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毎日 2012年10月28日 地方版
県は26日、大船渡市産の野生のマツタケと金ケ崎町産の野生のナラタケから、国の基準値
(1キロあたり100ベクレル)を上回る放射性セシウムが検出されたと発表した。
県によると、野生のマツタケとナラタケで基準値を上回るのは初めてで、共に1キロあたり
130ベクレルのセシウムが検出された。県は同日付で両市町に、野生のキノコ類の出荷自粛を
要請している。
岩手県大船渡市の周辺地図-Yahoo!ロコ
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2012年11月02日
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原発事故で国道6号が不通 国道349号、交通量が急増 近所に行くのも命がけ
毎日 2012年11月02日 地方版
山間の集落が悲鳴を上げている。 原発事故の影響で、いわきや県中方面から 南相馬方面
へ向かう復興関連の大型車両などが、阿武隈山系の国道に「迂回(うかい)路」として殺到して
いるためだ。 特に、復興支援として 一部避難者を除いて 高速道路の無料化措置が終わった
今年4月以降、通行量は 急増。沿道の集落は 24時間、疾駆する車両の騒音と粉じんに悩ま
され、お年寄りや子どもは横断できず立ち尽くす。住民は「これでは“酷道”だ」と嘆いている。
◇ 住民「 これでは“酷道”だ 」 中央車線のない 細い くねくね道が続く、 田村市船引町新舘の国道349号。 木材や
建設資材、燃料などを積んだ大型車両に加え、事業用の車などがひっきりなしに往来する。
「 近所に行くのも命がけになっちまった 」。
新舘で生まれ育った面川アサエさん(87)が1日、目の前を走る大型車両をやりすごしながら
つぶやいた。 面川さんによると、朝6時前には 349号に大型車が殺到し始める。 新聞配達
もしている面川さんは、配達時間を 1時間前倒しし、5時半までに終えるようにした。
「 車にはねられたら犬死にだ。放射能だけでなく、原発事故はとんでもない副産物をもたらした 」
福島県田村市の周辺地図-Yahoo!ロコ
県警によると、原発事故後、迂回路として 阿武隈山系の国道の通行車両が急増した。
迂回路は 複数あるが、田村市内の349号は 主なルートが重複し、混雑が激しい。
最も通行量の多い迂回路は、いわき市の国道 49号から 349号に入って 北上、田村市、二本松
市、川俣町から 県道12号に入り、南相馬方面へ向かうルート。 いわき市内の 399号を北上し、川内村を通過、田村市で 288号、349号へ入り 北上するルートもある。
これらルートでは 死亡事故が頻発。今年6月に ワゴン車が 大型トレーラーと正面衝突し、
葛尾村のお年寄り4人が死亡した事故も、南相馬市から 避難先の三春町に戻る途中の 349号
だった。 また、田村市を訪れた中国人女性が 9月、349号を横断中に 乗用車にはねられ死亡
している。
県警は、事故が起きると、県トラック協会などを通じて 注意喚起の書類を配るなど防止策に
努めているが、ある県警幹部は「 警察の取り組みには限界もある 」と指摘する。 「 浜通りと
中通りを結ぶ道路は、県内の他地域と比べて 整備が遅れていた。 そこに 原発事故が起き、
避難車両が殺到して渋滞を招いた。それが 今は 迂回路の問題を引き起こしている 」
◇ 7割超「 迂回路に利用 」−−田村署アンケ 田村署は 1日、国道 349号を通行中の ドライバー 85人に行ったアンケート(9月実施)の結果
を発表した。 回答者の7割超が、原発事故で 通行規制中の国道6号などからの迂回路として
利用していることが判明した。 また、登下校中の子どもやお年寄りの横断に ヒヤリとしたり、
ごみの投げ捨てなどモラルの悪化や、過積載が原因とみられる道路の破損が目立つとの回答
も寄せられた。
原発事故後、警察が迂回路の交通状況について 本格的な調査を行ったのは 初めて。
同署によると、避難区域の住民を除き 高速道路の無料化が終了した 今年4月以降、国道349号
の通行量が急増した。 震災前は 約9割だった自家用車の通行は 震災後、6割弱に減少する
一方、事業車は 1割から 4割超に増えた。 出発地や目的地も、半数程度が 田村市内だった
