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4.チェルノブイリ事故の医学的影響に関する研究調査の概要
細胞遺伝学的影響および突然変異
現在では、直接的 または間接的に放射能汚染の影響を受けた子供に及ぼされる恐れのある 遺伝子突然変異 や さまざまな細胞遺伝学的影響のリスクを明らかにする、極めて多くの多様な
科学的研究調査結果を利用する機会がある。
事故後の全期間を通じて最も重要な課題とされるのは、放射能降下物に曝露した両親の子孫
に起こり得る細胞遺伝学的影響 または遺伝性突然変異を監視する必要性である。
現在、チェルノブイリ 後の第2世代( 照射を受けた両親−事故処理作業者から生れた子供 )に
おいて、様々な身体的病変をもたらす生理学的機序がとらえられていることを示す十分な証拠が
ある。 このことは、チェルノブイリの事故処理作業者から生れた子供に 天然DNA 及び後天性DNA、
サイログロブリンミクロソーム抗原に対する自己抗体が出現しているという事実により裏付けられている。
ここに挙げた物質は、免疫異常をきたしている子供の大半において観察されている(後述)。
しかし、これらの変化は、免疫異常のない子供の25%にも認められている。免疫のない子供の
グループでは、特に 呼吸器の機能障害が助長されると伴に、身体的病変が著しく急速に増大する
ことが考えられ、自然発生的に 又 環境要因( 発癌物質、照射、ストレスなど )の影響を受けて、
発癌リスクが高まることも考えられる【注記4】。
フランス の科学者、ウクライナ の研究者の協力によって実施された共同研究活動では、放射線の
汚染度の高い地域の居住する子供に染色体異常誘発因子 レベルの増大が認められたことが
明らかにされた。これらの要素は、有害な酸化過程の生物学的指標であり、この増大と染色体
異常の出現との間に何らかの関係があると考えられる(図11)。
図11. さまざまな観察地域の子供にみられる染色体異常誘発因子(CF)の割合(%) http://nucleardisaster.web.fc2.com/img/p83_fig11.jpg 左から順に、 ナロジチ地区(バザール村)の子供、 チェルノブイリ原発事故の事故処理作業者の子供 フランスの子供 チェルニコフ地区の子供 体外で放射線曝露を受けた子供 キエフの子供 Sumskoy地区の「暫定的に」 汚染の少ない区域の子供
イスラエルの子供 この点においては、いまだ重要な課題となっているのが、特に チェルノブイリの事故処理作業者の 子孫に 遺伝性の変異原性作用が現れていることである。夫が チェルノブイリでの緊急撤去活動
を終えてから1カ月以内に妊娠した母親から生れた子供において、遺伝子突然変異の発生レベル
が、父親が核撤去作業を終えてから 1カ月以上経過後に妊娠して生れた子供の発生率のほぼ
2倍であったことが明らかにされている。
また、(国際放射線防護委員会によると)第2世代では、確率的遺伝的影響が、電離放射線の 曝露により出現し、これにより 新生児の遺伝的構造が異常をきたすこともわかった。 これらの
影響が生じる理由は、両親の生殖器の生命機能 や DNA(調整DNA)を司るポリジーンの劣性
突然変異である。この劣性突然変異が起きると、チェルノブイリ大惨事により放出された放射線に
曝露した人の子孫(特に、1986〜88年に事故処理作業者から生れた子供)において、胎児
の生存能力や、マイナスの環境影響に対する生体の抵抗力が予測通りに低下する。この原因は、
電離放射線は 少量であっても、一方では DNAの分解(片方 又は 両方のらせん鎖の断片化
及び 破壊)、もう一方では、この らせん鎖の再構成を誘発する。細胞の「計測」に応答する位置
(遺伝子座)に、DNA構造の変化に対する このような異常が現れることから、この過程は 十分に
有害である。
モルドバ共和国の予防医学国立科学実習 センターの科学者らは、チェルノブイリ撤去活動に参加した 事故処理作業者と その子孫の細胞遺伝学的スクリーニングを実施した。その結果 事故処理作業者
のみならず、彼らの子供の体細胞でも、染色体突然変異が増強されたことを裏付けるデータが
