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前泊「多分、この事実を、現実を知らないからだと思うんです。みんなが知ってしまえば、それは
もうどうしようもないと。
例えば、イジメの問題がありますよね。『なぜ、虐めが起こるか』というと、虐められていること
を知らないからですよね。
岩上「なるほど」
前泊「虐められている人が いくら訴えても、誰も それは虐めではなく、戯れているぐらいにしか
思っていない。でも、自殺をした時に 『あ、虐めだったんだ』と 初めて気がつく。こういうことに
ならないように、現実を しっかりとみんなが」
岩上「周知すること。知らせていくということですね」
前泊「そのことに対して、みんなが意識をするようになると、変わっていきますね。やはり
無知と無関心が、一番この問題の解決を遅らせていると思います」
岩上「その無知、無関心の、一つの理由が、日本中は かつて占領されていた……『かつて』と
言いますか、今も そうなのですが……。
でも、沖縄にしわ寄せをすることで、本土の人間、本州、九州、北海道の人間たちは、沖縄に
集約されて、沖縄の問題になってしまったと……先程も言いましたが、そこで、言ってみれば
分断されてしまった」
前泊「そうですね」
岩上「これも、非常に巧妙なやり方だったと思います。また、そういうことに、日本側が同意をして
しまった。先程、昭和天皇の役割というお話がありました。昭和天皇を含めて、戦後の為政者
や、権力者というのは、これが こんなふうに定着化してしまい 制度化してしまう役割を果たし
たのでしょうか?」
前泊「おそらく、この間、何人かが、その問題に対して 矛盾を感じていたと思います。鳩山さんも
感じて 変えようとした。ところが、それをやろうとしたら潰されてしまった。田中角栄さんも、
同じようにやられたかもしれない。
それから、もう一人。例えば、私の仲良しでもあるのですが、防衛省担当時代から一緒だった
守屋(武昌)(※)さん。
結局 『F15も含めて多すぎる』『使えないものを買わされ過ぎたよ』と。そういうものを『差値
で買わされるのが嫌だから、直接買い付けにいく』ということになったら、商社との問題で
やられました」
岩上「『防衛省の天皇』というようなことを言われましたよね」
前泊「消えていってしまいました。 彼は、別に、アメリカとの関係を悪化させようとした人ではない
んですよ。アメリカが大好きな人なのですが。
それでも、こういうふうに潰されていってしまうのは何なのか、ということですよね。そのことに
対して『物を言えば潰される』ということがあると、もう誰も何も言えなくなってしまいますよね。
『日本という国が主権を本当に取り戻しているのか』ということは、地位協定を見れば見る
ほど『主権は どうも まだ取り戻していないんじゃないか』と。
或は、もっと言えば 『やはり 属国や植民地になっている』というふうに、哲学者が冷徹に分析
をして、高橋さんなどは そういう指摘をしていますけれども」
岩上「高橋哲哉さんですね」
前泊「そういうことを言われて調べてみると 『そういう目で見た方が良いのかな?』という位ある
んですね。 守屋さんが、一度 『日本版のCIAを作りたい』という話をしたことがあって『情報が
全部アメリカ経由というのはおかしい』と。日本が独自に駐在武官も含めて……『外務省の
大使館が 沢山あるので、そこから 直接 情報を取って 国際情勢について分析が出来るよう
になりたい』ということを 彼は進めていたんですね。 これも、多分 『目に余る』ということに
なったのかもしれませんが。
彼が予備調査で行なった資料があって、それを見ていた時に 鉛筆書きで書いてあったのが、
中国の調査資料を見ていくと、そこに『日本の宗主国は、なぜ 中国から アメリカに変わった
のか?』と書いてあったんですよ。
だから『え?』と思ったんですね。『宗主国が中国から米国になぜ変わったのか?』と。
『宗主国って何?』という… 宗主国という意味が、よく分からなかったのですが。『防衛官僚
が宗主国という言葉を使うということは どういうことだろう 』と。
つまり 『 日本は 宗主国を持っている国だったのか 』 と、初めて 気がついたんです 」
岩上「気がついたと」
前泊「そして 『宗主国ということは、つまり、属国?』と」
岩上「属国ですよね」
前泊「そういうことになりますよね。これが 『防衛省の中の文書の中に出て来る』 ということが
衝撃でした」
岩上「認識だと」
前泊「 ですから 『日本人自身は、宗主国を持っていることに気がついていない』 ということに
なってしまいますよね」
岩上「日本人自身、自らの歴史を振り返る時に……近代史もそうなのですが……『近代はなぜ
そういう時代だったのか』と説明するには、その前時代を知らないといけませんよね。
例えば、明治は どうやって 生み出されたかというと、やはり 徳川時代を振り返らなければ
いけませんし、常に こうやって振り返っていくと、古代まで振り返っていくことになるのですが。
振り返ると、いつも独立していたことになっている歴史ですよね。
そして、日本という国は、常に……圧倒的に東アジアにおいて、中国……その時代、時代で
呼び名は変わりますが、中国が圧倒的な力を持ち、文明の感化力も持ち、軍事的な力も持ち
そして、冊封体制(※)がある。
その冊封体制の中から……朝鮮は その冊封体制に組み込まれていましたが……日本は
そこから免れていた。『独立していた誇り高い国であった』というストーリーになっています。
