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一切は、如来の大慈悲の光懐においてである。 |
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2009年12月20日
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日本で成果を上げた EUの政策宣伝効果前回、日本は コペンハーゲンでの国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15) に向けて、したたかな環境外交戦略を進めるべきだと訴えた。 しかし、日本国内では、温暖化対策に積極的で効果を上げている欧州連合(EU)を見習って、 削減目標も「 野心的 」なものを掲げ、世界の議論をリードすべきだという声が多い。 EUの政策宣伝効果は、日本において 最も成功していると言ってよい状況だ。 日本の国内世論 が 今後、EUの宣伝に惑わされて、日本政府の外交戦略の足かせになることがないよう、 ここで EUの政策実態を見ておきたい。 EUが 温暖化対策で 効果を上げているように見える理由は 3つある。 それらは、 温暖化問題に詳しい人には 周知のことである。 しかし、中期目標決定を機に、これまでよりも 幅広い各層の人たちも 議論に参加し始めている今、「 EU礼賛論 」をナイーブに受け入れる ことがないよう、EUがいかに宣伝上手かを再度強調しておくことには大きな意味がある。 第一に 排出削減を測る基準年の選択 や 「EUバブル( 京都議定書上、EU加盟国一括で 目標達成すればよいとされていること )」を利用して、いかにも 削減が進んでいるような 「 見栄え 」をつくることが可能であることだ。 下図は 米・日・EUについて、2005年の排出量を 京都議定書上の基準年の1990年と 比べたものであるが、仮に 基準年を1995年にすれば、削減幅の見え方が大きく変化して しまうことがわかる。 ※ 基準年が1990年の場合、EUはマイナス2%の削減となる( 米国:+16.3% 日本:+7.7% )。 しかし、1995年を基準年にすると1.1%の増加となり ( 米国:+10.4%、日本:+1.2% )、基準年の設定だけで 印象が大きく変わる 「 非野心的 」な EU中期目標EUが 現在掲げている中期目標についても、1990年比ならマイナス20%削減だが、 基準年を2005年にすれば マイナス14%削減となり、「 見栄え 」が悪くなってしまう ことが、EUが 1990年を基準年にこだわる一つの理由だ。 また、EUには 1990年に固執する現実的な理由もある。 それは、2004年以降に 中東欧12カ国がEUに加わり 27カ国になったことである。 京都議定書上のEUバブルは 15カ国で構成されているが、次期枠組みでは 拡大EU 27カ国 で バブルを構成することで、中東欧12カ国による1990年から2007年までのマイナス 25%強の削減実績が まるまる手に入ることになるのである。 EU15では、1990年比の2007年実績で マイナス4.3%の削減しか達成できて いないにもかかわらず、EU27では マイナス9.3%と2倍以上の削減率を確保でき、 マイナス20%削減という中期目標の半分弱は 2005年時点で既に達成していることになる。 すなわち、EUの「 1990年比2020年マイナス20%削減 」目標は、実際には 「 2005年比マイナス10%削減 」と、いまや 米国の中期目標よりも「 非野心的 」なもの となっているのである。 しかし、基準年やEUバブルというような事情は テクニカルな問題で、かつ説明も煩雑に なるため、テレビや新聞のような情報量が限られたメディアにおいては なかなか報じられない。 EUも それに乗じて、京都議定書では EU15カ国ベースでのバブルしか認められていない にもかかわらず、最近では EU27の数字を前面に出すことが多い。 そのためもあって、条件が全く変わってしまったことには触れられず、単純な削減率比較 ばかりが 表に出る形になっている。 その結果、EUの温暖化対策だけが効果を上げていて、 EUの中期目標が あたかも「 野心的 」なものであるかのような報道がなされ、EUの 宣伝戦略が効を奏しているのが現状だ。 英・独の実績の半分は削減政策とは無関係EUの温暖化対策が効果を上げているように見える第2の理由が、 1990年から 2007年にかけての温室効果ガス(GHG)削減( EU15で二酸化炭素換算マイナス1.8億t、 土地利用・土地利用変化及び林業部門の活動を除く )のほとんどすべてが、温暖化対策に 熱心な 英国とドイツの排出削減( 両国で二酸化炭素換算マイナス3.9億t )によって もたらされていることである。 ところが これらの排出削減は、大半が 1990年から2000年までの間に もたらされたもの であり、それ以降は、2007年の記録的な暖冬による大きな二酸化炭素(CO2)削減を除けば、 排出削減のスピードは 大きく鈍っている。 日本では あまり知られていないが、こうした 1990年から2000年までの 英独の 大きな削減が 何によってもたらされたかを分析した報告書がある。 その報告書は 2001年の国連気候変動枠組み条約第6回締約国会議再開会合(COP6bis)の ために、ドイツ環境省の委託で フラウンホーファーなどの研究機関がまとめたものであり、 その表題も まさに「 ドイツ、英国の温室効果ガス削減──偶然か政策か (Greenhouse gas reduction in Germany and the UK - Coincdence or policy induced?:Study on behalf of German Federal Ministry of the Environment and German Federal Environmental Agency, 2001) 」 というものである。 その報告書の要点は、「 独英とも、( 政策及び東西統合や自由化がなかった場合のBAU からの削減のうち )約47%が 温暖化対策とは無関係な要因によるもの 」 ということである。 無関係な要因とは、次のとおりである。 独・英における 1990年から2000年までの温室効果ガスの削減要因を見てみると、 削減政策以外の社会や経済的な変動によって 大きな削減を実現していることがわかる (出所:Greenhouse gas reduction in Germany and the UK - Coincdence or policy induced? :Study on behalf of German Federal Ministry of the Environment and German Federal Environmental Agency) 24%近くを占めていることも日本と違う特徴であり、純粋なCO2削減政策によるものは 両国とも 3割程度であることがわかる。 ■ 澤 昭裕 氏 (さわ あきひろ) 日本経済団体連合会 21世紀政策研究所 研究主幹 大阪府生まれ。 1981 一橋大学経済学部卒業後、 同年 通商産業省(現 経済産業省)入省。 1987 プリンストン大学で MPA(行政学修士)取得。 通産省工業技術院人事課長、経産省産業技術環境局環境政策課長、資源エネルギー庁 資源燃料部政策課長などを経て 2004 8月 東京大学先端科学技術研究センター教授( 〜08年7月 ) 2007 5月より現職。 編著書:「地球温暖化問題の再検証−ポスト京都議定書の交渉にどう臨むか」 「大学改革 課題と争点」「競争に勝つ大学−科学技術システムの再構築に向けて」 「民意民力−公を担う主体としてのNPO/NGO」「無名戦士たちの行政改革」。 また、21世紀政策研究所で地球温暖化政策についての提言 多数。 京都議定書を越えてー新たな温暖化国際枠組みへの期待 21世紀政策研究所 澤 昭裕研主幹 NHK「視点・論点」2009年12月7日放送 25%削減は可能であり希望だ・新政権における環境エネルギー政策の行方と期待 飯田哲也のエネルギー・フロネシスを求めて (09/09/17) |
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