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(3) のつづき
3.被曝線量の評価
渋谷健司氏が評価部会に提出した 「見解 」における
c 被ばくの影響は、現行のプロトコール(前後比較)では分からない。全員の
被ばく線量評価がなされていないために、コホート研究は成立しない。
という主張には、
・ 県民が、そして、日本国民や国際社会が「被ばくの影響」に注目しており、
プロトコールの見直しによる被ばくの影響の科学的検証は必要である。
・ できるだけ、全員の被ばく線量評価が望ましい。もし、無理ならば、地域など での集団レベル(なるべく小さい単位が望ましい)の線量を用いて、個人レベル
での交絡要因を調整した上で、福島全体で、甲状腺がんの罹患率について、
線量の低い地域と高い地域で用量反応関係を調べることが必要である。
のような説明を付されている。
この文章を読んで、私は 絶望的な気持ちになった。
「被ばくの影響」は
「注目」すべきことではなく、「危惧」すべきことではなかろうか。
それは、福島県民だけではない。東北・関東の汚染地帯の人々も また
そうであろう。
被曝の当事者でない人々、特に 国の内外の科学者は 「注目」してはいる
だろうが、被曝の当事者(これを福島県民だけに限るような言い方になっている!)
は、「注目」しているのではなく 「危惧」しているのであろう。
このような言葉の使い方一つに、人は その思いを正直に表すものである。
また、「科学的検証」などというものは、チェルノブイリやヒロシマ・ナガサキも
そうであるが、被害者の役には 全くならないばかりでなく、逆に 彼らを苦しめて
きたし、今もなお苦しめている。
これらの科学的検証は まだ終わっていず、その被害の全貌は なお 闇の中に
あって、科学論争が続いているのである。
チェルノブイリにおいては、大方の科学者の予想に反して 甲状腺がんの
被曝影響が確認されたのは、氏の言う 科学的検証⋆によってではなかった
のであった。
⋆ エビデンスを求めること。
(14) の児玉龍彦氏の言を参照ください。
氏は、被曝の影響は
現行のプロトコール(前後比較)では分からない
としている。
また、横文字の言葉が出てきたが、このプロトコール(protocol)というのは、
「手順書」という意味のようで、氏が 具体的に 福島県の甲状腺検査の
手順書のどこがどう問題と考えるのか不明瞭で、また どこをどう変えれば
被曝影響が分かるようになるのかを、氏は明示していない。
さらに、根本的には 現行のプロトコールでは 被曝影響は分らない
と判断する理由を述べていない。
これは、「過剰診断の疑いがある」と言いつつ、そう判断する積極的な根拠を
示さないのと同じ姿勢である。
(この判断は、「被曝影響でないとすると 過剰診療であろう」という 仮定の下での消去法
によっている)
もし、県および県立医大から 十分な情報が開示されても、なお被曝の影響
は分らないという根拠を、氏は まったく示していないのである。
そして、極めつけは
できるだけ、全員の被ばく線量評価が望ましい。
もし、無理ならば、地域などでの集団レベル(なるべく小さい単位が望ましい)の線量
を用いて、個人レベルでの交絡要因を調整した上で、福島全体で、甲状腺がんの
罹患率について、線量の低い地域と高い地域で用量反応関係を調べることが必要
である。
と言っていることである。
すぐに、また正確に できるはずもないこと⋆を、さもできるかのように言う
のは、被曝当事者や一般国民を愚弄することになろう。
このようなことは、科学者など暇人に任せておけばよい話である。
⋆ 個人の被曝線量の評価、 用量反応関係(被曝線量と罹患率が比例しているかどうか)
最後に、被曝影響を知るために
全員の被ばく線量評価がなされていないために、コホート研究は成立しない。
と。
また、横文字が出てきたが、コホート研究というのは 被曝したグループと
被曝していないグループを一定期間追跡し、甲状腺がんの発生率を比較する
ことで、被曝と甲状腺がん発生の関係を調べるというものである。
しかし、
ベラルーシで 小児(0〜14歳)の甲状腺がんが被曝の影響だと確認
されたのは、「全員の被曝線量評価」を前提としたものではなかったことを
氏は 知っておられるはずなのである。
そうであるのに、どうして このような主張をされるのか、理解に苦しむ
ところである。
以上、渋谷氏の言を検討してきたが、
これは 福島県および県立医大を擁護しようとしているのではない。
津金氏は、
今回の結果が、何らかの要因に基づく過剰発生でなければ、
無症状の健常者に対する甲状腺検査は、それによる利益(早期発見による
死亡率減少・QOL の向上)よりも 不利益(偽陽性、過剰診断など)の方が
大きいと思われるので避けるべきである。
また、仮に、過剰発生によるものであれば、同様な状況下にある健常者に
対しては、甲状腺検査の実施を検討すべきであると考える。
と述べて、県および県立医大を批判している。
つまり、
「 被曝による影響による過剰発生とは考えられない 」との県∧県立医大
の主張が正しいならば 甲状腺検査は止めるべきであるが、
もし、「被曝による過剰発生」であるなら、福島県のみでなく 他の周辺県も
甲状腺検査をしなくてはならない。
また、県立医大が、被曝による甲状腺がんの多発ではなく、しかも
過剰診断および過剰治療ではないと主張するなら、
被曝をしていない日本全土で 手術をしなくてはならないほどの甲状腺がん
の多発が発生している可能性があり、福島県一県だけの問題に止まらない
由々しき事態だと、県立医大は 主張していることになろう。
いずれにしても、
県∧県立医大は、論理破綻に直面していて、非常に苦しい立場になって
いるのである。
このままでは、国からの予算削減圧力に抗することができなくなるであろう。
そろそろ、彼らが もっている情報を大幅に開示して、事実を公にすべき
ときが迫っているのではないだろうか?
