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クリアランスレベル

 
放射線障害防止法に規定するクリアランスレベルについて
                               平成24年3月27日 一部訂正
                                       平成22年11月1日
                    放射線安全規制検討会、文部科学省 科学技術・学術政策局
 
 
1. はじめに
 ある物質に含まれる微量の放射性物質に起因する線量が、自然界の放射線レベルに比較しても
十分小さく、人の健康への影響が無視できるものであるならば、その物質を放射性物質として
扱う必要がないもの として、放射線防護に係る規制の枠組みから外す という考え方
「クリアランス」という。
 
  我が国では「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(以下「原子炉等規制法」という。)で規制されている原子力施設から発生する放射性廃棄物を対象にした「クリアランス」
に係る制度の検討が、経済産業省の総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会廃棄物
安全小委員会(以下、「廃棄物安全小委員会」という。)においては 平成15年11月に、また、文部
科学省の研究炉等安全規制検討会においては 平成16年8月に開始された。
  これらの検討結果を踏まえて、平成17年5月20日に原子炉等規制法が改正され、クリアランス制度
が導入された
その後、具体的なクリアランスレベル や 技術基準等を規定した関係政省令が整備され、平成17年
12月1日に施行された2
         2 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第61条の2第4項に規定する
          製錬事業者等における工場等において用いた資材その他の物に含まれる放射性物質の
          放射能濃度についての確認等に関する規則
              (平成17年11月22日経済産業省令第112号)   
  第2欄          (Bq/g)       
134 Cs 0.1
137 Cs 0.1
                                 0.1㏃/g=100㏃/kg 
           日本におけるクリアランスの判断基準は、ICRP、IAEA等の考え方を取り入れ、
           個人線量で 年間約10μSv
       第2条  特定原子炉設置者が原子炉を設置した工場等において用いた資材その他の物のうち
         金属くず、コンクリートの破片 及び ガラスくず(ロックウール及びグラスウールに限る)
                    含まれる放射性物質の放射能濃度についての 法第61条の2第1項 の経済産業省令で定める
                    基準は、次に掲げるものとする。
                  (1)  評価に用いる放射性物質(別表の第1欄に掲げる放射性物質に限る。次号において
                      同じ。)の種類が1種類である場合にあっては、測定及び評価を行う範囲(以下『評価単位』
                      という。)における当該放射性物質の平均放射能濃度の値が同表の第2欄に掲げる当該
                      放射性物質に応じた放射能濃度の値を超えないこと。
                  (2)  評価に用いる放射性物質の種類が2種類以上である場合にあっては、評価単位に
                      おける それぞれの放射性物質の平均放射能濃度の値を同表の第2欄に掲げるそれぞれ
                      の放射性物質に応じた放射能濃度の値で除して得られる それぞれの割合の和が 1を
          超えないこと。
           第7条 法第61条の2第4項 の規定により経済産業大臣が独立行政法人原子力安全基盤機構
         (以下『機構』)に行わせる確認に関する事務は、放射能濃度確認対象物に係る放射能濃度
         の測定及び評価が第5条第1項の規定に基づき認可を受けた方法に従って行われているか
         どうかについて確認する事務とする。                                                                                                             
 
  これまでに、日本原子力発電株式会社東海発電所において、国による 約400 トンの金属の
クリアランスの確認が行われ、その一部が ベンチ等として再利用されている。
また、独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という。)においても、国による
約 377 トンのコンクリートのクリアランスの確認が行われており、今後、路盤材等として再利用
される見通しである。
 
   一方、「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(以下「放射線障害防止法」
という。)」 へのクリアランス制度の導入に係る検討を、文部科学省の放射線安全規制検討会
において 平成16年10月から開始し、まず、放射性同位元素の使用等に伴って発生する廃棄物
や放射線発生装置の解体等に伴って発生する廃棄物の それぞれの物量、廃棄物に含まれて
いる放射性同位元素の種類 及び その放射能濃度等の実態調査を行ってきた。
  その後、放射線障害防止法へのクリアランス制度の導入に向けた技術的な検討の充実を図る
目的から、平成17年8月8日 放射線安全規制検討会の下に 「クリアランス技術検討ワーキンググループ」
以下 「クリアランスWG」という。)を設置した。
 
  これにより、放射線安全規制検討会では クリアランス制度の枠組みに係る事項について、
クリアランスWG では クリアランスレベル以下であることの測定・判断方法等のクリアランス制度化
に係る技術的事項について、それぞれ検討することとした。
 クリアランスWG においては、放射線障害防止法におけるクリアランス制度の導入にあたって
解決すべき技術的事項や技術的成立性について検討を行い、特に 放射線発生装置の解体等
に伴って発生する廃棄物及び短半減期核種のみを取り扱う場合の減衰保管廃棄に係る事項
について、平成18年6月に「放射線障害防止法におけるクリアランス制度の整備に係る技術的
検討について(中間報告書)」(以下 「平成18 年度中間報告書」という。)として取りまとめた。
 これに対して、放射線安全規制検討会においては、平成18年度中間報告書に示された課題や
 クリアランス制度に対する事業者の ニーズ、経済的な メリット等、また、クリアランス制度の検討にあたって 整理が必要な放射線発生装置の使用に伴って発生する放射化物の取扱い 及び廃止措置に
関する事項について、必要な情報を取りまとめ、今後の進め方について審議することとした。
 
 平成18 年度中間報告書の取りまとめ以降、文部科学省では、関係事業者の協力を得ながら、
放射化の程度が低い放射線発生装置を主な対象として 放射化状況の調査を進めており、特に
国内設置台数の多い医療用電子直線加速器の施設構造物の放射化の有無等について 確認し
てきた。また、短半減期核種のみによって汚染された物のクリアランス制度における減衰保管廃棄
については、平成18年度中間報告書において、技術的成立性はあるものの、事業者のニーズを
確認し、制度としての成立性を含めた検討が必要であるとされたことから、非密封放射性同位
元素の使用者等を対象としたクリアランス制度に関するニーズ調査を行ってきた。
 さらに、放射線障害防止法によって規制されている放射性廃棄物についても 埋設処分の計画
が進展しており、放射性廃棄物処分に関係する制度全体を整備することが求められていること
から、放射線障害防止法を改正して クリアランス制度を導入するための具体的な検討を放射線安全
規制検討会において進めることとなった。
 