それは間違いないことなのかもしれませんが。近代においては、それが強調され過ぎて、
常に『独立している国だ』という イメージがあり、先程言われた『いつ 日本の宗主国が中国から
米国に代わったんだろうか』ということは、独立していた時代がないという話になりますよね」
前泊「そうなんですよ」
岩上「これは、どういう認識で生み出されてきたのかと不思議に思うのですが」
前泊「これは、防衛省の関係者の皆さんの ヒアリング が必要なのですが。この地位協定そのもの
の生い立ちを見ていった時に、他国の軍隊が、その一つの主権国家の中に 長期間駐留を
するということは、第二次世界大戦以前はなかったことなんです」
岩上「なかった」
前泊「ところが、それが一般化したのは 『何か』ということを、地位協定の考え方の中に外務省
が書いているんです。
それは、いわゆる同盟国の軍隊が、同盟関係において長期駐留するようになった という説明
をしているのですが。それ以前に『外国軍隊があるということは、植民地か属国にしかない』
ということを書いているんです。
ですから 『同盟関係によって誤摩化されるほど、日本国民は それほど馬鹿じゃないよ』という
話なのですが。
他国の軍隊が、これだけ長期間、しかも 多数駐留をして、そして、それが国内法を全く無視
して自由に動き回ることが出来る。それは『同盟国だから許される』という話ではないのでは
ないのかと思います」
岩上「許される話ではないと思います。
お聞きしてない項目が、もう一つあります。『原発再稼働との関係は?』これが、まだお話の
中に出てきていません」
前泊「はい。この原発の問題と」
岩上「このことに関心がある人が多いのですが 『どうして これが地位協定と関係あるんだ』と」
前泊「 実は、日本は 核査察(※)を毎年受けているんです 」
岩上「 IAEAからですよね 」
前泊「 いえ、アメリカからです 」
岩上「 アメリカから、毎年、核査察を受けているんですか? 」 前泊「つまり、ウランや原発がありますよね。『原発がある』ということは、核兵器を開発する力
を持っているということですから」
岩上「プルトニウムですね」
前泊「プルトニウムにしても、ウランにしても、いくら輸入をして、どのぐらい使ったのかを、きちん
と報告させられているんです。 これは、実は ケビン・メア氏がストレートに言ったのですが
『それは、我々は いつもちゃんとチェックしています』と。『日本が悪さをしないように』という
話ですよね」
岩上「ケヴィン・メア」
前泊「はい」
岩上「沖縄のことを侮辱した人ですよね。先頃 尖閣に関して、文藝春秋で寄稿して『日本は中国
に遠慮することはない』『もっと、どんどんおやりなさい』と。『F35を買いましょう』『イージス艦
を買いましょう』と書いた人ですね」
前泊「彼は非常に正直な人で、ああいう人は むしろ大事にしたほうが良いんです。アメリカの本音
を知ることが出来ますから」
岩上「なるほど」 |
文明 或は 帝国
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岩上「嘉手納ラプコンは、この資料 (前泊氏のPower Pointの資料を指す) の中にありますか?
嘉手納ラプコンというのは どういうものなのでしょうか?」
前泊「つまり、沖縄本島全体を包む形で…実は 沖縄の基地というのは、陸上の基地が沖縄本島
の20%を占めているのですが、この基地の他に 周辺に、空域、海域含めて演習 エリア があり
ます。 実は、この全体のエリアは 米軍が管制圏を握っていました。そうでないと、訓練空域
での訓練がスムーズにできないということで、ずっと全体を包んでいました。
那覇空港は 『この周辺だけ日本の管制圏が及ぶ』 ということで、全体をアメリカに取られて
いたのですが。これを 5年前に返還をさせました。そして、自由に使えるようになったはず
だったんです」
岩上「 これは、沖縄の県民のみなさんの運動の成果ということですね 」
前泊「 そうです。今も 沖縄に観光に行くと分かると思いますが、那覇空港に近づくと、飛行機が
低空飛行になるんです。低空飛行になるというのは、実は 嘉手納の横に那覇空港がある
ので、交差しているんですね。
交差をすると、嘉手納に入ってくる飛行機と那覇に入って行く飛行機が交差をしてしまうので、
高度を変えるんです。実は、上の方の安全な空域を 米軍側が使って、民間機は その下を
くぐらされているんです。
普通は、安全に飛ぶためには、ギリギリ まで上空を行って、エアポケットに落ちて 高度が2300
落ちたりしますから、ギリギリまで行って 急角度で着陸をしていく、ということが安全な運行
なのですが。
沖縄の場合は、嘉手納の安全な空域を確保しているために、民間機が その下をくぐらされて
いる形で、長く低空飛行をする形になっているんです」
岩上「軍尊民卑」
前泊「そういう形ですね」
岩上「米尊日卑みたいな形ですよね」
前泊「『それはおかしい』『管制圏を日本に返せ』ということで、日本に返させたのですが、運用は
変わっていないんです」
岩上「運用が変わっていないんですか?」
前泊「変わっていません。何にも変わっていないんです」
岩上「理屈上、返しただけということですか?」
前泊「 はい。それを返す時の条件が 『これまで通りの権利を アメリカによこせ』というものでした。
ですから 『空域を返してもらって、主権を取り戻しても、米軍優先が変わらないのであれば、
どんな意味があるのか』という話なんです」
