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問3. 人工放射線 と 自然放射線とは、生体に与える影響は同じか違うか?
他の生き物たちの放射線感受性 を少し調べていきます。
広島大学 放射線耐性細菌からみた放射線生物学 (丁寧語をカットして 要約引用)
生物も 物質から成るから、その生物影響は 微視的に見ると、生体を構成する分子の傷害に由来
すると考えられる。 放射線影響、生体における情報の流れの ヒエラルキーから考えると、その最も上流に
位置する遺伝物質 即ち DNAが最もフサワシイ?標的物質であるのは明らか。しかし、その直接的な解明
は とても難しく、沢山の状況証拠から、その証明をしたと信じているに過ぎない。
地球上のほとんど全ての生物は 同じ原理で活動しており、DNA上に記載された遺伝コードは ほぼ
全ての種で同じで、同じ物理化学的法則に則って、多種多様な物質代謝が行われている。 しかし、
放射線に対する強さ(or弱さ)は、生物により一律ではなく、放射線に対する生物の感受性(弱さ)
は種によって異なる( 地球上の全ての生物種の放射線感受性を比較した人は誰もいない。研究に
よく使われる ほんの一握りの種の放射線感受性しか分っていない )。
放射線に対する生物の感受性は、半致死線量〜その生物集団の半数が 死に至る放射線の量
(線量)で表した生物の感受性〜という指標で比較するのが一般的。 ヒトやマウスなどの哺乳類は
一般的に 5Gy程度と言われている。一方、遺伝子組換え実験などで実験室でよく使われる大腸菌
の半致死線量は 50Gy程度とされる。大腸菌は 単細胞の原核生物で、ヒトなどの哺乳類と比較して
細胞構造も単純で、ゲノムサイズ(その生物種固有の全遺伝子のセット)も小さいので、傷に対する
抵抗性が高いのかもしれない( 本当は そのことすらよく分かっていない )。
ところが、地球上には もっと放射線に強い生物が存在している。 それらは 放射線耐性細菌と
言われ、分類学的な類縁関係のないものが多く、多分 進化過程で それぞれの生育環境に適応
した結果、同じような性質を獲得したものと考えられる。
放射線耐性細菌の一種 Rubrobacter radiotolerans は 半致死線量が 16,000Gyという とてつもない
強さをもっている。この値は ヒトの 3,200倍に当る。 種が違えば、放射線感受性も違っていてよいとは
思うが、こんなに 桁が違うのは どういうことか? 哺乳類と比較するのは 余りにも体の構造が違い
すぎるので、対象を バクテリアに限ってみても、例えば、実験室で最もよく用いられる バクテリアである
大腸菌の半致死線量は 50〜100 Gy( 幅があるのは 株によって異なる値を示すため )。 このうち
100 Gyを採用しても R. radiotoleransの強さは それの160倍。 この種を含めて、放射線耐性細菌の
高い放射線抵抗性の分子機構は 未だによく分かっていない。DNAを守る力が強いのか? DNAを
修繕する能力が高いのか? それとも DNAに傷がついても生き延びる術を知っているのか? ・・・
微生物の放射線耐性を比較すると、一般に 細菌の方がカビよりも放射線に強く、また細菌よりも
酵母の方が放射線耐性である。細菌の中でも 大腸菌のような グラム陰性菌に比べて、枯草菌の
ような グラム陽性菌の方が放射線に強い。 また、細菌胞子は その栄養細胞よりも耐性が大きい。
この胞子と比べても著しく放射線に強い細菌が自然界から分離されており、放射線抵抗性細菌と
図1には放射線に対する強さを通常の細菌と比較するため、通常の細菌の中では 比較的 放射線
に強く、医療用具の放射線滅菌の生物学的指標菌として使われている バシルス プーミルス E601の胞子
と、大腸菌の放射線耐性変異株である エシェリチァ コリ B/rの生存曲線を示してある。
放射線抵抗性細菌の中には、数kGy以上の線量でも生存率が減少しないために耐性であるものと、
生存曲線の傾きが緩やかであるため高線量まで生き残るものと、2タイプがある。
放射線抵抗性細菌: その多くは 食品照射や放射線殺菌の研究の過程で発見されたが、ラジウム温泉 の周辺から発見された例もある。これらの細菌種は 放射線で損傷を受けたDNAを修復する能力が
著しく大きい。なお、放射線抵抗性細菌で病原性を持つものは見つかっていない。
必ずしも高レベルの放射線環境下にだけ生息する訳ではなく、ふつうの自然環境下にも広く分布して
いるが、生態系の中で優勢になることはなく、照射によって 他の一般の微生物を死滅させた後でない
と ほとんど検出できないほど数が少ない。
これらの細菌が繰り返し照射によって 耐性を獲得した可能性は少ないが、生物進化における
耐性獲得の過程は不明である。
1956年 米 オレゴン州で始めて放射線抵抗性細菌として分離されたのが ディノコッカス ラジオデュランス R1
である。この細菌は 20KGy以上γ線で照射した牛肉の缶詰から赤色色素を有する球菌として発見
された。 又、病院での空気中の汚染菌として、D.radiodurans Sarkが分離された。その後、照射した
タラの切り身から ディノコッカス ラジオプグナンスが、また 照射したインド近海産のイワシから ディノコッカス
ラジオフィルス、更に、上野動物園のラマの糞からディノコッカス プロテオリティカスが分離されている。
これらの細菌は 球菌であることから、分離された初期には ミクロコッカス(Micrococcus)属として
分類されていたが、典型的な Micrococcusとは 次のような点で異なる。
(1)放射線に対して極めて耐性である (2)グラム陽性菌には珍しく 細胞壁の外側に カロチノイド、
蛋白質、多糖などを含んだ脂質層がある (3)細胞壁ジアミノ酸は 通常のリジンではなく オルニチン
であり、細胞膜脂質成分の中では、C15、C16:1、C17などが多い (4)リゾチームなどの酵素で溶解
しにくい (5)典型的なMicrococcusである ミクロコッカス ルテウス や ミクロコッカス ソドネンシスのDNAは D.