を検討した ウクライナ及びイスラエルの科学者らの査読済み共同研究を公表した。チェルノブイリ災害後に
生れた子供と、災害前に生れた兄弟姉妹との染色体異常を比較する場合は、この科学者らが
行った方法がきわめて有効である。この研究から、チェルノブイリ災害後に生れた子供にみる染色体
異常の増大率は、チェルノブイリ災害前に生まれた兄弟姉妹の7倍であったことがわかった。
この他、チェルノブイリ事故の子孫にみられる健康障害を引き起こす染色体異常の出現も、ドニプロ ペトロウシク国立大学 及び ウクライナ にある傷病の医療社会問題に関する 科学研究所が着手した
科学研究によって裏付けられた【注記15】。
子供達(事故処理作業者の子孫)に複雑な臨床−臨床関連 スクリーニングを実施する過程では、 この子らの健康状態は、放射線に曝露しなかった両親の子供の健康状態とは実質的に異なる
ものであることが明らかにされた。
専門家は、チェルノブイリ事故処理作業者の家族から生れた子供が、その両親からの染色異常が
遺伝により受け継がれていることを示す確かな証拠を得た。遺伝子突然変異は、ストレス制限因子
及び ストレス増強因子のシステムと、これによって誘発された自律神経、生化学、微量元素 及び
免疫のホメオスタシスの機能不全の状況(不安定性)に反映されていたこのことにより、重大な
適応障害が生じる。 このような障害の臨床指標は、子供の身体発育 及び精神発達にみられる
変化、甲状腺の過形成、機能性心臓障害(心臓病)の発生、胃腸管疾患、頻繁に起る慢性疾患
である。 (慢性疾患には、よくみられる気管支感染症状、風邪 及び 肺炎などが挙げられるが、
このような疾患を来した子供には きわめて高い頻度で起こり、異常に長い間長引く傾向がある
ため、身体が激しく衰弱する)。
このことから、この子供の集団は、長期間の健康問題の リスク が高い グループであると考える必要 がある。 ここに挙げた研究プロジェクトの著者らは、以上の研究結果が、この障害をなくすため
の積極的対策の実施への土台をつくることになることを確信しており、このような疾患を未然に
防ぎ、回避するための予防策を講じることを勧告した。
ベラルーシ国立科学アカデミー遺伝学細胞学研究所での、専門家による実験的研究活動の実施によって、調査対象の継続的世代にみられる体細胞変異および胚性致死性(胚死亡)の漸進的増加が登録された。得られた結果で注目すべき側面は、突然変異の頻度が代々増加していることであった。この実験の結果と、放射能に曝露した第1世代の人と実験動物にみられる個々の変異原性反応および生理的反応の結果から、チェルノブイリ大惨事の遠因が今後の世代で明らかにされるであろうという結論を下すことが可能となる【注記16】。 2001年から、ウクライナとアメリカの出生異常予防協会が、南アラバマ大学(モービル)の 遺伝医学学部長兼マーチオブダイムスに関わる遺伝学の第一人者、Wolodymyr Wertelecki博士
の監督下で、ウクライナ北西部のヴォイルィーニ州 及びリヴネ州の新生児にみる先天性奇形の
発症率を調査した。この研究チームは、下顎がなく、他のいくつかの部分も欠損している状態で
生れた リヴネの乳幼児が発症し、世界で初めて撮像された症例、耳頭症などの極めて希な出生
異常を多数記録した。Werteleckiのチームは この他にも、二分脊椎の発症率が、通常の発症率
の4倍を上回ったことも明らかにした。チェルノブイリに汚染されたリブネ地区の産科医 及び新生児
生理学者も、変形四肢、眼の異常、白内障をはじめとする希な異常をきたしている乳幼児の様々
な症例を報告し、記録した。米政府は、Werteleckiの研究の財政的な支援を打ち切ったが、
明らかに このような憂慮すべき症例には、さらに多くの徹底的な検査を行っていくことが必要
重大なのが甲状腺癌だとされる 様々な甲状腺の病変が大幅に増大したことによって、明らか
となった。事故後のわずか15年で甲状腺癌が少し増えると予測した放射線健康の専門家の
予想に反して、チェルノブイリ大惨事が起きてから4〜6年後には すでに 子供や成人に甲状腺癌の