岩上「 沖縄の人たちからすれば、自分たちが 一生懸命に交渉をして変えたのに、結局 その
上位いる日本政府が シッカリ しないために、結局 それが台無しになっている。『いい加減に
してくれ。 しっかりしろよ、日本政府』ということを言いたくなりますよね」
前泊「そういうことです。しかも、観光客がたくさん乗っていますし、国民の安全に関わる問題です
よね。そして、当然、何かあった時には、米軍機ならば脱出ができますが、民間機はそういう
ことはできませんよね、脱出をするための装備が付いていませんから。
やはり、安全な空域を確保するというのは 当たり前のことですよね。
先程の横田ラプコンもそうですが、あの大きな山脈が東京の真横にあるために、四国や大阪
や、北陸に行く時には、迂回するか、急上昇をして、その上を通って行かなくてはいけない。
そのために、航空機の燃料が余分にかかるということで、燃費が悪くなってしまうわけです。
急上昇をするわけですから。そういうことが危ないということで、早く返してくれと。 或は、
横田ラプコンの中は通れませんし、通るときに アメリカ の言うことを聞かないといけない。
そこで、色々な問題が起こっているのではないかと思います。
実は、前に流星号事件(注)という事件があったんです」
岩上「なに号事件ですか?」
前泊「流星号事件です」
岩上「流星号事件」
前泊「『日本の民航機が、間違って撃ち落とされたのではないか?』という疑惑があるんです。
それも、まだ謎に包まれています。なぜ墜ちたか分からないんです。
或は 日航の123便(注)でもそういう疑惑がありましたよね。『なぜ、あそこで急に圧力隔壁が
飛んだのか』という話もありました。これも謎のままですよね。『整備ミス』という話で ボーイング
社の責任にされているみたいですが」
岩上「日航機墜落事故ですよね。あの時 一番最初に現地にたどり着いたのは米軍だった という
ことが言われていますよね」
前泊「はい。この普天間の沖国大にヘリが墜ちた時も、米軍が 先に フェンスを乗り越えて来て
……もう封鎖をしていますが、情報の全てが アメリカに掌握されました。『管制圏が握られて
いる』ということは、やはり、その情報をアメリカが統括をしているというのが分かりますよね。
首都圏の周辺で、そういうことを握られ続けていることに、疑問を感じないことに疑問を
感じますよね」
岩上「そうですよね。それは、この問題に繋がってくると思うのですが。つまり、先程、米軍の基地
が 4,999 あると。米国内が圧倒的に多いのですが、それでも 世界中に米軍基地が置かれて
いるわけですよね。 ヨーロッパにも、第二次大戦の時に、ドイツ、イタリアが敗北し、そして米軍
が駐留し、NATOが作られ、今も駐留をし続けています。
しかし、こういう米軍基地 ネットワーク の特異性は、日本と、他国ではどういう違いがあるのか。
ドイツ、イタリアと何が違うのか。
先程、韓国との違いが出ました。韓国は、ピープルパワー によって自分たちの権利を少しずつ
取り戻しつつあると。フィリピンも米軍基地が撤退しました」
前泊「はい。追いだしちゃいました」
岩上「追い出したんですよね。これ すごいことですよね。どうして フィリピンは追い出せたのか」
前泊「イタリアも、米軍の訓練に対しては イタリア軍の許可をもらえと。これは、実は 同じように
使われて 演習を許していたのですが、訓練中にゴンドラのロープを切ってしまったんですね。
(注)そして、死亡事故が起こりました。『なんだ、これは』ということで、国民が怒ったんです。
そして、米軍に対して『訓練する時はちゃんと通報しろ』と。そして『イタリア軍にちゃんと許可
をもらってから訓練をしろ』ということを言われて、『訓練を許可もらってまでやるか』ということ
で、事実上、訓練が止まったんです」
岩上「なるほど」
前泊「それから、ドイツでは……『原状回復義務』というものが日本にはありませんが……基地を
返還した後、環境汚染が見つかった場合には『アメリカが綺麗にしろ』と。彼らは浄化義務を
アメリカに課しているんですね。
そういうものが 日本はありません。ですから、返還された後 沖縄の恩納通信所もそうです
が、返還されてから、PCBとか、水銀とか、そういう有害物質が見つかれば、日本の税金で
クリーンアップするんです」
岩上「おかしいですよね」
前泊「当然、アメリカは、アメリカ国内で軍が汚染したものが見つかった時には『10年間かけて
軍がきれいにする』という軍の予算が投じられているんです。アメリカ国内でもしているのです
から、日本国内もすれば良いのに『なぜ、それができないのか』ということがありますね。
それから、裁判権にしても そうですが。なぜ、イラクでも要求ができるようなものが、日本は
要求ができないのか」
岩上「どうしてなんですか?」
前泊「これは政治家の問題だと思います。認識の問題とか」
岩上「後は、政治家が出てきても……先程、民主党政権がそうであったように」
前泊「潰されてしまうわけですよね」
岩上「そして、検察が現れたりしますよね。司法権を握られているからなのかもしれません。
『それじゃ、僕らは一体どうしたらいいの?』という結論に至るわけなのですが。
『じゃあ、岩上さん。そんなこと言うんだったら、どうしたらいいの?』とよく言われるのですが。
『そう簡単にどうこうできる問題じゃないんですよ』と思います。でも、みんな『なんとかしたい』
と思っているわけですね。どうしたら良いと思いますか?」
