黒木昭雄の「たった一人の捜査本部」

小原勝幸を容疑者とするこの事件は、言いようのない不正義な社会構造を見せつける事になった。遺作小説『神様でも間違う』完成。

連載 警察はなぜ堕落したのか

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《民事不介入は言い訳にすぎない2》(p31)

「被害者対策」と銘打った施策は、すでにここ数年来、全国の警察に浸透している。

少なくとも私はそう信じていた。



 たとえば、警視庁では各警察署の刑務係に犯罪被害者の相談窓口が設けられており、
被害者が女性の場合は、特別な訓練を受けた女性警察官に聞き取りをさせるなど配慮がなされている。

また、刑事係に直接相談が寄せられが場合は、
警務課の担当者が窓口となり、関係簿冊に事案内容を記載し、
ケースによっては女性警察官が刑事に付き添うことになっている。



しかも、桶川のケースは相談というレベルではなく、まさに被害者からの切迫した訴えだった。



仮に被害者の訴えが正真正銘の民事事件であるにしても、
警察官が注意をしていけないという法律はない。

加害者を呼び出し、不測の事態にならないように注意を喚起するくらいのことはできたはずだ。



さらに被害を受けて困っている人に対して

「あんたもいい思いをしたんじゃないの」などと

言葉の暴力を浴びせたのは、
警察官という以前に人間として許される行為ではない。


しかし悲しいかな、心得ちがいをしているとしか思えない刑事が少なくないのだ。

その典型が、この事件に現れたような、

「(事件か民事かギリギリだから)警察じゃむずかしいよ」などと、

したり顔で対応するというものだ。


刑事は取調べが仕事と思っている者もいるが、私に言わせれば「ばかを言っちゃ困る」のだ。

刑事は「事務屋」ではないのである。



「ホンモノ」の刑事は、すすんで民事には介入しないものの、
今回のように被害者から持ちこまれた案件については貪欲になるものだ。

表向きは民事事件であっても、そこには刑事事件が潜んでいる場合が多いからだ。

積極的に事情を聴取し、隠された事件の発掘をするのである。

まして今回のように被害者が証拠を携え、告訴の意志を明らかにしている場合はなおさらだ。

この場合、刑事はすみやかに被害者から差しだされた証拠品の不備を点検して的確な指示を与え、
検察庁に事件を送る準備をすることが最優先なのである。



これに照らせば、上尾警察署の刑事は刑事課長以下「ニセモノ」刑事ぞろいだった。

日ごろから制服警察官が捕まえてきた犯人(地域ボシ)を相手にしているだけで仕事をした気になっているから、こういうことになるのである。

(p32)


次は「事件を未然に防いだ別の警察署の対応」(p32)


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