 このような状況を踏まえ、平成21年4月からは放射線安全規制検討会において放射線障害
防止法への クリアランス制度の導入に係る検討を再開し、平成21年6月からはクリアランスWG に
おいて クリアランス制度導入に係る技術的事項に係る検討を再開し、これらの検討結果について
平成22年1月に放射線安全規制検討会が、「放射線障害防止法への クリアランス制度の導入に
向けた技術的検討結果について(第2次中間報告書)」(以下「第2次中間報告書」という。)を取り
まとめた。
  文部科学省では、放射線安全規制検討会等における平成16年10月から第2次中間報告書の
取りまとめまでの検討を踏まえたクリアランス制度の導入や放射線発生装置の使用に伴って
発生する放射化物の安全規制等に係る改正法律案を、平成22年3月5日に第174 回通常国会
に提出した。同改正法律案は 第174 回通常国会で審議され、4月28日に国会で可決された。
同改正法については 平成22年5月10日に公布しており、現在は 関係する政省令・告示の改正
に向けた検討を進めている。
 
 以上のような状況のもと、本報告書は、放射線障害防止法における クリアランス制度の運用開始
に向けて行った クリアランスレベルの導出に係る技術的検討結果を踏まえて、放射線障害防止法に
規定するクリアランスレベルについて取りまとめたものである。
 
       ⋆ 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案
     (文部科学省ホームページ:
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/06030110/1291489.htm
     概要
 
        第一条 この法律は、原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)の精神にのっとり、
        放射性同位元素の使用、販売、賃貸、廃棄その他の取扱い、放射線発生装置の使用
        及び 放射性同位元素 又は 放射線発生装置から発生した放射線によって汚染された物
        (「放射性汚染物」)  の廃棄その他の取扱いを規制することにより、これらによる
        放射線障害を防止し、公共の安全を確保することを目的とする    
 
    ・・・
 
 
 
 
 
 
                     

   国務大臣 環境庁長官 地球環境問題担当 岩垂 寿喜男
第2節 2 不確実性を伴う環境問題への対応-環境リスク - 平成8年版環境白書

  現代社会において、我々は様々な技術によって作られる製品やサービスに支えられて、便利な
日常生活、経済活動を営んでいるが、他方で、社会経済活動の中で事故や火災、或は 自然災害に
遭う可能性がある。こうした事故等による人身の被害については、例えば、統計的な年間の死亡数
それを基に算出した生涯における死亡のおそれ(リスク)という数字によって比較して表すことができる
(第3-2-5表)。 ここで、例えば 交通事故の生涯リスク が (6.0×10-3) とは 我が国に住む人が一生涯
に 交通事故で死亡する確率が 1000分の6 であることを意味する。 我々は、こうした リスク の大きさと
蓋然性についてできるかぎり定量的に理解することを通じて、これを防ぐための政策を決める際に
優先順位を明らかにし、或は 日々の生活において リスク を避けるように努めたり、保険をかけること
によって その被害の経済的負担を分散させたりすることができる。
 今日の環境問題、とりわけ 経済社会で広く用いられている化学物質による健康・生態系への悪影響
、オゾン層の破壊、気候変動等の地球環境問題等については、多数の因子が複雑にからむ因果関係
その予測される結果を科学的に明らかにし、適切な政策を進めなければならないが、種々の不確実性
が存在することは避けられない。こうした環境問題について、リスクの考え方を基礎にして、不確実性も
考慮に入れた上で科学的解明を進め、得られた知見に基づいて予見的な見地から政策を決定・実施
していくための政策手法が内外で根付いてきている。・・・
 
(1) 環境政策と環境リスク

 本来、リスクとは、人間の活動に伴う、望ましくない結果とその起こる確率を示す概念である。 即ち、
人間にとって好ましくない事象を その「発生の不確かさの程度」 と 「影響の大きさの程度」 の両面から
評価し、その程度に応じて対応していこうというのが リスクの考え方の基本である。
  最近では より広義にリスク概念がとらえられるようになってきている。 例えば、リスクはある技術の
採用とそれに付随する人の行為や活動によって、人の生命の安全や健康、資産ならびに その環境
(システム)に望ましくない結果をもたらす可能性と定義され、環境リスク も 自然災害リスク、都市災害
リスク、食品医療品リスク 等と並ぶ リスクの類型の一つを構成するものとして考えられる・・・。
ア 環境リスクの考え方の背景
 かつて 我が国が激甚な公害を経験した時代には、著しい産業公害の状況が明らかにされ、これに
よる健康や生活環境の被害も差し迫ったものであったため、公害の防止が主たる政策課題とされ、
その達成手段の選択にも広範な合意があった。 原因となる物質や事業活動その他を特定し、排出の
規制を中心とする対策が講じられ、その克服に相当の成果があった。 その一方で、拡大高度化する
経済活動、一層便利になる消費生活を支えるために様々な化学物質が広範に用いられるようになり、
これらに起因する環境問題への関心が次第に大きくなってきた。
  例えば、欧米では、1970年代後半から80年代前半にかけて、アメリカのラブカナル事件(1979年(昭54年))、
インドのボパール事件(1985年(60年)) といった深刻な問題の発生もあって、様々な有害化学物質による
健康と環境への リスク が国民の関心の的となった。特に 有害化学物質に発癌性が認められる時には、
従来のように人間が取り入れる量を一定の許容量以下に抑えれば安全という考え方では 十分に対処
できなくなったことから、こうした問題を解明する科学的方法と政策的対応のあり方が 大きな問題と
なった。 このような状況の下、アメリカでは 国立科学アカデミーと国立研究財団の共著による リスクアセスメント/
リスクマネジメント の報告(1983年(58年)) がまとめられ、これに沿った科学的調査と政策決定の仕組みが
論議され、法律や行政規則等を通じ具体的な手法として定着していった。 ・・・
 今日、全世界で登録されている化学物質数は 約1,700万種に及び、商業目的で生産されているもの
だけでも 約10万種に上ると言われる。我が国においても 生産、使用されている既存の化学物質は
48,000種を越え、労働安全衛生法による製造・輸入の新規の届出件数は毎年400〜500種上る
とされる。 これらの物質は、日々の生活と社会経済活動のために大量に生産され、使われ、最終的
には環境中に放出されるが、その態様によっては、健康、生活環境、生態系に悪影響を及ぼす恐れ
がある。・・・
 