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前泊「過去を振り返ると、同じようにオイルショックの時に、直接、中東から石油を買いに行った
総理大臣が、いつのまにかロッキード・コーチャン事件という、アメリカ発の疑獄に追い
込まれて、首が飛んで行きました。そういう事例が、孫崎さんの本の中に 沢山出てきます。
『戦後史の正体』の中で、まさに明らかになってきたもの……その裏側に行くと、やはり
『安保問題、基地問題、そして地位協定問題に絡むと危ない』というのが分かってきますね」
岩上「なるほど。 沖縄返還……先程、冒頭に謎かけのように仰いました。『なぜ、72年だった
のか』と。『なぜ 72年だったのか』というと、まさに オイルショックを前後するような時期ですよね。
そういう時期であり、そして 同時に、日中国交回復の時期でもあった。
戦後史の中では、大きな節目になる時代ですよね。『なぜ、72年だったのか』という、先程の
問いだけ仰られて お答えを教えて頂いていないのですが。なぜ 72年だったのでしょうか?」
前泊「一つは、西山さんの説ではありますが。彼は 実際に取材をしていて 『なぜ72年か』と。
つまり、返還交渉が 72年ありきからスタートをするんです。
これは、佐藤政権が最後の時期で、もうこれ以上は伸びないという、つまり デッドラインが
最初に決まったのが、72年なんです。佐藤政権の最後です。
その時に、実は 佐藤さんは、成果らしい成果は 何もあげていなかったんです。その前に、
池田内閣が高度成長で所得倍増計画をやりました。しかし、佐藤さんに残されている、成果
をあげられるものは、もう沖縄返還しか残っていなかったんですね。
それを実現するためには、あらゆるものを飲んででも、とにかく返還ありきの交渉をしていく
『そのために密約が 沢山生まれてしまった』と。『呑まされる度に』ということがあったみたい
ですね。
これも、今まさに プロジェクトで調査中なのですが。 西山さん自身が言っていたのは、アメリカ
の財務の問題ですね。お金がなくなってきた。
しかし、お金を次々に出さざるをえない。それを出すための仕組み、その時に最大に取れる
ものといえば、それは沖縄ですよね。『糸売って 縄を買った』と言われていましたけども。
『 繊維交渉で譲って、そして 沖縄をもらった』 」
岩上「 『糸を売って 縄を買った』 」
前泊「 と言われましたけれども 」
岩上「繊維交渉があり、そこで 日本が譲歩することで 沖縄を返還させた。これが『糸を売る』と。
しかし、繊維交渉で 日本は何を譲歩したのでしょうか?」
前泊「 つまり、輸入でも輸出でも 低関税で 次々に出していく、安いものを次々に出していくと、
アメリカの繊維産業を淘汰しかねないという時に、日本側が輸出を制限するということですね」
岩上「『自主規制をしていく』ということですね」
前泊「そのことによって、アメリカ側に恩を売って『沖縄の返還交渉に臨んでもらう』というような
交渉をしていったと」
岩上「なるほど」
前泊「今度、沖縄返還に当っては、『この時期に』というのが……1970年は 実は 変動相場制
に移行しますね」
岩上「そうですね。 ニクソン・ショック」
前泊「 1ドル360円が、315円になりました。2割減ですよね。沖縄の資産からすれば、2割減る
んです。1000万持っている人が、800万に減る。1億持っている人は、8000万に減る。全体の
量を考えても、ものすごく大変なことですよね。
それを交渉していくのですが。『この時期に』というのが、ちょうど全て重なっていくんです。
その裏側で 何が動いていたのか。それを、まさに 今、再検証しているのですが。
40年経って、今 ようやく 民主党が政権を取ったこともあり……自民党政権だったら出なか
ったかもしれない密約の数々を、40年も経っていますので、情報公開をしてきたんです。
その中を見ていくと、裏金の動きとか、密約問題もそうですが『密約はなかった』と言っていた
のに、実はあったということが分かっていますよね。 実は、アメリカ 側が開示をしていますから」
岩上「アメリカが出してきている」
前泊「チグハグになっているんですよね。アメリカは公開しているのに、日本は『まだ知らない』
と言っているような話なのですが。こういうものを 1つずつ見ていくと、実は 地位協定の問題
も、その段階で、もっと出てくる可能性があるんです。
つまり、沖縄返還というのは、沖縄に地位協定が適用されるんですよ。しかし、それまで、
地位協定は沖縄には適用されていないんです 」
岩上「なるほど。それまでは 米軍の……」
前泊「統治下ですから、核兵器を置けたんです。非核三原則が適用されていませんから。
ところが、返還となると、ここに地位協定が適用される。そうなると 非核三原則も適用される
し、沖縄の基地の使い勝手が悪くなるんですね。そこで 『どうするのか』というので、運用面で
いくらでも使えるように、どんどん解釈を出していく。
それが、前にスクープをして報告をした『地位協定の考え方』という、外務省の機密文書に
出てくるんです」
岩上「それは、今 この資料の中にありますか?」
前泊「この中には入れていません。でも、インターネットで探せば 全文が開示をされていますし、
増補版(注)は本で出版をしましたので、最初の段階でそれが出ています。それを読めば
『地位協定が いかに国民の権利を蝕んできたか』ということが分かります。
そういうものが、実は 沖縄に適用されて、沖縄の中で 大きな歪みを生んで、その歪みを生ん
でいることが、実は日本の中でも歪みが起こっていたことが、ようやく明らかになっていくん