のが、震災後は 8割近くが市外。 その多くが 迂回路として通行している。
同署は、国道事務所など 関係機関と連携し、カーブミラーや幅員減少の表示設置を進める
と共に、速度違反や過積載の取り締まり強化も検討している。
同署幹部は 「 管内の交通関連事故は 震災前と ほぼ同じだが、いつ深刻な事故が起きても
おかしくない状況だ 」と警告している。
河北新報 2012年11月02日
福島第1原発事故の除染で出る放射性物質を含んだ水の処理をめぐり、 環境省と 相馬市の
見解が分かれている。 同省は「 放射線量が ある程度低ければ 排出して構わない 」との立場。
市は「 放射性物質濃度を極力下げないと 市民が不安がる 」と異を唱える。除染水の排出基準
がなく、両者が 一致点を見いだせずにいる。
相馬市は 放射線量の比較的高い玉野地区を中心に 住宅の除染を行っている。 対象は 約150軒で うち約100軒(10月26日現在)を終えた。屋根などを水で洗い流して 排水を回収
する。 水は 1軒200〜300 ㍑ 必要で、放射性物質濃度は 1 ㍑ 当たり300〜400㏃に上る。
環境省は 水の処理について「 不純物を沈殿させ、水周辺の空間放射線量が低くなれば上澄み
を排出して問題ない」(水・大気環境局) と簡易な処理で十分との考えを示し、市に伝えている。
市は 慎重で、水を もみ殻とイオン交換物質に通して浄化する装置を独自に整備し、濃度を
水道水の濃度基準に当たる 10㏃以下に下げて 地元の川に流している。 立谷秀清市長は
「 排水は 河川で拡散するので、ここまでしなくても安全だろうが、市民の安心感を得ることを
優先した 」と説明する。
浄化装置の整備費は 約400万円。 国は「 過度な処理 」と見なし、今の所 国費で賄う考えは ない。 このため、市は 除染費全体をやりくりして整備費を工面した。「 国は10㏃以下にしなくて
もいいと言うが、住民感情は異なる。 国の責任で予算化してほしい 」(民生部)と要望する。
除染は 原発事故がもたらした新しい課題で、除染水の排出基準は まだ設けられていない。 環境省は「 基準を作れば、検査などで除染作業が遅滞する可能性がある 」と策定に消極的だ。
市は「 基準と処理方法を明確にしてほしい 」と言う。 基準がないために 両者が自己判断し、
歩み寄りにくい状況になっている。
ワカサギ釣り解禁 北塩原桧原湖と小野川湖 2012/11/02 【福島民報】
北塩原村の桧原湖と小野川湖のワカサギ釣りは 1日、解禁となった。早朝から多くの釣り客
が訪れた。ドーム船などに乗り込み次々と釣り上げていた。
同村の民宿えんどう には 約50人が訪れた。午前中で 150匹以上釣った人もいた。福島市の
無職樋口忠さん(64)は「 毎年、楽しみにしている。今年も来ることができて良かった 」と話した。
県のモニタリング調査で、両湖のワカサギは 放射性セシウムが食品衛生法の基準値(1キロ
当たり100㏃)を下回っていることから、放流している。 桧原漁協は 例年通り、解禁した。
10月31日に 県が発表した検査結果では、桧原湖のワカサギは 1キロ当たり 31.4㏃が検出
された。 同漁協は 今後も 両湖で 1週間おきに交互に調査する。 遠藤栄久組合長(64)は
「 検査結果を速やかに公表する。安心して楽しんでもらいたい 」と語っている。 |
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b. SPEEDIの稼働状況
本事故においては、ERSSからの放出源情報が得られなかったことから、SPEEDIでは、
当初、単位量放出の放出源情報 や ERSSによる類似事象の解析結果に基づき予測され
た放出源情報を用いて、予測計算等が行われた。
まず、原安技センターは、文科省の指示により、3月11日16時40分に単位量放出による 予測計算を開始し、その結果は、1時間ごとに、保安院をはじめとする関係機関に配信され
た。 最初に計算された単位量放出による予測計算図形は、以下のとおりである。
また、保安院、文科省、安全委員会事務局の担当者は、本事故発生後、それぞれ 単位量
放出以外の仮定値を用いた予測計算も行った。
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3856371/naiic.go.jp/wp-content/uploads/2012/08/4.3.4-2-630x462.jpg