 環境政策における環境リスクの意義
 第1に、環境リスク の考え方により、不確実性を伴う環境問題について科学的知見に基づいて様々な
環境への影響を予測、評価して、政策的判断の根拠を明らかにすることができる。化学物質について
は、人間や生態系が 微量の物質に複雑な経路を通じて長期間にわたり曝露されることから生ずる健康
と環境に対する影響が問題となるが、これを検出し、その原因を特定するのは 極めて困難である
地球温暖化は、さらに 空間的にも時間的にも広範囲、長期に及ぶ複雑な問題である。こうした問題に
ついては、確率論的な考え方を用いて 不確実性を考慮に入れながら問題が見えるようにし、政策判断
の基礎とすることが必要である。 環境基本法第4条は 「 科学的知見の充実の下に 環境の保全上の
支障が未然に防がれること 」を旨とするとの未然防止の原則を定めているが、環境リスクは この原則
を実行していくうえで 重要かつ不可欠な手法である。 
 第2に、環境リスクの考え方により、多数の物質 或は 要因に対する政策と取組の優先順位を客観的
に明らかにすることができる。 従来、環境汚染物質の安全性に関する基準は、ある一定レベル以上の
環境濃度になると悪影響が生ずるという値 (閾値という) を基にして決められてきたが、一般に 閾値が
ないとされる物質 (例えば 遺伝子毒性のある発癌性物質) については、ごく微量に存在しても健康影響
(発癌) の可能性を否定できない。 一方、環境リスクを生じさせる要因となる物質は、人の生活にとって
必要とされるものも多く、これらを すべて使用禁止にすることは実際上不可能となってきた。このため、 
限られた資金や人的資源の中で、健康影響の発生確率を低減し「実質的に安全とみなすことのできる」
環境リスクのレベルを目標として、政策判断をするという考え方が広く受け入れられるようになってきて
いる。 例えば、物質の有害性は強いが ほとんど住民が曝露されないような場合 と 中程度の有害性で
多数の住民が曝露される可能性のある場合の環境 リスクを比較することにより、政策決定に有効な基礎
を与えることができる。
また、地域の環境状況 と 社会的経済的条件等によって 問題となる環境リスク の種類と程度が異なる
場合もあることから、問題間の比較衡量を可能にする環境リスク 概念の導入により、地域の状況に応じた
よりきめ細かな対応も可能となる。 
 第3に、環境リスクの考え方を応用すれば、大気、水、土壌などをまたがるクロスメディアの汚染や、
各分野の対策を横断して、より効率的、整合的に環境リスクを削減できる。化学物質や地球環境問題
は発生過程が複雑であり、複数の環境メディア にまたがり、地域から地球規模にまで広がる問題として、
正に このような対応が求められる。例えば、化学物質による水質汚染を改善していくために、別の環境
メディア にその汚染を移転させるような政策は、真に環境リスク を減らすことにはつながらない。 こうした
複雑多岐にわたる問題について、環境リスク の考え方、とりわけ、例えば「損失余命」のような リスク の
共通の物差しを用いることを通じて、総合的に リスク を評価し、より整合的、効率的な政策手段を選び、
実施していくことができる。・・・
 
ウ 環境リスクが対象とする範囲
 環境リスクを 「環境の保全上の支障を生じさせる恐れ」 としてとらえれば、人の健康への影響、生態系
への影響、生活環境への影響すべてを環境 リスク の対象としてとらえることが可能である。また、環境
リスク を生じさせる要因という観点からは、化学物質から自然環境の開発行為まで環境保全上の支障の
原因となるすべての要因が対象となりうる。環境政策への活用面からは環境 リスク の対象をできるだけ
広範にとらえることが望ましい実際には、どこまで客観的かつ定量的に環境 リスク が評価できるか
その適用対象は 依存し科学的知見の充実等に応じて拡大されるべきものと考えられる。
 
(2) 環境リスク対策の手順
  ・・・
ア 環境リスクの評価(リスク・アセスメント)
 リスク評価は一般に次の4つの手順に従って行われる。
 (ア) 有害性の確認(定性的評価)   ・・・
 (イ) 量−反応評価(定量的評価)   ・・・
 (ウ) 曝露評価(定量的評価)      ・・・
 (エ) リスクの判定        ・・・
イ 環境リスクの管理(リスク・マネジメント)
 (ア) 環境リスク管理の考え方
  一般的に環境リスクの管理に当たっては次の3つの原則が考えられる。
 i ) ゼロリスクの原則
 環境リスクをゼロにすることを指し、閾値のある物質については この原則が適用されている。閾値が
明確に定められないものには 達成が非常に困難な目標である。 また、リスクをゼロにするため製造を
禁止 若しくは規制した場合、その代替品がより有害性の強い、または、より管理困難な環境リスクを
持っていることもあり得るので、これらについても考慮する必要がある。
 米国の食品衛生分野では、発癌性のある食品添加物は一切使用が禁止されており、我が国において
も原則禁止となっているが、これらは、ゼロリスクの考え方を反映したものである。
 ii ) リスク一定の原則
 すべてのリスクの大きさを一定のレベル以下に抑えるという原則であり、その基礎には非常に小さな
一定以下の環境リスクは実質的に安全と見なそうとの考え方がある。
例えば、一生涯曝露された時に 10万人に1人に 癌が発生する程度以下のリスクは 他の種々のリスク
と比較して実質的に安全と見なそうというものである。具体例には 例えば、WHOの飲料水ガイドライン
あり、遺伝子毒性のある発癌性物質は生涯リスク を 10万分の1 以下にすることに基づいて 指針値が
決められている我が国の水道水質基準もこの考え方を おおむね踏襲している
 しかし、個々のリスクの大きさを同じ確からしさで知ることが困難であること等から、この原則の適用
が困難な場合もある。・・・ 
 iii )  リスク・ベネフィットの原則
 環境リスクの要因が持つ便益(ベネフィット)と環境リスクの大きさを比較し、様々な環境リスクについて
リスク・ベネフィット分析を行い、その大きさによって許容される環境リスク を求めたり、対策の優先順位
を決定したりする考え方がある。金銭的な尺度で表現される場合には 一種の費用便益分析となり、
リスク削減のための対策によって生じる費用 (リスク削減によって失われる便益を含む) と、リスク削減
によって得られる便益が比較衡量される。  ・・・
 「化学物質のリスク評価及びリスク評価手法の開発」研究成果報告会
                         (2007年1月23日)講演要旨(抄略)
                 岸本 充生(産総研・化学物質リスク管理研究センター)
                            2.
 
