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帽子を被った異人さんに誘われて
その船に乗ったのです
船底に近い客室から
喫水線を間近に見ることができたのでした
赤は止まれ
不吉な空が不幸を暗示しておりました
青は進め
破れかぶれの心境でした
黄は注意
若干の躊躇を誰が責めることができましょう
巨人の残した
異物が
ビルのてっぺんに鎮座しておりました
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東京だってさ
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宴の後
酔い覚ましにあたりを歩くと
闇の中で招く者がいる
灯りに誘われ近づくと
そこは遊園地
夜の遊園地を仕切るのがキティーちゃんだったことを
初めて知った
誰はばかることなく童心に帰る一夜
時間はあっという間に過ぎて行く
翌朝
寝不足の目に
空は黄色く見えるものらしい 腹をすかせて
入った店はブリキを売る店だった
固いブリキじゃなくって
やわらかいパンがほしいんです
やっとパン屋にたどり着き
ひざから崩れ落ちそうになりながら
私はそう叫んでいたのです
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一寸先は闇
薄氷を踏みながら
何が起こるかわからぬ
この都会で暮らしてきたが
所詮
運命の波にもまれる
ちっぽけな存在に過ぎない
今から行く坂 過ぎこしてきた坂
幾多の坂を越えてきた
薄暮の中
うっすらと灯る明かりを頼りに
煙と嬌声に誘われて
遠い昔の自分にそっくりな男と杯を交わす
熱湯に浸された海老は
舞台の上で人々に食されるのを待っていた
やがて 杯にテキーラが注がれ
饗宴は第二幕を迎えた
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「それはそれはお気の毒に」
不動産屋のこの言葉が
うわべだけのものであることは明らかだった
そして、これにに気づくのに、そんなに時間はかからなかった
内部が沸騰し、ねじまがった家…
「冷え性の方には好評でして」
内部に仕込まれたモーターで
常に振動する家…
「肩こりの方には好評でして」
早朝からの異常事態に
そろそろ神経の限界が近づいていた
不機嫌さを露骨に態度で表し
脅迫するかのごとく次の物件へと不動産屋を促す
朽ちかけた家…
「金のない方には好評でして」
こちらとしても、もちろん異存はなかった
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住処を失った自分に
カフェなんていう言葉自体が不釣合いだろう
のんびり屋根の上で暮らせる身分でもない
義兄に援助を頼んだが
それもおまえの人生のプロセスと諭された
年の瀬はどこもかしこも忙しいのだと
自分のケツは自分で拭けといういうことだ
すさんだ気持ちで遅い朝食を摂る
意を決して不動産屋へ飛び込んだ
とにかく雨露をしのぐ場所を求めたい
この一心で
そんな自分の行動を
いったい誰が責められるというのか
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