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産経新聞が 鼻血騒ぎについて、以下のような記事を載せている。
この記事は、件の漫画と違って、おそらく 行政や立法の人たちからは
「風評被害」と言って抗議されないであろう。
つまり これは「風評」ではないと、彼らは評価するに違いない。
なぜなら、原発事故以来 彼らが よく耳にして来たものだし、こういう言葉
に対して抗議するどころか、彼ら自身も これを喋ってきたからである。
記事の内容は、いわば、今日 行政・政治文化にまでなっている。
そこで、以下の産経の記者が書いた文章を読んで、
この,「 風評ではない言葉 」を 少し 検討してみたい。
「美味しんぼ」“鼻血は被曝”を検証
産経 2014.5.20
小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ』の漫画「美味しんぼ」で、東京電力福島
第1原発事故による放射線被曝が原因で、福島で鼻血が出た人がたくさんいる
などの描写があった。放射線の体への影響は既に多くのことが分かっており、
漫画に描かれたような事実はあるのか。被災地の復興のためにも合理的な判断
と冷静な対応が求められている。(平沢裕子)
1000ミリシーベルト超で急性障害
鼻血は、放射線による急性障害の場合に出ることが知られている。被曝で骨髄
の造血能力が著しく抑制され、白血球や血小板が減少することで出血し易くなる
ためだ。ただ、急性障害は一度に1千ミリシーベルト(1㏜)以上の放射線被曝をした
場合に起こるとされる。
東電によると、今回の事故以降に現場作業に携わった人でも 一度に 1千ミリ
シーベルト超の被曝をした人はおらず、これまでの累積被曝線量でも1千ミリシーベルト
超の人はいない。廃炉作業にかかわる作業者に鼻血が多発するような事例もない
という。
福島県の調査では、放射性物質の降下量が多かった飯舘村や浪江町を含む
相双地域の住民が事故後、約4カ月で受けた推定の外部被曝線量は 10ミリシーベルト
未満が 99・8%、10ミリシーベルト超は 127人いたが、最大で 25ミリシーベルトだった。
漫画では、登場人物が 第1原発構内の見学後に鼻血を出し、疲れ易くなったと
する描写がある。記者も 今年2月、同様の見学をしたが、同行者で鼻血を出した人
はいなかった。
記者自身、疲れ易くなったということもない。 見学では 構内に入る前に個人線量計
をつけ、構内で どれだけの線量を浴びたかを調べる。記者の場合は 0・01ミリシーベルト
で、航空機旅行「東京−ニューヨーク」(片道)の10分の1の線量だ。
もちろん、事故後に福島県内で鼻血が出た人はいただろう。鼻血は高血圧や
動脈硬化など循環器系の病気や腎臓・肝臓病などでも出やすくなる。ワーファリン
などの抗凝固薬を服用している人や女性では生理中に出やすい。また、知らない
うちに鼻をぶつけたり、風邪などで鼻に炎症ができても鼻血は出る。
影響小さい低線量
漫画ではまた、低線量被曝の健康影響を心配し、前双葉町長の「 今の福島に
住んではいけない 」との言葉を紹介している。福島に住んでいる人や福島への
旅行を計画している人の中には 不安に思った人がいるかもしれない。
ただ、100ミリシーベルト以下の低線量被曝の健康への影響については 100年近く
も研究されており、極めて小さいことが分かっている。現在、福島県で暮らす人々
が原発事故によって余分に受ける放射線量は年間 1ミリシーベルト程度で、健康への
影響が心配される数値ではない。
リスクコミュニケーション(リスコミ)を研究する「リテラジャパン」代表で、原発事故後、
飯舘村のアドバイザーを務めた西沢真理子さんは「 事故後、リスクを正確に伝える
リスコミが適切になされなかったことで、放射線のリスクを正しく認識できない人が
今も多いのは残念 」と指摘。そのうえで、「 放射線に発がん性があるのは確かだ
