きゃいんばぶ日記

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ダウエル光学 成東商会に関する基礎的考察(下)

ダウエル光学 成東商会の終焉
 時代は下り、長い業歴を誇るダウエル光学 成東商会もついに終焉の時を迎えます。
 天文ガイド誌の広告ですが、ざっと見渡したところ、1990年(平成2年)3月号の広告が最後のように思われました。また、このころは、毎月ではなく隔月に、しかも、1頁のみの広告を出していた模様です。
 しかしながら、広告を出さなくなってからも、営業は相当期間続けていたものと思われ、その後、次第にフェードアウトしていったのでしょうか。

天文ガイド1990年(平成2年)3月号 ダウエル光学 成東商会の広告
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 1980年代は、システム赤道儀が主流となり、また、EDやフローライトを使用した高性能屈折望遠鏡が流通するようになりました。しかしながら、上の広告内容を見ますと、ダウエル光学 成東商会は旧態依然の商品展開をしているように思われ、他社製品と比較して、相対的な品質低下が顕著とみなされるようになり、徐々に天文ファンの支持を失っていったのでしょうか。
 また、時代が下るにつれ、取引先(下請け)メーカーの変遷により、相対的な品質の低下がみられるようになったということはなかったでしょうか。
 さらに、1985年9月プラザ合意のドル安誘導政策により急速に円高が進み、1988年には当時の市場最高値1ドル120円をつけるに至りました。そのため、安価な外国製の光学器械や光学部品が輸入されて安く販売されるようになり、競争力を失った、ということはなかったでしょうか。

 なお、下の広告は昭和55年のダウエル光学の広告ですが、「MIZAR製品特別サービスで販売致します」とあります。「本邦最古」の業歴を誇るダウエル光学が後発の他社製品のシステム赤道儀を取り扱うとは意外な展開ですが、ひょっとしたら、このころ、創業者から次世代経営者への交代などがあって、新しい時代の流れへの対応なども模索していたのでしょうか?

天文ガイド1980年8月号 ダウエル光学 成東商会 広告 「当社の光学製品は、親、子、孫三代で買い求められた最も信用ある本社へのご注文が一番安全です」
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「しもたや」 住宅街の個人商店?
 ダウエル光学 成東商会は西片2丁目ですが、大学生時代の一時期、文京区西片1丁目に下宿していたことがあります。地下鉄の春日駅に近い方になります。
 このころ、広告にものっていました光軸修正アイピース(ツァイスサイズ)が欲しくなって、通学路からは少々外れるのですが、ダウエル光学・成東商会の店舗を1回だけ訪れたことがあります。

ダウエル光学 成東商会で購入した光軸修正アイピース(ツァイスサイズ)
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 当時の西片は閑静な住宅街で相当の高級住宅が見られる地区もありました(現在でも同様かもしれません)。ダウエル光学 成東商会の店は、住宅街の中にあり、立派で目に付きやすい看板がかかっていましたので、すぐに見つかりました。しかし、店は普通の住宅を店舗にしているような状況でした。
 天文誌にたくさん広告を出している天体望遠鏡メーカーでしたので、そこそこの規模の事業所を予想していたのですが、普通の住宅のような店舗であったことに強い意外感を覚えました。五藤光学研究所や高橋製作所を訪れたときは、規模の大小に差こそありますものの、その場所でいかにも物を製造しているという製造業のイメージがありました。しかしながら、ダウエル光学 成東商会を訪れたときは、そこで何かを製造しているというイメージはほとんど感じられず、五藤光学研究所や高橋製作所とは全く異なる不思議な雰囲気をプンプンと漂わせておりました。
 来訪を告げますと、かなりのご年配と思われます男性がお一人で出迎えてくれました。そのお方は、天体望遠鏡メーカーの経営者というよりも、住宅街の個人商店のご店主というイメージの方が強く感じられました。このときは、光軸修正用アイピースを購入するだけだったので、用件を告げて代金を支払い、さっさと退散いたしました。今思えば、ご店主に、「ダウエル(Dauer)」とか「成東」の由来について尋ねておけばよかったと思っています。
 なお、グーグル地図で現在の西片2丁目12番地を見てみましたところ、私が訪問したときと状況は全く変わっておりました。平成2年ころ広告をださなくなってから、数年ほど後に建物の建て替えなどを行ったのでしょうか?