ですね。それを見れば、失われたものが どれだけあったかということが分かります」
岩上「 沖縄返還の問題というのは、北と南ですが、北方領土の話と無関係ではなかったんです
よね。北方領土の2島返還で妥結しようとしたら、アメリカ側から強い圧力がかかって『そう
いうことならば、沖縄は返さない』というような、恫喝がかかったという話もあります。
ですから、沖縄だけを見るのではなく、日本全体、日本という国の主権が侵されている問題
なんだと。それが、基地問題にしても 米軍との関係にしても、全て沖縄の問題だとして片付け
られがちなんですよね。
しかし、実際、当事者でない人たちには分かりませんから『沖縄だけのことなんじゃないか』
ということになって、(フリップを画面に映し出す) ここに項目の一つとして書きましたが『米軍
基地の問題は沖縄だけの問題なのか』と。
実際、この米軍基地を成り立たせているのは 地位協定ですし 『日本には主権がない』という
状態のことなのですが」
前泊「冒頭に、岩上さんが出された……(横田ラプコンの地図が、画面に映し出される)これは、
一つの象徴ですよね。首都圏の空域を 外国軍隊に占拠されているというのはありえないこと
です。しかも、横田ラプコンの中は… つまり、交通整理を……例えば、銀座の交差点の交通
整理を、米兵が出てきてやったら 『どうして?』と思いますよね。
でも、それが普通にやられるんですよね。航空法上、これがやられている。『おかしいじゃない
か』と言ったら、その地位協定に書いてあることは 『従う必要は確かにない』と。
『主権は、確かに日本にあるので、米軍の指示に従わなくても良い』と。『でも、従わないで
事故が起こったらパイロットの責任だからね』とあるんです。『パイロットは否応なく従うだろう
、だから、そこまで書かなくても良い』という解釈まで書いてあるんですよ。
『他国軍隊の指揮下に置かれること自体はおかしい』というのは、外務省も認識しているの
ですが、それを なぜか 残し続けている。
石原慎太郎さんも『横田ラプコンについては返せ』という風に、一生懸命動いたのですが」
岩上「そうですね。横田基地問題を言って、そして東京都知事におなりになられたんですよね。
ですから、石原さんに期待をした人は多かったと思います。『本当に愛国的な政治家なんだ』
と。ところが、これは進みませんでした。どうしてなのでしょうか?」
前泊「やはり、彼ですらも、この事に対しては触れることができなかったんでしょうね。アメリカの
支配権を取り戻すことが出来ない。沖縄は取り返したんですよ。嘉手納ラプコンを、実は返還
をさせました」
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前泊 「 例えば 『基地を維持するために どういうことをしているのか』 と言いますと。
例えば、砂川事件 が有名ですね。ジラート事件(※)もありましたが。 砂川事件というのは、
まさに基地に反対をしている住民がいて、反対運動をしていた。そういうことが起っている時
に、司法として これを訴えた時に 『主権国家の中に外国の軍隊がいる』と。『しかも、それに
日本が金出して作っていることも含めて、これおかしいだろう』『これは違憲である』という
ような伊達判決を出すんです」
岩上「 伊達さんという裁判長が判決を下したんですね 」
前泊「 それに対して 『どうする』と大騒ぎになるんです。『違憲だ』『これは大変なことになった』
となって、アメリカが動くんです。いきなり、最高裁の長官を呼び出して 『これなんとかしろ』 と」
岩上「 日本の最高裁長官⋆を呼び出して 『何とかしろ』と 」
⋆ 裁判長・田中耕太郎長官
前泊「最高裁長官が呼ばれて行って 『なんとかしましょう』と。 普通は 地裁から上がったら高裁
に行って、最高裁に行くのですが。いきなり、地裁から最高裁に飛ばされるんです」
岩上「跳躍と言いましたね」
前泊「はい。跳躍をして、そして 最高裁が いきなり『これは合憲だ』という判決を下したんです。
つまり、アメリカが司法権に介入をしているんです。日本の司法は 介入をされても、もう反論
しようがない、反証しようがない。
同じようなことが……実は 沖縄でも 『伊江島事件』(※注)というものがありました。これは
『山城くん事件』とも呼ばれています。この時も、実は、第一次裁判権を 」
岩上「 この『伊江島事件』というのは どういう事件なんですか?」
前泊「 これは、沖縄の演習地で……米軍が演習で使っている時は、旗が上がっているので、
その間は入れないのですが、旗が降りたら演習が終わった後なので、入っていって薬莢を
拾ったり、草刈りをしたり、牧草を取ったり……基地に 場所を たくさん取られているので、
入りあいを認めているんですね。そして、演習が終わったので、山城くんという若い青年が
草刈りに行ったんです。
そしたら、米兵が 二人、ジープに乗って きつね狩りを楽しむように、この青年を追い回した
んです。最後は、崖に追い詰められて、銃で……信号弾で彼を撃ったんです。庇い手をする
ので、手が折れたのですが。その手をのけていれば、頭に当たって死んでいますよね。
こういう事件が起こりました。
これは、演習が終わった後ですので公務外ですよね。公務外ですから、当然 第一次裁判権
は日本側が持つのですが、これを日本側は放棄するんです。そして、アメリカ側に委ねるん
です。その判決は というと『罰金刑』です。
これを、その後 『日米地位協定の考え方』(※)という外務省が作っている機密文書の中を
