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(1.のつづき )
ICRP勧告2007 第3章 「生物学的観点からの放射線防護」
「 LNTモデルは放射線防護の実用的な体系で使われるものとしては 科学的なもっともらしさは
備えているが、これを はっきりと証明できる生物学的・疫学的な証拠は 今後現われそうもない。
このモデルの低線量でのリスクには不確かさがあるので、委員会は、LNTモデルを 一般公衆の
健康上の見積もり(癌死亡の見積もりなど)の目的で、大きな集団が低線量の被曝を長い期間
にわたって受けた場合の、癌や遺伝病の発生数などの計算に用いるべきではないと考えている。」
――― この奇妙な文章を理解できる人は 少ないに違いない。ICRPは、その放射線防護の
理論体系を、放射線を扱う側の「放射線防護専用の道具」としては使えるが、放射線の障害
を被る側は使ってはならない( すなわち、ICRPの理論体系は 放射線障害を 正しく表現
していないが、放射線を使うための自己正当化の道具としてのみ作られた )と言っている。
ここに、武器は統治者が独占し、奴隷からは武器を取り上げる,いわゆる科学・技術帝国
が現出している。このようなことが 白昼堂々とまかり通っている現実を、私は理解できない。 この事態を ↓の2.および3.が指摘しています
2. ドイツ放射線防護協会
一般的には、それ以下であれば放射能が障害をもたらさないという制限値はない。これは、数十年前
からの一般的な学術上の定説である。 ドイツの放射線防護令も その中で規定されている放射線量の
計算規則において、ごくわずかな低線量までは 線形線量反応関係と この事実を前提にしている。
ごく わずかな低線量であっても、「危険ではない」、「害がない」、「心配ない」ということではない。
シーベルト(Sv)による放射線量表示は、放射線被曝による障害度を示す尺度で、放射線障害を推計
するのに役立つ。上限値or制限値を規定するとは、規制作成者が 規制作成者にとって 容認できる
と見られる病人数と死者数、つまり 人間の犠牲者数を規定するということだ。
有害化学物質の場合と異なり、低線量域 (数十m㏜まで) の放射線量値は それによって起こる疾患の
可能な重さを示しているのではなく、被曝した人間集団の中で発病する人の人数の可能性を示している
にすぎない。 それが いわゆる 実効線量になると、考えられる死者件数でしかなくなる。 疾患者の数は
それよりも多い。癌になっても 癌患者が みんな死亡するとは限らないからだ。ガン患者では症状が
はっきりと表に出る。だが、誰が癌になるかは 偶然だと思われる。従って、それを「確率的」放射線障害
という。 それに対し、高い放射線量によって放射線障害が現れ、放射線量の高さが急性放射線障害の
症状を決める場合、「確定的」放射線障害という。「差し迫った危険がない(No ImmediateDanger)」とは、
単に 急性放射線障害の危険がないということにすぎない。 しかし、確率的放射線障害(癌、白血病など)
になるリスクが高くなる可能性がある。つまり、「差し迫った危険がない」とは、警告を解除する意味とは
全く違う問題である。・・・
放射性セシウム・・・ 特に 筋肉細胞が カリウムよりも セシウムを優先して取り入れる。平衡状態では、
筋肉が 最も高いセシウムの放射能を示し、次に 肝臓、心臓、脾臓、性器、肺、脳と続く。
EU委員会は 1987年1月23日、欧州共同体理事会に勧告書を提出した。 勧告書は「独立高度専門家
臨時部会」によって作成された。 提案された「暴露経路管理システム」の基本は、「 社会に対する コストと
対策を導入することによる リスク が 放射線暴露を阻止することによる コスト と リスク を超えてはならない 」
ということだった。それによって、当時の放射線防護指令にあった最小化の原則が ICRPが宣伝してきた
「ALARA」(アララ)の原則にすり替えられた。 これは、合理的、現実的に達成できる限り低くということだ。 ここで、「合理的」というのは 経済性の観点から決められている。・・・ それ以来、EUにおいても 放射線
防護が 経済上の観点よりも その下位に置かれている。
・ 市民に情報がないというのは、日本独自の問題ではなく、世界中で原子力利用に関連する
一つの問題だ。 ・・・チェルノブイリ後に科学界で高い地位を占める学者たちが市民に対して
情報を隠蔽したようなことが (「放射線恐怖症」や「100m㏜以下の放射線量であれば危険が
ない」などの間違った決まり文句) 日本でも繰り返されるとすれば、それは悲劇だ。(P29、30)
↑ 玄侑氏の言葉には、真に驚きました。
