不可欠となる消費構造の変革このように、1990年以降のEUにおけるGHG削減は、偶然の要素や目的を異にする政策 の結果によるところが大であり、京都議定書が合意された1997年には こうしたトレンドが 明確であったにもかかわらず、したたかな外交によって 1990年比マイナス8%削減という 甘い目標で切り抜けたのである。 もう覚えている人は あまりいなくなったが、そもそも京都会議までEUは、他国が追随する なら マイナス15%削減を行うという交渉ポジションを取っていたのである。すなわち EU は、本当は マイナス15%削減を実現する自信があったのだろうと考えられる。 そのポジションからすると、2007年で −4.3%削減に止まっているのは、もともと 約束してもよいと考えていたレベルから10%ポイント以上削減が不足しているのである。 日本は マイナス6%どころか +8%も増加していて、約束から −14%ポイント削減が 不足しているという批判があるが、実は EUも自ら削減可能だと考えていたレベルからは、 同程度削減が不足しているのである。 EUの温暖化対策が効果を上げているように見える第3の理由が、産業構造の変化に よる排出の海外移転( オフショア・エミッション )である。 特に 英国は、経済が脱工業化 し、金融などのサービスを中心とする産業構造に変化したが、消費構造は 工業製品中心 のままであったため、製品輸入が増加する形で CO2の排出が輸出国に海外移転された。 現在、日本では、今後の中期目標を検討していく場合、現在の産業構造を前提に考えるから 削減目標が野心的でなくなるという批判がある。 しかし 逆に、産業構造を低炭素型に変革 しても、消費構造が低炭素化しない限り、炭素集約・エネルギー集約型製品の輸入が増える だけで、その生産に伴うCO2の増加を輸出国に押し付けるだけだということを認識しなければ ならない。 まさに その例が、「 環境先進国 」の英国である。 本質的な外交交渉の始まりとはオックスフォード大学他の研究者たちが、そうした英国のオフショア・エミッションを分析 した論文が、「Too Good To Be True? The UK’s Climate Change Record」(2007)である。 その論旨は、次のような諸点である。 1.英国の2005年までの削減は 2つの大きな要素によってもたらされている。 (1) 1990年代に 石炭から天然ガスにエネルギー転換が起きたこと。 (2) 1970年代から継続する英国経済の脱工業化により、エネルギー多消費型産業が 海外に移転したこと。 2.国内生産活動によるGHG排出は確かに減っている。しかし 一方で、英国は 脱工業化 の結果、膨大な工業製品を輸入・消費しており、こうした製品は英国内外の生産活動で GHGを排出している。 3.英国の温暖化防止の責務の対象が「 英国の消費活動によるCO2排出 」にあるとした場合、 2003年の英国の排出量は 1990年比19%増となる 4.英国が 脱工業化して、工業製品を輸入に切り替えた結果、よりCO2効率の悪い生産方式 の国に生産移転が進み、結果的に英国人の消費活動によって排出される地球全体のGHG 排出量は増加する結果となった。 こうした分析結果に対して、英国内の環境派も同調し、さらに 中国は分析結果をもとに、 「 自分たちの排出増加は、先進国の消費活動を支えるために否応なくもたらされたものだ 」 と主張している。 こうした議論を見てみれば、日本一国が 産業構造を変えれば より大きな削減が可能と考え ている人々も、 消費者の消費構造 と 全世界的な産業構造 を変えない限り、 自分の考えは 成立しない ということに気づくのではなかろうか。 ☝ ここまで見てきたように、EUの温暖化対策は、統計上のトリックを使ったり、偶然の産物を いかにも努力の結果のように見せたりすることによって、往々にして 過大評価されていること に注意しなければならない。 ただ、EUのしたたかなところは、メディアの情報伝達量の制約を逆手にとって 都合のいい 数字や事実のみをコンパクトにまとめて流すところにある。 何度も何度も同じメッセージや データの発表が繰り返され、それらを引用する報道が積み重なれば、毎日注意して温暖化対策 をフォローしているウォッチャーでもない限り、自然に頭に刷り込まれていくのである。 温暖化を巡る外交交渉は、こうした認識形成、世論形成から始まるといっても過言ではない。 ちなみに、環境NGO(非政府組織)のWWFも最近になって、「 EUの中期目標は、 海外クレジット購入などを除けば 国内削減分は実質4〜5%しかない 」と批判的にコメント しており、EUの温暖化政策の実態に ようやく気づいたようである。日本でも そのような 客観的な評価が行われることを期待したい。 以上
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緑の党の苦悩
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おめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
2010/1/3(日) 午後 11:13 [ 悲歌慷慨 ]
「悲歌慷慨」さんへ。 合掌
2010/1/5(火) 午後 7:26 [ kyomutekisonzairon ]