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福島原発事故
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(2) のつづき
‘過剰診断という言葉がイケなければ、 overdiagnosis と言ってもよいが・・・’
と、渋谷氏は しばしば言う。
overdiagnosisは、字義通り⋆に「過剰診断」と翻訳される英語であり、こういう
「過剰診断」という日本語に抵抗があるなら、 欧米崇拝の我々日本人に
横文字を使って その意味を曖昧にすることで 事を進めていこうというのは
誠実とは言えない。
⋆ over :過剰、diagnosis :診断
参考までに、アメリカで この言葉がどう使われているかを見ると、
2007 January 2,
“What’s Making Us Sick Is an Epidemic of Diagnoses”, New York Times
我々の病気を作っているのは、診断の流行である。(ニューヨークタイムズ)
ほとんどのアメリカ人にとって、もっとも大きい健康への脅威は、鳥インフルエンザ、
西ナイルウイルス、あるいは狂牛病ではない。それは 我々の健康管理システム
である。
あなたは、これは 医者がミスをするからだと思うかもしれない。しかし、あなたが
もし システムの中にいなければ、医療ミスの犠牲者であり得ない。
アメリカの医療によってもたらされるより大きな脅威は、ますます多くの人々が
病気の流行のためではなく、診断の流行のために システムの中に引きこまれている
ことである。
・・・
診断の流行には 多くの原因がある。 より多くの診断は、医薬品メーカー、病院、医者、
疾患擁護団体のための より多くのお金を意味する。研究者や国立衛生研究所の
・・・ でさえ、“かれらの”病気を検出を進めることで その地位(と資金調達)を保証
している。
法医学の関心もまた 流行を促進している。診断の失敗は訴訟を結果しかねないが、
過剰診断に対する罰則はないのだ。かくして、臨床医に対する最低限の抵抗の道は
そうすることが 本当に病人を助けることかどうか迷う時でさえ、おおらかな診断で
あろう。
「過剰診断」 というのは、このように、現代医療の世界にとっては かなり
批判的で破壊力のある言葉であるが、日本では かって「フォークソング」が
そうであったように、おとなしい意味内容をもつモノに変容して移入され
ているのである。
これは、昔 唐様から和様への移行があったように、わが国の伝統でも
あるが、今日 この伝統は よい方に働いているよりも、かなり怪しいもの
になっているように感ずる。つまり、日本人の主体性の喪失を、私は危惧
するのである。
2. 「スクリーニング効果」 と 「過剰診断」 との違い
スクリーニング検査というのは、(1) の言葉の説明の欄にあるように、
安価で簡便な検査によって、症状が出現する以前に病気を発症する可能性の
ある人を選り分ける手法
のことで、集団がん検診 や 福島県の甲状腺検査においては 一次検査と
二次検査のA,B,C判定が それに当る。
つまり、スクリーニング検査は、
診断のために行われるわけではなく、次の検査
いわゆる、診断し 治療すべき人を
濃縮するために行う検査
である。
診断・治療とは、福島県の甲状腺検査では、2次検査でB判定を受けた子
に対して為される。
したがって、
渋谷氏が指摘する「過剰診断」は、2次検査において B判定となった子に
対する「通常診療」「悪性ないし悪性疑い」の診断が それに相当するので
あろう。
スクリーニング効果というのは、色々に説明されていて、シロウトには
訳が分からなくなるのだが、
① それまで検査をしてい なかった人々に対して 一気に幅広く検査(スクリーニング)
を行うと、無症状で無自覚な病気や有所見〈 正常とは異なる検査結果 〉が
高い頻度 で見つかること。
② 検査器機(超音波検査機器)の高精度化により、スクリーニングをすると、無症状で
無自覚な病気や有所見〈 正常とは異なる検査結果 〉が、低い精度の機器による時
よりも 高い頻度 で見つかること。
③ スクリーニング検査がなければ、1〜数年後に臨床診断されたであろう甲状腺がん
を早期に診断したことによる上乗せ。(国立がんセンター:津金昌⼀郎氏の言)
参考: ポストさんてん日記 http://icchou20.blog94.fc2.com/blog-entry-305.html
というふうに言われている。
先行検査で100人を超えて甲状腺がんが診断されている現状は、
今回の検査がなければ、1〜数年後に臨床診断されたであろう甲状腺がんを
早期に診断したことによる上乗せ (いわゆるスクリーニング効果)だけで解釈すること
は困難であり、何らかの要因(原発事故による放射線被曝や震災・避難により
もたらされた生活の変化・ストレスなどの環境要因)に基づく過剰発生か、
将来的に症状を呈して 臨床診断されたり 死に結びついたりすることがないがん
を多数診断している(いわゆる過剰診断)かのいずれかと考える。
個人的には後者の可能性が高いと考えている。 と述べている。
つまり、スクリーニング効果は、いずれ発症するだろう がんを 未発症・
無自覚の段階で 早期に発見することであり、
今 福島県で発見されている がんは、原発事故の影響ではなく、
将来的に症状を呈して 臨床診断されたり 死に結びついたりすることがないがん
であろうと主張している。
※ この文章も わかりにくい。
過剰診断というのが、今は無症状・無自覚だが、将来的に
「症状を呈して臨床診断される」 或は 「死に結びつく」
ことがない がんについて言っているのか、それとも
「症状を呈して臨床診断される」ことも、「死に結びつく」こともない
ような がんについてのことなのか?
――― もし、前者ならば スクリーニング効果と同じことになる。
なぜなら、前者は 「死に結びつく」ことはないが、「症状を呈して臨床診断」
されることもありえるからである。
したがって、この文章は 後者の意味なのであろうか?
なぜなら、この文章の主は スクリーニング効果ではない場合について
述べているからである。
しかし、おそらく 津金氏は 前者を念頭に言っているのではないか?
