黒木昭雄の「たった一人の捜査本部」

小原勝幸を容疑者とするこの事件は、言いようのない不正義な社会構造を見せつける事になった。遺作小説『神様でも間違う』完成。

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警察の掟 2

民間では尾行張り込みと言っているが、警察内部ではそれを総称して「まとわり」という。
このような調査を数日間行われれば、誰でも、どれかに引っかかり、それを理由として退職に追い込めるのだ。これが現実であり、組織の手口であり、実際にこの手を食らって退職に追い込まれた者は多い。
しかし、「まとわられ」ていることに気づいた者は注意を払い、落ち度のない行動をとる。この段階で組織は、調査方法を変える。今まではひそかなまとわりだったが、今度はあえて姿を見せ、公然と絶えずまとわり、「お前には将来がないぞ」と思わせるのだ。ここまで来ると、精神的に誰でも参る。そこで組織に嫌気がさし、早晩自ら退職の道を選んでしまうのである。
こんな人権無視の内規が存在すること自体が、警察の後進性を示している。
 
また、在職中だけ気をつければいい、とはならないのが警察組織だ。たとえ円満な退職であっても、警察の内部情報を漏らす者がいるのではないかと、退職後一定期間、公安や監察が公然と退職者への調査活動をすることがある。このような恐怖の調査活動を、警察内部では、「公安が動く、観察が動く」って恐れられている。
公安、監察などは、あまり実態が見えない組織であるために、より警察組織の奥深さ、恐ろしさを増幅させ、一般警察職員の洗脳にその噂が効果的に使われているのだ。だから自身の退職後も、見えない警察署式の調査が行われているはずだと恐怖を実感し、在職中はもちろん、退職後も口は貝のように閉ざされることになる。結果として警察内部の情報は、どこからも漏れないという仕組みが築かれ、延々と機能し続けてきたのだ。
しかし、このように骨抜きにされた警察官だけしかいないわけではない。組織のあり方に反発するものも結構いるが、それでも退職後は、警察組織と一切の関係を断ち切るだけで、恐怖が理由かどうかは別にして、内部情報を暴く人はほとんどいない。そのような先輩警察官が極めて多いのも事実なのだ。
警察応援者であるべき、それら警察 OB が声をそろえていう言葉がある。
「俺は警視庁にさんざんいじめられてきた。警察の悪質な取り締まり手口を知っている。今後は絶対に警察に協力しない」と声高に言うが、果たしてその真の意味は何なのか?警察幹部は、それをしっかりと受けとめ真剣に考えなくてはいけない。
(拙著「警官は狙いを定め、引き金を弾いた」より)
 
警視庁警察職員服務規定
第一章 総則
1条(目的)
この規定は、警視庁警察職員が、保持すべき職務にかかる倫理及び職員の服務について必要な事項を定めることを目的とする。
2条(準拠)
職務倫理及び服務については、別に定めがあるもののほか、この規定の定めるところによる。
 
第二章 職務倫理
3条(職務倫理)
職員は、首都治安確保の重責及び警察の任務が国民から負託されたものであることを自覚し、国民の信頼にこたえることができるよう、高い倫理観のかん養に努め、職務倫理を保持しなければならない。
2前項の職務倫理の基本は、次に掲げる事項とする。
一 誇りと使命感を持って、国家と国民に奉仕すること。
二 人権を尊重し、公正かつ親切に職務を執行すること。
三 規律を厳正に保持し、相互の連帯を強めること。
四 人格を磨き、能力を高め、自己の充実に努めること。
五 清楚にして、堅実な生活態度を保持すること。
 
第三章 服務
第一節 服務の基準
4条(服務の根本基準)
職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、かつ、その職務の遂行にあたっては、普遍不党かつ公正中立を旨とし、全力を挙げてこれに専念しなければならない。
5条(法令の厳守)
職員は、その職務の遂行にあたっては、法令、条例、規則など及び上司の職務上の命令を厳守し、その権限を濫用してはならない。
6条(信用失墜行為の禁止)
職員は、国民の信頼及び協力が警察の任務を遂行する上で不可欠であることを自覚し、その職の信用を傷つけ、または警察の不名誉となるような行為をしてはならない。
8条(職務の公共の保持)
職員は、職務に支障を及ぼす恐れがあると認められる金銭、物品その他の財産上の利益の提供もしくは供応接待を受け、または職務に利害関係を有するものと職務の公正が疑われるような方法で交際してはならない。
 