図4.3.4−2 SPEEDIの単位量放出による予測計算図形(11日 16時-17時の空気吸収線量率予測
c. 安全委員会によるSPEEDIを用いた放出源情報の逆推定計算
3月16日 安全委員会は、文科省が担当しているSPEEDIを用いた計算を、直接、原安
技センターに依頼して行うことが可能になったため、放出源情報の逆推定計算 及び その
結果に基づく放射性物質の拡散状況の再現計算を開始した。
SPEEDIを用いた放出源情報の逆推定計算とは、環境放射線 モニタリング によって得られた
ある地点、ある時間帯の放射線量の実測値と、SPEEDIの単位量放出による予測計算に
よって得られた同じ地点、同じ時間帯の放射線量の予測値とを比較し、その比率をもとに、
過去の放出源情報を さかのぼって推定する、という計算方法である。 さらに、この逆推定
計算によって得られた 過去の放出源情報をもとに、再度SPEEDIによる計算を行うことに
よって、その時点までの放射性物質の拡散状況を再現することも可能である。
この再現計算による結果は、環境汚染状況の全体像の把握に役立ち、防護対策の参考
資料となる。
もっとも、このような放出源情報の逆推定計算は、チェルノブイリ 原発事故やJCO事故の際に
行われたことがあるのみであり、手順書も準備されていなかった。 そのため、これら過去の
事故の際に逆推定計算を経験した者以外の者にとっては、逆推定計算を実施すること自体
が困難であった。
また、逆推定計算を行うためには、実際に放射性物質の拡散が始まってから ある程度の
期間が経過し、比較対象となる環境放射線 モニタリング による実測値が相当数蓄積されること
が必要であるため、事故発生から逆推定計算の実施が可能となるまでに 時間を要した。
安全委員会は、過去に逆推定計算を経験した専門家の協力を得て、環境放射線モニタリング
による実測値の蓄積と並行しながら、逆推定計算及び放射性物質の拡散状況の再現計算
を進めた。 3月16日以後、逆推定計算に必要な放射性核種の大気中濃度データを集める
のに時間を要したが、逆推定の計算は 23日朝ごろに終了した。
d. 政府、福島県による SPEEDIの予測計算結果の取り扱い
「3)a.」のとおり、本事故のように事故発生後 長時間にわたって ERSSから放出源情報が
得られず、単位量放出や仮定値を用いた SPEEDIの予測計算のみが可能となる事態は、
モニタリング 指針にも定めがなく、保安院や文科省を含む関係機関は想定していなかった。
そのような経緯もあり、これら関係機関においては、幹部も担当者も「 本事故は SPEEDI
が使える事態ではない 」と判断し、基本的に SPEEDIは活用できない という結論に達した。
その結果、本事故の初動において、これら関係機関の間はもとより、関係機関の内部でも、
SPEEDIによる予測計算の結果の活用法について 組織的に検討されることはなかった。
そして、SPEEDIによる予測計算は、一部において、緊急時 モニタリング の測定地点の決定
やスクリーニングの優先順位の判断のための参考資料として利用されるにとどまった。
また、本事故の際、住民の防護対策を実質的に検討していた官邸政治家に対して、初動時
に SPEEDIによる予測計算の結果が伝達されることもなかった。
SPEEDIによる予測計算の結果は、3月12日以降、福島県災害対策本部にも電子メールで
送信されていたが[134]、同本部においても 予測計算の結果を組織的に活用するという意識
が薄く、受信した合計86通の電子メールのうち65通を、組織内で情報共有しないまま削除
した[135]。
ERSSとSPEEDIは、基本的に、一定の計算モデルをもとに将来の事象の予測計算を行う
システムである。SPEEDIは活用できる場面もあるが、今回の事故では、環境放射線 モニタリング
による補完もできず、初動の避難指示に利用されることはなかった。予測システムの限界を
補完してこなかった関係機関の姿勢には大きな問題がある。
a. ERSSの機能の限界
「1)a.」のとおり、ERSSは、プラントからの情報等をもとに将来の事故の進展を解析し、
放出源情報を予測計算するシステムである。 しかし、「2)」で挙げられているように、ERSS
の解析コードでは、プラントの格納容器から放射性物質の放出量を事前に予測する確度は
