黒木昭雄の「たった一人の捜査本部」

小原勝幸を容疑者とするこの事件は、言いようのない不正義な社会構造を見せつける事になった。遺作小説『神様でも間違う』完成。

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桶川ストーカー事件

《民事不介入は言い訳にすぎない1》(p28)

 まず、被害書生が殺害されるまでの経緯を振り返ってみよう。


被害者の猪野詩織さんが小松誠(本名:小松和人)と名乗る風俗店経営者(詩織さんはこの職業についていることを知らなかった)と出会い、交際を始めたのが平成11年1月ごろだった。


しばらく付き合ううちに、小松和人の異常な執着ぶりやカネ遣いの荒さなどに気づいたため距離をおこうとしたが、「俺と別れるんだったら、お前の親がこうなっても知らないよ。リストラさせてやる」などと脅されたため、彼女は仕方なく交際をつづけていたという。


 しかし、詩織さんは思い悩んだすえ、同年6月14日に思い切って別れ話を切り出した。

すると小松は激怒し、その日の夕方、風俗店の経営仲間でもある兄の小松武史被告(殺人罪で公判中)と

柳直之(名誉毀損で罰金30万円)との3人で桶川にある詩織さん宅に押しかけた。

そして、小松兄弟が柳の経営する会社の従業員と名乗って、こう恫喝したという。


「和人がこれまで詩織さんにプレゼントしてきたブランド品は会社のカネを横領したものだ。

総額500万円分だ。

お宅のお嬢さんにも責任はあるだろう。

しかもこいつ(和人)を精神的に不安定にした。

病院の診断書があるんだ。とにかく誠意を見せてほしい」


最初は小松との別れをめぐるトラブルを知っていた母親と詩織さんが対応していたが、帰宅した詩織さんの父親が加わって、言った。

「女しかいないところに上り込んでくるのはおかしいじゃないか。

警察がいる前で話そう」

と一喝されると、

小松兄弟ら3人は、

「ただじゃおかないからな。会社にいろんなものを送りつけてやるからな」

と捨てゼリフを吐いて帰っていった。



翌日、詩織さんと母親はそのやりとりを録音したテープを持参し、埼玉県警上尾警察署に相談したが、

対応に当たった刑事らは、

「事件か民事かギリギリだな。

男女のことだしね、警察はむずかしいよ。

あんたもいい思いしたんじゃないの」

と他人事のように話し、

プレゼントされた品の返還と、電話番どうの変更などのアドバイスをしただけだったという。




たしかに警察には「民事不介入」という原則があるが、私に言わせれば、それは言い訳でしかない。

その背景には、この程度のストーカー被害の相談では点数稼ぎにならないということもある。



 本来なら、警察はこの時点で加害者らと接触しトラブルの早期解決を図るべきだった。

まず、加害者が具体的な金額を口にしながら「誠意を見せろ」と迫っているのは、恐喝もしくは脅迫にあたる。


また、グループによる犯行にはいわば「ノリ」のようなものがあり、ほおっておくと異常なほどにエスカレートすることが多い。



事実、首謀者の小松和人は詩織さん宅に押しかけた帰りの車のなかで、仲間にこう持ちかけている。


「このままじゃ気がすまないよ。

詩織とセックスしているときの写真があるからビラにしてばら撒こう。

それと、レイプしてビデオに撮影しよう。

柳さん、やってみない。

成功報酬として500万円出すからさ。」



結局、彼らはこの小松和人の言葉を忠実に実行に移していった。

本来なら、警察はこの時点で、小松らの振り上げた拳の収めどころを作るべきだった。


(p31)


《民事不介入は言い訳にすぎない2》(p31)
http://blogs.yahoo.co.jp/kuroki_aki/8412715.html

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