読むと、これは明らかに司法権に対する行政権の介入…つまり、三権分立違反なんです。
裁判権を放棄してしまうわけですから。
それを、司法にも相談なしにやって 『こういうことは二度としないでおこうね』と書いているん
です。そして『国会で問題にならなくて良かったね』とも書いています。そういうことが起こった
りしているんですね。
それから、逆に言えば、運用の面でも、実は地位協定の運用が、運用上 適用されては
いけないものにも適用されたりもしているんです。アメリカで、出稼ぎに行っていた日本の
青年が徴兵されて、アメリカ軍に入れられて ベトナムに送られそうになったんです。
これは 『二見寛事件』というのですが、二見さんという人が、徴兵をされてしまうんですね。
『このままいけばベトナムに送り込まれて死ぬかもしれない』というので、彼は脱走をして、
カナダに亡命するんです。
そしたら、カナダは『我々はこれを受け入れられない』ということで、日本に強制送還をする
んです。そして、彼は 日本に戻り、千葉の知人宅に隠れているところに 外務省が来て説得を
するんです。『君は脱走米兵だから帰りなさい』と。『日本にいたら大変なことになるよ』という
ことで、アメリカに戻されるんですね。
これは、地位協定上『脱走米兵については引渡し義務がある』という風になっているのですが
彼は 本国で徴兵をされているので、在日米軍ではないんです。
つまり、日米地位協定は適用されない。されないどころか、国際法上も『自国民の保護』という
ことは認められているんです。地位協定よりも上になるのに、外務省は引き渡してしまったん
です。
元はと言えば、本来、徴兵されるのがおかしいんですよね。『これは憲法違反じゃないか』と。 どうしてそうなったのかと言うと『徴兵免除協定』を、日本の外務省は アメリカと結んでいなか
ったんです。タイとか、他の国とは結んでいて『お互い徴兵しない』という決まりがあったのに
アメリカとは結んでなかったために、当時の資料を見ると『500人以上が徴兵をされて、ベトナム
に送り込まれた可能性がある』という話があるんです。
それについて、国会でも議論になったのですが 『詳細を把握していません』というのが
外務省の報告なんですね。そういうことが起こったりしました。
つまり、本来、日本の法律上も出来ないことがされてしまったり、それから日本の法律
が シッカリ適用されるのに放棄してしまったり、ということが起こっているんです。 アメリカ
を前にすると、全て譲歩をしてしまう」
岩上「これは、すごく重要な話ですよね。実例は、もっと たくさんあると思うのですが」
前泊「この本の中に、たくさん書いていますので、是非、読んで下さい」
岩上「もちろん、当たり前のことですが。日本は、1年間に多くの裁判がありますので、その裁判
の全てに米国が介入をする訳はありませんよね。『国内問題だ』ということで、米国が等閑視
していることはあるだろうとは思いますが、米国にとって非常に死活的な利害とか、何かが
あるとやはり介入してくる。
そして、米国、米軍が直接ではなく、日本の行政、或は 司法に直接的に働きかけてくる。
そして、彼らを使って 日本の国内の政治に関与してくる。
民主党が、2005年という非常にナーバスな時期に、こういう改定案を出していて、そして
米国からの独立、対等な関係を本気で考えていたとしたら、これはアメリカの知る所であった
と思います。
そして、2009年に政権交代をした時に、小沢一郎代表をそのままにして、小沢政権を成立さ
せてはいけないと考えた可能性があると思います。そして、そういう時に『陸山会事件』という
ようなものが起こった可能性がある。
だからこそ、あの無茶苦茶な 陸山会事件……結局、無罪になり、無罪が確定しました。でも、
その過程では捏造事件があって、ものすごく無理筋なことをやっているわけですよね。
しかも、先程の伊達判決でお話が出ましたが……最高裁長官が アメリカ側から呼び出されて、
会っているという話でしたが。 この間、現在の最高裁長官も渡米をしましたよね。 それが、
小さな記事になりましたが、何を話しに行ったのか 未だに分かりません。そこが非常に似て
いると思うのですが」
前泊「いえ、似ているのではなく、状況は変わっていませんから」
岩上「状況は変わってない」
前泊「ですから、そのまま 『アメリカの意向』というものが 非常に尊重されるんですね」
岩上「そうなりますと、陸山会事件、そして 民主党政権の物凄い変節と、国民に対する背信。
そして、こうしたこと全てを忘却していることは 『米国の圧力に これからもずっと屈し続けて、
ポチで生きていきたいと思っている日本の官僚、政府、それから政治家 或は支配層の共同
謀議による謀略である』ということになるのですが。これは、ものすごい話だと思うのですが」
前泊「そうですね。ですから、本当に国民が知っていれば、そういうことは許されないはずですし
こういうことは、裏で コソコソやるから苛めに遭うんですよね。『みんな、こんなことをされて
いますよ』と言えば、アメリカもできないと思うんですよ。どうして それを言わないのか。
例えば、鳩山さんが政権を取った時に 『最低でも県外』と言って、普天間基地を移そうとし
ました。そのことを、いくら言っても……逆に 党内で、或は 政権内で」
岩上「足を引っ張ったわけですよね」
前泊「そうですよね。防衛大臣の北沢さんは『辺野古移設で行きます』と。或は、外務大臣が
『嘉手納統合案で行きます』と。しかし、総理大臣が言っていることを聞かない閣僚がいた。