高いとはいえないことから、ERSSによって算出される放出源情報は、一定の不確実性を
含んだものとなるという限界がある。
しかも、本事故の場合は プラント情報が得られず、ERSSによる事故の進展予測は、事前に
データベース化されている典型的な事故想定に基づき行われたため、プラント情報が得られる
場合に比べて、放出源情報は いっそう不確実なものとなった。
b. SPEEDIの機能の限界
「1)b.」のとおり、SPEEDIの予測計算に用いられる値には、① ERSSによる予測計算の
結果、 ②単位量放出(1Bq/h)、 ③その他の仮定値、がある。
しかし、①のERSSによる予測計算の結果は、「4)a.」のとおり不確実性を含むものであり、
また、②、③については、もともと仮定値にすぎない上、大量に放射性物質が放出される
時期が不明である場合には、どの時期の計算を前提として避難・退避を判断すべきか不明
である。 風向きが安定している時の短時間の予測計算は、一時避難のためには ある程度
の正確性があるといえるが、長期間の避難を想定する時には、予測計算を根拠として
避難指示を決定することは困難であろう。
予測計算に用いられる気象予測情報も、特に 局所的な降雨、降雪等の予測精度には
限界があり、また 刻々変化する気象情報を反映させて 避難方向の指示を出すことは現実
に困難である。
したがって、SPEEDIの予測計算の結果も、その正確性は高いとは言いがたく、特に、 ERSSの放出源情報が得られない場合には、それのみをもって、初動における避難区域
の設定の根拠とすることができるほどの正確性を持つものではない。
なお、参考までに、本事故が発生した 11日から12日にかけてのSPEEDIによる予測
計算の結果は、以下のとおりである。 「図4.3.4‐3」は、第一原発から半径3km圏内に
避難指示が出される直前のもの、 「図4.3.4‐4」は 半径10km圏内に避難指示が出される
直前のもの、 「図4.3.4‐5」は半径20km圏内に避難指示が出される直前のものである。
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3856371/naiic.go.jp/wp-content/uploads/2012/08/4.3.4-3-630x452.jpg
図4.3.4−3 SPEEDIの単位量放出による予測計算図形(11日 20時-21時の空気吸収線量率予測)[136]
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3856371/naiic.go.jp/wp-content/uploads/2012/08/4.3.4-4-630x454.jpg
図4.3.4−4 SPEEDIの単位量放出による予測計算図形(12日 5時-6時の空気吸収線量率予測)[137]
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3856371/naiic.go.jp/wp-content/uploads/2012/08/4.3.4-5-630x456.jpg
図4.3.4−5 SPEEDIの単位量放出による予測計算図形(12日 18時-19時の空気吸収線量率予測)[138]
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3.6 緊急時における政府の情報開示の問題点
SPEEDIによる計算結果は、本事故発生直後の段階では公表がされなかった。また、後に
計算結果を公開した際にも、それら計算結果の図形の意味や評価等について、必ずしも十分
な説明が行われなかった。そのため、住民に、この結果が 早く公表されていれば 放射線被曝
は防げた、あるいは 政府は都合の悪い情報を隠そうとしているのではないか との不信感を
与えた(SPEEDIデータ及び一連の公表の経緯は「4.3.4」)。
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1) 緊急時における予測システムの概要
原子力災害時の応急対策を迅速かつ的確に行うため、国は、緊急時における予測 システム
を開発してきた。それが ERSS と SPEEDI である。事故発生時には、ERSSを用いて、原子力
施設から大気中に放出される放射性物質の核種や時間ごとの放出量(「放出源情報」)を算出