・ (チェルノブイリ事故後) 西 ヨーロッパ では、農業製品の破棄処分、各国内と ヨーロッパ 諸国間での
食品流通への弊を恐れ、・・・汚染食品から市民を保護することが、農業と流通業界の損失の
後の最後に位置付けられた。(P19)
・ 平常時と緊急時で制限値が異なるということもあってはならず、緊急時でも平常時でも
最高の健康の保護が保障されなければならない。(P8 及び29)
ここで指摘されているのは、
㏜で上限値or制限値を規定するのは、規制作成者が 自身にとって容認できる
と見られる病人数と死者数、つまり 人間の犠牲者数を規定すること
であると。 被曝の健康影響の尺度㏜の数値の 解釈or取扱いについての問題 です。
たとえば、1m㏜という数値を どのように理解するかによって、その事態に対する
我々の行動・対処も変わってくるのは当然なことです。
3. ロザリー・バーテル(1929〜2012)
放射線暴露が癌で死ぬという わずかなリスクをもたらし、そのリスクから逃れられる見通しが
自動車事故から逃れられる見通しよりも高いという印象が、市民に与えられた。
健康状態の長期悪化をもたらす心臓病や糖尿病、関節炎、重いアレルギー が起る確率については、
まったく述べられていない。電離放射線も自発的流産、死産、幼児の死、ぜんそく、重いアレルギー、
免疫性の低下の原因となる可能性がある他、こどもの白血病や腫瘍、先天性疾患、精神障害、
身体障害の原因となる可能性があることは、ほとんどの人が知らない。
以上挙げた悲劇の多くは、個人ないし家族に直接悲劇をもたらすが、社会には間接的にしか悲劇
をもたらさない。
ここに指摘されているのは 以下の3点、
① 他のリスクと 不適切な比べ方をすることで、 放射線の生体への被害(リスク)を
大したことではないという印象を与える 詐欺的世論操作の非倫理性
↑の玄侑氏ですら、このトリックに眩惑されておられるほど、人々に深いインパクトを与えています
② 低線量被曝によるリスクは、癌と遺伝だけに限らず、広範な健康障害が
見られるにもかかわらず、これに限って 放射線被害とするICRPの 事実の矮小化
↑「癌と遺伝」: 記事冒頭のICRPの文書 及び 下の「参考」を参照
③ そして、放射線の被害を受けた人々の犠牲の上に、社会を成り立たせることを
「正当化」する ICRPの思想の 社会倫理上の問題
です。
参考:・ < チェルノブイリ・フォーラム2006 今西哲二氏
2005年9月ウィーンのIAEA(国際原子力機関)本部で、チェルノブイリ事故の国際会議が
開かれた。 主催は、IAEA、WHO(世界保健機構)など 国連8機関に ウクライナ、
ベラルーシ、ロシアの代表が加わって 2003 年に結成された 「チェルノブイリ・フォーラム」
であった。 ・・・
IAEA は、フォーラム以前にも、チェルノブイリ事故に関する大きな国際会議を3回開いている。
・ 1986年 8月: チェルノブイリ事故検討専門家会議.ソ連代表団の詳細な報告は、それまで の秘密主義に比べ 西側専門家を驚かせたが、事故の原因は 「運転員の規則違反」
とされ、原子炉の構造欠陥は不問にされた。石棺を建設中で事故処理は ホボ終了した
と報告された。
・1991年 5月: 国際チェルノブイリプロジェクト報告会. 放射能汚染対策を求める運動に手を 焼いたソ連政府が、IAEA に対し 「調査と勧告」 を求めた。
放射線影響研究所の所長であった重松逸造委員長のもと 国際チェルノブイリプロジェクトが
1年間の調査を行い、「 汚染に伴う健康影響は認められない 」とされた。ベラルーシや
ウクライナの専門家の抗議は無視された。
・1996年 4月: チェルノブイリ 10周年総括会議. 事故による健康影響は、1990 年頃から 急増をはじめた小児甲状腺癌のみで、その他の影響は 認められていないとされた。
・ チェルノブイリ事故による放射性物質で汚染されたベラルーシの諸地域における
非ガン性疾患 Y・バンダシェフスキー教授
BEIR委員会は・・・ 国防総省、エネルギー 省、原子力規制委員会、環境保護庁で、国家
挙げての作業だ。原発事故の後処理、日常的な放射能の放出、原発や核兵器工場の
除染や閉鎖に伴う放射能廃棄物の処理などにかかる莫大な費用を できるだけ節約する
ために、リスク評価をめぐって、必死の構えだ。・・・
ウクライナ 科学 アカデミー 泌尿器疾患研究所のアリーナ・ロマネンコは「 チェルノブイリ事故後
の ウクライナ における膀胱腫瘍発生:分子的機構 」を報告。ウクライナにおける膀胱癌の 発生率は、1986年 10万人あたり 26.2人だったのが、2001年には 43.3人に増加している。
(つづく) |
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2013年01月25日