氏は、過剰診療とは 生命予後には影響しないもの、つまり 過剰診断か
どうかの指標は「死」にあると考えていて、機能予後(甲状腺機能の後遺症)
については問題にしていない可能性がある。
「健康を害して生活に困難を生じても、死ななければ問題ないじゃないか」
という思想である。これが 私の邪推であることを祈る⋆。
⋆ 氏は、
但し、何らかの要因に基づく過剰発⽣でなければ、殆どのがんは将来的に
致命的になる可能性は極めて低かったと想定され、かつ、甲状腺という臓器
が成⻑や⽣命の維持に重要な役割を果たしていることを鑑みると、経過観察
という選択肢が多くの症例で望ましかったとも推定される。
と述べている。
「過剰診断」という言葉は、まさに この主張を背景にし、暗に この主張
に 人々を誘導するところにあるのであろう。
渋谷氏は 慎重に、一方で 被曝の影響を排除しないような曖昧な言い方
をしてはいるのであるが・・・。
このように、被曝の健康影響への不安は、すべてのことの根本に
あるわけなので、このように搦め手からの論じ方は イタズラに不審を
増長し 無駄な時間を費やすだけである。
被曝の影響ということを 根本に据えれば、被曝の影響ではないものを
冷静に取り除くこともでき、積極的で適切な対処によって さまざまな被害の
増加も防ぐことができるはずである。
あれは被曝の影響ではない、これは被曝の影響ではないと何でもかんでも
排除の姿勢・否定的な態度ではなく、また ‘触らぬ神に祟りなし’でなく、
あれは被曝の影響の可能性がある、こうであれば被曝の影響だと判断できる
というように 被害を受け入れる姿勢が、今 何よりも必要だと考える。
「中央・地方の行政が引き起こした原子力災害である」 ということを認める
ことから始めるのでなければ、その被害は矮小化され 曖昧にされ 切り捨て
られ 放置され 拡大するのは、目に見えているはずなのである。
圧倒的な権力をもった行政の気に入り、人々or業界の劣情を喜ばせて、
「よい子」になるのが 紳士的な態度ではないはずなのだ。
(つづく)
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(1) のつづき
昨年6月の福島県第3回「甲状腺検査評価部会」⋆において、
福島県の甲状腺検査について、これは過剰診断ではないかという疑義を出し、
一躍注目の人になった渋谷健司氏の発言を考えようとしている。
氏の主張は、第5回「甲状腺検査評価部会」に提出されたものを前記事に掲載
したが、シロウトには 非常に分かりにくい。
そこで、昨年 この件に関して、
という文を書かれているので、こちらの方を見てみる。
6月10日に開催された、第3回福島県甲状腺検査評価部会での、「 現行の
甲状腺検査のやり方を見直してほしい 」という私の発言の真意を説明して
おきたいと思う。
私は、原発事故がおきた直後から、福島県での活動をはじめた。相馬市や
南相馬市での外部・内部被ばく量の測定を地元自治体や有志と協力して、ほぼ
自費で継続し、モニターしている。それら全て、国や県からは独立して行っている。
私が すぐに福島入りしたのは、一日本国民として、福島の人たちの健康状態を
守らなければいけないと思ったからだ。シンプルにその思いだけで、3年間、
続けてきた。
なぜ、続けるのか?
私は、今からちょうど20年前の1994年に、ルワンダに行った。ルワンダで
大虐殺があったことを覚えている人も多いだろう。数百万人はいた難民キャンプ
にNPOとしてクリニックを設営するのが私の目的だった。
知らせを聞いた私は すぐに現地に向かった。危険な時期で 多くの人から止め
られた。キャンプに日本人医師は私以外いなかった。それでも その時期の
ルワンダには 医師が必要で、一人でも多くの命を救いたかった。
福島に対する思いも、同じだ。
私の仲間や教室のスタッフ・学生たちも思いは同じだ。震災から今も継続して
ボランティアで手伝ってくれている。
私達は 相馬市や南相馬市などの自治体と連携して、まず 子供たちの被ばく量
を測定した。その結果は、全て市民に情報開示されている。
この外部・内部被ばく量の継続的な測定で、この3年あまりの間で明らかに
なってきたことも多い。相馬市や南相馬市などの被ばく量(セシウム)は十分に低く、
それも年々低下しているということだ。初期のヨウ素による被ばく量の推計も
行われている⋆。
正直なところ、当初は 私も政府の発表する値が信じられなかった。しかし、
何度も自分たちで測定をしたが、それでもやはり健康に影響を与えるレベルの
被ばく量は、子供では見つからなかった。
さて、ここからが本題である。福島県によると、過去3年間の甲状腺検診で、
甲状腺癌が疑われる子供と、甲状腺癌が確定した子供の数は合計で90人で
あった(2014年3月31日現在)(確定症例は50人)。
この値は、通常の癌登録の罹患率などから予測される有病率よりも明らかに
高いものである。1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故の後に甲状腺癌が
報告され始めたのは、事故後4〜5年であった。それでは、なぜ、福島県では
被ばく量が高くないのに、甲状腺癌が3年間という短期間で多数発見された
のだろう。
一つの可能性は、甲状腺の超音波検査を集団で実施すると、かなりの確率で
甲状腺癌が見つかるということだ。例えば、甲状腺の超音波検査が頻繁に行わ
れるようになった韓国では、成人の甲状腺癌が毎年25%ずつ増加しており、
今では女性で最も多い癌だ。
しかし、ここが大事なところなのだが、韓国をはじめ世界的に甲状腺癌による
死亡は増えていない。病理組織学的には癌だが、検診がなければ症状も出ず、
診断されなかったであろうと考えられる癌が、検診を実施したことで見つかって
いる可能性が高い。
もちろん、一般的に早期発見による死亡リスクの予防は非常に大事だ。リンパ節
や周囲へ広がっている癌は、すぐに手術すべきである。自分の子供が癌と診断
されれば、ご家族は すぐに治療してほしいと思うだろう。 しかし、超音波検査を
進めることで、全ての甲状腺癌を見つけ出し、それらを すぐに手術することが、
果たして 子供達のためになっているのだろうか。
超音波エコーによる甲状腺検診の導入で、意図せずに過剰診断、そして その
結果としての過剰治療と言われている問題が起きているのではないか。
こういう私の意見は、分かりにくいかもしれない。癌と言われたのに何もするな、
