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3 平等権の侵害の有無について
(1)債権者は、警察庁が警察庁記者クラブに所属する記者にのみ本件定例記者会見への出席と取材を認め、他方、債権者に対しては、記者クラブに所属していないことを理由に本件定例記者会見への出席を認めていないと主張し、かかる差別的取扱いは不合理であることが明らかであり、憲法14条1項の平等権を侵害すると主張する。
(2)憲法14条1項は、各人に対して絶対的な平等を保障したものではなく、合理的理由なくして差別することを禁止する趣旨であって、それぞれの事実上の差異に相応して取扱いを区別することは、その区別が合理性を有する限り、同規定に違反するものではない。
そして、本件定例記者会見は、国家公安委員会の開催状況等を迅速かつ正確に国民に伝えるために行われているものであるところ、既に述べたとおり、取材の自由によっても、取材を受ける側に、取材に応諾する法的義務が課されるものではなく、また、記者会見に出席して取材したいという記者の要望に応諾する法的義務が課されるものでもない。 さらに、本件定例記者会見は警察庁庁舎内の会議室で開催されているところ、既に述べたとおり、取材の自由によっても、警察庁庁舎の管理権者に対し、警察関係者以外の一般人が取材をするために警察庁庁舎内の会議室等に出入りすることを受忍する法的義務が課されるものでもない。
以上によれば、本件定例記者会見への出席を認めるか否か、その前提として、警察庁庁舎内の会議室等への出入りを認めるか否かは、本件定例記者会見を主催する国家公安委員会と警察庁庁舎の管理権者である警察庁長官の裁量にゆだねられていると解すべきであって、債権者の本件定例記者会見への出席を認めない取扱いが憲法14条1項に違反する不合理な差別に当たるか否かを判断するに当たっては、本件記者会見の目的との関連で著しく不合理なもので、合理的な裁量判断の限界を超えているか否かという観点から判断するのが相当である。
(3)前記認定事実1(2)のとおり、本件定例記者会見は、警察庁庁舎内で開催されるものであるところ、本件定例記者会見への出席者を限定せず、誰でも出席できるものとすると、警察関係者に対する危害、捜査情報や個人情報の漏洩などの庁舎管理上の問題が生じる可能性があることは明らかであるから、こうした庁舎管理上の問題に配慮しつつ、国家公安委員会の開催状況等を迅速かつ正確に国民に伝えるという目的を達するためには、本件定例記者会見の出席者に一定の制限を加える必要があると一応認められる。
そして、疎明資料(乙27ないし31)及び審尋の全趣旨によれば、警察庁は、本件定例記者会見について、原則として、社団法人日本新聞協会、社団法人日本民間放送連盟又は社団法人日本雑誌協会に加盟する社に継統的に雇用される記者の出席を認める方針であることがー応認められるところ(債権者は、警察庁記者クラブに所属する記者のみに本件定例記者会見への出席が認められていると主張するが、上記疎明資料によれば、警察庁記者クラブに所属していない新聞社の記者が本件定例記者会見に出席して取材していることが一応認められる。)、後記各疎明資料によれば、上記各団体は、報道倫理の向上を図り、公益を実現することなどをその目的とすること(乙20ないし22)、また、人命に関わる誘拐事件等について、警察庁との間の協議に基づき、報道協定を運用してきた実績のあること(乙23ないし25)が一応認められ、これらの点を踏まえると、本件定例記者会見への出席者を、原則として、上記各団体に加盟する社に継続的に雇用される記者に限定する方針であること、さらに、この方針に従って、債権者の本件定例記者会見ヘの出席を認めないことが、本件定例記者会見の目的との関連で著しく不合理なもので、合理的な裁量判断の限界を超えているとまで認めることはできない。
(4)以上に対し、債権者は、①内閣総理大臣官邸報道室の平成22年3月24日付け「『鳩山内閣総理大臣記者会見への参加について』のお知らせ」(甲8)によれば、債権者は内閣総理大臣の記者会見に出席して取材することができるのであるから、債権者が本件定例記者会見に出席して取材することができるのは当然である、②他省庁ではフリーランスの記者にも記者会見への出席を認めており、警察という実力組織を束ねている警察庁が庁舎管理やセキュリティーを理由にフリーランスの記者の記者会見への出席を拒否することはできないと主張する。
しかしながら、上記「『鳩山内閣総理大臣記者会見への参加について』のお知らせ」は、その表題及び内容から明らかなとおり、内閣総理大臣の記者会見への参加に係る方針を告知するものであって、国家公安委員会委員長の記者会見への参加に係る方針を告知するものではない。
既に述べたとおり、本件定例記者会見への出席を認めるか否か、また、警察庁庁舎内の会議室等への出入りを認めるか否かは、国家公安委員会及び警察庁長官の裁量にゆだねられているのであって、上記(3)で指摘した点に照らすと、債権者の主張を考慮してもなお、債権者の本件定例記者会見への出席を認めない取扱いが著しく不合理であるとまで認めることはできない。
(5)以上によれば、本件定例記者会見への債権者の出席を認めない取扱いによって、憲法14条1項の平等権が侵害されているという債権者の主張も理由がない。
4 以上によれば、本件申立ては、理由がないから、これを却下することとし、主文のとおり決定する。
平成22年3月26日
東京地方裁判所民事第9部
裁判官 葛 西 功 洋
(別紙)
当事者目録
東京都□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
債権者 寺澤 有
同代理人弁護士 堀 敏明
東京都千代田区霞が関一丁目1番1号
債務者 国
同代表者法務大臣 千葉 景子
同指定代理人 玉田 康治
同 中山 貴之
同 鎌谷 陽之
同 太刀川 勲
同 久保川 慎治
これは正本である。平成22年3月26日
東京地方裁判所民事第9部 裁判所書記官 伊藤秀一 |
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