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各年の測定のCs137最高値(㏃/kg)
環境放射線データベース http://search.kankyo-hoshano.go.jp/servlet/search.top
広島県(広島市東区)の場合
年次 64 65 66 67 68 69 70 71 72
55.8 25 64.9 45.5 71 63.8 60.9 欠 34.3
73 74 75 76 77 78 79 80 81 82
欠 37 38.7 31.1 74 12.5 6.8 5.1 26.2 17.1
83 84 85 86 87 88 89 90 91 92
23.9 8 29.6 14.8 28.5 40 18.5 32.3 29.2 29.2
93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02
32.3 15.4 21.5 41.5 26.2 23.1 23.1 13.8 26.2 18.5
03 04 05 06 07 08 09 10 11 16.9 20 7.8 12.9 14.8 16.9 8.2 6.2 6(7月)
「残留放射線」に関する放影研の見解」 2012年12月8日
島根県の場合
資料採取場所:八束郡鹿島町(69〜72年)、松江市(69〜72年)、太田市(70年〜)
年次 69 70 71 72 73
54.5 66.4 109.6 38.6 20.1 74.6 16.3 103.4 101.8 72.6 170.5 欠
74 75 76 77 78 79 80 81 82 83
85.1 114.7 102.5 70.3 33 85.4 55.2 79.7 102.5 77.7
84 85 86 87 88 89 90 91 92 93
192.4 155.4 114.7 44.7 31 32.3 32 32 33 54.6
94 95 96 97 98 99 2000 01 02 03
40 37.3 57 61 67 39 22.6 21.6 19.6 18
04 05 06 07 08 09 10 11
17 24 21.1 37.5 17 15 15.5 16.3(7月) ※ < 新潟、秋田 とともに 島根県の汚染レベルの高さは、どうしたことでしょうか?
山口県の場合
資料採取場所: 山口市(70〜72年)、萩市(70年〜)
年次 70 71 72 73 74 75 76 77 78
74 150 47.7 41.5 35 18.3 欠 48.4 48.4 7.8 12 14.1
79 80 81 82 83 84 85 86 87 88
8.5 14.8 11.8 12 17.6 10.2 22.2 25.6 15.9 21.5
89 90 91 92 93 94 95 96 97 98
29.2 23.1 24.6 18.7 14 12.9 10.8 13.4 18.5 15.4
99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08
11.2 8.7 12.5 8.6 18.5 7.1 7.5 9.8 7.1 10.8
09 10 11
8.7 7.1 13.5(8月)
徳島県(板野郡上板町)の場合
年次 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99
12.3 18.5 11.8 10.2 11.8 12.1 30.5 3.7 6.6 7.1
2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09
8.1 7.3 11.4 5.7 5.3 2.8 3.2 2.9 5 3.1
10 11 3.3 3.2(8月)
香川県(坂出市)の場合
年次 88 89 90 91 92 93 94 95 96
11.8 16 11 25 19 20 36 27 21
97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06
15 17 33 5 13 16 7.5 5.8 7.9 8.1
07 08 09 10 11 9.8 16 7.4 8 10(7月)
愛媛県(松山市)の場合
年次 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86
10.8 15.5 12 7.8 6.7 37 7.4 24.1 31.1 40.7
87 88 89 90 91 92 93 94 95 96
25.2 30.8 34 45 15.4 38 23 24 29 27