radiodurans に 形質転換しない
このような理由から、Micrococcus 属と区別するために、Deinococcus(Strange berryの意味)という
名前で 真正細菌の1属とすることが提案されている。
放射線抵抗性細菌の中では Deinococcusに属するものが圧倒的に多いが、それ以外の細菌も
幾つか分離されている。 照射した古米から分離された シュードモナス ラジオラ は、細菌胞子と同じくらい
の耐性を持っており、スペイン産米、タイ産米、デンマーク米や下水汚泥などにも存在して、その分布は
広い。 また、象の糞や鯉の体表から分離され、新種として同定されたグラム陰性の赤色桿菌である
ディノバクター グランディス も 1990年代に発見されている。 現在知られている放射線抵抗性細菌の中で、
最も放射線に強い細菌は アルスロバクター ラジオトレランスP1 である。 この細菌は、三朝温泉のヘドロや苔
から分離されたもので、その生存曲線の肩が 6kGyもあり、曲線の傾きは D.radioduransより8倍以上
大きい。
放射線耐性の獲得
放射線抵抗性細菌のように 元来 放射線に強い細菌とは別に、放射線に弱い細菌が繰り返し照射
されることで 耐性を獲得する可能性については、これまで 幾つかの研究例があり、耐性になるという
報告とならないという報告がある。表2には、耐性が獲得された2つの例を示す。
ソルモネラ タイフィムリウム LT2では、14回の反復照射を 1シリーズとして、6シリーズ84回の反復照射を 行うことによって、D10値で 23倍、LD90値では 42倍も耐性となった。また、Bacillus pumilus E601の
栄養細胞では、23回の反復照射によって D10値が 4.5倍、LD90値が 4.2倍増大した。
両細菌とも それ以上の反復照射を行っても 耐性の増大は見られず、限界であると考えられるが、
その耐性は表1に示した放射線抵抗性細菌のD10値と比較しても大きなものではない。
また、反復照射によって耐性になった細胞では、胞子形成能を失ったり、アミノ酸に対する栄養要求性
が厳しくなっており、自然界では生存しにくい。このように反復照射による耐性獲得は実験室内では
起こるが、自然環境下では 容易に起こるとは考えにくい。茨城県大宮町にある ガンマフィールド で
行った調査では、放射線耐性の細菌は見出されていないし、γ線照射室内の塵埃を調査した例でも
耐性菌は分離されていない。
放射線抵抗性細菌の耐性の原因は、これまで D.radioduransを中心に研究され、DNAの2本鎖切断
を含む全ての損傷を 効率的 かつ正確に修復できる能力を持っていることによることが分っている。
一般の生物は この能力がないか、非常に小さいために放射線に弱い。
どのようにして放射線抵抗性細菌が、生物進化の過程で このDNA修復能を獲得したかを解明する
ことは重要であるが、現在明らかになっていない。
※ 放射線に対する感受性は微生物の種類によって異なり、細菌でも放射線に対する感受性
の高いものも低いものもある。大腸菌やブドウ状球菌のD10値は、0.1〜0.2kGyだが、
ボツリヌス菌では 3kGy以上の場合も珍しくない。
微生物のD10値は 微生物の種類だけでなく、照射する条件によっても異なる。細胞分裂が
活発な若い微生物細胞は放射線の影響を受けやすく、成熟した微生物細胞は放射線への
抵抗性が高い。また、酸素共存下では 殺菌されやすく、嫌気状態、乾燥状態又は 凍結下で
の照射では、殺菌されにくい。微生物の放射線感受性は共存物質の影響も受ける。
以上は、我々人類とは ずいぶん類縁関係が遠く離れた 顕微鏡下の生き物たちです。
丁度 夜空を見上げて肉眼で見える星々ではなく 高性能の望遠鏡で見える遠くの星々
( 夜空に見える世界は 過去の世界 ) のように。
(つづく)
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放射性物質
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問3. 人工放射線 と 自然放射線とは、生体に与える影響は同じか違うか?
に対する 「日本保健物理学会」の答え(前々記事(39) ) では、
・・・問題は 人類のDNAが 自然放射能に適応しているとか、人工放射能には適応していない
という話ではなく、DNA損傷の修復作用を持っているかどうかという話です。
もちろん、人工放射能から発する放射線のエネルギー が 自然放射能から発生するものとのエネルギー
が異なることにより、体内に与えられるエネルギーが異なります。 しかし、それは DNAを何本切るか、
どれだけ活性酸素を作るか、という違いでしかありません。
と言い、人類,否 生物が 数十億年という 地球環境への適応(苦難)の歴史を背負って
今日に至っているという現実に 一顧も与えるつもりはないようです。
そして、無時間的 (これに、彼らは 普遍的・客観的という修飾語を好んでつけます) な物理学的
・化学的現象のみが現実だと考えています。
しかし、放射線の生物への影響 - 日本分析化学会 は、
【DNA損傷修復機構】について、
生物は,宇宙からの放射線や地表や地中に含まれる放射性物質からの放射線を絶えず
浴びており,様々なタイプのDNA 損傷に対して複数の修復機構を進化させてきた。
と、我々生き物が歴史的存在である (過去を孕んで現在がある) ことに言及し、
さらに、
放射線によるDNA損傷には,塩基の化学修飾( 酸化・脱 アミノ化など),塩基の遊離,DNA一本鎖
切断,DNA二本鎖切断,架橋 など様々なものがある。
この内,DNA二本鎖切断は,一つでも修復されずに残存すると 細胞分裂が停止し,最終的に
染色体異常や細胞死に至る 最も重篤な損傷であり,放射線による生物影響は 二本鎖切断の
頻度に大きく依存する。
二本鎖切断の修復経路には 二種類ある。
一つは 非相同末端結合と呼ばれる経路。 切れたDNA の端を DNA結合タンパク質の一つである
Ku タンパク質などが認識し,さらに複数の タンパク質が足場となって,最終的に DNA リガーゼ(Lig4)
と呼ばれる DNA 鎖をつなげる酵素で修復する方法である。 この方法は,DNA の切断末端の
塩基が 数個から数十個欠けてしまうことが多く,突然変異を引き起こしやすい修復経路である。
もう一つの経路は 相同組換え修復と呼ばれる経路。より多くの タンパク質が関与する複雑な経路
である。 この経路は,DNA複製後にできる 同じ遺伝情報をもつ染色体(姉妹染色分体)を鋳型