大幅な増大が現れ始め、その後 極めて急激に増大していることに注目することが重要である。
1993年9月1日に、世界保健機構 及び イギリスの有力科学誌「Nature」が、チェルノブイリ放射線に
汚染された村やその付近に居住するベラルーシの子供では、甲状腺癌の発症率が通常の80倍
にまで上昇したと報告した【注記17】。実際の癌発生率と、1986年の前後で甲状腺疾患を綿密に
比較したものを極めて慎重に追跡することによって、この80倍の増大が記録された。
その後の研究では、ベラルーシの子供の甲状腺癌が1990年代半ばまでに、通常の100倍
まで上昇し、ウクライナの子どもの場合は 30倍にまで上昇したことが確認された。
ここに挙げた子供のほぼ全員が、ミンスクまたはキエフの国立内分泌学研究所で手術を受けて
おり、適宜のスクリーニング と国際社会の介入の結果、手術を受けた子供のほぼ全員が生存した。
しかし、ほとんどの場合、甲状腺の摘出が必要であり、この癌の生存者は生涯において、甲状腺
ホルモン補充療法を毎日受けなくてはならない。
(つづく) |
チェルノブイリ
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Dennis Henshaw博士の監督下で、ブリストル大学(英国)のアルファ線飛跡分析研究所と共同
で実施したウクライナの小児科学、産科学、婦人科学会研究所の病理検査室の研究から、
ウクライナの妊娠女性の胎盤と、その子供の臓器(管状骨や歯胚など)には、特にα放射性核種
などの放射性粒子が包含 または含有されていることが明らかにされた。母親が高度の放射線
管理下の集落に居住する 死産の子供の骨組織にみるα放射性核種の含有率が 最近になって
増大しつつある ということが 特に問題となっている。
明らかとなった放射性核種の取り込み線量は、一見少ないように思われるが、発育中の胎児 が小さい場合は、その線量は 大きくなる。 さらに、急速な発育の過程を経ている幼若細胞の
方が、成熟細胞よりも 放射線の影響に対する感受性が高いと言うことは、よく知られていること
である。これは、多数の組織学的調査研究でも はっきりと裏付けられている。
とりわけ、死産の胎児の骨に関する形態学的研究では、特に 椎骨や、頻度は少ないが 肋骨 や管状骨の骨組織の血液供給に目覚ましい変化が起こっていることがわかった。
浅部の動脈血管壁に、栄養障害的変化がみられた。 また、様々な大きさの骨芽細胞の量が
少なくなっているように思われた。この他、骨基質や類骨組織の減少もみられた。骨芽細胞 及び
破骨細胞は 不均一に分布しており、これが 骨組織の異形成過程の特徴を示すものとなって
いる。骨芽細胞と破骨細胞との関係にみる 明らかな アンバランスが、形成や成長の過程にある骨
の破壊的病変の発生機序を誘発することがある。これにより、チェルノブイリ事故後に生まれた子供
の骨組織の構造的変化と機能的変化が、子宮内にいる間 または 出生前の発育期から生じ
始めていることを合理的に仮定することが可能となる(顕微鏡写真1)。
顕微鏡写真1. 胚発生から第27週の胎児の脊椎の骨組織(胎盤内のセシウム137の取り込み量は 3.25Bq/kg)。軟骨細胞の栄養障害 及び壊死がみられる部位。破壊による空洞がみられる。
200倍のワンギーソン法で 染色後のピクロフクシン塗布
http://nucleardisaster.web.fc2.com/img/p80_pict1.jpg 特に問題なのは、胎児の視床下部‐下垂体軸(視床下部、下垂体、甲状腺、副腎 及び生殖腺) にみる構造的 及び機能的変化 と 形成異常である。 子宮内での発育中に ホルモンの相互作用が
崩壊し 制御されなくなることにより、胎児の身体的発達に変化が生じ、内分泌を司る内分泌腺
の疲労を来すことがある。このことは、子供の成長や発育の過程にも反映する腫瘍形成後期に
影響を及ぼすおそれがある。
ウクライナの小児科学、産科学、婦人科会研究所によると、幼少期や青年期に放射線に曝露 した女性から生まれた子供の第1世代は、生理学的に発育不全の状態で生まれていることが
