黒木昭雄の「たった一人の捜査本部」

小原勝幸を容疑者とするこの事件は、言いようのない不正義な社会構造を見せつける事になった。遺作小説『神様でも間違う』完成。

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5 名古屋五千万円恐喝事件
 事件への対応を遅らせた真相は何か

 自称「暴力団組長の息子」の介入

  p91-93


 わが子を守るだけのために必死の思いで支払った(脅し取られた)金は、かれこれ五千万円を超えた。母親は持ち金をすべて使い果たしたときには「息子を道連れに死ぬことさえも考えた」と苦悩をあらわにした。

 そんな追いつめられた親子に「転機」が訪れたのは、皮肉にもA少年らの暴行によって二十日間の入院生活を余儀なくされた病院においてだった。
当初母親は、病院の医師に対してさえも心を開くことはなかった。
むしろ息子が受けた暴行のひどさに事件性を察知した医師に対して「そっとしておいてください、私が息子を守ります」「絶対に警察には連絡しないでください」と頼み込むほどだった。

 この様子を見かねて相談に乗り、被害少年の心を開き、真実を語ることを決意させたのは、当時、同じ病院の大部屋に入院していた、傷害事件を起こして少年刑務所に入ったことがあるという、ある暴力団組長の息子と白称するK氏(二十二歳)だったのである。

K氏は被害少年の顔が大きく腫れあがっているのを見て、かつあげ(恐喝)で袋叩きにされたな、と直感した。そこでK氏は、別の病室に入院中の、名古屋市内の大工L氏(二十九歳)、豊明市内で自営業を営むM氏言十一歳)に相談し、披害少年の話を繰り返し聞くようになった。

 被害少年が入院してから五日後のことだった。二人の同級生が病院に現れ、被害少年を病院の屋上に連れだした。
病室のベッドから姿を消した被害少年に気づいたK氏らは、屋上で現金を要求する同級生を怒鳴りつけ、被害の拡大を防止したのである。

その後、K氏らはみずからの体験談を交え、被害少年に「闘うことの必要性」を半月以上にわたって説いた。
その結果、被害少年は心の扉をあけ、真実を語る決意をしたのである。

 K氏らはまず、披害の状況を確認することにした。
被害少年が被害総額を「最低五千万円くらい」と答えたとき、とてもではないが信じられる金額ではなかったという。
作成されたリストには不良グループから脅し取られた合計金額はなんと五千二百七万円と記入されていたのである。

 K氏らは、この事件の解決のために、母親にも勇気を出して闘うことの必要性を説いた。
そして、とうとうこの事件のすべてをA少年の両親に話すことになったのである。

 三月五日、被害少年と母親はK氏らとともにはじめてA少年の自宅を訪れ、十ヵ月におよぶ恐喝事件のすべてを語り、十八回にわたってA少年によって恐喝された総額二千二百六十八万円の返還を求めた。

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