 4.リスク評価2.0を目指して
 個別の化学物質に対して,環境基準値や指針値を設定する,或は,健康リスクの懸念がないことを
確認するといった作業は,今後もある程度は必要だろう. しかし,個々の物質の リスクレベル が下がり,
同時に 地球温暖化問題や各種安全問題との トレードオフ にも注目が集まりつつある. このため,
異なるリスク間の トレードオフ の解析や,費用対効果の良い対策への関心が高まっている.このような
ニーズに答えるためには,2.4節で述べた 「 リスクトレードオフ解析や社会経済分析のためのリスク評価 」
が必要であり,安全側の仮定の積み重ねではなく, 中央推計値 と その分布を基本にした推計が
必要である. 「 分からない場合は とりあえず安全側 」という単純化ができないために,これまで以上
に労力がかかるだろう. 慣れ親しんだ思考回路を根本から変える必要があるという意味を込めて,
このようなリスク評価を 仮に 「 リスク評価2.0 」と呼ぼう(図2).
 
   図 2  リスク評価 1.0 から リスク評価 2.0 へ
          リスク評価1.0   ――→    ・ 参照値を導出
     バラツキや不確実性             ・  ワーストケースでも 安全であることを証明
     があるたびに,安全側の仮定を採用
          ☟
          リスク評価 2.0     ――→   ・ 対策の費用対効果を計算して,優先順位付け
     ・中央推計値を使用       ・ 異なるリスクの間のトレードオフ解析の実施
     ・バラツキや不確実性を分布で表現
     ・エンドポイントを共通化
 
 実は,米国でも OMB(行政管理予算局)から リスク評価のガイドライン案が提案され,これまでの
安全側の推計値に加えて,中央推計値(central estimates)と分布の提示や,不確実性解析の実施
が推奨されている. OMBは,大統領府に属し,各省庁から提出された規制影響分析(RIA)を審査
する機関であり,これまでも 費用便益分析に関するガイドラインを しばしば発表していた.しかし,
2006年1月に 初めて リスク評価に関するガイドライン案(U.S.OMB 2006)を発表し,様々な議論を呼
んでいる. OMBが必要とするリスク評価は,その使用目的が,費用便益分析を中心とするRIAである
ため,2.2節や2.3節の リスク評価ではなく,2.4節で述べたタイプの リスク評価が必要なのである.
 規制分析として用いられる リスク評価に対する標準を述べた一節を引用しよう.
 
 5) リスクの定量的な表現が利用可能な場合,中央推計値を含むありそうな リスク推計値の幅を
    示すべきである. リスクの「 中央推計値(central estimate) 」とは 分布の平均値,或は,異なる
  仮定に基づいて計算された複数の リスク 推計値を それらの相対的な もっともらしさによって
    重み付けた数字,或は,分布の中で最も代表的であると判断された数字のことを指す.
  中央推計値は, リスク を 過小評価してもいけないし,過大評価してもいけない,そうではなくて,
    リスク管理者や一般人に対して,期待値としての リスク(expected risk)を伝えなければならない
  (p.16).
 
 当然,参照値の導出のために リスク評価を実施している省庁からの反発を招いている.
例えば,環境保護庁(EPA)であれば,環境基準値の設定は 最も重要な仕事の 1つであるために,
2.2節で示したような タイプのリスク評価を これまで実施してきた.今回のOMBの ガイドライン案に対して,
安全側の仮定を緩めることになり,弱者の保護ができなくなるのではないか,或 分析の負担が増え
ることで 規制行政が遅れるのではないかといった批判がある. しかし,このような議論の背後には,
リスク評価の正しい方法は 1つであるという思い込みがあるように思える.
  リスク評価の方法は そもそも その目的に応じて多様であるべきで,目的に応じて使い分ければよい.
現在 広く実施されている リスク評価は,全米科学 アカデミー から 1983年に出版された通称“Red Book”
の4段階アプローチ( ハザードの特定,用量反応評価,曝露評価,リスクの記述および定量化 )に基づ
いている(National Research Council 1983). 近々 このRed Bookの内容が 更新された新版が出る
ことになっており,OMBの ガイドライン案も含めて,リスク評価のあり方に関する議論が活発になること
が期待される.
 
 5 有害大気汚染物質の自主管理
  有害大気汚染物質の自主管理計画は 1997 度年から始まり,第 1 期と第 2 期を経て 2003年度
に終了した. 総量としては 目標値を大きく上回る排出削減を達成し,成功した プログラムであると評価
された. 大気汚染防止法が改正され開始されたばかりであるVOC(揮発性有機化合物)の排出抑制
にも 自主的取組が制度化された. また,企業の環境報告書においても 自主的取組の事例が多数
記載されている. このように,自主的取組は 環境対策の1つの形式として認知されるようになった.
 