天文ガイド1975年4月号 ダウエル光学 成東商会 LK型15㎝ LC型12㎝ 反射赤道儀広告 「注文殺到」「良心的製品ですから安心です!」「堅牢丈夫」「高級赤道儀は素晴らしい製品です」
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 おそらく、ダウエル光学 成東商会は、複数の取引先(下請け)から仕入れた部品などを、部品のまま販売するか、あるいは、店の奥の方で、ご店主自らが、組み合わせたり、組み立てたりして、天体望遠鏡の完成品として販売していたのかもしれません。屈折望遠鏡のレンズはおそらく研磨済みのものを取引先から仕入れていたのではないかと思いますが、一方では、研磨材料なども販売していましたので、反射望遠鏡のミラーはご店主自らが磨いておられたのでしょうか。

 ところで、成東商会の店舗について、冨田氏の「しもたや」という表現は言い得て妙であると思います。「しもたや」的店舗は、戦前・戦後を通じて、ダウエル光学に一貫してみられる伝統ではないかと思われます。しかし、この、「しもたや」的経営というのは、通信販売・直接販売をメインとしていたダウエル光学・成東商会にとっては、極めて合理的な経営方式ではなかったでしょうか。仕入れ代を除けば、主たる経費と言えば、天文誌に出す広告費用くらいだったのかもしれません。この点、実に商売上手であったと言うべきでないでしょうか。

天文ガイド1971年12月号 ダウエル光学 成東商会の広告
「ダウエル光学特別セール」「素晴らしい製品です」
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ダウエル90mm反射経緯儀に対する酷評レポート
 話は戻りまして、冨田氏は、ダウエル光学 成東商会のこの天体望遠鏡について、要旨は以下のとおりの、レポートをしております(天文ガイド1968年12月号18頁)
 
 ベガを見ましたところ、視野中心の星像は、左側の方に光点があり右上に尾を引き、良くありません。接眼鏡を他社製品に変えても同様でした。
 今まで他社の製品をテストした中には、だいぶ像の悪いものもありましたが、実用上はまあまあでした。しかし、今回の個体は特に悪かったのでしょうか。
 光軸をわざと狂わすと、星像はだいぶ改善されます、ケラレがひどくなり、口径90mmいっぱいに使うことができません。
 この程度の望遠鏡であるならば、主鏡は球面鏡で十分ですから、もう少しましな鏡を作って欲しいと思います。今回の個体の鏡は単なる凹面鏡に過ぎません。
 もちろん、高倍率はかけられません。
 土星環も、何か他の星と違う形をしていることが分かるだけです。
 今回の個体は、特に悪い品に当たってしまったのであり、他の品物はもっとずっと良いものであると、念じております。

 当時の天文ガイド誌の「天体望遠鏡をテストする」シリーズでは、最後の結論として、総合点何点とつけられるのですが、上記のテストをした個体については点数が付けられておりません。点数さえつけられないほど酷い個体だった、ということでしょうか?

天文ガイド1971年12月号 ダウエル光学 成東商会の広告
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ダウエル光学 成東商会の「大人(オトナ)」の回答
  ところで、このシリーズではレポートに対して、「メーカーは答える」という形で、メーカーの回答がなされるの通例ですが、上記のレポートに対するダウエル光学・成東商会の回答の要旨は以下の通りでした(前掲書18頁)。

 当社の90mm反射望遠鏡はアマチュアに好評で、目下、大量生産中です。多少の欠点は徐々に改善を加えていますが、不幸にして凹面鏡の不良がありました場合は、当社は責任をもって取り替えております
 創業以来40数年の当社としては、信用を第一としており、それに恥じない製品を販売することにつとめています。今回のご批判に対して悪い点は十分検討し、改善してゆく覚悟です。今後ますます光学の向上に努め、安価で良い製品の普及に努力しますので、より一層のご愛顧をお願いします

 レポートでこれだけ酷評されたにもかかわらず、なんら感情に走ることなく、実に「大人(オトナ)」の見事な対応ではありませんか。さすが商売上手を思わせる実にリッパな対応です。
 また、「不幸にして凹面鏡の不良がありました場合は、当社は責任をもって取り替えております」と言われます点も、「安心して買える責任ある優秀品を直接販売いたします」「皆さんから誠実なメーカーとして歓迎される店」との広告どおりのようにも見えます。
 しかしながら、仮に、「不幸にして凹面鏡の不良」に当たってしまった場合、社会経験が乏しく、クレームの付け方のテクニックを知らない小学生や中学生などが「凹面鏡の不良」を指摘してみても、相手はひょっとしたら海千山千(?)かもしれません(?)、光軸などの調整不良では? 気流の状態が良くなかったのでは? 温度順応が不十分だったのでは?、などとあしらわれてしまう可能性は全く皆無なのでしょうか?