第二節 職務
9条(危険と責任回避の禁止)
職務上の危険又は責任を回避してはならない。
10条(職務の遂行)
職員は、職務の遂行にあたっては情理をつくして相手方の納得のいくように努めるとともに、事の軽重、緩急を計って実情に即する措置を執り、かりそめにも警察の便宜から公衆に迷惑をかけるようなことがあってはならない。
11条(急訴に対する措置)
職員は、急訴に接し、又は警察上緊急に措置する必要があると認められる事態に遭遇した時は、勤務の当否または管轄の内外にかかわらず、迅速かつ機宜の措置を取らなければならない。
12条(上司の補佐)
職員は、職務に関する建設的な意見を積極的に上司に具申するとともに、進んで上司を補佐しなければならない。
13条(応接の基本)
職員は、応接に際しては、親切、丁寧かつ迅速を旨とし、常に相手の立場に立ってこれに当たらなければならない。
14条(言語態度)
職員は、各種取り扱いに際しては、相手方の言動などに左右されることなく、冷静ちん着を旨とし、いやしくも粗暴、野卑な言動は、厳に慎まなければならない。
15条(相談事案等への的確な対応)
職員は、各種相談事案などの受理に際しては、積極的にこれに対応しなければならない。なお、相談事案などを処理する場合は、厳正公平に対処しなければならない。
16条(呼出し)
職員は、参考人などに対し任意に出頭を求める場合は、相手方の都合を十分に考えて行い、また、通してきた者に対しては、礼を失することなく迅速かつ的確に措置するように努めなければならない。
17条(身分の表示)
職員は、相手方から身分の表示を求められた場合は、職務上支障があると認められる時を除き、所属、階級、職、及び氏名を告げなければならない。
18条(報告連絡)
職員の、職務上の報告連絡は、特別の場合を除き、順序経て迅速かつ正確に行わなければならない。
19条(事故報告)
職員は、職務に関する紛争その他の事故が発生した場合においては、その詳細を速やかに上司に報告しなければならない。
20条(情報の報告)
職員は、勤務の当否を問わず、警察上必要と認められる情報を入手した時は速やかに上司に報告しなければならない。
21条(公文書などの取り扱い)
職員は、公文書、証拠品その他職務上の保管又は取り扱いにかかる物件について、その適正な管理に努めなければならない。
22条 (勤務欠略の禁止)
職員は、勤務を怠り、又は理由なくこれを変更してはならない。
23条(無断欠勤の禁止)
職員は、通信、交通機関などの途絶により、連絡の方法がない場合のほかは、届出をしないで欠勤、遅刻又は早退をしてはならない。
24条(外部派遣者の服務)
国又は公共団体の機関に派遣されている職員及び研修などのため学校その他に派遣されている職員は、その派遣先の規律にも服さなければならない。
 
第三節 品位の保持
25条(政治に対する中立性の保持)
職員は、特定の政党又は政党人のために特別の推薦をし、又は労務もしくは情報の提供をするなど、一党一派に偏するような行為をしてはならない。
2 職員は、政治に関しては、警察の中立性を堅持し、不用意な言動からこれを、疑られるようなことがあってはならない。
26条(宗教活動の制限)
職員は、職務に影響を及ぼすような方法で、宗教的活動をし、または宗教的議論をしてはならない。
27条(所見公表の制限)
職員は、所属長の承認を受けないで、職務に関し、又は職務に影響を及ぼす恐れがある所見を公表し、または、新聞雑誌などに寄稿してはならない。
28条(寄付金募集行為の禁止)
職員は、警視総監の承認を受けた場合のほか、名目のいかんを問わず、寄付金などを募集してはならない。
29条(品行)
職員は、起居、動作、服装その他身辺については、端正かつ清潔を旨とするほか、礼節を尊び、社会道徳を重んじ、常に職員としてふさわしい品行の保持に努めなければならない。
30条(健全な生活設計)
職員は、計画性のある健全な生活態度を保持することに努め、いやしくも支払能力を超えて借財をし、経済的破綻から職務に影響を及ぼすようなことがあってはならない。
2 職員は、身分を利用して、借財をしてはならない。
31条(飲酒)
職員は、勤務に支障をおよぼし、または品位を失うに至るまで飲酒してはならない。
 