が、健康への影響は量で考える必要がある。低線量被曝の場合、喫煙や野菜不足
よりも がんになる リスクが低く⋆、現在の福島が心配されるような状況ではないこと
を理解してほしい 」と話している。
⋆ 放射線による影響 日本原子力文化振興財団
放射線と生活習慣によってがんになる相対リスク
(40〜69歳の日本人男性)
1000〜2000m㏜の被曝 1.8倍
喫煙、飲酒(毎日3合以上) 1.6倍
やせ過ぎ 1.29倍
肥満 1.22倍
200〜500m㏜mの被曝 1.19倍
運動不足 1.15〜1.19倍
塩分の取り過ぎ 1.11〜1.15倍
100〜200m㏜の被曝 1.08倍
野菜不足 1.06倍
出典:国立がんセンター調べ
「原子力・エネルギー図面集 2012」より
◇
■放射性物質は通常の食品にも
今回の件で、福島県の農水産物への風評被害が心配される。しかし、農水産物
は生産・出荷などの実態に応じて計画的に行う モニタリング(監視)検査が実施され、
安全を確認したうえで出荷される仕組みとなっている。
原発事故と関係なく、放射線を出す放射性物質は通常の食品にも含まれる。
中でもカリウムに含まれるカリウム40からの放射線が一番多い。食品1キロ当たり
に含まれるカリウム40は、ホウレンソウ 200ベクレル ▽魚 100ベクレル ▽コメ
30ベクレル▽ポテトチップス 400ベクレル。
カリウムは人間にとって必要な栄養素で、かつ、いずれ排泄され、健康なら体内
で一定量以上にはならない。
まず、「1000ミリシーベルト超で急性障害」 について。
この記述は、環境省が 「美味しんぼ」騒動について 5月13日付けで出した
造血機能低下(白血球や血小板が作られなくなる)は 約500mGy(0.5Gy)以上で現れる
とされ、鼻血の誘因となる出血傾向が生じるのは、それより高い被ばく線量です。
吐き気、嘔吐、脱力感は1000mGy(1Gy)未満では現れないとされています。
というメッセージと同じ考え方である。
即ち、「 鼻血は しきい値のある確定的影響なので、一般住民に問題となる
低線量被曝における 確率的影響としては あり得ない 」という ICRPの見解
からの いわゆる「演繹的思考」をしているのである。
或は マニュアル思考、また 昔の言葉では 教条的、最近の言葉では 官僚的
な思考なのである。また、ICRPやUNSCEARなどの権威を背景とした権威主義的
思考方法でもあろう。
そして、彼らは 「科学的」という言葉 や 「科学的らしい知見」を さかんに用いる。
一方、鼻血が出たり 倦怠感を覚えたりするのは、そのような言葉や知見とは
関係なく、身の上に感じたり 或は 周囲に見たりした事実を そのまま述べて
いるのである。そして、事故以前にはなかったことなので、因果関係は ハッキリ
とは分らないが、「放射線の影響かもしれない」と思うのである。
いわゆる、「帰納的思考」をしているのである。
そして、彼らは そういう経験から「放射線の影響かもしれない」と思うというのは、
そういう結果をもたらした原因を「仮説」として提示しているわけであろう。
こういう思考は、極めて 科学的思考である。ただし、これが科学になるには、
この「仮説」を 「実証」する手続きが必要である。
しかしながら、この仮説を提出しているのは、科学のシロウトの一般人なのである。
もし、この国に 科学者と言える者がいるとしたら、その人こそが この仮説が
成り立っているか否かを検証する役目を負うはずである。
特に、今日の社会では 科学者というのは、皆が皆なれるのではなく、そういう
資格を取得して 始めてなれ、業界を形成しているのであるから、当然 ある「仮説」
の実証は、一般人ではなく 彼ら科学者の仕事であろう。
もし、彼らが この仮説に対する反証を提示できないとすれば、この仮説は
その成りたつ可能性を ずっともち続けるというのが、科学というものであろう。
例えば、ニュートン力学で説明できない 今まで気付かなかった現象が発見されて、
