黒木昭雄の「たった一人の捜査本部」

小原勝幸を容疑者とするこの事件は、言いようのない不正義な社会構造を見せつける事になった。遺作小説『神様でも間違う』完成。

連載 警察はなぜ堕落したのか

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監察官を使った隠蔽工作p200-201
 
 
 その四日後、この騒動に関して「これは警察の嫌がらせではないか」という匿名の投書が地元マスコミに寄せられた。そのため秋田県警本部は「事実調査」を開始することになり、その日のうちに四、五名の監察官が鷹巣警察署に入ったという。騒動の当日同席していた署員全員から事情聴取をおこない、後日、秋田県警本部監察課は、こんな監察結果を発表した。「同署は事前の計画にもとづき今月(四月)一日、五日、七日の未明に管内の飲食店約百十店の取り締まりをしており、トラブル直後のスナック立ち入りは偶然だった」
 
 この秋田県警の発表が不自然だということは警察官でなくてもわかることだろう。私は急遽秋田に向かい、県警本部の捜査状況を追うことにした。
 
 三人の警察官が一組となって立ち入り検査にあたっていたというのは県警発表のとおりであるが、鷹巣警察署管内に約百十店舗の飲食店があり、それらすべてに対して立ち入り検査を実施したとしているのは、大いに疑問だ。たしかに町には百十店舗ほどの飲食店があるが、ラーメン屋、そば屋、寿司屋など、風俗営業でない店もふくまれているからだ。
 
 しかし、いちばん驚いたのは、騒動の現場となったスナックに居合わせた二十五名の一般客に対して、県警監察官の事情聴取がおこなわれていたということだ。そのうちの一人の男性はつぎのように語った。
 
 「『県警本部の監察だ』なんて言って、三人の警察官が突然、おれの仕事場に押しかけてきたから、そりゃ驚いたさ。てっきり口止めの脅しか、それとも『投書者探し』に来たかと思ってね」
 
 監察官が一般の事件捜査に加わり、聞き込みにまわることはまずあり得ない。
たとえばこのスナックで現職の警察官が傷害事件を起こしたとしても、まず最初に事件を捜査するのは所轄の刑事なのである。監察官はその調査資料から当該警察官処分のために警察内部で動くのだ。まして今回は事件でもなんでもない。
 
 だとしたらなぜ、監察官が三人一組となって、現場に居合わせた客から目撃状況を聞きだそうとしたのか。これは警察の常識に外れる、前代未聞の「捜査」なのだ。その必要性はいったい何だったのか、理解に苦しむ。止めの脅しか、それとも投書者探しだったのか。繰り返される警察不祥事に臆した県警本部がその不祥事を隠蔽・提造するためと考えるのがいちばん自然だ。
 
 
 
 

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