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5 所轄(セクショナリズム)の弊害
縄張り争いが生む醜い人間関係
やられたら、やり返せ p192-194
全国の警察組織を民間企業にたとえると、警察庁長官は社長、警視総監をはじめとする警察本部長は地域を統括する支杜長、そして全国に一千人以上いる警察署長は営業支店長といったところだろう。
現業部門と管理部門との明確な線引きはむずかしいが、地域住民の安全を支える支店(警察署)の場合、署内の警務課が署内を管理している。そして各警察署は支社(警察本部=警視庁をはじめとする都道府県警察本部)によって管理され、警察本部は本杜(警察庁)によって管理されている。
つまり、全国の隅々に管轄権を持ち、杜員数約二六万人を配置する「警察」という大企業は、警察庁という本社の管理部門が統制運用しているのである。
タテマエ上、警察庁を中心に都道府県警察の協力体制は万全とされているが、実際には、隣接する警察本部のあいだには、それぞれに越境する管轄権の問題(というとなにやら物々しいが、要は手柄争いなど)があって、仲の悪いことが多い。警視庁と神奈川県警が「犬猿の仲」なのは、この「業界」ではよく知られた話だ。
さて、各警察本部の管轄境界線は警察法の定めによって区分けされているが、同じように、ひとつの警察本部内にも各警察署ごとに管轄区域が明確に設定されている。
テレビの刑事ドラマなどで隣接する警察署の警察官同士が縄張りをめぐってトラブルを起こすシーンを見ることがあるが、これはあながち作り話ではない。
「何だあいつは、見かけないやつだな」
「隣の署員じやないですか」
「縄張りを荒らしにきたな。ちょっと追っ払ってこい」
これはよくある警察官の会話である。とくに警視庁などのように、各警察署の管内がこまかく行政区分けされている地域では、複雑に警察力が重なり合う部分が多いうえに、互いが実績競争にしのぎをけずっているため、現場でこんな会話が繰り返されることになる。
長期少女監禁事件にともなって発覚した新潟県警の「雪見酒事件」が盛んに報道されているころ、県下のA警察署管内で隣接するB警察署の非番の警察官が酔っ払って傷害事件を起こし、A警察署に逮捕されるという事件があった。後日、B警察署の署長が「つぎはわれわれがA署員を逮捕しよう」と訓示を述べて問題となった。隣接する警察署同士とは、こういう関係なのである。
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