普通ならば 『閣内不一致』と言って、総理大臣が首にできるのですが、首にはしませんで
したよね。 逆に、数カ月後には『学べば学ぶほど、抑止力が必要で、海兵隊を沖縄に置いて
おくしかない』ということで、辺野古に回帰をし、彼は責任を取って辞めてしまいました。
総理大臣が決めても、実現ができずに、普天間基地問題一つで 首がすげ変わってしまう。
『基地問題に手を出すと首が飛ぶ』という前例を作ってしまいましたよね。
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岩上「これは大変なことですよね。実際、軍が基地を置いたりすると、燃料が溢れていたりとか、
武器弾薬を使っているわけですから、ひどく汚染され続けているというのは、どこでもある話
ですよね」
前泊「これは、返された時に、沖縄でも多発したのですが」
岩上「一部が返還された、その後に」
前泊「そこで出てきたのが、大変な状況でした。重油……PCBが穴に埋められていたりとか」
岩上「これは沖縄国際大学ですか? (前泊氏のPower Pointを指して)」
前泊「これは ちゃんと返還された後ですね。そういうことが起こったりしました。それから、これは
PCBですね。実は、簡単に掘られた穴に、全部、溜められていたんです。それを基地乗員が
告発をしたんですね。『こんなことしています。大変ですよ』ということで、通報があったので、
渋々動くんですが、基地の中は立ち入りができないんですね。
これは、地位協定上『管理権』というのが認められているので、立ち入れないんです。そういう
危険な状況にあるという通報があっても、日本の国内なのに フェンスの内側はアメリカになって
いて、軍の管理下にあるので入れないんですね。
いくら言っても、調べさせてくれないので、飛行機で飛んだら確かに黒い池があったんです。
『これはそうだろう』という風に突きつけて、行ってみたら『ないですよ』と。そして、行って
みたら埋められていたんです」
岩上「え?! 埋めていたんですか?」
前泊「それで『ここだ』というのがあって、調べたら出てきたんです」
岩上「それは、琉球新報が飛行機を飛ばして、写真を撮って、そして米軍の司令部などに言った
ということですか」
前泊「県、市町村の自治体を通して 『言われた通りこういうのがありますよ』と伝えたんです」
岩上「なるほど。米軍に言ったのではなく、まずは 県の方に伝えたんですね」
前泊「それで、当然、自治体は それを『確認させる』と言って、しょうがなく行って……そして、
見つかったらPCB……もう大変なことですよ。嘉手納というのは、実は、沖縄の中でも豊かな
地下水源の場所なんです。
あそこは、復帰前は、いわゆる沖縄の県民の飲水の20%を地下井戸で採っていたぐらいの
ところなんです」
岩上「20%」
前泊「豊かな地下水源を持っているんです。実は、それをペリーが来航した時に調べて知って
いたので、アメリカは迷わず そこに基地を作っているんです」
岩上「ペリーですか?」
前泊「はい。ペリーです」
岩上「そんな時代から、ずっと そこに狙いを定めていたということですか?」
前泊「はい。だから、迷わず中部に入ってきて、そこに基地を作りました。水があるからですよね」
岩上「沖縄戦の時の話ですよね。でも、ペリーの来航からそこまでが繋がっていたんですね」
前泊「ペリーの来航記を読んでみれば分かりますが。沖縄の記述が、多分、岩波の文庫本だと、
5巻か、4巻あって、その中の2巻半ぐらいが沖縄の記述ですね」
岩上「まだ、読んだことがないのですが」
前泊「ペリーは 沖縄に入ってきた時……最初、日米和親条約を結ぶ前に、琉米和親条約(※注)
を結びますが……『 日本が、もし 開国に応じない場合は 琉球を占領しよう 』ということを、
大統領から許可をもらって入ってきていたんです」
※注 外務省:外交資料 Q&A幕末期より
岩上「すごい話ですね」
前泊「それは、ペリー来航記で検証をすれば分かりますが。その時に、基地を作るための調査
をすでに終えているんですね」
岩上「ものすごく前から、計画をしていたということですね」
前泊「その飲水の上に、PCBの池を作ってはいけませんよね。地下浸透していくと、大変なこと
になります。ですから、これを掘り出して、ドラム缶に詰めて保管することになったんです。
『これは アメリカが汚したので、アメリカ に持ち帰れ』ということで、処理をさせるということになっ
たのですが、これを 船に乗せて横須賀経由で本国に送り戻すのですが、本国で追い返され
るんです。アメリカの国内法で『こういう汚染物質を持ち込んではいけない』という環境法に
引っかかって、追い返されて、横須賀に戻るんです」
「驚き、あきれ、憤る/在日米軍PCB」2000年4月18日(琉球新報より)
岩上「ええ?」
前泊「日本の環境団体は、当然、反対運動をして、激しく反対をして、また寄港したのが出て行く
のですが、その後、どこへ行ったのか分かんないです」
岩上「どこに行ったか分からないんですか?大体、何年ごろの話なんですか?」
前泊「これは、大体十四、五年前ですかね。こういう問題がありました。私もフォローしなければ
いけないのですが。そういうことがあったので、その後どうなったのか、防衛省にでも確認を
して頂いて……」
岩上「太平洋に投棄でもされていたらたまりませんね」
前泊「きちんと処理をしてくれていれば良いのですが」
岩上「先程、画面を切り替える時に……今、お勤めになっている沖縄国際大学にヘリコプター
