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生まれて初めて……エンドロールが終わってしまうまで、泣き続けた…… 主人公の老人の後ろ姿をバックに流れる──UAが歌う……井上陽水の名曲『傘がない』……その響きに……涙が流れ続けた…… 母子家庭でありながら……その母親の愛情にさえも恵まれない……天使の羽根をつけた少女…… 誰から触れられることも拒み……誰も信じない……アザだらけの身体の、幼い少女…… 名前を聞かれて……「ガキっ……」──と答える……心を閉ざした天使…… そんな少女を、救いたいと……彼女の夢見る場所に、二人きりで旅に出る老人…… "白い雲がぽっかり浮かび、青い空を鳥が舞っている"……少女が、万引きした絵本で見た……幸せが待っているところ…… その場所は……老人本人にとっても……想い出深い……幸せがあったところ…… 高校の校長を勤め上げた老人・安田松太郎を演じる、緒形拳の──静かで、温かく……悲しくて、苦しい……老人の姿が、たまらなく切ない…… 厳格に生き抜き──妻にも、娘にも、本当の愛情を与える術を知らなかった……無器用な松太郎…… そんな彼に必要だったのが── 他の誰でもない──この、哀れな、純真な心を持った少女だった…… 老人は──少女に、愛することの大切さと素晴らしさを学び…… 少女は──老人から、愛されることの嬉しさを感じて行く…… 子どもは見抜く…… それが、本当の愛情なのか……それとも、見せかけだけのものなのかを……怖いくらいに、見抜いてしまう…… 愛して欲しい母親が──ヒモの男とベッドで愛し合う、その隣りのキッチンのテーブルの下で……丸くなって眠る少女…… 妻をアルコール依存症にまで追い込み──娘からも、「人殺し……」とののしられ……隣りの部屋に越して来た、孤独な老人…… まるで……運命が、二人を引き合わせたかのように……お互いが、お互いを必要としていた…… 「おジイちゃんといっしょに、青い空、見に行こう……綿アメみたいな雲が浮かんで……白い鳥が飛んでる……」 何も答えず……ただ、立ち上がって、空を見上げる少女…… その心が……「うん……」……そううなずいていた…… 少女が、守ってくれてると信じてる──段ボールで作った背中の天使の羽根…… それは──昔……幼稚園のお遊戯のために手作りした、『天使のパンツ』のお歌の衣装……お母さんが、まだ、今よりも優しかった頃の……最後のお守り…… 愛情を知らずに育った子どもが──大人になり──母親になったとき…… 彼女も、やはり……我が子への愛情の与え方に、悩み……苦しみ……傷つけてしまう…… 「私はねぇ……親にされたことと同じことを、しとるだけぇ……」 当たり前のように、刑事につっかかる少女の母親……それを演じる高岡早紀の、複雑な心境を見事に表現する演技が──憎みたいはずのその母親を、何故か、憎み切れない哀れな母親として、感じさせてくれる…… これが3作目になる、俳優・奥田瑛二の監督作品── おそらく──この作品が、彼の代表作となることだろう……観た人は、きっと、そう感じるに違いない…… オーディションで彼が見つけた──少女役の天才子役・杉浦花菜ちゃん── 初めての演技でありながら──怯えながら生きている少女から、次第に、心を許して行く変化を演じきった──その初々しさと、恐怖さえ感じさせるような悲しみを秘めた怒りの表情は──涙なくしては、観られない…… 昔──彼女が、居なくなった母親を眼で探しながらも──楽しそうに歌って踊る、幼稚園での『天使のパンツ』は── その可愛さゆえに……今の彼女の寂しさを、何倍にも強く訴えて来るようで……胸が苦しくなる…… 旅の途中で出会う、松田翔太が演じる青年も──けっして、忘れることが出来ない…… 朗るく、いい加減な人間に見えた青年……でも…… 朗るく振る舞ってみせる人間こそ……その心の中は……繊細で、孤独で……苦しんでいるんだ──と、思い知らせてくれる…… "長い散歩"…… 老人と少女の……微笑ましく……痛々しい……幸せ探しのお散歩…… 「おいていかないって、言ったじゃんっ!」 「ごめんね……ジイちゃん、悪かった……ごめんね……」 夜店で、焼きそばを買って来たおジィちゃんに怒る、少女の顔が……謝るおジィちゃんの顔が……思い出すだけで、涙をあふれさせる…… でも…… その約束も……いつかは、きっと……破らなければならない時が来る…… 少女は……あくまでも、他人様の子どもなのだから…… クライマックスの、二人の演技は──もう、声を殺すのも苦しいほどに、泣いて、泣いて、泣きじゃくってしまう…… 今、そのことを書いているだけで──涙があふれて来てしょうがない…… こんな映画に出会ったのは、本当に、久しぶりだ…… 正直──ここまで素敵な作品に仕上がっているとは、思っていなかった自分が……恥ずかしい…… ★★★★★!!!!!!!……キーボードを叩く指が……まだ、余韻に震えています…… |

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