黒木昭雄の「たった一人の捜査本部」

小原勝幸を容疑者とするこの事件は、言いようのない不正義な社会構造を見せつける事になった。遺作小説『神様でも間違う』完成。

連載 警察はなぜ堕落したのか

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自力での捜査  <1>(p15)

前年10月5日以降、正和君が行方不明になった状況にはじめて異変を感じたのは、勤め先の上司だった。

拉致監禁の可能性を感じた上司は、10月14日、正和君と同期入社のBを呼び出し、正和君の居場所を聞いた。
しかし「僕はなにもしらない、拉致なんかするはずがないでしょう」とBは顔色一つ変えずに言ってのけた。

10月18日になって、正和君の母親は日産自動車の上司と石橋署を訪れ、生活安全課の巡査部長に正和君の家出人捜索願いを出したが、翌19日、日産自動車の上司から「息子さんが同期入社の友人から100万円も借りている」と再度の連絡を受けた。

正和君が多額の借金をしていることを知った両親は途方に暮れ、頼みの綱は警察だと信じ、その足で再び石橋署を訪ねた。

「息子が誰かに監禁されているみたいです。
日産の報告だと、正和は一人ではなく、他の数人といっしょにお金を借り歩いているようです。
なんとか見つけてください」

 前日に捜索願を受理した巡査部長(担当刑事)にすがる思いで捜索を要請したが、この刑事は、「捜索願を受理したから、職務質問などで見つかることがある。
でも、今回の場合、息子さんは自分が悪く、『他の人間たちに金を分け与えている』。
警察は、ちゃんと事件にならないと動けない」と非情な言葉を返してきた。

 その後も正和君の借金は続いた。
「正和がむやみに人に金を借りるはずはない」と信じて疑わない両親は、友だちにそのときの状況を克明に尋ねた。

そして両親は数日後、再び石橋署を訪れ、
「正和が友だちから金を借りたとき、誰かが必ず後ろにいて様子を監視しているようなんです。
正和は監禁されているみたいなんです」と助けを求めた。

しかし、担当刑事は、
「あんたは憶測でものを言うな。あんたのせがれがこんなに金を借りているのは、麻薬の取引でもやっているからじゃないのか?
とにかく警察は事件にならないと動かない」と須藤さん夫妻に怒った口調で言い放ったのである。

「これじゃラチがあかない」と思いあまった光男さんは、
「それなら、刑事さんが言うように麻薬の線で(犯罪者として)捜査してください」
光男さんは愛しい息子の名誉をも引き替えにして訴えた。

しかし結局、刑事は
「事件になっていない、動けない」の一点張りだった。(p16)



次回
自力での捜査<2>
http://blogs.yahoo.co.jp/kuroki_aki/6790623.html

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