と言っているように聞こえるかもしれない。しかし、経験ある臨床医や公衆衛生
の専門家の多くは、私と同じ意見だ。
この件については、英国の医学雑誌ランセットにも掲載され、世界で多くの医師
も同意してくれている。
子供たちに手術をすれば、心身の傷が残る。甲状腺を取れば、一生 ホルモン剤
を飲み続けなければならないこともある。
「チェルノブイリの経験から、甲状腺癌発生の可能性を考慮し、子供たちの命を
守るために適切に対応すべきである」という考えは 全くその通りである。
事実、当初は そのように考えられて、甲状腺の超音波エコーによる検診の実施
が決定されたのだろう。
しかし、3年間の基礎調査を終え、本格調査が実施され始めたこの段階で、
これほど多くの甲状腺癌が見つかっている原因の一つに、検診による過剰診断
の可能性を考慮する必要がある。
医師であれば、過剰治療等したい と思う人はいないだろう。
世界でも、これほどの規模で子供の甲状腺検診が行われる例は珍しい。
であればこそ、今回発見され、手術を受けた甲状腺癌の子供たちの症例を、
きちんとオープンに議論することが非常に重要ではないだろうか。
甲状腺検査評価部会で、甲状腺検査を担当する福島県立医科大学からは、
癌の大きさやリンパ節転移の有無等、治療指針に沿って対処すべきケースのみ
が手術されているとの報告がなされた。
だから、私は何パーセントの子供に、リンパ節転移や声が出ない等の症状が
あるのですか?と質問した。
しかし、それは、プライバシーの問題で回答できないと県や福島県立医科大学
が答えた。それで、きちんとデータを出してほしいと、その場にいた他の委員から
も意見が相次いだ
発見された甲状腺癌の手術に関しては、医療であり、調査の及ぶ所ではない
というロジックで、その情報を公開しないことは、逆に子供たちやご家族に不利益
をもたらす結果になりかねない。
不安に過ごされている住民の方々のためにも、今一度、正確なデータに
基づいて、関係者が皆それぞれ前向きに協力しあい、再検討していく時期にある
のではないか。そして、それは、放射線の健康への影響を正確に把握するため
にも必要なことだ。
これが、私の発言の真意である。
以上
前段の自己紹介は 欧米人の感覚であり、日本人には違和感を抱かせる⋆が、
こういう感覚の人々が この国の進路を決めていく時代になっているということ
だけを指摘して、今は このことに深入りしない。
⋆ これは、日本の伝統的な感覚としては、「自己吹聴」と思われて、あまり
よい感じがしない。また、こういうボランティアは 「お節介」と感ずるのが、
日本の伝統的な感覚であろう。 我々の感覚は 「陰徳を積む」ことを美徳
とするのである。
これは 欧米人の思考と行動様式とは まったく異なる文化的背景からきて
おり、逆に言うと 渋谷氏は こういう文化的背景から切り離された欧米人の
文化を 自己のものとしているのであろう。
この甲状腺検査評価部会は、一昨年の平成25年11月に始まった。
その第一回の部会で、清水修二氏が、
この部会を作った意義について、検討委員会でできないことが この部会
できるのか という疑問が 今日までありまして、検討委員会に出せない
ようなデータが この部会なら出てくるということは、あまり期待できないと
私は思っています。
ただ、セカンドオピニオンといいますか、ダブルチェックといいますか、
より多くの専門家の目で 1つのデータを見て、分析するということは
それ自体に意味はあると思います。・・・
と 発言されているように、県および県立医大からの情報が きわめて限られ
ており、その情報も かなり粗雑のものであることが 問題意識としてあり、
また、相馬市や南相馬市に 事故後入っていった東大グループの一人として
声がかかり、部会員を引き受けた理由を、渋谷氏も、
私も星先生とまったく同感で、とにかく あるものをテーブルに載せて、 こうしたオープンな場で議論するというのは非常に大事ですし、今回部会員
を引き受けた一つの理由は、反論も言いますが それでもよろしいですかと
聞いたら、それは歓迎だというコメントを県の方からいただきましたので、
色々な意見を戦わせて、最終的には提言をするという方向性が 私は一番
大事だと思いますし、全ての材料を とにかく隠さず出す。・・・
と述べていた。
ところで、
平成24年4月26日開催の第6回検討委員会において、
明石真言委員
これだけ小さい子どもを対象として超音波検査をやると、今まで以上に、
色んなことがわかってくるのかなと思っていたのですが、2005年の国立がん
センター罹患率の調 査ですと、小児の甲状腺がんは 大体10歳から 14歳で、
10万人で 0.1、15歳から 19歳で 0.6と非常に小さ い数値になんですが、
今回は 3万8千人というこで C判定が 0と いうことですけれども、ここは先生
実際に当られていて、大体 こんな感じのかなという感じでしょか、それとも
想定外の感じでしょうか。
鈴木眞一 オブザーバー
・・・、先生 が仰るとおりで、100万人に 1人ぐらいしか 今までは がん は
見つかっていません。 まだ 100 万という数字には至ってませんが、非常に
疑わしいものが多数出ている状況は全くございませんので、概ね安心して
いい、通常の状況ではないかと感じています。
p10
という流れの中で、 山下俊一氏は、
・・・長きにわたって見守る必要がある全県 18 歳以下の子供たちですから、
極めて重要な検査 になります。ただ、明石先生も仰ったように、スクリーニング
効果で、おそらく高い頻度で 異常が見つかる、あるいは ひょっとすると
がんも起こりうるということが当然予測されるわけですから、これについて
のきちんとした説明が この先行調査でも重要になってくると思います。
それから、やはり基本調査への協力を頂ける体制づくり、これはやはり
回収率が あまり高くない中で、甲状腺検査は約 8割が受けているという
ことですから、この方々にとっても 、線量の評価は大事になります。ぜひ
既に甲状腺検査を施行した方、あるいは今後施行す方の基本調査へ協力
をよろしくお願いしたいと思っています。 p12
と述べていて、
この時点では、がん検出の発表は まだないが、
甲状腺検査で 嚢胞や結節がたくさん見つかり、がんも見つかるだろうことを
すでに予測しており、これは スクリーニング効果によるもの、つまり被曝の