が落ちたこの図があります。この時も……この写真は撮れていますが……機体の処理に
関して 非常に治外法権というものを感じさせることがあったと聞いております。これに関して
本来ならば、こんな事件が起こったのですから、日本の警察が まず一時的に捜査の対象と
しますよね。
ところが、警戒線を米軍が張り、日本の警察も行政も立ち入りが禁止されて、この処理が行
われたというふうに聞いています」
前泊「『これはアメリカの財産』と地位協定上で決められているんです。アメリカが落としたもの
とはいえ、アメリカの財産ですので『アメリカの財産を管理する権利はアメリカにある』ということです」
岩上「そういう理屈になるんですか?」
前泊「はい。それで、これが敷かれたんですね。実は先程の、民主党の改定案を見ると、この
問題点を、やはり民主党も分かっていて非常に明確に書いています。
『事故が起こった場合に、施設区・区域外で発生した現場統制は、日本側が第一義的な統制
を行なう』と書いているということは、それがないからですよね」
岩上「なるほど。今は、統制をおこなう権利がないから、統制を行なうんだと。これは、すごく
画期的ですよね」
前泊「そうなんですよ。それから『日本側から身柄の引渡しの要請があった場合、米国側は好意
的考慮を図る』というふうに、現行には書いてあるのですが。民主党は『米側は同意する』と。
有無を言わさず同意しろというふうに要求をしているんです」
岩上「なるほど。後『基地外に居住する米軍関係者に、外国人登録に関する日本の法令を適用
する』と。これは、在日外国人と同じ扱いですよということですね」
前泊「同じ扱いではないから、適用するということなのですが。それから『公務中のもであっても
日本が第一次裁判権を持つ』と。これもすごいですよね。ですから、これをすれば、イラクと
同じようにアメリカは出て行きますよ、ということです」
岩上「これをやれば良いんじゃないですか」
前泊「やれば良いんです」
岩上「この民主党の『地位協定改定案』が作られたのが2005年でしたよね。2005年ということは、
ちょうど小泉政権ですよね。そして、米軍再編が」
前泊「が決まった時です」
岩上「この2005年は、非常にある意味では ターニングポイントになりますね。孫崎さんの、実質的な
デビュー作に『日米同盟の正体』という本がありますが。あの『日米同盟』という条約が結ば
れたのも2005年でした。変革と再編。
これは、ものすごく重要な歴史的な ターニングポイントだと思います。そして、その時、民主党は
非常に攻めに攻めた協定の改定案を作っていた。
つまり、日本が実はどういう地位に置かれているのか、留め置かれているのかということを、
よく自覚している人たちが民主党内部にいて、こういうものをまとめたということですよね」
前泊「そうです。『対等な日米関係とはどういうことか』。これは、地位協定を読めば分かります。
これが不平等条約ですね。
残念なことに、外務省の敷地の中に 小村寿太郎さんという方の銅像があります。不平等条約
を改定したということで銅像が建っているのですが『この不平等条約は誰が改定するのか』
ということですね」
岩上「なるほど」
前泊「小村寿太郎が出てこない限り、この不平等条約は改定されないのですが。民主党は、
きちんと改定案を作って不平等からの脱却を打ち出しています。これは画期的なのですが、
なぜか政権を取った時には、この存在すらもう忘れているんです」
岩上「なるほど。これは誰が作ったものか分かりますか?」
前泊「いえ。民主党の中で議論をして作っているはずなのですが。詠み人は誰なのでしょうか。
当然、これは党として決めていますから……この後、社民党と一緒になって、三党合意案も
出していますが、その中でもこれはしっかりと書かれていますね」
岩上「ということは、民主党の幹部は共通認識として持っていたということでしょうか?」
前泊「もちろん、そうだと思います」
岩上「ところが 民主党には色んなことがありました。内部分裂のような状態になり、結局 明らか
に対米従属派と思えるような人達が民主党の中で生き残り、そして国民の信頼を失っていき
自己解体というか、壊滅の方向に向かって行った、そういう不思議な政党なんですよね。
この改定案で、これだけ対米従属からの脱却ということを、はっきりと意識していたのだと
したら、これは日本国内で対米従属を続けたいと思っている人たちにとっては不都合だろうと
思いますし、なによりも アメリカにとって、これは非常に不都合なことですよね。これだけ発信を
していれば、アメリカ側も気づいていたと思います。
ところが、民主党政権ができた時に小沢さんが代表でした。あの時、2009年に陸山会事件
というものが起きなければ、民主党が大勝し、小沢政権が誕生していたかもしれません。
しかし、なぜか陸山会事件が起り、小沢代表が降りて、そして鳩山政権になっていきました。
そして、その後も 色々なことがあって潰されていく訳です。
先程も、冒頭で言ったことなのですが 『この本の中には不思議なことが書かれている』。
つまり、普通 日米地位協定という話であれば外交安全保障の話ではないかと思いますよね。
ところが、この本の冒頭を読めば、原発再稼働の関係と並んで、検察の捜査報告書の捏造
問題との関係があるんだということが分かる。これは 『日米地位協定が分からないと分か
らない』という話ですよね。これはどういうことなのでしょうか? 」
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