始めて 相対性理論や量子力学が作られたと言われる。
もし、ニュートン力学で説明できない現象は存在しないとしてしまえば、それは 科学的
な態度ではない とされている。
科学においては、今の理論は つねに仮説である。それを 事実であると断定
する者は、科学者とは言われないはずであるし、今の理論(=仮説)を事実と断定
すれば、それは 科学的態度とは言われない。
科学者が、自分が習得した知見を 事実だと言ってしまえば、それは 独断に
なり、それを 大衆に 事実だとして伝えれば、それは 風評を流すことになるはず
である。これは、仮説であると言って 大衆に伝えれば、それこそが科学的態度
というものであろう。
放射線防護学というものも、仮説の上に成り立っている。
しかるに、3.11以後 彼ら専門家は その仮説を事実と信じさせるように 大衆
に伝えてきた。その言葉は 多くの場合 科学者としての謙虚さを欠いて独断的
であり、科学者として分限を越えて 行政的・政治的なものであった。
彼らは、自分たちの理論が 仮説であり、それは ある立場の上に構築された
理論であって、事実とは 必ずしも 等しいものではないということを 表明せず、
「理論(仮説)では こうである」 ということを、「事実は こうである」と錯覚する
ような語り口で、人々に語った。
人々に 業界の製品〜理論(仮説)〜の押し売りをしていたのである。
専門家の この言葉の詐術は、行政活動には 都合がよかった。否、専門家
は、行政活動に都合のいい理論(=仮説)を構築してきたと言っても、過言では
ないのである。彼らの どれ程が この己が業界の営みに気付いているかどうか、
極めて怪しいが・・・。
そこで、我々は 気づくのである。
事故以来、彼ら 及び行政は 彼らのことを 「専門家」と言い、「科学者」とは 余り
言わなかったことを。 そして、一方 彼らは 自分の知見は 「科学的」と言って
いたことを。
我々は、専門家とは 科学者のことだと錯覚していたが、上に指摘したように、
彼らの言動は 少しも科学的ではなく、専門家的であったのである。
「専門家」というのは、必ずしも「科学者」ではないのは、誰でも 知っている。
( 私は、 「鼻血や倦怠感は 放射能の影響である」と断定しているのではない。
科学者or専門家、行政、立法 及び マスコミの姿勢を問題としているのである。
この姿勢が、この度の原発事故を引き起こした 大きな要因だと考えているのである。) 科学が「確か」と言える守備範囲は、現実or事実全体の ごく一部であることを、
科学者は知っているはずである。
今中哲二氏は、それを 下図で説明している。
http://livedoor.blogimg.jp/amenohimoharenohimo/imgs/c/6/c65f6e1b.jpg
科学をもって 「確かかどうかはっきりしない」領域は、科学が「確か」としたり
「あり得ない」とし得る領域より、はるかに広いのである。
しかるに、特に 事故以来 「すべてを疑う」はずの科学者(と言われる人々)が、
「はっきりしない」領域について言及し、その言を 人々が 「確か」なものと信ずる
ような言い方を、さかんにしてきた。この時、彼らは 「科学者」というより「専門家」
と言われ、また そう自称してきた。
ここに、
「科学者」というものが ある方向に 大衆や行政を導くために よく使う 詐術がある。
「科学」というものに対する 一般の 過剰な信頼を悪用して、自分らの主観or立場
・都合を 我々に押し付け、我々の素朴な感覚を 抑圧するのである。
一般の意見や感覚を排するのに、「それは 科学的でない」「これが 科学的である」
という言葉を、彼らは いかに濫用してきたことであろうか!
また、一般の我々も、彼らの言葉を真似て、事態がよく分からないままに、
「それは 科学的でない」とか 「これが 科学的である」とかと言って、自己の主張
や都合を相手に押し付けて、相手の言を封じてきたことであろうか!
