島根県立大1年平岡都さん(当時19歳)が広島県内の山中で無残なバラバラ遺体で見つかった殺人事件死体遺棄事件――。平岡さんのものとみられる黒いスニーカーのような厚底の靴が11月30日、発見され、新たな局面を迎えている。 靴の発見場所は、平岡さんの自宅女子寮から数百メートルの地点。アルバイト先からの帰宅路(約2キロ)と交わる測道の側溝の中だった。島根県警などによると、靴に落葉があまりかかっていなかったことなどから、平岡さんが行方不明になった10月26日頃でなく、最近になって靴が置かれた可能性が高いとみられている。「平岡さんが防犯カメラに最後に写っていた際に履いていた靴とよく似ている。ただ、靴下を履いていると、靴からのDNA採取は難しそうです。(県警関係者)事件発覚から1ヶ月を経過したが、捜査は難航している模様だ。行方不明になった当日の帰宅ルートすら確定されていない。連れ去りの現場も不明のままだ。有力な目撃証言を掘り起こせていないうえ、ショッピングセンターから約500メートルのコンビニ店など、周囲に設置された複数の監視カメラにも、平岡さんは映っていなかった。 「平岡さんがカメラに映っていたのは、アルバイト先のショッピングセンター付近の1ヶ所だけ。それがそうそう難航させているとの声もある」(捜査関係者) こうした「監視カメラ」は、最近の捜査になくてはならない存在になっているのだ。元警視庁巡査部長のジャーナリストの黒木昭雄氏が、バスサリ切り捨てる。 「昨今の刑事警察の捜査が、街中に溢れる監視カメラ抜きでは成り立たないことが、島根の事件を通してよく理解できます。監視カメラはたしかに犯人逮捕の有力な武器ですが、その反面、刑事の足腰を弱めていることは否めないのです」交番勤務の警察官らが、担当地域の過程や企業などを訪問することで、犯罪の予防、住民からの意見聴取を行う「巡回連絡」 ――これが軽視されるようになったことで、結果として監視カメラに依存し、捜査能力まで劣化した、というのは黒木氏の見方だ。黒木氏によると、「巡回連絡」は「職務質問」と並ぶ地域警察の二本柱。いわば「守り」と「攻め」だ。だが、検挙に直結することがある「職務質問」がより重視されることで、「巡回連絡」というもう1本の柱が崩れ始めていると言うわけだ。 「かつては巡回連絡によって地域のデータベースを構築していました。ところが、『検挙が最優先だ』と上から進軍ラッパを鳴らされる現場の警察官は職質に力を入れる一方で、巡回連絡を手抜きするようになる。そうなれば、巡回連絡で気づいたデータベースがどんどんやせ細り、身近な情報も入らなくなる」(黒木氏)
そうなれば「人間 N システム」とでもいうべき監視網が完成することになる。そもそも、公共空間を無差別に撮影する監視カメラ自体が、「プライバシーや肖像権の侵害に当たる」(田島氏)との指摘もあるだけに、ネットワーク化は大いに議論が必要だ。ともあれ、監視カメラの増殖が刑事警察に与える−を指摘するのは、前出の黒木氏だけではない。別の警察 OB も憂い顔でこう話す。 「取調べで黙秘されれば裁判で思わぬ苦境に立たされる。科学捜査に熱心なのは結構だが、取調べや聞き込みテクニックの教育・継承に失敗を繰り返してきたのが、昨今の警察組織なのです。捜査とは最後人間対人間の勝負。顔認識システムなどハイテク機器に依存体質が強まり、デカの基礎体力が落ちてしまうのではないかと不安です」 英会話講師のリンゼイ・アン・ホーカーさん(当時22歳)殺害事件で、死体遺棄・殺人容疑などで逮捕された。市橋達也容疑者(30)は、12月4日現在も黙秘のままだ。「最近では雑談にも応じなくなり、我慢比べの様相です。かつてなら、落としの神様と言われるベテランがいたものですが、今回はそういう存在が聞こえてこない」(別の捜査関係者) 監視カメラの大増殖でもたらされた捜査の「落とし穴」は、かなり深そうだ。
本誌・徳丸威一郎〈2009年12月20日サンデー毎日〉 |
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