   しかし,これらの事例では,「自主的」である部分は,何らかの形で指定された化学物質に対し,
どれだけ減らすかという量の部分に過ぎない. PRTR法の対象化学物質を,PRTRの非対象物質に
転換するといった 「自主的」排出削減対策で,本当に リスクが削減されているかを自主的に確認
した例は ほとんどない. 真の意味での自主的取組とは,事業者自らが リスク 評価を実施し,リスク の
トレードオフ解析や社会経済分析も検討したうえで,それが 社会的に見て ほんとうに有効な対策である
ことを,地方自治体,株主,一般消費者などに 自ら証明する,即ち 説明責任を果たすことである.
個々の化学物質のリスクが 低いレベルになってくると,代替物質への転換や排出削減のためのエネルギー
や コスト を どこまでかけるべきかについて 論理的な検討を行わないと 社会的に見て意味のあること
やっているのかどうか疑わしい場面も出てくるだろう.
 例えば,排出された薄い濃度の VOCを重油やガスを用いて燃やすと 確かにVOCの排出量は減る
が,その代りに CO2の排出は増えるだろう.このバランスをどうとるか, これからは 事業者自らの
判断と説明が必要になる.こうした場合に,安全側の リスク 評価を行うことは ほとんど意味がない.
リスク評価2.0が必要になる所以である.
 
    6.コミュニケートすべきもの
 化学物質や新技術を 社会で うまく使っていくためには 「 リスクコミュニケーション 」 が大事だと言われる.
これには 2つの問題が含まれている.1点目は, コミュニケートすべき リスクは どういった リスク評価から
導出された リスクであるのかである. 10-5 レベル と言っても,それは 安全側の仮定の積み重ねに
よって推計された リスクの値なのか,中央推計値としての リスクなのか,そこまで説明する必要がある.
例えば,化学物質の リスクを 事故 リスクと比較する場合,事故 リスクの推計値は たいてい中央推計値
であるので,フェアな比較になっているか確認する必要がある.
 2点目は,化学物質や新技術の「リスク」 だけ コミュニケート しても意味がないし,むしろ有害である点
ある. 化学物質の持つ有益な面や特徴など,新技術が 何に使われて,どんな便利なことがあって,
どんな問題点( リスクを含む )があるのか といった全体像を うまく コミュニケート しなければ意味がない.
このことは,遺伝子組換え作物の リスクコミュニケーション が うまくいかなかった理由の1つである.遺伝子
組換え作物の リスクが小さいことを いくら コミュニケート しても,自分にとっての ベネフィット がゼロだと感じて
いる消費者にとっては 10の マイナス何乗であっても受容できない. いくら小さくても,ゼロよりは大きい
からだ. 「リスクコミュニケーション」 と称しながらも,実際は キチンと 「 リスク & ベネフィットコミュニケーション 」 のような
形をとっている事例も多いだろう.しかし 言葉は 正確に使っていきたい.化学物質や新技術は「 リスク
を生み出すかもしれない事象 」であって 「 リスク 」そのものではない.「 リスク 」は化学物質や新技術
持つ属性のうちの1つに過ぎない人々に コミュニケート すべきなのは,「科学(science)」 や 「技術
(technology)」 や 「物質(substance)」の総体としての利害得失であるべきだ
 
                              (おわり)
 
  化学物質のリスク評価について   (独)製品評価技術基盤機構 
     他の症状(エンドポイント)とは違い、発癌物質が遺伝子を攻撃して癌細胞を作る場合は、
    “物質の量がこれより少なければ発癌の可能性なし”ということがなく、どんなに少量でも
    発癌の可能性を持っていると考えられいる。
    http://www.foocom.net/column/editor/3837/ 科学ライター 松永 和紀
     ところが この仮説が今、毒性学の世界でも揺れに揺れている。 「遺伝毒性発癌物質にも、
         閾値あり」、つまり、無毒性量があり、それ以下であれば生体への影響なし、とする仮説が
         出てきている。・・・
     だが、・・・「閾値あり」仮説は まだ科学者の コンセンサスには至っていない。その結果、化学物質
         の毒性について検討している多くの国際機関は、昔からの「閾値なし」仮説のまま・・・。 
 
 
  言葉は 正確に使っていきたい.
 
  「 リスク 」は 化学物質や新技術が持つ属性のうちの1つに過ぎない
  ――― のではない。 
 「過ぎない」とは 主観的な言葉である。
 正確には、
  「 リスク 」は 化学物質や新技術が持つ属性のうちの1つである.
 ――― と言わねばならない。
 
 科学・技術を使いたいという意図が、「過ぎない」 という主観的な言葉を使わせているのを、
 この論者は 自覚していないのだ。
 これを、「科学・技術信仰」 という。
 
 我々が コミュニケート すべきなのは、この 「科学・技術信仰」 そのものの存在理由である。 
                                                                              合掌
 「化学物質のリスク評価及びリスク評価手法の開発」研究成果報告会
                         (2007年1月23日)講演要旨(抄略)
                 岸本 充生(産総研・化学物質リスク管理研究センター)
 
 1.はじめに
  リスク評価の方法は一つではなく,目的に応じて使い分ける必要がある.リスク評価を行う際
には,どの種類の リスク評価を行っているのか自覚的でなければならない.本稿では 便宜的に
3種類に分けて議論する. CRMが 詳細 リスク評価書を作成する過程で確立した リスク評価手法
は そのなかの2つにすぎない.社会経済分析を実施するためにも,リスク同士のトレードオフを
扱うためにも,もう1つの リスク評価を実施する必要があり,そのためには これまでの リスク評価
の実践において暗黙に想定されてきた様々な前提から自由にならなければならない.
 近年,有害大気汚染物質や揮発性有機化合物(VOC)の管理において自主的取組が用いられ
ている.環境報告書にも 自主的な環境対策の事例が多数掲載されている.しかし,真の意味で
の自主的取組みとは,単に 規制で要求される以上の対策を行うのではなく,事業者自らがリスク
評価を実施して,想定される トレードオフを考慮したうえで 自らの言葉で意思決定の根拠を(可能
ならば定量的に)示すことである.そのためにも ここで示す もう一つの リスク評価手法が必要に
なってくる.
 