そして、今日 民主主義国の行政やマスコミは、日本だけでなく どの国でも、
このような科学者 及び 一般人の詐術を重宝してきた。
否、行政やマスコミは、事実に立脚して存在できるのではなく、この詐術の上に
はじめて存在でき、その活動をすることができているのであろう。露骨な権力行使
が 難しいからである。
「確かかどうかはっきりしない」ものを、「確か」さの権化たる科学者が 「これが
確かなものである」という風に言ってくれれば、行政やマスコミは‘虎の威を借る
狐’よろしく、易々と事を運び 大衆にものを言うことができるのだ。
このようにして 行政は「原発の安全神話」 を造り出して 原発を 鋭意 推進した。
そして、事故を起した後も、行政は 各種の委員会を作り、そこに 専門家を招集
して、今度は 「放射能の安全神話」を造りだしてきたのだ。
今日、民主主義国家の行政は このような専門家なしには、その活動に 正当性
を得ることができないのである。
彼らは、この専門家や行政の言動を、決して 「風評」とは言わない。
彼らにとって、「風評」の出所は つねに シロウトの一般人である。 そして、
その「被害」は、その風評で その活動を否定or妨害される 専門家や行政
ではなく、民間の ある利害関係者がこうむるものとされるのが 常である。
ここにも、彼らの巧みな詐術がある。
こうした行政の例は あまたあるが、一つ 下に挙げる。
「科学的知見に基づく正確な情報を」と経産相 「美味しんぼ」問題で
産経 2014.05.20 (つづく)
1.日本肥満学会/JASSOでは、
BMI=体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}
・BMI=22が最も病気にかかりにくい指数として、 標準体重=身長(m)×身長(m)X22
としている。
例えば、体重:52kg 身長:1.7m ・・・ BMI 17.99
50kg 1.7m ・・・ 17.30 痩せすぎ
体重:70kg 身長:1.7m ・・・ BMI 24.22
77kg 1.7m ・・・ 26.6 肥満
4. ビッグコミックスピリッツ編集部
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まだ、普通に、佐藤雄平が知事をしていること自体
風評被害と言うのか、福島県民の真意を疑われる
悲しい結果となっていますね。
巨額な税金投入、何か、意味があるのでしょうかねぇ
若い家族を呼び戻そうとしている老人とか
本当に止めて欲しいですよね。
ポチッ
2014/5/20(火) 午後 8:05
sukisukiscript さんへ。こんばんわ。
福島県or県民のあり方は、日本全国に 甚大な影響を与えていますね。
さらに、再び事故(国内や近隣国での事故)が起きた際の 事故対応の前例に
なりますので、そういう意味では 国内にのみならず、世界中にも 甚大な
影響を与えるものでしょうね。
しかし、当地の人々は、被害者意識に強く縛られていて、自分たちの考え方や
言動が、また自治体のあり方が そういう公性をもっているという視点が 弱い
ですね。自分の事しか考えられない状態です。
そのため、県外や外国の人々は 苛立つわけですね。もうちょっと その主観性
から離れて、深く広く 物事を考えてくれよ! と・・・。
そうすれば、もちろん 佐藤雄平県知事は、とうの昔に知事の職におれなく
なっていたでしょうし、政府の 除染&帰還政策は 拒否できていたでしょう。(続)
2014/5/21(水) 午前 0:02 [ kyomutekisonzairon ]
これは、福島の各界の指導者層が、事故以前から深刻な問題を抱えていたため
だろうと思っています。
否、これは 福島県だけじゃないですね。日本国中の中央・地方の各界指導者層が
深刻な病を抱え込んでいるからだろうと思います。
原発がメルトダウンする ずっと以前に日本社会がメルトダウンしていたのだ
と思っています。合掌
2014/5/21(水) 午前 0:07 [ kyomutekisonzairon ]