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結局彼女の結婚話は 成就しなかった。
フィアンセからの仕送りは 僅か数カ月で途絶え
最後には連絡すらとれなくなった。
致し方なく彼女は ダバオの現地プロダクションの身を置き、
次の日本行きを模索しつつ
日々の稼ぎの為 元の仕事に舞い戻ったという。
そして1年が過ぎたころ ダバオ現地業者におけるオーディションにて
採用(ブッキング)された。
その日本業者こそ、俗悪プロモSSだったのでである。
その時のオーディションでSSは
積極的に ”体を張る ”ことの出来るタレントを集めた。
SSは 第一次審査で選んだタレントを集めて次のような条件を付け、
それに合意できるタレントのみ二次審査に回した。
二次選考の前にタレントを集めて、
”このブッキングのオミセは バーファイン(連れ出し)あるよ。
その代り 100ドル上積みしてあげる ”
(通常の給料より 1か月あたり100ドル上乗せする)
といいつつ、人差し指を立て机を数回たたいた。
これは 売春を意味する業界の隠語である。
再度の日本行を欲した彼女は 躊躇することなく同意した。
” シカタナ〜イ、仕事ホシダカラ。”
なぜもう一度Wを頼らなかったのか、という問いに対して
”ダッテ ワタシのことタスケテパパに恥ズカシ ダカラ ”
(私を助けてくれたWに対し 恥ずかしいので)と答えた。
それならば 売春まがいの店で働くことは ”恥ズカシ ”くないのか。
やはり何年たっても 僕には到底フィリピン人を理解できそうも無い。
帰りの車の中で そう呟くと、師匠W答える。
”だからネ、クワちゃん 何時も言ってるでしょう・・・・”
師匠Wを制止して 大きな声で僕。
”ハイハイ 解ってマ、
(解っています)
食いもん(たべもの)が 違うんデッシャロ(違うのでしょう)
流れてる血が 違いまんニャロ、
結局 理解でけまへんニャロ(出来ないのでしょう?)
解ってマ ”
と申し上げると、師匠W、
”イヤァ クワちゃん!
あんたもスッカリ関西弁が ウモウ(うまく)なりましたナァ
チョト アクセントがおかシュウ オマス
(アクセントが 間違っている )
金子信夫の関西弁デッセ、
ドハハハー ”
と大笑いの大笑いであった。
そして 突然に切り出した、
”ソヤ(思い出した)、今度の甲子園での巨人戦 グリーンシートとれましテン。
(グリーンシートの指定席を手に入れた)
一緒にどないダ?
(どうですか)
アンタ 阪神 嫌いダシタナァ
(嫌いでしたネェ)
マァ エやないですか
(いいじゃないですか) ”
その後 師匠は帰り着くまで 妙に口数が少なく真顔に変わってしまった。
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