 2.リスク評価は多様である 
2.1.  3つのリスク評価
 化学物質の リスク評価には決まったやり方があるわけではない. 社会ニーズを反映した目的
から遡って,リスク評価を構成する各要素技術における方法論が決まってくる.  これまでの
社会ニーズは,化学物質の参照値を設定することや,リスクの懸念があるかないかを調べること
であった.そこから遡って,有害性評価や曝露評価の方法論が導き出され,それが たまたま
現在のスタンダードな方法になったにすぎない.
  目的によって リスク評価には 幾つかのタイプが考えられ,それぞれに応じた方法論がありうる.
・・・ 一つ目は,参照値を導出するための リスク評価である. これは,環境基準値や指針値を
導出するために これまで使われてきたやり方である.二つ目は,十分な安全マージンをとった上
でも リスクの懸念がないことを示すための リスク評価である. これは,初期リスク評価において
実施され,スクリーニング,即ち 「 リスクの懸念がない」化学物質を除外することを目的として
いる.以上の二つの リスク評価手法は 十分に開発されてきたと考えてよい.
これらに対して 三つ目の リスク評価は,リスクトレードオフ解析や社会経済分析を行うために必須
なものであるが 十分に その意義が認識されているとは言い難い. それぞれについて 以下の
節で簡単に その特徴を示す.
 
2.2. 参照値を導出するためのリスク評価 
 環境基準値や摂取許容量を導出することが目的であり,それらの値は 通常,感受性の高い
人々(生物学的弱者)や曝露量の多い人々を保護できる値でなければならないので,バラツキや
不確実性がある場合には 必ず安全側の値 (多くは 95パーセンタイル値) が選ばれる. 
                          ※パーセンタイル:対象とする数値群を小さい順に ソートし、指定された個数番目
               にある値を代表値とするもの。 例えば、100個の値があったとすると、
               50パーセンタイルとは 小さい順に数えて50番目の値のこと。80パーセンタイル
               とは80番目の値、90パーセンタイルとは 90番目の値。 50パーセンタイルは、
                                 別名、中央値とも呼ばれる。平均値と50パーセンタイルの値を比較して、もし
               平均値の方が低いと、極端に小さな値があることが予想できる
 子供をターゲットとした基準値の設定もその一例. これは,フォールス・ネガティブ(偽陰性)を
極力回避しようとする態度を反映している.また,曝露量の全体の分布や リスク全体の大きさには
関心は払われない.閾値があるとされる化学物質ならば,ヒトに対する無有害影響量 (NOAEL)
を,感受性の個人差を考慮に入れた不確実性係数10で割って導出する.閾値がないとされる
発癌性物質の場合でも,ユニットリスク値の 95パーセンタイル値が採用される.
米国では 近年ベンチマークドース法が用いられることも多い.この場合も,低用量へ外挿する
ための出発点(POD)を,10%影響レベルの 95パーセンタイル値に設定する. 
            ※フォールス・ネガティブ: 高 リスク物質(難分解性又は高濃縮性)を 低 リスク物質
                (良分解性又は低濃縮性)と見誤る失敗           
            ※ユニットリスク: ある物質を単位濃度で一生曝露したとする時、エンド ポイント
                (例えば”死亡”)に至る確率の増加分 
 
2.3.スクリーニングのためのリスク評価
 初期リスク評価では,有害性評価や曝露評価において,情報が不足している場合や バラツキが
ある際には 必ず安全側の仮定を採用,すなわち リスクを過大に見積もり,それでも リスクの懸念
がないと評価される物質をリストから排除するリスクの懸念の有無は,暴露マージン(MOE)
不確実性係数を上回るかどうかで判断される.不確実性係数には 十分に大きな値が採用され,
MOEが不確実性係数を上回るならば リスクの懸念がないと判断され,下回るならば詳細リスク評価
の対象物質とされる.
 
2.4.リスクトレードオフ解析や社会経済分析のためのリスク評価
 異なる物質や異なる種類の リスクを比較するには,リスク評価結果は 相互に比較可能でなけ
ればならない.安全側の仮定の程度が異なれば 比較は不可能になるため,中央推計値同士
を比較できることが望ましい.対策費用を リスク削減量で割って,単位 リスク削減費用を導出する
場合,結果を他の対策と比較できないと意味がない. そのためには,中央推計値が望ましい.
比較対象と分布の形が同じであるならば,何らかの形の上限値でも構わないが,対策費用が
多くの場合 中央推計値として求められていることからも,リスク削減量も中央推計値であること
便利.つまり,ベースとなる社会ニーズ が,リスク同士の比較や リスクと費用の比較である以上,
評価ごとに 特有な安全側の仮定は 極力避け,バラツキ や不確実性は できるだけ分布形として
表現し,結果として得られる リスクの推計値は,中央推計値とその分布形という形で算出される
ことが望ましい.エンドポイント は QALY(質調整生存年数)などを使って共通化される必要もある.
 
