。
(これは平成14年1月に執筆した記事です)
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