黒木昭雄の「たった一人の捜査本部」

小原勝幸を容疑者とするこの事件は、言いようのない不正義な社会構造を見せつける事になった。遺作小説『神様でも間違う』完成。

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考察と結論 2

考察と結論 2
 
 
二重構造
警察という組織が、「キャリア」と「ノンキャリア」の二重構造になっている事は有名な話だ。だが、その実態を知る人は少ない。
たとえば、所管大臣のいないキャリア官僚の巣窟警察庁は、表向き、内閣総理大臣に任命された国家公安委員会に管理されることで、警察権力の行きすぎを中立公正の立場で守られている事になっている。しかし実際は誰にも管理されてはいない。他方、都道府県警察本部も知事が任命した公安委員会に管理されているように装っているが、公安委員会が警察を管理しているなどと信じる者はいない。それどころか、都道府県警察と言いながら、そのトップの座に収まっているのが警察庁から出向してきたキャリア官僚なのだから、全国約23万人の都道府県警察官は、わずか500人程のキャリア官僚の下部として統括支配されているというわけだ。
 
キャリアとノンキャリの違い
あらためて言うべきもないが、キャリアとノンキャリの違いは、入省時において、キャリアが国家公務員Ⅰ種試験の合格者であるのに対し、ノンキャリアは各都道府県警察が採用した地元組である。したがってキャリア官僚は国家公務員でありノンキャリは地方公務員である。
キャリア官僚は、採用時のたった一度の試験に合格しただけで、その後の待遇、昇進、天下り先の確保までの人生を決定してしまうが、地元採用のノンキャリがキャリアに仲間入りすることは極めてまれだ。その違いを鉄道にたとえるなら新幹線と各駅停車である。繰り返しになるが、たった一度の採用試験に合格したキャリア官僚は、実社会からは考えられないほどの厚遇を受けており、キャリア官僚と地元で採用されたノンキャリ警察官の格差は時代劇に登場するバカ殿と従順な家臣のそのままである。キャリアが白と言えば黒いもの白くなるのが警察の恐ろしいところだ。信じられないだろうが、バカ殿を庇う家臣が身代わりで切腹して果てるなどの行為が、現実の警察社会で普通に行われているのだから、警察社会に刷り込まれた特殊な身分差別が「組織防衛」という名のキャリア保護の掟を生み出したとて不思議ではない。
 
「岩手17歳女性殺害事件」
様々な謎の残る「岩手17歳女性殺害事件」だが、長い時間をかけ丹念に調べ上げた私の見たてに狂いはない。
事件は岩手県警久慈署の捜査ミスから始まった。特筆すべきは以下の4点である。
1 岩手県警は捜査ミスを隠すために小原勝幸を被害者とする「日本刀恐喝事件」を握りつぶした。
2岩手県警捜査本部は、小原勝幸を佐藤梢さん殺害の容疑者にするために必要な捜査を尽くさず、素人にでさえ簡単に見破られるような方法で小原勝幸を犯人と断定し指名手配した。
3 確たる証拠はないが、岩手県警は小原勝幸が殺害されている可能性を十分に認識し、犯人と断定する証拠もないのに小原勝幸を指名手配した、死人に口無しだからだ。
4 事件からわずか4ヵ月にして小原勝幸に懸けられた100万円の公的懸賞金は、岩手県警から依頼を受けた警察庁が、恣意的判断に基づき決定したことに間違いはない。
 
さて、前述したとおり、岩手県警が犯した1〜3までの引責者は、岩手県警のノンキャリ警察官で足りる。だが、情報公開請求で明かされた警察庁の「伺書」に、刑事局長が記した了のサインがある限り警察庁刑事局長に逃げ道はない。万一、こうした事実が公の場で追及されることになれば、本件事件は、日本警察始まって以来の大激震に見舞われることになり、守るべきキャリア官僚に責任追及の手が及ぶことになる。前代未聞のこの事件は、懸賞金制度の是非にまで議論が及び、私が推測する通り、岩手県警がみずからの不祥事隠しのために殺害された小原勝幸を指名手配したとなれば、日本警察の威信は文字通り根底から失われ、警察の屋台骨は崩壊寸前となる。だからこそ警察庁は、組織一丸となって、総力をあげてこの事件に封印しているのだ。
 
 

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