にして修復する方法であり,細胞周期の特定の時期 (DNA 複製が完了してから細胞分裂する
までの時期) にのみ働き,遺伝情報が正確に修復される経路である。
切断されたDNA 末端は, まずDNA 末端結合タンパク質であるMre11 /Rad50/Nbs1 複合体により
認識され,その末端が削られて 一本鎖DNA が露出する。 そこへ,一本鎖DNA 結合タンパク質
(RPA)が結合して安定化した後,別のタンパク質の働きにより RPA が Rad51 タンパク質に置き
換わり,姉妹染色分体の相同配列の部分と塩基対を形成する。このようにして 互いのDNA 鎖
を交換した後に,切断部分は DNA合成酵素により合成され,最終的に 交差したDNAはMus81
/ Eme1, Slx1 / Slx4 等のDNA 切断酵素により切断されて 元の遺伝情報を有する二本のDNA
鎖が完成する。
ヒトなど 高等真核細胞では 非相同末端結合反応の方が優位で,99%の二本鎖切断は
非相同末端結合により修復される。 突然変異を伴いやすい 非相同末端結合による修復は,
不利に思われるかもしれないが,実際の所 ヒトのような高等真核細胞のDNA のほとんどの
領域は,タンパク質を作るための遺伝情報を持っていない。又,細胞内では 全ての遺伝子が機能
している訳ではなく,突然変異が入っても 細胞の生存に大きく影響を与えない場合が多い。
ヒト細胞にⅩ線を 1Gy照射すると,ゲノム全体で 約40個の二本鎖切断が生じることが報告されて
いる。二本鎖切断損傷の場合,照射後 数分から数十分以内に DNA損傷の周囲に修復タンパク質
が集合して修復反応を開始し,数Gyの照射であれば,数時間後には ほとんどの二本鎖切断は
再結合する。
☟
【細胞のチェックポイント機構とアポトーシス】
細胞は 単にDNA損傷を修復するだけではなく,積極的に 生体を DNA 損傷から防御する チェックポイント機構を備えている。 チェックポイント機構は,DNA に異常がないかモニターし,
異常があれば 細胞の増殖を止める機構である。この機構は,数多くのタンパク質から構成され,
ATM キナーゼ (タンパク質リン酸化酵素) を頂点とするシグナル伝達系である。
まず,DNA 損傷により生じたDNA の高次構造の変化を ATM キナーゼが感知し,自らを活性化
して その下流にある複数のタンパク質をリン酸化する。ATM の ターゲットの一つは DNA 修復酵素
であり,DNA 修復反応を促進する。また,ATM は Chk2, Chk1 など 別のキナーゼを活性化し,
最終的に 細胞周期を制御する複数のタンパク質が リン酸化されて 細胞周期が停止する。
これにより,DNA 損傷が残存したまま 細胞が分裂し,娘細胞に DNA 損傷が引き継がれたり,
染色体異常が生じることを防いでいる。
また,DNA 損傷の量が多く,細胞の修復能力を超えている場合は, p53 タンパク質などが
活性化され,積極的に 細胞死(アポトーシス)に導く機構が働く。このことにより,有害な
突然変異を持つ可能性のある細胞が個体から排除される。
確定的影響は,チェックポイント機構が作動して 一時的or恒久的に増殖を停止した細胞や,
アポトーシスにより死ぬ細胞が,ある一定量に達した時に 初めて臨床的所見が認められる現象。
人体は様々な種類の細胞から構成されるが,一般的に 未分化で増殖の盛んな細胞ほど
感受性が高く,常に分裂を繰り返している造血組織,皮膚,腸管上皮,生殖腺などが最も
感受性が高く,影響を受けやすい。 最も低いしきい値をもつ確定的影響は 男性の一時的不妊
で,100mSvから観察される。 放射線障害による死亡は,造血組織が再生できなくなること
により引き起こされ, 4Svで 半数のヒトが,7Svで全員が死亡する。 この段階では,骨髄移植
により治療可能であるが, 10Sv 以上の被曝では腸管上皮の再生が不能となり,骨髄移植
を行っても治療は困難となる。
また、確率的影響 と ICRPが言うものについては、
20mSv/年を 50年被曝した時の積算線量は 1Svなので,単純に計算すると発癌リスクは 5.5%
となる。しかし,生物効果には 被曝線量だけではなく,線量率も大きな影響を与える。細胞内
には 元々,還元型グルタチオン などのように活性酸素を吸収する物質や,スーパーオキサイド
ジスムターゼ など活性酸素を分解する抗酸化酵素があるので,少量の放射線を時間をかけて
被曝する場合は 軽減効果がある上に,DNA 修復機構が十分に機能する。
上記の発癌リスクは 被爆者のデータを元に算出した値であり,長期間の低線量被曝の場合,
リスクはかなり小さくなることが複数の実験から示されている。実際,地球上には自然放射線量
の多い地域が複数あり,そこに居住する人たちの年間被曝量は 10mSvに達するが,これら
の地域の住民は、末梢白血球の染色体異常の頻度がやや高いものの,自然発癌や奇形児
の発生率は高くはないことが報告されている。
また,細胞内では 酸素呼吸により反応性の高い活性酸素が常に発生しており,放射線を 被曝しなくとも DNAは 絶えず損傷を受けている。代謝により生じる一本鎖切断や塩基修飾
の数は 1個の細胞で,1日当り数千個〜数万個にも達し,二本鎖切断も 1日当り 0.1〜10個
/細胞程度生じていると推定されている。これらの損傷の大部分は 遺伝情報が損なわれる
ことなく修復されるが,一部は 修復過程で突然変異を引き起す。 癌の発症率は 年齢の
5〜6乗に比例することから,細胞増殖に関わる遺伝子 5〜6個に 突然変異が入ることが 癌
の原因と考えられているが,こうした自然発癌の主要な要因は 代謝による活性酸素である。
一方,一年間 20mSvのγ線を被曝した時の,1日当りの二本鎖切断の頻度は 約0.002個
/細胞であり,代謝により生じた活性酸素による DNA損傷の影響に比べて,放射線による
影響は かなり少ないことが予想される。
引用が長くなりましたが、理研・仁科加速器研究センター 泉雅子氏は、このように述べており、
先の日本保健物理学会と ほぼ同じ見解です。
ただ、放射線に対する生体の防御機能は、生物によっても違います。
高い放射線の中に平気で生き得るものもあれば、そうでない生物もいます。
それらは、長い歴史の中で そのようになり、ある防御機能を獲得したものもあれば、
地球環境の自然放射線の低減とともに それを失ったものもいるわけです。 ヒトにおける
「確率的影響」と言われるものも、そうした 防御機能の喪失過程のなかで見られる現象
ではないでしょうか?