 3.詳細リスク評価書の到達点
 前節で見たように,リスクの評価の方法は結果を何に使うかによって異なってくる.リスク評価の
要素技術ごとに 唯一の「正しい」方法というのは存在しない.即ち,リスク評価のフローの最下流
である「 結果を何に使うか 」から遡って考える必要がある(図1).これが,リスク評価には学際的
な アプローチが必要な理由である.個々の専門分野では それぞれ独自の方法論的進化を遂げて
いるが,リスク評価という全体の目的に合った進化を遂げているかどうかは自明ではない.
そのため,バラバラに存在する個別分野の仕事を 単につなぎ合せるだけでは整合的なリスク評価
は不可能である.
  結論から述べると,詳細 リスク評価書では,上記3種類の リスク評価を明示的に区別することなし
に作業を進めてしまったために,混乱が残ってしまったといわざるを得ない.
詳細 リスク評価書の特徴の1つに,排出削減対策の費用対効果の シミュレーション がある.「効果」の
指標が,トン数で表される排出削減量であれば,「1 トン排出削減費用」は,平均値同士の割り算
であり問題はない.しかし,「効果」の指標を,削減 リスク量とする限り,これらの作業のためには,
2.4節で示した「 リスクトレードオフ解析や社会経済分析のための リスク評価」が本来必要である.
しかし,詳細 リスク評価書では,参照値を提示したうえで,「 参照値を超える人数 」或は「 参照値
を超える確率 」もまた評価のエンドポイントとして用いられた.このために行われた リスク評価は
2.2節で示した「 参照値を導出するためのリスク評価 」である.その結果として 2.2節の方法で行
われた リスク評価の結果を用いて,「 発癌1件を削減するためにかかる費用 」などを指標とした
費用効果分析が行われた.この場合,削減 リスクの大きさは,中央推計値よりも過大なものとなっ
てしまう. これに対して 対策費用は 平均値として導出されたものである.
このように,平均値として求められた対策費用を,過大評価された削減 リスク量で割って得られる
費用効果分析の結果は,リスク削減対策を実際以上に効率の良いものであるよう 見せてしまう.
    注) ここで簡単な数値例を示す.
   例えば,日本において,感受性の高い人々(95パーセンタイル)の発癌のユニットリスクが 2.0×10-6
(/μg/m3)である化学物質Aの,曝露が多い人々(95パーセンタイル)の平均曝露濃度が 6.0μg/m3の
場合,生涯発癌リスクは 1.2×10-5である. この数字を用いて 集団 リスクを推計すると,「 1年間に日本
で,1億2000万人×(1.2×10-5)÷80=18人が 化学物質Aで発癌している 」という計算になる.
ここで 排出量を半減させる対策が行われると( バックグラウンド値が0として ),年間9人助かると推計
される.感受性の高い人は ごく一部であるし,曝露の多い人も ごく一部であるため,年間発癌人数も
年間救命人数も過大評価である. これは 一体何を計算したことになるのだろうか? 間違った情報を
流すことにもなりかねない.しかし これに近い計算が 詳細 リスク評価書の中に見られる.
 さらに,別の化学物質Bでは 同様に,感受性の高い人々の発癌のユニットリスクと曝露の多い人々の
濃度を使って,「 年間発癌人数が10人で,排出量を半減させると,5人助かる 」と計算できたとしよう.
このとき,「 物質Aと物質Bは どちらの リスクが大きいだろうか? 」,及び「 化学物質Aの排出量を半減
させる対策と化学物質Bの排出量を半減させる対策の費用が同じなら どちらを実施することが望ま
しいだろうか? 」という問には 一見答えが明らかなように見えるが,本当のところは,バラツキや感受性
の分布が分からねば答えられない.化学物質Aの リスクの分布が大きく,化学物質Bの リスクの分布
小さい場合は,中央推計値で比較すると,リスクの大小が逆転して 化学物質Bの リスクの方が大きい
ことも 十分ありうる.リスクの定量化,リスクの大きさの比較,社会経済分析は,中央推計値で行わな
ければ意味がないのである.
 

    
                                  
 
  平成24年3月22日     第9回会合結果
         (平成20 年9 月2 日 化学物質・汚染物質専門調査会決定)
はじめに
これまで、清涼飲料水の安全性評価において、発癌性を示す物質については、
遺伝毒性発癌物質と判断することが適切でない場合は 一般毒性の NOAEL からTDI を求め
遺伝毒性発癌物質の可能性が高い場合は 毒性学的閾値の設定ができないことから 定量的
な評価を行わないこととしていた。その最大の理由は、遺伝毒性発癌物質の評価法については
国内外での合意が得られていない との見解によるものであった。 遺伝毒性発癌物質は、他の物質(非発癌物質や非遺伝毒性発癌物質) に比べて ヒトが暴露されたときのリスクが 一般的
に高く、その暴露量は 他の物質より 低く管理するか、理想的には 限りなくゼロにすることが
             化学物質は、程度の差はあるが 何らかの有害な影響があると考えられ、
             その有害性のことを ハザードという。ハザードには、急性毒性、慢性毒性、
             生殖毒性、感作性など さまざまなものがある。・・・ しかしながら、数多いこれら
             の有害性評価項目の中から、基本とされている評価項目を すべて評価された
             化学物質はない。・・・
              一方、リスクとは、化学物質の有害性が発現される可能性を意味し、概念的
             には 有害性の重篤度と暴露量の両方の要素を合わせたものとして表される。
             つまり、どんなに有害な物質でも、二重のボンベに入れられており、絶対に漏出
             しない場合は、暴露量がゼロなので リスクはゼロと計算される。
                 リスク=有害性×暴露量(摂取量)
              有害性評価には、・・・
      
              TDI は、生涯毎日暴露されても有害な影響が出ない暴露量(mg/kg/day)。
             基本は 動物実験から求めたNOAELを用い、さまざまな不確実性係数を用いて
             計算する。 不確実性係数には、人の個人差:10、種の違い:10、試験期間
             が短い場合:10、NOAELを用いた場合:10、急性毒性値を用いた場合:100、
             情報が不確実性がある場合:10 を用いることが多い。
 
  しかしながら、一元的なリスク管理では 制御が困難な環境汚染物質においては、現実的に
暴露を完全に避けることが困難な事態や、さらに これまで未検出であった物質でも 分析技術
の進歩により検出可能になってきているという現実に直面している。
このため、遺伝毒性発癌物質についても 食品安全委員会としての定量的な評価結果を リスク
管理機関に答申することが より求められている。
又、評価法に合意が得られていないとされている理由は、米国と欧州で異なった手法を用いて
いるためであるが、近い将来に 両者の手法が統一される可能性は極めて少ない。
 以上のことから、現時点において遺伝毒性発癌物質の発癌リスクを求めることが適切である
と考え、発癌性を有する物質の評価方法の全体の枠組みや考え方について整理した。
                                   (評価手順について別紙参照)
 
 ○発癌に対する遺伝毒性の関与を考慮し、TDI  又は発癌リスクの設定について検討する。
  ○非発癌影響と発癌影響の評価は 独立して実施する。
  ○原則として、経口摂取に基づくリスク評価を行うこととするが、経口摂取の定量的評価に
    必要な場合は、経口摂取以外の暴露による有害性評価結果も十分に考慮する。
  ○発癌性の リスク 計算に関しては、新しい データ が得られた場合、又は 明確に考え方を変える
  べき根拠が生じた場合を除き、算出方法が公開/公認されている場合は 原則として既存の
    リスク評価値を継承する。
 
