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警察の世界から飛び出した
ふたりの新たな船出
曲がった事が嫌いで、たとえ上司であっても思った事をストレートにぶつける夫は、二十三年間務めた警察官の道を捨て、ジャーナリズムの世界に飛び込んだ。元警察官の妻は夫の意向を理解し、文句一つ言わなかった。生活のために夫が船を売ろうかと持ちかけると、「あなたの生きがいだから」と反対。破天荒な夫と、それを黙って見守る妻が歩き始めた第二の人生。
黒木家の危機
主人が警察を辞める事は、クラブのメンバーにはあらかじめ伝えていたんですが、仲間には『戻ってきてください』と説得されていました。退職後も、『人生楽ありゃ苦もあるさ』とメッセージの入ったカードをいただいたり、この人ずいぶん励まされたみたい」
「初めてこの人を見たとき、かわいいなと思った。婦警の寮の門限は夜十一時だったので、デートをしても早めに引き揚げなければならなかった。付き合って三ヵ月ごろ、十時ごろにいったんは別れたんですが、寮に帰宅したふりをして、忍び足で出かけた。トレンチコートの襟を立て、小さな庇の下で壁に張り付いて主人を待っていました。 警察官の場合、つきあったら即結婚というのが常識。できちゃった結婚じゃなくてバレちゃった結婚する人が多い。そうなる前に、主人が署長に伝えた。中間管理職を経由せずに中抜きで親しかった上司に直接話したのは、前代未聞だったようです」 新婚生活 「新婚早々、四日に一度は午前様。平気で仲間を連れてくる。頭にきて、主人の同僚の手みやげだったブドウをこの人に投げつけたこともあります。あるときなんか、酔っぱらって知らない人を連れてきた主人に、その人はだれですかと尋ねたら、『いや、俺も知らない』と」 警察ジャーナリズム 「この人は好きなことをとっちゃうと輝かなくなるから、仕事を辞めるのも仕方ないし、船は最後までとっておいたほうがいいなと思いました。著書やテレビなどのメディアで警察組織に対して攻撃的な発言をしているわけですから、子どもや親類などへの影響も心配しないわけではありません。 でも、現場で働くおわまりさんの仕事がしやすくなるように、やりたい仕事をやっているわけですし、そういう姿を子どもたちに見せるのはいいことだと思うんです。夢がある父親というのは子どもにとって、いい『見せ物』ですよ。主人は、いまこそ警察官として二十三年間勤めた誇りを見せなきゃいけないと張り切っていますから。 家計は楽ではありませんが、私たちはいつも『大丈夫、なんとかなる』と笑っています。悲壮感がないので、娘は『うちの冷蔵庫には食べ物がいっぱい詰まっているし、どこが大変なの?』と言う。 主人は外泊したり、自由奔放にしていますが、根が正直だから隠しごとができない。色恋はとっくに通り過ぎていますが、精神的につながっていると感じます。乱気流の時には落ち着くまで、ただ黙って見守っています」
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