自然放射線による被曝が 日本人の場合、約1.5m㏜/年ということは、このレベルの被曝
環境に 生体が適応しているという意味でもあるでしょう。然るに、さらに過剰な医療被曝
を平均2.3m㏜/年 も政策的に許し、なおかつ この度の原発事故による広汎な被曝環境
の出現に、「生体の修復機能」があるから と言って 安心するorさせるというのは、やはり
そうとうに偏った(ムリな)ことではないでしょうか?
そこで、ちょっと 話の本筋から外れますが、
より広い視野で 放射線の生体影響について考えるために、他の生き物の 放射線への
感受性はどうか? ということを、次回に調べてみます。
(つづく)
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(近藤宗平 人は放射線になぜ弱いか Blue Backs)
↑の表は、
自然発生のDNA損傷は 一日当りの数であるのに対し、放射線誘発のものは1㏉(1000m㏉)
の1回照射に対するもの。
このような比較に基づいて、低線量、すなわち 数10m㏜(数10m㏉)以下の被曝によるDNA損傷
は、自然発生によるものに比べてはるかに少ない、ということが言われる。
しかし、自然発生による DNA損傷 と 放射線による DNA損傷を単純に比較することはできない。
何故なら、放射線よる DNA損傷は、自然発生によるものとは質的に異なるからだ。 この質の違い
について説明する。 2013年 1月23日
として、前記事の最後の項「DNA損傷の生成機構」 の説明がなされています。
専門家に そう言われれば、あぁ そうですか・・・ と言わざるを得ないのですが、
この自然発生の中には、当然 自然放射線による被曝の影響も入っていると考えられます。
( この表の放射線が Ⅹ線なのかβ線なのか 記されてないのは ?です )
いずれにしても、1㏉もの照射の1細胞当りのDNA損傷(修復前)が、1日当りの自然発生の
数より ずっと少ないということは、カリウム40 など自然放射線によるDNA損傷は 極めて少ない
ということを意味しているかのようです。
※ 体重63kgの成人には カリウム40が 約4000㏃ある。 したがって、1kg当り 63㏃。
カリウム40は 1 β崩壊当り 1.3MeVの最大エネルギ‐だから、
1秒間の,生体1kg当り 最大の吸収エネルギーは 82MeV=1.3× 10-11 J
(1eV=1.60 × 10-19 J 、1M=106 故、82MeV×1.60 × 10-19 J =1.3× 10-11 J) すなわち、1日当り カリウム40の吸収線量は せいぜい 1.1× 10-3 m㏉
( 1.3× 10-11 J/s×60×60×24=1.1× 10-6 J )
2つ目は、放射線が 直接 DNAを損傷する場合( α線・中性子線 )。
放射線が身体に当ると、細胞をつくる物質の電子を弾き飛ばし(電離を引き起こし)、
その弾かれた電子が 直接DANを傷つける。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
以上、「日本保健物理学会」は、放射線の生体影響を 癌と遺伝だけとしているため、
DNA損傷のみの説明になっています。
しかし、実際は 生体内の どの物質の化学結合をも 放射線は引き裂くことができる訳で、
先の「長崎医大ビデオ」では これを直接的影響とし、
放射線が 水分子の電離を引き起こして 種々の活性酸素を生成、これが様々な生体分子
(DNAに限らない)を修飾し、その機能に影響して障害を起こすのを 間接的影響としています。
※活性酸素 :大気中に含まれる酸素分子が より反応性の高い化合物に変化したものの総称。
即ち(↓ビデオ要約)、
放射線により生成した H2O2 (過酸化水素)、-OH (ヒドラキシラディカル)、-O2-(スーパーオキシド)といった
活性酸素の内 -O2-は反応性は低いが、細胞内のスーパーオキシドジアスターゼで H2O2 に変換され、
微量金属の存在下での フェントン反応で 直ちに -OH(ヒドロキシラディカル)に変換される。この -OH は
非常に高い酸化反応性をもち、細胞や組織に傷害を与える( 酸化修飾により、DNA や タンパク質
や脂質などの生体分子の障害 )。
DNAの酸化修飾:
例えば DNA中のグアニン塩基が-OH による修飾で 8-ヒドロキシグアニンになるなど、
活性酸素が 変性DNA塩基を生成し、DNAの誤った複製を引き起こして、突然変異を誘発、細胞
の癌化の原因になる。
タンパク質の酸化修飾:
タンパク質中の アミノ酸・システインは 還元状態では フリーのスルフィドリル(SH)基の状態だが、酸化
されると水素イオン(H+)が除かれ ジスルヒィド基(S‐S)による架橋状態になり、タンパク質の構造
と機能に大きく影響する。 タンパク質の構造と機能は レドックス制御 で調節されるが、過剰な
酸化修飾は タンパク分子の機能を失活させ、細胞や組織の障害となる。
※ -OH は、ガン、老化、そして 数々の生活習慣病に関わっている。
※ ヒドロキシラディカルを 直接 分解する除去酵素は知られていない。
-OHの存在時間は 100万分の1秒。 活性酸素の除去機構としては、ビタミンC,ビタミンE,グルタチオン,システインなどの低分子量
化合物の働きが考えられる。また、放射線障害の治療としては、抗活性酵素の観点から
適用が期待できる。
・ カロテノイドは、一重項酸素と脂質過酸化に対して 強い消去活性を発揮する。
一方、スーパーオキシドアニオンラジカル、過酸化水素、ヒドロキシラジカルの消去活性は ほとんどない。