し、この放出源情報をもとに、SPEEDIを用いて事故の進展に伴う環境への影響の予測計算を
行い、SPEEDIの計算結果をもとに、避難等の応急対策を検討することが予定されていた。
a. ERSS(緊急時対策支援システム)
ERSSとは、原発から送信されるプラント等の情報に基づき、①原子力発電所のプラントの
状態を監視し、②事故の進展を予測して、外部への放射性物質の放出の状況を予測計算
するシステムである。
昭和61(1986)年の チェルノブイリ原発事故を契機に、昭和62(1987)年から原子力工学試験 センター(当時)によって開発が進められ、平成8(1996)年に運用が開始された。
ERSSの整備、維持、管理と機能拡充は、経産省の所管事項とされ、解析、予測計算の実施
を含むERSSの実際の運用管理は、JNESが行っている。
ERSSは、① プラントの状態を把握するために、原発から、電源の作動状況、原子炉等の 冷却状態、原子炉圧力・水位、放射線測定値等のデータを自動的に収集し、これらのデータを
もとに、一定の計算モデルを用いて、原子炉、原子炉格納容器等の状態を判断する。
また、② これらのプラントの状態に関する判断結果を一定の計算モデル に入力することによって
炉心溶融、原子炉容器破損・格納容器健全性喪失等の事故の進展予測を行い、さらに放出源
情報の予測計算を行う。
なお、プラント情報が入手できない場合には、事前に データベース化されている典型的な事故 想定 及びその解析データをもとに 事故進展を予測することも可能である。
ERSSによる予測計算の結果は、住民の防護対策の検討のために、保安院ERC(経産省緊急 時対応センター)、安全委員会、オフサイトセンター等の関係機関に送付される。
また、次に述べるとおり、ERSSから得られる放出源情報の予測計算結果は、SPEEDIによる
予測計算に利用される。
b. SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)
SPEEDIは、原子力施設から外部へ放射性物質が放出される事故が生じた際に、放出源情報
及び気象予測等をもとに、周辺環境における放射性物質の拡散状況や住民の被曝線量等を
予測計算し、その結果を 主に地図上に図形として表示するシステムである。
昭和54(1979)年の スリーマイル島事故を契機に、日本原子力研究所(当時)によって開発が 進められ、昭和60(1985)年から運用が開始された。 開発当初は、施設周辺の環境における
放射性物質の分布状況と被曝線量などの予測に使われることが想定されていたが、その後、
原子力防災分野でも活用されるようになった。 SPEEDIの整備、維持、管理と機能拡充は、
文科省の所管事項とされ、予測計算の実施を含むSPEEDIの運用については、(財)原子力
安全技術センターが行っている。
SPEEDIは、① ERSSによる予測計算の結果、② 単位量放出(1Bq/h)、③ その他の仮定値、 といった放出源情報や、地形等のデータ、気象予測情報等に基づき、一定の計算モデルを用い
て、外部に放出される放射性物質の大気中濃度、地表沈着量、空気吸収線量率や、周辺住民
の被曝線量等を予測計算する機能を有している。 その計算の範囲は、最大100km四方
(高解像度は25km四方)、放出時から おおむね72時間後までとされている。 計算結果は、
地図上に図形で表示され、文科省、保安院ERC、安全委員会、立地道県庁、オフサイトセンター等に
設置された端末で閲覧できる。
2)本事故前に想定されていた予測システムの役割
ERSSとSPEEDIは 防災指針や環境放射線モニタリング指針において、避難指示等の住民の防護
対策の検討のための重要なツールと位置づけられた。 また、防災訓練においても、モニタリング
指針に従い、ERSSとSPEEDIを用いた住民の防護対策の検討が 繰り返し演習されていた。
他方、原子力防災に携わる関係者には、本事故の前から 予測システム の限界を認識していた 者もいた。 しかし、事故前に、予測システムの計算結果に依存して 避難指示を行うという既存
の枠組みの見直しは、実現に至らなかった。
a. モニタリング指針における位置づけ
モニタリング指針によれば、ERSSとSPEEDIの具体的な運用方法は、以下のとおりである。
① 事故発生後の初期段階では、一般に、放出源情報を把握することは困難なため、1Bq/h