エイコー 90mm STH 115 反射経緯台
 ところで、余談になりますが、古くから天文をやっておられる天文ジジイの方々にとりましては、ダウエルとエイコーの取引先(下請先)には共通のものがあるため、そっくりな製品が幾つか存在していた、ということはご存じと思います。
 冨田氏が天文ガイド1968年12月号でテストされました個体であるダウエル90mm不良反経についても、そっくりなものがエイコーから販売されておりました。

天文ガイド 1969年12月号 エイコー STH 1550 (旧115) 90mm反射経緯台 広告
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 上記広告の エイコー 90mm STH 1550 (旧115) 反射経緯台についても、東京天文台・冨田弘一郎氏は天文ガイド1969年12月号56ないし68頁でテストされておられるのですが、以下のように述べておられます。

 「調査を開始してすぐ気がついたのですが、この機械はどうも前に一度テストしたことがあるような気がするのです。調べてみたところ、本誌昨年12月号で採用したダウエル製の90mm反射と瓜二つなのです。」
 「最近は自動車業界では業務提携と称して、二つの会社がお互いに得意なところを持ち寄って、一つの製品を作り上げたりしていて、2社からベースになる部分はほとんど同じ車が発売されている例があります。本機の場合も少しこれと似ていて同じ下請業者が、鋳型を使って作った望遠鏡をマークだけ張り替えて2社に供給しているのでしょうか。」

 ちなみに、冨田氏の上記疑問に対し、エイコーは「メーカーは答える」欄において以下のとおり回答しています(同書58頁)。

 「一部材料は、他社と同じ物を使用しております。全体的には(特に光学系統)弊社独自の企画設計に基づいて製造しております。類似品があっても弊社製品とは、関係がありません。」

 それで、このエイコー90mm反経の光学系について、冨田氏は以下のとおり評価されておられました(同書58頁)。

 「天候が悪く星像テストを行う機会がありませんでした。人工星を使用してのテストでは前にテストしたダウエルのものとは比較にならないくらい良いミラーです。」

 この天文ガイド1969年12月号では例のダウエル90mm反経の広告も掲載されているのですが、ここでは「改良型」となっています。冨田氏による酷評レポートを受けて改良しているものと思われますが、どこをどのように改良したのでしょうか?また、不良ミラーについては、もう少しましなミラーになったのでしょうか?

天文ガイド1969年12月号 ダウエル光学 成東商会広告 90mm反経 「改良型」 広告 「注文殺到」「申込あれ」「光学製品はもっとも信用ある本社へご注文が一番安全です」
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ダウエル光学 成東商会の屈折望遠鏡
  本題に戻りまして、いずれにせよ、富田氏のレポートからしますと、ダウエル光学 成東商会の販売していたミラーの中には、粗悪ミラーと言えるようなものもあった、という事実は否定できないと思われます。しかしながら、だからといって、同社の販売していましたミラーがすべて「三流品」「粗悪品」であったということにはなりません。
 また、ダウエル光学 成東商会が販売していました屈折望遠鏡についてはどうなのでしょうか。

ダウエル光学 成東商会の望遠鏡の取扱説明書
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 ここで、ダウエル光学 成東商会が販売していた天体望遠鏡の取扱説明書には、その屈折望遠鏡の光学性能に関して、「二重星 二重星の観測は対物レンズの良否と観測者の熟練によって大いに左右されます。我が社の対物レンズは最高の技術水準を行くものでドーズの実験値、120対物レンズ有効径二分解能をはるかに上廻る能力を発揮します」という記載があります。
 天体望遠鏡のカタログなどにのっています分解能データは、通常、ドーズの経験値「115・8÷口径」によるものです。他方、回折理論からの分解能の理論値は、人間の眼にもっとも敏感な波長500mmを前提として「125・8÷口径」とされているようです。上記にあります「120÷口径」というのは、ドーズの経験値と回折理論上の理論値の中間をとっているものでしょうか?
 いずれにせよ、非常に厳しい基準であることには変わりはなく、ダウエル光学 成東商会は、当時販売していました対物レンズについて非常に優秀な光学系である旨説明しているわけです。
 しかし、どの天体望遠鏡メーカーも広告やカタログで、光学性能について自信満々に優秀品であると語ることは通例のパターンでございます。したがいまして、この点ばかりは、実際に自らの眼で観望して確認してみなければ何とも言えないのではないでしょうか・・・・・・・・続く


天文ガイド1975年4月号 ダウエル光学 成東商会 6㎝級屈折経緯台 広告 「レンズは最優秀」「この道50年の誠実と信頼できる天体望遠鏡のキャリヤで卸値提供です」 焦点距離は f700 f800 f1000 など各種取り揃えていた
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