植物などの光合成器官では 光と酸素によって 常に一重項酸素が発生するので、カロテノイドは
必須の物質である。魚類の卵はサケに代表されるよう アスタキサンチンなどのカロテノイドが蓄積して
いる。カロテノイドは 孵化、発生過程で 胚や仔魚を 光障害や一重項酸素などの活性酸素から
保護している。
※ 生体は、スーパーオキシド・ラジカル や ヒドロキシ・ラジカルを生成して 細菌やウイルス殺し、外敵の侵入
から自らを守っている。
また、細胞内呼吸の中枢で、エネルギーの生産拠点でもある ミトコンドリアの中では、血液中の
ヘモグロビンが 肺から運んできた酸素分子を受け取り、それを スーパーオキシド・ラジカル、過酸化
水素、ヒドロキシ・ラジカル、そして 水へと変化させ、その都度、糖質から電子や水素を奪い取り、
最終的に 糖質を 細胞内のエネルギー源である ATP(アデノシン3リン酸)に変えている。
細胞内には このように ラジカル が常に一般的に存在しているが、過剰なものは スーパーオキシド・
ジムスダーゼ(SOD)や ペルオキシダーゼ、カタラーゼといった抗酸化酵素により 直ちに分解される。
しかし、その能力以上に これらのラジカルが生産されると、体に 障害(病気)をひきおこす。 前記事(39) の問3に対する答え:
問題は 人類のDNAが 自然放射能に適応しているとか、人工放射能には適応して
いないという話ではなく、DNA損傷の修復作用を持っているかどうかという話です。 及び「放射線によるDNA損傷の生成機構」などを見ると、
「日本保健物理学会」 は、ICRPの主張を踏襲して、低線量の放射線影響を
癌と遺伝的影響,即ち 遺伝子(DNA)に対してだけに限ろうという意図が見て取れます。
しかし、放射線によってできる活性酸素は、DNAのみならず タンパク質や脂質など
にも深刻な影響を与え、チェルノブイリで見られるような 老化や免疫不全などを引き起こす
ことは、一般の学者も認識しているようです。
このような偏向をもつ 日本保健物理学会は、保健物理学 - Wikipedia によると、 1956年設立の アメリカ保健物理学会Health Physics Society による日本支部設立の誘いで、
1961年6月19日日本支部結成準備委員会が発足し、翌年2月5日Health Physics Society 役員会
で 日本支部設立願が承認され、同月15日に 日本保健物理協議会の発起人会総会が開かれた。
1963年6月10日、Health Physics Society 役員会は、放射線防護に関する国際学会を結成する
方針を決定、そのための委員会が発足。1964年3月20日、国際学会設立に向けて 米、英、日、仏
14人委員で 構成する幹部会発足。 1965年12月国際放射線防護学会 (IRPA)が結成され、最初
の国際会議 および総会が1966年ローマで開催された。
国際放射線防護学会結成時に 日本保健物理協議会の会員約300名が創立会員として入会し、
これを機にHealth Physics Society日本支部解散。日本保健物理協議会は国際放射線防護学会
の日本における唯一の加盟団体として認められている。
1974年3月に日本保健物理協議会は 日本保健物理学会と改称。 現在 会員数 約1000人.。
ということで、
冷戦期の西側核戦略の一環に 日本の科学者たちが組み込まれてきた歴史を、
この学会は 体現しているわけです。
学界長: 内閣参与(3/16〜4/29) だった 小佐古敏荘 氏
因みに「保健物理(health physics)」という用語は、
原爆製造のためのマンハッタン計画の初期において、作業者の放射線および放射能にかかわる
健康管理は、当時の 主として 医学放射線分野でのそれとは 質的に違った大規模で複雑なもの
と認識されていた。 この観点から、放射線防護面を担当する保健(health)部が設けられ、部内は
さらに医学、生物、物理の3セクションに分けられた。物理セクションを、他の部門の物理セクション
と区別するために、health physicsと呼んだのが始まりとされ、外部に悟られないように付けた隠語
のようなもの
と言われ、米国など一部の国だけで使用されているそうです (西欧では 「放射線防護」)。
(つづく)
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・ホールボディーカウンタについて (38) の続き
ICRPのリスク評価については、まだまだ 追求し足りない所がありますが、
ロシア科学アカデミー・生物化学物理研究所の論文の以下の一節を2つ引用して、
次に移りたいと思います。
低線量の被曝においても 脂質の抗酸化調節 システムに 重大で恒常的な乱れが生じている可能性
を示している.・・・
観察された変化が,ある具体的な病気と結びついているのではないことを指しておく.
脂質の抗酸化調節システムの変化,その結果としての生体全体の バランス調整システム の変化は,
おそらくは,臨床的には明らかでないままに その影響が補償されており,「前病気状態」とでもいう
べき状態であろう. そして 「前病気状態」は,条件次第で さまざまな病気へと進展する.
リクビダートルの検査データ は,低線量被曝を受けた人々において,様々な病気に進展するリスク が
大きいことを示している.
“ 直線的 or2次多項式的な 線量・効果関係の存在 ”が,低線量被曝 及び 低線量率被曝
に伴う ガンの誘発や死亡の “必要条件ではない” ・・・
被曝量との単調な相関性が認められないこと や 低線量域で 最大値が観察されることは,
低被曝被曝における癌誘発効果を否定するものではなく,むしろ そのことを示すものである.