影響では必ずしもないという広報への準備を促しているのである。
この時、チェルノブイリでは スクリーニング効果を疑って、被曝による甲状腺がん発症
の認識が遅れたことに対する言及がないだけでなく、その後 県および県立医大
からも、このことへの留意はまったく語られず、「被曝の影響は考えられない」
という 鸚鵡のように ステロタイプな言葉が繰り返されてきたのであった。 ところが、検査が進むにつれて 甲状腺がんが 次々と発見されはじめると、
これを スクリーニング効果では説明できなくなり、被曝の影響を排除して説明する
方法として、渋谷氏という伏兵が 「過剰診断」という言葉を引っ提げて 颯爽と
登場したのであった。
私は この時点で、渋谷氏の発言に 「 よくぞ言って下さった 」と賛意を表した。
まことに、
・きちんとオープンに議論することが非常に重要
・今一度、正確なデータに基づいて、関係者が皆それぞれ前向きに協力
しあい、再検討していく時期にあるのではないか。
そして、それは、放射線の健康への影響を正確に把握するためにも
必要なことだ。
と思っていたからである。
しかし、その後 氏の論を聞いていると、その論に 何か偏りがあるように
思われ出した。
どういうことかと言うと、
1.前記事に掲げた 第5回「甲状腺検査評価部会」への氏の提出資料で、
・ 「過剰診療」と「過剰診断」が混同されている。「過剰診療」は、ある個別の
症例に対して不必要な診療を過剰に行うことであり、今回の議論の対象では
ない。
と、「過剰診療」のことを問題にしていないと言いつつ、
一方、「過剰診断」は、生命を脅かさないがんを発見すること。今回の
検診では、検査をしなければ一生見つからず、しかも 見つからなくても死亡
するリスクは低く、切除する必要もない甲状腺がんを多数、診断・治療して
いる可能性が高い。
と、福島県の甲状腺検査で 「過剰診療」が行われている可能性があることを
問題としている。
因みに、
そして、「過剰診療」とは、医学的にみて必要・相当な範囲を超える治療のこと。
(前回記事を参照してください)
一見して、明瞭に語っているような印象を受けるが、よく聞いてみると
言語不明朗で、敢えて 論理破綻を犯しても 強引に自己の主張を通そう
という姿勢に見えてくるのである。
氏の狙っている所は、上に引用した昨年の氏の文において、
超音波エコーによる甲状腺検診の導入で、意図せずに過剰診断、そして
その結果としての過剰治療と言われている問題が起きているのではないか。
という言葉に端的に表われている。
ここでは、「過剰治療」となっているが、治療とは 診療のことであるから、
これは「 過剰診療と言われている問題が起きているのではないか 」と同義
である。
このように、渋谷氏は、
「診断」、「診療」、「治療」、「医療」といった言葉を 恣意的に使い分けて
事柄を曖昧にしながら、自らが狙う結論に 何が何でも人を誘導しようとして
いるように見えるのである。
(つづく)
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渋谷氏は、3.11後 有名になった「東大話法」の使い手らしい。
このことを、このシリーズで 少し明瞭にしたい。
□ □ □ □
平成 27年2月2日開催
福島民報
東京電力福島第一原発事故に伴う甲状腺検査の評価部会(部会長・清水一雄日本医科大
名誉教授)は2日、福島市で5回目の会合を開いた。
一巡目の先行検査と二巡目の本格検査の結果を比較する現在の方法では、甲状腺がんと
被ばくの因果関係を解明できないとの意見で一致。事故直後の初期内部被ばくを調べるよう、
県「県民健康調査」検討委員会に3月末までに提言する。
渋谷健司東京大教授(公衆衛生学)は「 全員の被ばく線量評価が望ましいが、無理ならば、 地域などの集団レベルの線量を比較分析し、甲状腺がんの罹患率を調べるのが必要 」と
強調した。 部会員で検討委座長の星北斗県医師会常任理事も「 一人一人の被ばく線量を
明示できないまでも、相関関係の高いものを探し出し、推計するのは可能だろう 」と述べた。
子どもの健康を守る目的で始まった甲状腺検査をめぐっては 検討委などで、内部被曝線量 の分析を進め、甲状腺がんとの因果関係の検証に踏み込むべきだとの声が上がっていた。
また、部会では経過観察などで通常診療(保険診療)に移行した場合の医療費や甲状腺
がんの手術費を公費で負担すべきとの意見でも一致した。県は既に、通常診療に移行した際
の医療費は 原発事故がなければ発生しなかったとして、県民の経済的負担を解消するよう
国に財政措置を求めている。 しかし、国から現時点で 明確な回答はないという。
定義: 検診によって発見されたがんであっても生命予後⋆には影響しないもの
⋆ 【生命予後】:病気・手術などの経過において、生命が維持できるかどうか
についての予測。
これに対し、疾患部位の機能が維持できるかどうかの予測は、機能予後という。
のように表現される。
すなわち、がん検診のない状況では 本来発見されるはずのないがんが相当する。
がんの発生から診断に至る過程(滞在時間)は がん種によりその期間は様々である。
しかし、すべてのがんは 一様に進展するわけではなく、成長が緩やかながんや途中で
進展が滞ったり あるいは 消退してしまう病変もあり、こうした病変を発見することが
過剰診断に該当する可能性がある。
成長の緩やかながんとしては前立腺がんや甲状腺がんが該当する。また、子宮頸がん
の前がん病変であるCINは進展が滞ったり、あるいは消退してしまう可能性がある。
がん検診を行うことで こうした病変を過剰に診断することは、結果的には 過剰治療を
招くことになりかねない。しかし、特定のがんに限らず、どのようながんであっても
がん検診を行うことによって、一定の割合で過剰診断が生じることは不可避である。
定義: 医学的にみて必要・相当な範囲を超える治療のこと
交通事故で被害者が怪我を負われた場合、医療機関で治療を受けることになるが、
その治療費は、必要かつ相当なものであれば加害者側に請求できる。
しかし、場合によっては、医学的にみて必要な頻度を大きく超えて入通院したり、或は
特に必要もないのに特別室に入院するなど、必要・相当とはいえない治療が行われる
場合がある。このように、必要・相当な範囲を超える治療が、過剰診療と呼ばれる。
そして、過剰診療の場合、治療費の全額の賠償を加害者に請求することができず、