明らかにされている。このような子供は、生後1年の間に病気にかかることが多く、若年時には
多様な身体的病変が現れる。生後2年が経過すると、虫歯や窩洞(カドウ)ができ始め、そのうち
目立つようになってくる。生後5年が経過すると、甲状腺の過形成が現れる。高リスクグループの
子供には、健康と考えられる子供が存在していない。
放射線に汚染された地域の子供にみる様々な臓器の先天性出生異常の発症頻度は、比較的 汚染の少ない区域の新生児の 2倍にあたると思われる。(出生異常が 2倍になる このような
パターンは 最初、1994年に ベラルーシの新生児 及び死産の胎児に関する日本人(サトウら)に
よる研究で明らかにされたが、周囲からの注目は ほとんど得られなかった。その後、1998年に
Petrovaらにより Stem Cell Magazineで発表された小児科学、産科学、及び婦人科学学会での
研究結果と、ベラルーシの論文審査を受けた平行研究の結果により、このパターンが裏付けられて
いる。)
小児科学、産科学、婦人科学学会による研究では、チェルノブイリの乳幼児にみる致命的な
心欠陥、僧帽弁逸脱(ソウボウベンイツダツ)の発症頻度が高くなったことが明らかとなっており、この
頻度が高くなるということは、結合組織の形成異常 又は 奇形の兆候であると考えられている。
このことはさらに、キエフのアモソフ国立心臓外科研究所の外科医によっても裏付けられた。
ハルキウ医療センターの科学者による研究調査では、チェルノブイリの撤去作業者 (事故処理 作業者)から生まれた子供の、臓器異常を伴った発育障害 (SADと呼ばれる小さな発育異常)
の発症頻度が高くなっていることが明らかにされた。 明確で 情報量の高いSADの「マーカー」
には、脊柱側鸞(ソクワン)、側彎支持、胸部奇形、歯の異常(状態 及び位置)、早期の複数に及ぶ
虫歯、歯のエナメル質の形成不全、皮膚の異常(乾燥皮膚 及び 肌荒れ)、発毛異常、薄毛
または 斑状育毛などが挙げられる。(化学療法を受けている子供以外のチェルノブイリの子供に
みられる育毛不良については、 幅広いデータや写真が得られているが、起こり得る さらに重大
な健康問題の指標として 明らかに問題となっているのに関わらず、西欧の放射線に関する
保健衛生機関と提携している施設の研究者らによる関心は低かった。)
身体的病変の発症リスクの最も高いグループを構成しているのは、照射を受けた両親から 生まれた複数 (7カ所以上)のSAD異常の指標がみられる子供である。 このような子供には
直ちに、心臓や腎臓などの重要臓器における 最も危険な病変を検知するために、超音波
スクリーニングを実施する必要がある。( ウクライナの ほとんどの産科小児科病院では、効果的な
妊婦健診や、高解像度の超音波 スクリーニングが実施されていないため、毎年2000人を超える
新生児が、未診断 または治療不可能な心異常 または胸部異常によって死亡しており、心疾患
を来した新生児が 数千人以上にも及んだ。キエフの アモソフ心臓外科研究所によると、心欠陥を
来している新生児の人数は増大しているが、この明白な増大が、診断環境が良くなったためで
あるのか、集団において 先天性の欠陥が 実際に増大したためであるのかは明らかではない。
少なくとも、このような異常には、極めて綿密な研究を行い、さらに徹底したスクリーニングを実施
することが必要である。
ウクライナの新生児センターでは、多発性出生異常や 希にみる異常の発症頻度が、チェルノブイリ 災害前より 優位に高くなっていることが医師により報告されている。この異常には 特に、多指症
(手や足の指が多い)、臓器奇形、四肢の欠損 または変形、発育不全 及び間接拘縮症などが
含まれる。
数千人の女性が 放射線汚染区域 (最も広範囲に広まった放射性核種であるセシウム137の 半減期は30年) に居住し続けていることを考慮した場合、この地域の居住し、授乳する母親が、
長期間続く 内部照射の根源となることから、授乳育児の問題を検討することが不可欠となって
くる。ベラルーシの科学者が実施した研究から、汚染された区域に居住し、授乳で育てられた