第四節 その他
32条(緊急時の招集)
職員は、病気、負傷などにより休養している場合のほかは、いつでも緊急の招集などに応じられるようにしておかなければならない。
33条(療養専念)
病気、負傷などにより休養中の職員は、医師及び関係者の指示にしたがって療養に専念し、早期回復に努めなければならない。
34条(外泊、旅行などの届け出)
職員は、外出又は日帰りの旅行をするときは、有事などの連絡に支障をきさないよう必要な措置を講じなければならない。
2 職員は、外泊又は2日以上にわたって旅行をするときは、所属長の承認を受けなければならない。
35条(住居などの届出)
職員は、新たに住居を定め、またはこれに変更が生じた時は、速やかにその住居、管轄警察署名及び所管交番又は駐在所名を所属長に届け出なければならない。
36条(管轄外居住の制限)
職員は、東京都の区域内に居住しなければならない。ただし、やむを得ない事情があって、所属長の承認を受けた場合はこの限りではない。
37条(外部の受験届出)
職員は、警視庁以外の官公署その他の機関などの実施する資格試験その他の試験を受けようとする場合は、所属長に届け出なければならない。

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警察の掟 1

警察の掟
服務規程(正法)と掟(外法)
 
次ページに書いたのが警視庁警察職員服務規定という内規である。
書かれている事の大部分は公務員として当然の事ばかりだ。
だが、この服務規程が警察官個人を縛り付ける掟となる。
服務規程の真の目的がこの条文を守らせるためにあるのではなく、いざという時に、合法的に組織に都合の悪い人物を退職させたい時など、口実を設けるための内規として存在していると言っても過言ではない。
 
たとえば、民間で以下のような規定があるだろうか。
 
1 外出、旅行の承認=休日でも管轄地域外に外出する時や、日帰り旅行は届け出が必要。
2 外泊承認=休日でも自宅以外に泊まる時や、2日以上の旅行の時は所属長の承認がいる。
3 車両保有届=車を購入する前に上司に相談し、購入後速やかに届けることが義務づけられている。
4 車両利用届=休日でも、車で旅行するときには、所属長の承認が必要。
5 携帯電話番号の強制的な届出
6 電子メールアドレスの強制的な届出
7 資格試験の受験=所属長に届出(運転免許を含む)
 
さて、ここに警察を辞めさせたい警察官がいるとする。
その時内規に照らして辞めさせるには、以下のような項目をチェックする。
すると、誰でも強制的に退職に追い込めるのだ。
 
◇朝、家を出る=届け出通りの通勤コースで出勤したか否か、定期券で乗車したか否かをチェック
 
◇制服に乱れがないか=頭髪が伸びているかどうか、髭を剃っているか、アイロンをかけているか、靴は磨いているか、姿勢態度は良いか、チェック
勤務表通りの勤務をしているか=見張り所で帽子を取っていないか、警ら中にサボっていないか、巡回連絡にいったかをチェック
 
◇退庁時間を守ったか、届け出通りの帰宅コースを守ったか、飲酒を届け出か、梯子酒ではないか、節度ある飲酒だったか、立ちションベンをしていないか、身分相応の店で飲んだか(高級店は不可。ただし身分相応かは監察が決める)。同伴の女性は誰か、午前零時を過ぎたとき、外泊許可をとっているか、無断外泊をしたか、チェック
 
◇休日=東京都から離れた場合、届け出があったか、車は保有届け出があったか、車両を利用届けがあったか、外泊、旅行の承認をとっていたかをチェック
◇ふさわしくない交友関係があるか=みだらな男女関係かをチェック
 

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