必要・相当な範囲を超える分については賠償されない可能性が高い。つまり、過剰と
いえる部分の治療費については、交通事故と因果関係のある損害とはいえないことから、
加害者に請求することができなくなる。
もっとも、その治療が過剰なのかどうかは、簡単に判断できることではない。症状と
治療の内容を具体的に評価して、他の症例における治療内容と比較しなければ、
過剰診療なのかどうか判断できないこともある。また、医師にはどのような治療を行うか
という判断について裁量があるので、通常の治療内容の範囲をわずかに超える程度
では、過剰診療とはいえない。
スクリーニングテストは安価で簡便な検査によって症状が出現する以前に病気を
発症する可能性のある人を選り分ける手法で、早期に診断し、早期に治療を施す
ことによって予後を改善するのが目的です。
(スクリーニング検査は診断のために行われるわけではなく、次の検査に進むべき人
を濃縮するために行う検査)
まずは科学的に信頼性の高いテストでなくてはなりません。もしも当るも外れるも
50%であればテストの意味がありません。後に述べますが感度と特異性は重要な
問題です。スクリーニングテストは癌を早期の段階でとらえようとする意図があります。
・ スクリーニング検査の原理、方法、意味:
ダウン症: 検査が陽性であった場合 ダウン症児を出産する確率は 36%であり、
逆に 64%は違うでしょう。陰性であった場合でも ダウン症児を出産する確率は 0
ではない。
・ Length bias: 早期胃癌や神経芽細胞腫のスクリーニングでみられたように、
非常にゆっくりと成長する癌をスクリーニングでひっかけており、本来目指していた
癌をひっかけていない場合に生じます。そのゆっくりと成長する癌は 死ぬまで症状を
発しないか、神経芽細胞腫のように自然に消滅してしまうかもしれません。しかし
スクリーニングで発見されて、病理学的に癌細胞が発見されれば やはり治療して
しまうのが現代医学です (黙ってみいるのも勇気がいりますが、勇み足ということも
あります)。そして 本来死ぬまで発症しない癌を治療するわけですから 予後が良い
のは当たり前です。そして スクリーニングにより予後がよくなったと錯覚してしまう
のが length bias 。急速に成長する癌よりは ゆっくりと成長する癌の方がスクリーニング
にひっかかりやすいので 当然 このような現象が認められてしかるべきでしょう。
それでは 本当に スクリーニングが有効であった場合とどう違うのでしょうか?
スクリーニングで予後が改善したのであれば、その癌による死亡数(絶対数)が減少
しなくてはなりません。もしも length bias を生じている場合は その癌のincidence⋆ が
増え、しかし 死亡数は変わらないことになります。このような状況では スクリーニング
を中止するべきなのです。 ⋆ 発生率
スクリーニング効果とは
それまで検査をしてい なかった人々に対して 一気に幅広く検査を行う(スクリーニング 検査)と、無症状で無自覚な病気や有所見〈 正常とは異なる検査結果〉が 高い頻度
で見つかること。
分析疫学における手法の一つ。特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団
を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生
の関連を調べる観察的研究。
症例対照研究(case-control study)⋆と対比される。コホート研究は これから起きる
未来の事象を追跡し解析するのに対し、症例対照研究は 全て起こってしまった過去の
ことを解析するもの。
⋆ 疾病に罹患した集団を対象に,曝露要因を観察調査する.次に,その対照として
罹患していない集団についても同様に、特定の要因への曝露状況を調査する.
以上の2集団を比較することで、要因と疾病の関連を評価する研究手法。
部会長提出3議題についての見解
2015年2月2日
渋谷 健司(東京大学大学院医学系研究科 国際保健政策学 教授)
① 先行検査で得られた検査結果、対応、治療についての評価、特に 今の検査
と過剰診断に関すること、今後の方向性。
a 過剰診断の可能性が高い。
b 現行の無症状の住民を対象にした甲状腺がん検診は不利益が大きく、
見直しが必要である。特に、検診によって発見された甲状腺がんの治療に
関しては、従来の臨床症例に基づいたガイドラインを再検討すべきである。
c 被ばくの影響は、現行のプロトコール(前後比較)では分からない。全員の
被ばく線量評価がなされていないために、コホート研究は成立しない。
・ 「過剰診療」と「過剰診断」が混同されている。「過剰診療」は、ある個別の
症例に対して不必要な診療を過剰に行うことであり、今回の議論の対象では
ない。一方、「過剰診断」は、生命を脅かさないがんを発見すること。今回の
検診では、検査をしなければ一生見つからず、しかも 見つからなくても死亡
するリスクは低く、切除する必要もない甲状腺がんを多数、診断・治療している
可能性が高い。
・今回の検診は、世界でも前例の無い、症状の無い住民(平成23年3月11日時点
で 0〜18歳) を対象にした超音波検査である。通常の論文やガイドラインで
用いられる症例の多くは、臨床症例(甲状腺がんの症状を持って病院に来た患者さん)
である。この2つの集団は異なることを理解することが重要である。
・臨床医と疫学者は協働している。津金昌一郎委員(国立がん研究センター)が
用いたがん登録データは、症状を持った患者さんを臨床医が診断・治療した
結果が全国的に集計されたものである。地域がん登録のデータを見ると、
甲状腺がんの罹患率は増大傾向にあるが、死亡率は 極めて低いままに
とどまっている。同様の傾向は米国などにおいても認められており、これは、
超音波検査の普及に伴う過剰診断によるものと考えられる。さらに、今回の
検診は、症状の無い住民を対象にした超音波検査であり、甲状腺がんの死亡
リスクは、がん登録された臨床症例よりも低いことが予想される。
・被ばくによる甲状腺がん発生への懸念から甲状腺検査を実施して欲しいと いう要望が強く県民等からあったことは良く理解でき、議論の後に甲状腺検査
が実施されたことは、当時の状況に鑑みると妥当であったと考える。しかし、
現行の甲状腺がん検診は、不利益(過剰診断・治療による健康影響や費用)が
