黒木昭雄の「たった一人の捜査本部」

小原勝幸を容疑者とするこの事件は、言いようのない不正義な社会構造を見せつける事になった。遺作小説『神様でも間違う』完成。

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キャリアとノンキャリアはこんなにもちがう【3】p173-177
 
 
 さて、第二の警察官は「準キャリア」と呼ばれる人たちだ。これは昭和六十(一九八五)年から警察庁が採用している国家公務員試験Ⅱ種に合格した警察庁の職員だ。準キャリアのスタートラインは巡査部長である。キャリアのスタートラインが警部補であるから、すでにキャリアにくらべて出遅れの感は否めない。しかし四十五歳前後で警視正に昇進し、退職時には警視長、場合によっては警視監にまでなれるから、これまた超スピード出世といえる。
 
 そもそも警察人事には、若くて優秀な警部補を抜擢し、警察庁に吸い上げる通称「推薦組」という制度があった。
 
「あった」と書いたが今も「ある」。
 
ただ、最近は推薦されても拒否する警察官が増える傾向にあるという。理由はいろいろ考えられる。推薦組に選ばれると地元を離れて東京やその他の知らない土地で暮らさなければならなくなる。しかも、国家公務員にくらべ、地方公務員のほうが給与が高いという現実もある。いずれにしても、こうしたことが原因で減少した推薦組を補う意昧で、新たにこの準キャリア制度が生まれたという話である。
 
 このキャリア、準キャリアは警察杜会のいわば「支配階級」だ。全国二十六万人の警察官に対して、キャリアは約五百三十人、〇・ニパーセント、準キャリア(百七十人)を合わせても、約七百人しかいない。この少数のエリートたちによって統一的、網羅的に管理されているのが、いわゆるノンキャリア警察官だ。ノンキャリア警察官は高校・大学を卒業し、各都道府県警が実施している警察官試験によって採用される。
 
 ノンキャリアの警察官が階級のステップを上がるには、いちいち昇任試験を突破しなければならない。採用されたらあとは自動的に階級が上がるキャリアとは全然ちがう。
 
 まず、高卒であれば十八歳、大卒であれば二十二歳(現役の場合)で巡査からスタートすることになる。高卒と大卒では巡査部長や警部補試験の受験資格を得るまでに必要な実務経験の期間に差があるので、出世には若干の開きがある。しかし、警部補昇進時から、ほぼ同じスピードで昇格し、最短で出世すれば二十九歳で警部になり、早ければ五十三歳前後で警視正になれるとされている。
 
 しかし、これはあくまで「計算上の話」である。こんなことはめったにない。実務経験を積んで受験資格を得ても合格までに何年もかかるのがふつうだし、退職まで巡査長のままの警察官も珍しくない。「三十歳前後で警部になれる」というのは、理屈の上では可能だが、ほとんどあり得ない話なのだ。
 
 

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