黒木昭雄の「たった一人の捜査本部」

小原勝幸を容疑者とするこの事件は、言いようのない不正義な社会構造を見せつける事になった。遺作小説『神様でも間違う』完成。

連載 警察はなぜ堕落したのか

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4 バスジャック事件
 広島県警への批判の集中
p71-73


 

 しかしその一方で、警察の捜査方法にも批判が集まった。結果的に乗客九人が無事款出されたとはいえ、広島県警が容疑者の少年の要求に従い、奥屋パーキングエリアで四時間近く停車したあげくバスを通過させたり、説得中に少年の要求どおり「防弾チョッキ」の差し入れを許していたこと、解決に十五時間以上を要したことなどに、一部の識者から批判の声があがった。

 とくに危機管理の専門家が□をそろえて批判したのは「米国では、人質に負傷者が出ていることがわかった時点で容疑者を狙撃したはずだ。日本の警察の捜査手法は容疑者に甘すぎる」ということだった。

 しかし警察に要求されるのは、あくまでも犯行の拡大を未然に防ぎ、早期に人質を解放し、被疑者の身柄を確保することである。それを思えば「少年をなるべく刺激しない」という方針も捜査手法としてありうる選択だったと、私は判断している。

 広島県警幹部の脳裏にはおそらく、昭和四十五(一九七〇)年五月に犯人を射殺して批判された「『プリンス号』シージャック事件」の苦い記憶があったにちがいない(これについては後述する)。

 元内閣安全保障室長の佐々淳行(さっさあつゆき)氏のつぎのコメントを私も支持する。

 「日本の警察が批判されているなか、広島県警はバスが近づいてくる短い時間に、広島で止めることをよく決断した。(中略)シージャック事件で犯人を射殺して批判されたことがトラウマになっていたはずなのに、先に行かせなかった。評価したい。突入の際、(中略)犯人が子供に包丁を突きつけている状況で、疲れてくる時間を狙って閃光弾を使ったのは正解だ。あの状況では、最善の決断だったのではないか)

 専門家のあいだでは、広島県警の捜査手法に賛否両論が集中したのだが、私はさまざまな情報を収集した結果、今回の事件で最大の「汚点」を残したのは、広島県より先にバスが通過した山□県警のとった捜査手法だったと確信した。しかし、山口県警の判断ミスはほぼすべての報道機関が看過しており、今後も追及される可能性はきわめて低いだろう。


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