1.「 発癌性に対する遺伝毒性の関与がない 」と判断される場合の評価(Ⅰ)
      (in vitro 遺伝毒性試験、in vivo 遺伝毒性試験のいずれも陰性の場合など)
TDI を算出する。
      ○疫学研究 又は動物実験から発癌性に関するNOAEL を得ることができる場合
       ・不確実係数で割って TDI を求める。
         【不確実係数の考え方】
           ①動物からヒトへの外挿として 10
           ②個体差として 10
           ③発癌性に対して 1-10
 
     ○発癌性に関するNOAEL を得ることができない場合はベンチマークドース法の適用を
    考慮する( National Toxicology Program〔NTP〕による 2用量試験で低用量でも発癌性
    が認められる場合を想定 )。
 
2.「 発癌性に対する遺伝毒性の関与が不確実 」と判断される場合の評価(Ⅱ)
(in vitro 遺伝毒性試験では陽性であるが、in vivo 遺伝毒性試験のデータが不十分で
      判断できない場合など
 ■TDI と数理モデルによる発癌ユニットリスクを、併記 或は 一方を記載する。
   (1) TDI の算出について
      ○疫学研究 又は 動物実験から発癌性に関するNOAEL を得ることができる場合
        ・不確実係数で割ってTDI を求める。
         【不確実係数の考え方】
           ① 動物からヒトへの外挿として 10
           ② 個体差として 10
           ③発癌性に対して 1-10
              なお、遺伝毒性のデータ不足などに対して係数を追加することがあり得る
     ○発癌性に関するNOAEL を得ることができない場合はベンチマークドーズ法の適用を
    考慮する(NTP による2 用量試験で低用量でも発癌性が認められる場合を想定)。
  (2)数理モデルによる発癌ユニットリスクの算出について
       ○発癌ユニットリスクについては、我が国の水道水での評価値が妥当であれば その値を
    参照する。 「我が国の水道水での評価」で 発癌リスクを記述していない場合は、EPA 等
         の他機関の既存の評価データの妥当性を考慮し、妥当であればその値を参照する。
         なお、新たな知見が得られた場合には、その知見について検討することとする(新規に
         リスク算出が必要な場合は、ベンチマークドーズを用いた数理モデル(直線外挿等)を
         検討する)。
       ○発癌ユニットリスクの記載方法は、1mg/ kg 体重/日の用量で 生涯にわたり経口暴露
         した時の発がんリスクとして表記する (Linearized multistagemodel の場合は slope factor
         : q に相当する)。   : ○○/(mg/kg 体重/日)
       ○発癌ユニットリスクの数値化とともに、遺伝毒性についての情報を記載する。 また、
    参考として、発癌リスクレベル 10^-4〜10^-6 に相当する摂取量を記載する。
 
3.「発癌性に対する遺伝毒性の関与が強く疑われる、又は 関与がある」と判断される場合の
   評価(Ⅲ)
       (in vitro 遺伝毒性試験、in vivo 遺伝毒性試験のいずれでも明らかに陽性の場合など )
 ■ 原則として TDI を設定せず、数理モデルを用いて発癌ユニットリスクを求める。
       ○発癌ユニットリスクについては、我が国の水道水での評価値が妥当であれば その値を
        参照する。 「我が国の水道水での評価」 で 発癌リスクを記述していない場合は、EPA 等
       の他機関の既存の評価データの妥当性を考慮し、妥当であればその値を参照する。
         なお、新たな知見が得られた場合には、その知見について検討することとする(新規に
        リスク算出が必要な場合は、ベンチマークドーズを用いた数理モデル(直線外挿等)を
        検討する)。
      ○発癌ユニットリスクの記載方法は、1mg/ kg 体重/日の用量で生涯にわたり 経口暴露
        した時の 発癌リスクとして表記する(Linearized multistagemodel の場合はslope factor:
        q に相当する)。 :○○/(mg/kg 体重/日)
      ○発癌ユニットリスクの数値化とともに、遺伝毒性についての情報を記載する。また、参考
    として、発癌リスクレベル 10^-4〜10^-6 に相当する摂取量を記載する。
 
 
     欧州の新しい化学物質規制であるREACH (Registration, Evaluation, Authorisation and
    Restriction of Chemicals)規則は、2007年6月1日に施行され、その後、REACH 登録の
    ための予備登録が2008年6月から12月まで実施された。
     REACH 登録においては、登録事業者が自ら危険有害性とばく露評価を実施し、リスクが
    適切に管理されていることを登録のための文書の一部として、欧州化学物質庁(ECHA:
    European Chemicals Agency)に提出する必要がある。
    REACHにおいては、REACH登録の対象となる化学物質 又は それを含む調剤にかかわる
         欧州域内の「製造業者(Manufacturer)」又は「輸入業者(Importer)」が登録を行い、そのため
    の化学物質安全性評価(CSA:Chemical Safety Assessment)の実施を行なうこととされて
    いる。それより下流の「川下使用者(DUs:Downstream Users)」は、登録を行なう製造業者
    又は 輸入業者(M/I)に CSAに必要な用途1・ばく露情報を伝える必要がある。 仮に、DUs
        における用途が上流のM/Iが行なう CSAに含まれていない場合、DUs自らがCSAを実施する
        こととなる。
          REACHは 欧州域内の法人(個人を含む)にしか適用されないが、日本の事業者もこれを
        無視できない。欧州への輸出者(化学物質そのもの 及びそれを含むあらゆる物品を輸出する
        欧州域外の者)も、欧州の輸入業者に対してREACH規則が要求する情報を提供する必要性
        が、ビジネス上出てくる場合があるためである。又、欧州に直接輸出していない者であっても、
    物質・調剤・成形品を、間接あるいは直接に欧州への輸出業者に提供している者にも、その
        情報提供が求められる場合がある。必要な情報が当局に提出されなければ、或は欧州域内
        のサプライチェーン上に流されなければ その物質 或は それを含むあらゆる物品の欧州での
        販売に影響がでてくる。そのため これら日本を含む欧州域外の関係事業者も ビジネス上無視
        できず、対応が求められることになる。 ・・・

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