最後に,・・・低線量 及び低線量率被曝に伴う効果の規則性は,生体や細胞代謝に 放射線が
及ぼす影響研究において 全く新しい概念であることを強調したい.その効果の大部分は,被曝
によって直接ひき起こされるものではなく,生体の免疫状態や抗酸化状態の変化,環境要因
に対する感受性の変化といった 生体の調整システムを通して 間接的に現れるものである.
注。 この論文は、被曝の受け方 ( 内部・外部、急性・慢性 ) による生体への影響の違い
の研究ではなく、 ICRPと同じ 総被曝線量が生体に与える影響の話になっています。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
問3. 人工放射線 と 自然放射線とは、生体に与える影響は同じか違うか?
この問いに対する答えは、 日本保健物理学会によると、
人工放射線と自然放射線の違い - Q&A 2011年10月27日
先ず、人工放射性物質から出る放射線も 自然放射性物質から出る放射線も α線、β線、γ線
という種類は同じです。
この疑問を考える鍵は 放射線が人体にどのような影響を与えているかだ。
放射線が人体に当ると、主に 2つの作用を起こす。
一つ目は 水から活性酸素を発生させること。
二つ目は DNAを直接傷つけること。 一つ目の活性酸素が さらにDNAを傷つけることもある。次に、
傷つけられたDNAは 修復酵素により修復される。 修復が失敗しても、細胞の自滅作用(アポトーシス)
で細胞ごと消し去ります。 アポトーシスを免れた細胞は 癌細胞になる可能性がある。 しかし、癌細胞
も免疫細胞により駆逐されてゆく。
このように、人体が元々持つ防護機能によって、細胞の癌化を防いでいる。年齢を重ね、または
不健康な生活を続けると 人体の防護機能が弱まり、癌の発生確率は増加する。 人それぞれ防護
機能の強さは異なるし、放射線以外の発癌物質の取り入れる量も異なるので、個人の癌の発生率
は 現在の所は分からない。
長くなったが、問題は 人類のDNAが 自然放射能に適応しているとか、人工放射能には適応して
いないという話ではなく、DNA損傷の修復作用を持っているかどうかという話。
もちろん、人工放射能から発する放射線のエネルギー が 自然放射能から発生するものとのエネルギー
が異なることにより、体内に与えられる エネルギー が異なる。 しかし、それは DNAを何本切るか、
どれだけ活性酸素を作るか、という違いでしかない。
人工放射能の体内での臓器間の挙動の違いもあるが、それも 動物実験や過去の人工放射能
を治療に使用した医療現場のデータなどから評価され、摂取した量から ㏜という統一した影響の
指標に換算する手法を持っている。つまり、㏜という単位で比べれば、自然放射能も人工放射能
も同じ土俵で評価する事が出来る。
勿論、数㏜を一度に浴びると、生命の危険があり、そこまでの被曝には人類は適応していない。
しかし、量が少なければ 人体の防護機能による放射線による影響は修復されている。
人工放射能だからと不安になると、免疫などの防護機能が弱まる危険性もあるので、結果として
身体に悪影響を及ぼしてしまう可能性がある。気をつけて頂きたいと思う。
としています。
我々の運命としての自然放射線による被曝に加えて、人工放射線による被曝を受ける
ことになった我々の不安に答えるのに、‘ その不安は、お化けを恐れる子供のように、
科学を知らない者が 自分で作り出した根拠のないものだ ’と言い、‘ こんなバカなことを
恐れていては、その恐れが かえって 病気を作る ’とたしなめています。
被曝を恐れなくてもよいならば、‘ 自分らを被曝環境に置いた者たちの責任を 云々する
ことは、これまた 自分に幻の危害を加えたお化けに 文句を言うという 愚を重ねることだ ’
と言っているわけです。‘ あなた方の思うことは、みな 根拠のない(非科学的な)一人相撲
に過ぎない。そんな愚かな取越し苦労は止めにして、何んにも考えず 笑って 我々に 身を
委ねなさい。’と・・・。
何とも 宗教家のように 巧みな弁論術を駆使する人たちです、 科学者というものは!
では、彼らの主張を 少し検討していきます。
まず、放射線が人体にどのような影響を与えているか
自然放射線であれ 人工放射線であれ、放射性物質が出す線質(α線、β線、X線など)や
そのエネルギー が それぞれの物質によって異なるだけで、例えば カリウム40の出すβ線も
セシウム137の出すβ線も、β線(電子)であることに変わりなく、α線もγ線もX線もまた
同様であるというのは、物理学の知見です。
そして、放射線の線質の違いが、生体に影響する仕方は変わらないというのが、権威筋の
見解のようです。 上の引用では 2種類の仕方で影響を与えると言っています。
1つは、放射線が 反応性の高い活性酸素を生成し、これが 間接的に DNAや細胞に
害を与える場合。
生体は 体重の半分以上が水でできており、放射線が身体に当たると 水の電子を弾き
飛ば(電離)し、水分子の共有結合を切り離して、水素分子と活性酸素に分解します。
※ 成人の男性は 約60%,女性は 約55%、幼児は 70%、老人は 53%が水
※ より正確に言うと、放射線は 細胞内のあらゆる物質(脂質やタンパク質など)の電離をし、
酸素分子からも 活性酸素ができる。
(1)放射線基礎 2)放射線基礎生物学 3.放射線と活性酸素 長崎医大ビデオ
ただし、活性酸素は、必ずしも放射線だけで生ずるわけではなく、
【活性酸素によるDNAの損傷】 放射線に対するレドックス制御に関する研究 : 放医研
生体では 放射線、紫外線、金属、有害物質等の外的要因や、低酸素状態(虚血)、炎症等
の内的要因によるストレスに曝されると 活性酸素・活性窒素・フリーラジカルが生成する。
活性酸素・活性窒素は、DNAの塩基を酸化したり DNA鎖を切断し、蛋白質に対しても 酸化や
ニトロ化を起こして不活性化させ、脂質に対しては 過酸化を起す。
これらの損傷が修復されなかったり、除去できずに 体内に蓄積すると、発癌や老化などの種々の
