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今、福島の地は、放射能とともに 中央および地方の行政やマスコミなどによって、
一種 異様な世界が現出していますが、こうした中で、
この副読本が 他ならぬ福島大学の志ある方々によって作られたことは、大変意義深いことです。
彼らは、「 原発事故によって被曝した生活者として,このような不確実な問題に対する 科学的・倫理的
態度と論理を 分かりやすく提示したいと考え 」て、これを作ったと述べています。
そして、彼らが痛切に感ずる問題の根本を、ちょっとギャグ的に「 減思力(ゲンシリョク) 」と指摘しています。
「 原子力 」災害後の現在の陰鬱な状況が、「 減思力 」(思考力の減退)によっていると言うのでしょう。
しかし、よく考えてみると、
これは、ただ 福島の地だけの問題ではなく、今 私を含めて 日本国全体に及ぶ問題なのでしょう。
「 判断力・批判力が 育まれなくてはならない 」と、我々に訴えているように思います。
そして、文科省(の副読本)の致命的欠陥、すなわち 科学以上に大切な 「 倫理的態度 」 を! と。
合掌
放射線と被ばくの問題を考えるための副読本
〜“減思力(ゲンシリョク)”を防ぎ,判断力・批判力を育はぐくむために〜 福島大学 放射線副読本研究会
はじめに
2011年 3月 11日に発生した東本大震災より,東京電力 (株)福島第一原子力発電所の大事故が起きて,放射性
物質(ヨウ素,セシウム,プルトニウム など)が 大量に 放出され,福島県を中心とする広い地域の大気や水,土壌などが 汚染されてしまいました。 汚染された地域では,高い放射線量のため,長期にわたって 人の居住が制限
される地域が生じました。事故以前に設定されていた年間の追加被曝線量(医療除く)限度を超える放射線を浴び
てしまったり,その恐れがあるために,多くの人々が 避難を余儀なくされました。 避難の途中で亡くなった方や,
原発事故の影響を苦にして自殺に追い込まれた方もいました。 東日本の各地で,水道水の摂取や一部の食品の
摂取・出荷が制限されることとなり,日常生活にも 大きな悪影響を及ぼしました。
放射性物質は, その影響が収まるでに とても長い期間を要すため,これから 私たちは,放射線による被曝の問題
と向き合っていかなければなりません。
そのような中で 文部科学省は, 2011年10月に 小・中・高校生向けの放射線副読本を それぞれ作成しました
(以下,新副読本と省略します)。 新副読本は,福島第一原子力発電所の事故の後に作成されたものですが,事故
に関する記述が ほとんどなく, 放射線が身近であることを 強調し,健康への影響を 過小に見せるなど,内容が
偏っている という問題点が指摘されています。 また,原発事故の前にも 文部科学省と経済産業省資源エネルギー庁
が作成した 原子力に関する 小・中学生向けの副読本 (以下,旧副読本と省略します) があり,事故後に回収され
たり,ウェブサイトから削除されたりしましたが,これらも 原子力の推進側に偏った内容となっていました。
今回の原発事故で 教訓とすべき点の一つは,偏重した教育や広報により 国民の公正な判断力を低下させるよう
な,いわば “減思力(ゲンシリョク)” を防ぐことです。 そして,放射線による被曝, 特に 低線量被曝による健康への
影響については,正確なことは分かっておらず,専門家の間でも 見解が一致していません。 このような 「 答えの
出ていない問題 」については,どのように考えていけばよいのでしょうか。
私たち,福島大学放射線副読本研究会のメンバーは,学問に携わる者として,また,原発事故によって被曝した
生活者として,このような不確実な問題に対する 科学的・倫理的態度と論理を 分かりやすく提示したいと考え,
この副読本をまとめました。 今回の副読本では,国の旧副読本・新副読本における記述や ,原発推進派の見解を
積極的に載せることで バランスに配慮しながら, そこに見られる問題点を指摘すことで,判断力や批判力を育む
ことができるように工夫をしまた。 もちろん, この副読本も,批判的に読んでいただいて結構です。
この本の内容が,より多く子ども達や放射能汚染に苦しむ方々 ,そして,広く一般の市民にとって, 放射線と被曝 の問題を考えていくため の一助と なれば幸いです。
目次
副読本のポイント・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2
東京電力福島第一原子力発電所の事故 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3〜 4 放射線について ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 5〜 6 放射線による 放射線による健康への影響 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7〜 8 事故による放射性物質拡散への対応上留意点・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9〜10 判断力 ・批判力 を育む ために ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・11〜12 不確実な問題に 関する社会的意思決定のため ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・13〜14 放射線と被ばくの問題を考える 際のヒント・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 15〜17 読本のポイント
・・・
リスクの公平性について考えましょう
放射線の被曝による健康リスクを考える際には,便益(ベネフィット)や負担の公平性についても考慮され
なければなりません。放射能に汚染された地域での無用な被曝には,便益は伴っておらず,負担にも不公平性
があります。
情報を鵜呑みにしない判断力や批判力を育むことが大切です いわゆる 「原子力の安全神話」 は,原発推進側に偏った教育・広報によってつくられてきました。二度と同じ 過ちを繰り返さないためにも,教育や広報における公平性を追求するとともに,一人ひとりが判断力や批判力を
育むことが大切です。
@ 青の色付けは kyomu-が付しました
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監修: 福島大学 放射線副読本研究会
福島大学放射線副読本研究会は,地域貢献活動の一環として,放射線と被ばくの問題について研究し,副読本 などの媒体を通じて情報発信することを目的として,福島大学の教員有志により結成された組織です。
(2012年2月設立)
メンバー: 荒木田 岳(行政政策学類),石田 葉月(共生システム理工学類),井本 亮(経済経営学類), 遠藤 明子(経済経営学類),金 炳学(行政政策学類),熊沢 透(経済経営学類), 小山 良太(経済経営学類),後藤 忍(共生システム理工学類),坂本 恵(行政政策学類), 佐野 孝治(経済経営学類),十河 利明(経済経営学類),中里見 博(行政政策学類), 永幡 幸司(共生システム理工学類),沼田 大輔(経済経営学類),藤本 典嗣(共生システム理工学類), 村上 雄一(行政政策学類),森 良次(経済経営学類) (五十音順,2012年3月現在) 著作・編集: 後藤 忍(福島大学 共生システム理工学類,放射線副読本研究会)
副読本の電子ファイル版:
電子ファイル版は,後藤忍研究室(環境計画研究室)のウェブサイトに掲載予定です。 後藤忍研究室ウェブサイト: https://www.ad.ipc.fukushima-u.ac.jp/~a067/index.htm 発行: 福島大学 環境計画研究室, 2012年3月 |
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