子供は、粉ミルクで育てられた子供よりも、体内の放射性セシウム含有量がはるかに高いことが
分かった【注記11】。
このリスクは、程度は低いが、チェルノブイリの主な放射性物質降下地域から ずっと離れた所に
居住している乳幼児にも存在している。 たとえば、イタリアの国立衛生研究所は、1997〜98年 にかけて、母親や乳母の母乳中に含有するセシウム137を測定する研究を実施した。この研究
から、含有量は 比較的低かったが、チェルノブイリ事故から 10年以上経過してもなお上昇していた
ことがわかった。
( 編集者注:放射線測定値の上昇が、半減期の長い チェルノブイリの放射線降下物質によるもので
あったことを受けて、アイルランドの保健機関は 1998年にようやく、日常の制限を解除した。
また、フランスの機関は、1998年になって ようやく、チェルノブイリによって堆積した放射性セシウム
によるリスクが増大していることについて、ピレネーの羊飼いに注意を呼びかけた。)
公衆衛生の観点からみると、この問題には、極めて広範囲に及ぶ研究と、各代替手段の リスク 及び便益とを慎重につりあわせることが必要である。 科学的研究 及び 臨床的研究で蓄積した
データは、最も基本的なライフサイクル(母親−胎児−子供)と密接にかかわっている患者や、
放射性物質の破壊的影響に 特に損傷を受けやすい患者の保護、スクリーニング、治療 及び
リハビリテーションに対する適切な措置を開発するために、生殖系と妊婦の健康状態に関して
総合的に解析することが必要である。 時宜を得たスクリーニングや、手間をかけた動的監視に
よる十分な予防措置を行えば、医師は 子供の様々な病変の発生率を大幅に抑えることができる
ことを示唆している証拠があることから、データの解析は 極めて重要である【注記12】。
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4.チェルノブイリ事故の医学的影響に関する研究調査の概要
チェルノブイリ災害は 科学界に、あいにく解決には ほど遠い 極めて複雑な問題が 山ほど生じて
いることを示した。 多くの課題が 未だ解決に至っていない。現時点では、確信度に関係なく、
結論に達するのは わずか ひとつであると考えられる。
チェルノブイリ事故の医学的影響は、すでに現われている 予測された放射能の影響に関する
数学的モデルを裏付けるものではない と言うことである。 科学界は、広島 及び長崎への原爆
投下後に実施した健康に関する 数少ない研究経験からだけで、今回の事故の影響を必ずしも
予測、確認 または予見することはできない。 以前に起こった キシュテムやチェリャピンスクでの
核災害からは、利用可能なデータは得られていない。
以下の章では、人体の臓器と系に分けて、チェルノブイリ災害の放射線学的影響に関して、
諸国家の科学者が実施した科学研究調査の結果を いくつかまとめている。 ここに引用した
試験結果は、莫大な数の研究調査結果の ごく一部であり、この中には 政治的または個人的な
理由で機密となっていたか、隠ぺいされていたものもある。 ここに まとめられたデータの信頼性
は、科学者らの議論により 徹底的に検討されてきたものであり、実際に疑う余地のないもので
特異的な疾患の増加がもたらされた。放射性ヨウ素への子供の曝露や、被災地での撤去作業
に参加した両親(事故処理作業は)から生まれたことによる 甲状腺への照射によって起こる
確率的主要疾患(癌)と、非確率的に起こる免疫学的疾患の状態は、密接に入り混じったもの
となっている。
大抵の場合、科学者らは 主に「 T細胞 」系は、頻度は少ないが マクロファージの糖鎖への
ダメージなどの免疫状態の変化を観察してきた。この「 キラーT細胞 」系の状態には、Tリンパ球
の絶対数 及び早退数が少ない と言う特徴と、主に Tヘルパー細胞量が減少すると同時に、
末梢樹幹における 発育不全Tリンパ球が増加することによって生じる免疫調整細胞(Tヘルパー
細胞 及び Tアプレッサー細胞)が不均衡であるという特徴がある。
このため、チェルノブイリ事故が起きてから 5〜6年間、研究者らは、末梢血の T細胞濃度の大幅な 減少により生じた T細胞連鎖の変化を見出し、比較的「 汚染の少ない 」地域の居住する子供と