利益(死亡や障害の予防)を上回るために、その見直しが必要である。
特に、検診によって発見された甲状腺がんの治療に関しては、手術以外の
経過観察の選択肢をきちんと設定した診療ガイドラインを作成するべきである
と考える。
・もちろん、不安を持つご両親には、いつ何時でも説明と検査を実施する体制 の確保は必要である。
・県民が、そして、日本国民や国際社会が「被ばくの影響」に注目しており、 プロトコールの見直しによる被ばくの影響の科学的検証は必要である。
・できるだけ、全員の被ばく線量評価が望ましい。もし、無理ならば、地域など での集団レベル(なるべく小さい単位が望ましい)の線量を用いて、個人レベル
での交絡要因を調整した上で、福島全体で、甲状腺がんの罹患率について、
線量の低い地域と高い地域で用量反応関係を調べることが必要である。
② 2次検査後、保険診療に移行した際の医療費について
今回の調査が無ければ、必要の無かった診療がなされている可能性が高く、
医療費は保険診療ではなく、検診の枠内で補償されるべきである。 ・甲状腺検査の範囲が二次検査までとされており、その後の保険診療移行後
のデータの収集、公表に大きな支障が生じている。
・プライバシーを保ちながらも、甲状腺がんの転帰(手術の有無、手術結果、 予後等)をフォローすべきである。
・上記の通り、検診によって発見された甲状腺がんの治療に関しては、従来の 臨床症例に基づいたガイドラインに沿って対応するのではなく、新たな診療
ガイドラインを作成すべきである。
③ 対象者の今後の追跡をどのように行っていくか
対象者の健康状況は今後も可能な限りフォローする。
・ 全員の被ばく線量の評価を確実に行う。
・健診やがん登録などを利用して、罹患や死亡状況を把握し、低線量被ばく による長期健康影響を科学的に検討し、適宜対応する。
津金昌⼀郎 国立がん研究センター
① 先行検査で得られた検査結果、対応、治療についての評価
2014年11月11日開催の第4回「甲状腺検査評価部会」において提出した資料
の通り、先行検査で100人を超えて甲状腺がんが診断されている現状は、
今回の検査がなければ、1〜数年後に臨床診断されたであろう甲状腺がんを
早期に診断したことによる上乗せ(いわゆるスクリーニング効果)だけで解釈する
ことは困難であり、何らかの要因(原発事故による放射線被曝や震災・避難により
もたらされた生活の変化・ストレスなどの環境要因)に基づく過剰発生か、将来的に
症状を呈して臨床診断されたり死に結びついたりすることがないがんを多数
診断している(いわゆる過剰診断)かのいずれかと考える。
個人的には後者の可能性が高いと考えている。
診断された甲状腺がんに対して、診療ガイドラインに基づいた治療の対応を
したことについては、現状ではやむを得なかったと考える。但し、何らかの要因
に基づく過剰発生でなければ、殆どのがんは将来的に致命的になる可能性は
極めて低かったと想定され、かつ、甲状腺という臓器が成⻑や生命の維持に
重要な役割を果たしていることを鑑みると、経過観察という選択肢が多くの症例
で望ましかったとも推定されるが、医師、並びに、患者・保護者にとって、
そのような選択をすることは現実的には困難であったことも十分理解出来る。
今回の結果が、何らかの要因に基づく過剰発生でなければ、無症状の健常者
に対する甲状腺検査は、それによる利益(早期発見による死亡率減少・QOL の
向上)よりも 不利益(偽陽性、過剰診断など)の方が大きいと思われるので
避けるべきである。また、仮に、過剰発生によるものであれば、同様な状況下に
ある健常者に対しては、甲状腺検査の実施を検討すべきであると考える。
② 2次検査後、保険診療に移⾏した際の医療費について
今回の結果が、何らかの要因に基づく過剰発生でなければ、殆どのがんは、
今回の検査がなければ診断されなかったと予想されるので、保険診療で実施
するのは適切ではない(検査の⼀環として医療費が負担されることが望ましい)
と考える。この場合、少数例は、本来の保険診療の主旨に合致すると思われる
が、どの例かを判断することは出来ない。また、仮に、過剰発生によるもので
あれば、その要因を鑑みて医療費負担が決められるべきであると考える。
③ 対象者の今後の追跡をどのように行っていくか
生涯にわたって、健康状況を⾒守って行くべきと考える。具体的には、
定期的な健診の提供とがん・生死(死因)についての追跡調査は必須だと考える。
(つづく) |
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2015年1月7日 福島民友ニュース
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の影響で 県外に避難する18歳未満
の子どもの数(昨年10月1日現在)が 1万2436人となり、半年前の前回調査(4月
1日時点)と比べて 872人減、県内避難者(1万2437人)を初めて下回った。
県外避難者が子どもを連れて 県内に戻る傾向が進んでいるとみられる。県が6日、
発表した。
県外避難の子どもは、統計を始めた2012(平成24)年4月に 1万8000人弱 だったが、その後 減少し続けている。県は 時間の経過や除染が進むにつれ
放射線への不安が薄らいだことや、自主避難の長期化による経済的事情などで
県外避難者の帰還が進んだとみる。
県外避難者数を市町村別でみると、福島市の2260人が最多で、郡山市2088人、
南相馬市2058人、いわき市1254人、浪江町1249人と続いた。
双葉郡で唯一、双葉町は県外避難者(532人)が県内避難者(510人)より多いが
差は縮まっている。
右図は
18歳未満の避難者数なのであろう。
2012年10月から2014年10月までの18歳未満の自然減 (2012年10月に16歳だった者
は、2014年10月には 18歳になっているなど)を考慮しなくては、避難者の真の増減は
明らかではない。また、18歳未満というのが 満年齢で 正しくカウントされている
のかどうかも明らかでなく、そのため 「半年前」の調査との比較も、真の増減
なのかどうかよく分からない。
こうした数字の曖昧さが、福島県から出る情報には 常に つきまとっている。
つまり、正しく状況を判断できないような情報が 流され続けているのである。
復興資金として 巨額な国民の税金が投入されている以上、こうした曖昧さは
許されないのではないか?!