97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06
23 26 34 25 24 35.8 23 23 27.7 18
07 08 09 10 11
20.3 26.4 24.7 19 18(7月)
高知県(高知市)の場合
年次 64 65 66 67 68 69 70 71 72
104.4 5.1 63.2 84.5 85.3 72.3 130.4 84.4 68.1
73 74 75 76 77 78 79 80 81 82
欠 55.5 62.6 52.4 51.8 40.7 37 37 26.8 42.1
83 84 85 86 87 88 89 90 91 92
42.7 30.7 34.8 34.8 48.1 32.3 38 41.3 32.4 20
93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02
32.5 33.7 32.4 26.6 17.8 34.1 20 20.4 18 19
03 04 05 06 07 08 09 10 11 20.8 17.2 14.7 22 4.8 8.5 17 17 12.6(7月)
(つづく) |
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日経 2013 1.24
東京電力福島第1原発事故で、原発から半径20キロ圏内に取り残された牛の内部被曝調査
を進める福本学東北大教授(病理学)らの研究グループが、母牛よりも子牛の方に高濃度の
放射性セシウムがたまっていたとの研究結果をまとめ、23日付の米オンライン科学誌プロスワンに
発表した。 福本教授は、子牛と母牛が 全く同じ物を食べていたとは限らない とした上で「 代謝が盛んな
子どもの方が、放射性物質が溜りにくいとされるが、見直す必要があるのではないか 」と話し、
今回のデータはメカニズムの解明に向けた基礎データになるとしている。 グループは 2011年8〜11月、当時警戒区域に指定されていた福島県南相馬市と川内村で、
雌の成牛63頭(うち3頭が妊娠)、原発事故後に生まれた子牛 13頭の計 79頭を所有者の同意
を得て、行政の殺処分後に解剖。骨格筋や各臓器、血液の放射性物質濃度を調べた。 このうち、親子3組の放射性セシウム137の濃度を調べたところ、母牛は 骨格筋1kg当たり
平均649㏃だったのに対し、子牛は 同956㏃だった。肝臓や腎臓など各臓器でも同様に、子牛
の方が母牛よりも 約1.5倍濃度が高い関係がみられた。 また、母牛とその胎児の3組では、胎児の骨格筋や各臓器の放射性セシウム濃度は、母牛の
約1.2倍だった。 一方、部位ごとの1kg当たり平均放射性セシウム濃度をみると 高い順に、骨格筋(626㏃)、
舌(619㏃)、腎臓(361㏃)、心臓(311㏃)、ぼうこう(210㏃)、肝臓(207㏃)だった。 血液は 25㏃で、血液の放射性セシウム濃度を調べれば、各臓器の濃度を推計できるとしている。
〔共同〕
日経プレスリリース
福島第一原発事故によって大量の放射性物質が環境中に放出されました。この原発事故に
伴う放射性物質の体内動態と内部被ばく線量を評価するための基本データを得ることを、この
研究では目的としました。福島原発から半径20km圏として設定された警戒区域内に残され、
2011年8月29日から11月15日の間に安楽殺された、川内村と南相馬市の79頭の牛について
臓器別にγ線を放出する放射性物質の放射能濃度を計測しました。
すべての臓器で セシウム134とセシウム137の放射能がほぼ1:1の濃度で検出されました。
さらに、半減期の比較的短い放射性銀110mが 肝臓に、テルル129mが 腎臓に特異的に集積
していました。回帰解析の結果、臓器中の放射性セシウム濃度は 血液中の放射性セシウムに比例
しており、骨格筋で最も高く、血中の約21倍でした。
又、各臓器別に放射性セシウム濃度を比較すると、臓器によらず母親に比較して胎児で1.2倍、
仔牛で1.5倍でした。放射性セシウムの放射能濃度は牛の捕獲場所と餌に依存していました。
本報告は福島原発事故に関連して警戒区域内に残された牛の放射性物質の体内分布に
関する系統的な研究成果です。
なお、本研究は東北大学加齢医学研究所、農学研究科、理学研究科、高等教育開発推進
センター、歯学研究科、山形大、新潟大、放射線医学総合研究所、理化学研究所の共同研究
として行われました。
放射線医学総合研究所、理化学研究所のHPには、この件のプレス・リリースはありません。
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