(単位量放出)等の仮定値を入力して SPEEDIでの計算を行う。この計算結果をもとに、大気中
の放射線量等を測る緊急時モニタリング の計画を策定する。
② ERSSによる予測計算によって 放出源情報が入手できた場合、これをもとに SPEEDIでの
計算を行い、防護対策の検討のために早期入手が望まれる外部被曝による実効線量の分布
等の図形作成、配信を行う。
③ 緊急時モニタリング の結果が得られた場合には、その結果と SPEEDIによる予測計算の結果 を踏まえて、防護対策の検討、実施に活用する各種図形を用意する。
このように、モニタリング指針においては、ERSSから放出源情報が得られるまでは、単位量
放出等の仮定値を用いてSPEEDIによる予測計算を進め、放出源情報が得られ次第、それを
SPEEDIに入力して 予測計算を行うものと定められている。 しかし、ERSSから放出源情報が
長時間得られない場合における対応方法については、特に 明示的な記載はない。
b. 原子力総合防災訓練における取り扱い
毎年の原子力総合防災訓練では、モニタリング指針の定めに従い、実際にERSSによる予測
計算で得られた放出源情報を用いて SPEEDIによる予測計算を行い、その結果に基づき
避難範囲を決定する訓練が行われてきた。 しかし、ERSSから放出源情報が長時間得られ
ないという想定に基づく訓練は行われてこなかった。
c. 予測システムの役割についての原子力防災関係者の認識
ERSSやSPEEDIのモニタリング指針での位置づけや防災訓練での取り扱いを受け、官僚たち
には、次第に、ERSSやSPEEDIは、避難指示の判断材料になる重要なツールである、という
意識が浸透した。
他方、保安院、安全委員会、JNES、JAEAの原子力防災に携わる関係者には、防災訓練 における反省等を踏まえ、ERSSやSPEEDIの計算結果に依拠して避難区域の設定等を行う
こと自体に懐疑的な考え方を持つ者も出てきた。 関係者の主な疑問としては、
① ERSSの解析コードでは、プラントの格納容器が破損する時期や程度の予測が難しく、
格納容器からの放射性物質の放出を事前に予測する確度は低いのではないか、 ②ERSS
のインプット情報になっていない機器の誤作動などの理由により プラントの事故進展に影響
が及び、ERSSの事故進展予測機能が働かない可能性があるのではないか、 ③SPEEDIは、
局所的な降雨、降雪等の気象条件を反映した拡散予測は難しいのではないか
といったものがあげられていた。
しかし、「4.3.1」で詳述したとおり、ERSSやSPEEDIの計算結果に依拠しない避難指示を実現 するための防災指針の見直し作業は、迅速には進まなかった。
3)本事故発生時の予測システムをめぐる関係機関の対応
本事故では、ERSSから長時間にわたり放出源情報を得ることができず、事象の進展が
急速であり、広範囲に放射性物質が拡散される時期を予測することも困難であったため、
SPEEDIによる計算結果は 初動における避難区域の設定に利用されることはなかった。
a. ERSSの稼働状況
本事故では、福島第一原発の外部電源が喪失し、地震発生直後に、福島第一原発に設置
されていた原子炉内の情報等を ERSSに送信するためのサーバが停止して、プラントデータ
の伝送が中断された。 加えて、データ伝送のための政府の専用回線も断線した。その頃、
原子炉のプロセス計算機の電源も失われたことから、ERSSは 福島第一原発のプラント状態
を把握する機能を停止してしまった。
ERSSによる放出源情報の取得に当たって、電源の喪失が問題になり得ることは、本事故前
から認識されていた。 にもかかわらず、事故前に非常用電源が接続されずに放置され、
また、データ伝送ルートも多重化されていなかった。
このような状況にあったため、JNESは、東電からのファクスや電話によって得られた限られた
プラント情報 (機器の起動、停止、弁の開閉等) や、データベースから取り出した類似事象
の解析結果をもとに、ERSSによる事故進展の予測計算等を行い、その一部は官邸にも送付
された。 また、類似事象の解析結果に基づき予測された放出源情報も保安院に提供された
が、実際の プラントパラメータ に基づくものではなく、正確性に欠けるものだった。 (続)
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