竹下亘復興相は6日の閣議後会見で、今月下旬召集予定の通常国会に提出する
福島復興再生特別措置法改正案の概要を明らかにした。原発事故による避難指示が
出された市町村が古里で進める復興拠点を迅速に整備できるよう、市町村が用地全て
を買収できる新制度を創設する。 財源については、新たに「帰還環境整備交付金」を
設けて 道路や下水道などを含め国費で整備できるよう拡充する。
新制度は、住民帰還や定住を促進するのが狙い。政府は 通常国会での改正法成立を 受け、新年度から導入する方針。新制度では、津波被災地域の拠点整備を迅速化する
「津波復興拠点制度」と同様の枠組みを適用。市町村に対し、地権者の合意を前提に用地
を全面買収できる収用権を与え、国費による住宅地や商業地の買収を特例で認める。
換地などの手続きが必要な土地区画整理などに比べ 早く用地を確保できるのが特徴。
用地を売却した地権者の収入のうち、5000万円分を非課税とする税制優遇と合わせ、
用地取得の円滑化を図る。
2015年1月6日 福島民友
内堀雅雄知事は5日の年頭会見で「原子力災害の被災地域の復興と再生に一つの道筋
を付け、産業の再生を目指す」と述べ、今年は被災地支援と産業再生を優先して取り組む
姿勢を示した。
内堀知事は 避難者支援について「将来に希望を持ち、一日も早く生活再建できるように する。復興公営住宅に早期入居できるよう整備し、きめ細やかな対応を進める」と強調した。
産業再生については「県全体の復興には 雇用の場が しっかりあることが重要」とした上で 「力強い農林水産業の再生に向け(放射性物質)検査の徹底、生産から加工、販売まで
手掛ける『6次産業化』の推進、国内外への正確な情報発信により福島ブランドの再興を
目指す」と述べた。
また「再生可能エネルギーや医療機器など新たな産業の育成、集積を図る。ロボット産業 の革命の地・福島を目指し、廃炉や災害対応、介護福祉、農作業支援のロボット技術開発
や導入まで総合的な支援を図る」と語り、原発依存からの脱却や廃炉関連産業を軸に
本県の産業構造の変革を進める方針をあらためて示した。
2015年1月6日
内堀雅雄知事は5日、県庁で年頭会見し、国が被災地の復興事業の財源を確保した 集中復興期間が 2015(平成27)年度で終了することを受け、期間の延長と財源確保に
向けて 国への働き掛けを強める方針を明らかにした。 県は 16年度以降の10年間で
少なくとも 3兆9千億円の復興予算が必要と試算している。
一方、竹下亘復興相は 今年1年で 復興支援の進め方を練り直す方針を示しており、
県は、今夏の16年度政府予算の概算要求まで 重点的に財源確保を求める構えだ。
内堀知事は会見で、避難区域の再生や住民の生活再建などを挙げ「集中復興期間は 一つの節目を迎えるが、原子力災害を抱える本県には乗り越えなければならない様々な
課題がある」と現状を指摘。「真の復興が成し遂げられるまで 国が しっかり支えることを
強く求めながら本県の全域、全分野の復興、発展に総力を挙げて取り組む」と述べ、国に
必要な財源確保を要望する考えを示した。
国とは 政府とイコールではない。政府は 日本国民あっての政府である。
国に復興資金を求めるということは、日本の津々浦々に住む国民一人一人
〜 少子高齢化に悩む市町村の住民ら や 正社員になれない若者たち 〜 に
これを要求しているということでもある。
福島県および福島県の人々は、このことを忘れていやしないか?!
2015年1月4日 福島民友ニュース
県は、東京電力に対して2012(平成24)年12月まで課税していた「核燃料税」を財源
とする県の基金を 新年度に 全額取り崩し、双葉郡8町村と南相馬、田村両市に配分する
方針を固めた。被災市町村の復興財源としての活用を検討している。
特に 福島第1原発事故の影響が深刻な双葉8町村は 分配金を基に共同の基金を新設し、
町村の枠を超えた同郡の広域的な復興事業の財源に充てる方針だ。
基金は 核燃料税の一部を財源に県が創設し、原発立地4町とその周辺の10市町村に 貸し付ける形で基盤整備や防災事業などに活用してきた。
県は 原発事故を受け 課税を取りやめて以降、基金への繰り入れを行っていない。
13年度末の基金額は 約20億4千万円に上る。配分額については 関係市町村と協議し
最終決定する。
原発事故被災地の同郡は、16年度に避難者向けの郡立診療所をいわき市の2カ所に開設 したり、住民帰還などを見据えて郡内にある火葬場を改修するなど 広域の復興事業が
事故後5年目に入る今年、本格化する見通し。
ただ、事業を行うための財源確保が課題で、双葉8町村の首長で組織する双葉地方町村会 が これらの財源に活用するため、県に 核燃料税関連の基金について市町村に移管する
よう求めていた。県は 課税終了によって 基金が役割を終えたと判断、基金残高の10市町村
への配分を決めた。
福島民友 2015/1/1
事故は 今なお継続中
責任の所在を明確にしてこそ 真の復興は始まる。
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