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ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 248 “ウィーンの舞踏会”
ヤツェク・カスプシク(指揮) シンフォニア・ヴァルソヴィア
シューベルト/ウェーベルン:ドイツ舞曲 D820 (管弦楽版)
シューベルト/へラー:5つのドイツ舞曲 (管弦楽版)
ヨハン・シュトラウスII世:新ピツィカート・ポルカ 作品449
ヨハン・シュトラウスII世:ペルシア行進曲 作品289
ヨハン・シュトラウスII世:田園のポルカ 作品276
ヨハン・シュトラウスII世:オペレッタ「こうもり」序曲
ブラームス:ハンガリー舞曲 第1番、第3番、第10番
(2008.5.3 22:00 東京国際フォーラム ホールC マイアーホーファー)
今年のLFJのテーマは「シューベルトとウィーン」。シューベルトだけではかなり渋い構成になってしまうところを、モーツァルトやベートーヴェン、ブラームスからウェーベルンといったウィーンゆかりの作曲家たちで補強したプログラミングだ。当初期待したウィーン風のアトラクション出店はほとんどなく、いまひとつ「ウィーンらしい」という空気を感じられないのだが、フランスにルーツをもつ音楽祭としては致し方ないところか。
会期中随一のウィーンっぽさを誇る演目が、この「ウィーンの舞踏会」。とはいえ、ありきたりのウィンナ・ワルツを並べてウィーン・フィルのニューイヤーコンサート風にしてしまわないのが企画者のインテリジェンスを感じさせる。出演するのもワルシャワの室内管弦楽団。メニューインなどとの録音で知られるこのオーケストラは、LFJ4年連続の出演だが、音楽祭きっての実力を誇る。年齢層も比較的高いメンバー構成だが、その音の厚みと安定感は、日本のオーケストラが敵わない水準にある。
今回のプログラムを指揮するのは、ポーランド国立オペラの総監督カスプシクさん。50代後半と思われるが、スリムな肢体をしなやかに使って緩急自在・表情豊かに音楽を作り出す様は、カルロス・クライバーを彷彿とさせる。その魅力的な身のこなしもあって、心から楽しめるコンサートになった。
冒頭のシューベルトは、ウェーベルンの洗練されたアレンジによる弦楽器の独特な響きに不思議な懐かしさを感じる。弦楽セクションの、えもいわれない懐の深さから自然に浮かび上がるように奏でられる暖かい響きと、奏者の人為を完全に忘れさせるような管楽器セクションの自然なフレージングで、魔法にかけられたような気分になる。
同じシューベルトでも、ヘラーの編曲作品は一転して鄙びた素朴な響き。ウェーベルンより後の時代の人でありながら、まるでブラームスやドヴォルザークのようなオーケストレーションで、古風な舞曲の土俗性を演出している。
次いでシュトラウスの4作品。先述の弦楽セクションの懐の深さは「新ピチカート・ポルカ」でも息をのむ効果を生んだ。ピチカートの微音がこれほどホール全体に豊かに響くのは感動的。「こうもり序曲」はカスプシクさんの歌劇場総監督ならではの自在なギアチェンジが見事にオーケストラを引っ張り、溌剌としたリズムに思わず体が踊りだしそうになる。
最後はブラームス。作曲者自身がオーケストレーションを施した3曲のハンガリー舞曲だが、シェーンヘルの編曲による5番などで刷り込まれたイメージより遥かにジプシー臭さが薄いのがこの3曲の特徴といえる。その意味では、やはりウィーン人が感じるハンガリー情緒なのだろう。
演奏終了後の喝采も、客席に散見した空席を感じさせない盛大なものだ。11時を回っていたので叶わなかったものの、ちょっとアンコールでも欲しいくらいの盛り上がりを聞かせたコンサート。今日一日の充実感に満足しながら家路についた。明日は天候も回復するだろうか。
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