疾患が生じてくる。
生体内では、レドックス制御と呼ばれる 様々な機構で、生体の酸化還元状態を制御することに
よって、酸化ストレスから生体を守り、恒常性を維持している。 また、生命維持に必要なエネルギーを 酸素から得る際にも、活性酸素ができる。
自然発生によるDNA損傷の生成機構
生体を構成する細胞は酸素を利用してエネルギーを得る。その際に副産物として H2O2、-OH、-O2-
などの活性酸素が生じる。これらの中でも 特に -OHは DNAと作用し、塩基損傷や一本鎖切断を
引き起こす。一本鎖切断が 二本あるDNA鎖上の近傍で生じてしまうと DNA二本鎖切断になる が、
この確率は非常に低く、↓表のように 50,000個の一本鎖切断の内の約10個が 二本鎖切断になる
程度。よって 自然に生じるDNA損傷は ほとんどが塩基損傷と一本鎖切断。しかし、これらの
損傷は、2本あるDNA鎖の内のどちらか一本鎖上で起きるものなので、無傷の もう一本のDNA鎖
を鋳型としたDNA複製の原理 (DNAポリメラーゼ) を利用して 元通り修復される。
※ 2本のDNAが切断されると異常DNAとなり、これが癌の出発点となる。癌にならなくても、
細胞分裂自体ができなくなる。
しかし、放射線によってできる活性酸素の場合は、
放射線によるDNA損傷の生成機構
人間を含む全ての生物の体は 数十兆個もの細胞でできている。この細胞の中身を覗いてみると 全体の約70%が 水で、その水の中に DNAが存在している。γ線やβ線を被曝すると、最初に、
放射線は 細胞内の水の分子(H2O)と相互作用する。この相互作用によって、水の分子が電離され
ヒドロキシラジカル(-OH)が生成される。もし、放射線によって生成された-OH の近くに DNAがあったら、
先述の自然発生の場合と同じように DNAと作用して、塩基損傷や一本鎖切断が生じる。 しかし、
放射線の場合は放射線の飛跡に沿って 密に -OHが生成されるため、二本鎖切断が生じ易いこと
に加えて、その近くに 複数の塩基損傷や一本鎖切断が混在した複雑な損傷が生じる(クラスター
損傷)。
細胞にとって クラスター損傷を正確に修復するのは 大変難しく、その結果 染色体異常や遺伝子
変異に発展する可能性が高くなる。 もし、癌の初発や促進に関係した遺伝子が変異を受けると、
これが原因となって 癌につながっていく恐れがあると考えられている。
以上により、自然発生(活性酸素由来)と放射線由来によるDNA損傷は、どちらも直接的(?)には
活性酸素によるものだが、活性酸素の空間的な分布の違いによって、質的な違い、つまりDNA損傷
が クラスター化するかどうかが異なる。この損傷の生成は 線量や線量率に依存するが、線量が低く
なると検出することが困難であるため、低線量での実験的な報告はほとんどない。
(つづく) |
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ホールボディーカウンタについて (37) の 「リスク評価」の続き
福島第一原発による広汎な被曝において、そのリスク評価に 個人が受けた被曝量の合計,
所謂 「積算線量」ということが言われています。
これは、もちろん ICRPの放射線防護の 「リスク評価」思想による訳ですが、それは 短時間
における 1㏉以上の高線量の急性被曝での 生体への影響をもとに、線量・線量率効果係数
(DDREF値:2)を使うことで、 長年月にわたる 低線量の慢性被曝による生体影響の評価が
可能だとして、
[一回の高線量の急性被曝による リスク] ÷2 =[長年月に亘る低線量 慢性被曝の総線量による リスク]
という等式が有効であるとする思想からきているわけです。
なるほど、被曝環境下での慢性被曝の評価には、当然 総量として どれだけの放射線を
浴びたかということは、生体のリスク評価にとって きわめて重要な指標でしょう。
ただ、被曝に晒されている人にとって、自分たちの身体への放射線の影響について ICRPの
リスク評価を納得できるか否か ということになると、きわめて疑問です。
それは、個人の情緒的な問題のためではなく、ICRPのリスク評価自体がもつ各種の問題性
のためでしょう。
ICRPのリスク評価というのは、低線量被曝による晩発影響(確率的影響)の評価ですが、
その問題性について その幾つかを列挙してみます。
1. 放射線の被害を 癌と遺伝のみとし、かつ 放射線のリスクを 死亡にのみ注目する。
「癌死亡の確率が放射線リスクの大半を占めるため、確率的影響を癌死亡だけで行う」
※ 癌のみでなく他の無視できない疾病も、チェルノブイリ事故で顕在化している
上のATOMICAの記述を さらに引用すると、
癌リスクは、遺伝リスク(1%/Sv)に比べ寄与が大きいため、「確率的影響の確率=癌の確率」
と見なすと、低線量・低線量率の放射線のリスク係数は、ICRP1990年勧告に基づき、5%/Sv。
ただし、BEIR Vの評価は、1mSv/年の連続被曝で 0.006%。
例えば、一般公衆10万人に平均1mSvの被曝が起こると、この放射線起因の生涯癌死亡数は
5人と計算される。 日本の癌死亡は 全死亡の約1/3から、
1mSv被曝により 癌死亡は 約1/3+5/100,000 になる。
この計算法が、現在の科学的知見に照らして どの程度妥当なのか、仮に問題があれば、 それは何か 又は 他の優れた計算法は何か、が 放射線リスク評価上、重要な課題である。
と言っています。
2. 放射線被害の情報が、ヒロシマ・ナガサキの被爆健康調査に依存し過ぎている。
先の記事(37)で 低線量・低線量率のリスク評価の要である名目致死確率係数
を出す際、ヒロシマ・ナガサキの原爆被爆者のデータを偏重したところに見られます。
このデータの精度の実態について、当事者の放射線影響研究所(米日の共同運営)は
「初期放射線」は 中性子線とγ線が主体であり、放射線被曝は 体表面に到達した放射線
により 数秒〜数十秒間というごく短時間のうちに起こりました(外部被曝)。・・・
(放影研)のリスク計算には 「初期放射線」による被曝量のみが用いられております
放影研での原爆放射線による癌罹患・死亡等のリスク評価は、1〜4Gyという高線量に被曝
した方々のリスク推定値が、被曝線量に対して明確な量反応関係を示していることに立脚 しています。従って、10〜100mGy 程度と見積もられる「残留放射線」被曝を受けた少数の人
たちが、「初期放射線」量が ゼロや低線量である多数の人たちの中にある程度含まれていた
としても、主として 100mSv を越える高線量被曝の結果から算出された リスク推定値に対して
大きな影響を与えるものではありません。
このように、「残留放射線」は「初期放射線」と比べて かなり小さな値であり、かつ推定誤差が 大きいので、この情報を加えたとしても、推定 リスクに大きな変化は想定されませんし、リスクの
推定精度を上げる効果も期待できません。・・・
「残留放射線」に関する放影研の見解」 2012年12月8日
のように言っています。 すなわち、このデータは、極めて短い時間に浴びた高線量の急性被曝による外部被曝
での被害、主に癌の罹患・死亡であるわけです。
放影研は、さらに、内部被曝と外部被曝について、
どちらの場合でも リスクの大きさは、癌発症の当事者たる細胞(組織の幹細胞と考えられる)が
受ける放射線の量に依存し、被曝が 外部か内部かの問題ではないということです。・・・
「内部被曝」の場合、体内に取り込まれた放射性粒子から放射状に放射線が発せられるので、
その粒子の近傍では 線量が相当高くなることがあり得ます。 しかし、局所的に線量が高いこと
が 直ちに発癌リスクに結びつくかは別問題です。それは、発癌に関係する幹細胞は普遍的に
存在している細胞ではないので、放射性粒子の ごく近傍に幹細胞が存在していなければ、放出
された放射線は、細胞癌化に関与しないで終わることになります。
又、局所の放射線量が極めて高い場合には、細胞自体が生きられず、癌化の リスクはかえって 低下します。このような知見から、国際放射線防護委員会(ICRP)は、体内に取り込まれた粒子
からの放射線 (内部被曝) による癌化について、放射性物質が 全身に均等に分布した場合
に外部被曝と同等になり、偏在した場合には むしろ低下するのではないかと考えています。
と、あくまで 放射線障害を癌に限定し、かつ 内部・外部に関わらず, 被害は 被曝線量
にのみ依存する と説明しています。
3. 高線量被曝と低線量被曝との生体影響を 同じ土俵で扱う。
※ 低 レベル 被曝で生じるプロセスは 高 レベル被曝によるものとは異なっている・・・.
低 レベル被曝では,線量・効果関係,つまり 被曝量の増加に伴う効果量の変化の仕方が
直線型とは 顕著にずれており,それ故, 高 レベル被曝で得られた結果を外挿して 低 レベル被曝
のリスクを評価することは不適当である. < ロシア科学アカデミー・生物化学物理研究所
↑ これは、ICRPのLNT仮説で 低線量のリスク評価をすることを不適当である
と言っているわけです。
4. 急性被曝と慢性被曝との生体影響を 同じ土俵で扱う。
LNT仮説は、急性と慢性との本質的な違いはないものとして、その被曝総量で
生体への影響評価が可能だとしているため、 電力中央研究所の
これまでの当センターを含めた多くの低線量放射線研究から、LNT仮説では説明できない事例
が数多く見つかっています(*2)。また、当センターを含めた国内外の研究成果をとりまとめた
「線量・線量率マップ」からは、放射線は一度に被曝した場合と、少量ずつ時間をかけて被曝
した場合とでは 影響が異なることも明らかになっています。このことは、放射線作業従事者
が少量の放射線を何度も被曝するような場合には、LNT仮説から予想されるよりも実際のリスク
はずっと小さくなることを示唆しています。 *2 当センターの研究成果
というような主張の誘発を許してしまいます。
5. ICRPの放射線防護の思想そのものの文明史的問題
ICRPが言う 放射線防護とは、
放射線障害の発生を最小限に抑えつつ、社会の中で 放射線を利用すること
だと言います。
◆「 もしも、あなたの街が放射能汚染されたなら〜千葉県柏市の場合 」
’13.1.19 葛飾 市民ティービーさんの動画
ホットスポット〜低線量の放射線・健康への影響は? 日本原子力研究開発機構 小林泰彦VS京都大学原子炉実験所 小出裕章
( ㏜ VS ㏃、DDREF値: 2 、疫学データの限界、科学とは何か? etc )
参考: 日本学術会議会長談話(平成23年6月17日)
・・・私たち日本学術会議は、日本の放射線防護の基準が 国際的に共通の考え方を
示す ICRPの勧告に従いつつ、国民の健康を守るための最も厳しいレベルを採用して
いることを、国民の皆さんに理解していただくことを心から願っています。
最後になりましたが、このような異常な事態が一日でも早く解決して、元の平穏な生活 に戻ることができるよう、日本学術会議も引き続き努力する覚悟です。
☝
これが、わが国の知の最高 レベルの人達の見解です。「(今までも原子力の安全性に
努力してきたが、) 引き続き努力する覚悟 」だと言っています。すなわち、彼らは、事故
に対する自らの過失を 全く感じていないわけです。 「 今までしてきた努力の結果が
コレだった!申し訳ありません 」と、自らの営みに 根本的な反省をすることができず、
「 引き続き努力する (から、自分には何の過失もない) 」と言っています。
こういう倫理感覚の欠如が 科学者というもののサガのようです。
しかも、「 国際的に共通の考え方を示す ICRPの勧告に従い・・・ 」と。 すなわち、
日本学術会議が忠誠を誓っているのは 日本国ではなく、ICRPの勧告なわけです。
なぜなら、「 国民の健康を守る 」のは、「 ICRPの勧告に従いつつ(=従うことを条件
として) 」 と、ハッキリと述べているからです。
(つづく)
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