比較した。事故が起きてから 10〜12年間は、放射線管理下の地域に居住する子供の血液の
T細胞濃度が さらに減少していることや、その減少度が 子供が居住していた地域のセシウム137
による汚染強度に 密接に相関しているか、強く依存していることを認めた。
このような免疫不全の発症をもたらす機序に関する試験を さらに綿密に行ったところ、予想外 の結果が得られた。 研究者が発見したのは、
a) 免疫細胞の受容器の遮断、 b) 機能活性の低下、 c) 脂質の酸化過程の途絶
d) 免疫コンピテント細胞の抗酸化活性と、生体膜のリン脂質含有量の変化
であった。 マクロファージ糖鎖に関する免疫研究者の指標においては、
殺菌活性の変化に基づく 白血球の食細胞活性の低下が観察された。
ここに挙げた観察結果は いずれも、免疫系を高めるための積極的な対策を取らなければ、
この グループの子供達は 確実に、幼少期 及び その後の生活において、癌や感染症の発症 リスク
が さらに高まることを示している。
核事故の生存者の第1世代 及び 第2世代の いずれにも認められたのは、免疫 グロブリンAの 減少と、侵襲的感染に対する軟組織 (呼吸器官、胃腸管及び泌尿器系)の不浸透性 及び
安定性に対する アデノシンデミナーゼIII(ADAIII)、特に その分泌率の低下であった。
チェルノブイリ原発事故後の放射線線量が少ない状況で、疾患の突然変異が きわめて急速に 起こると、この種の保護免疫系の機能低下が 特に 危険な状態となる。
子宮内で放射線線量を受けた子供を 14年間にわたって臨床免疫学的に監視した所、様々な
発達段階での免疫状態 及び 疾患の発症 リスクが、受けた放射線線量に基づいており、この種
の中枢器官の照射が、健康な免疫系の発達に関与していることを突き止めることができた。
又、胎児の免疫発生を司る主要臓器が照射を受けることによって、食細胞の機能活性と、 細胞の破壊に影響を及ぼす 酸素依存性機序抑制、T細胞免疫の抑制、免疫調整基質の不均衡
、免疫グロブリンの機能不全が生じることが明らかにされた。
これによって、3種類の免疫学的障害( 有害物質の活性化、機能低下 及び 非分化 )が生じる。
このような変化は、子供の身体的疾患の根本的な原因のひとつとなっている。
又、妊娠初期に胎児が照射を受けることで、極めて有害な影響が発生することがわかった。 研究者は この他、子宮内で 急性照射を受けた 9〜10歳の子供には、免疫系の再適応 システム
の発達を示すきらいがあるという傾向を明らかにした。 子宮内の照射の初期段階では、染色体
や子供とを結び付ける生体系、胎児の子宮内での発達過程、先天性出生異常の頻度 及び原因
などに及ぼす作用であった。
ウクライナの小児科学、産科学、婦人科学会研究所(POG)の研究チームは、少量の電離放射線を 受けている地域に居住する 妊娠患者を対象に、大規模で 複雑な臨床 スクリーニング を実施した。
ブリストル大学(英国)からの、放射線による健康状態を研究する科学者らとの共同研究活動に
より、事故後の全期間における 妊娠女性の胎盤にみる放射性核種の濃度を明らかにすること
(左上段) 胎盤内
セシウム137 3.48Bq/kg α放射性核種 0.9Bq/kg (左下段) 胎児の臓器内 肝臓 セシウム137 7.75Bq/kg 脾臓 セシウム137 0.23Bq/kg 胸腺 セシウム137 0.19Bq/kg 脊椎 放射性核種 860 mBq/kg 歯 α放射性核種 390 mBq/kg (右下段)母体内 セシウム137 0.74〜1.27Bq/kg 放射性核種の濃度を明らかにした 上記の胎盤を詳細に解析したことにより、胎盤の隔膜の 変化、栄養障害過程の存在 ならびに アポトーシス(細胞の破壊)の兆候がある細胞量の増大を
明らかにすることができた。 上記の因子は いずれも、妊娠中の様々な周産期異常の発現を
もたらす一助となり得る。
特に、このような調査を行うことによって、対象となった妊娠患者では、比較的汚染の少ない 区域の居住する妊娠女性よりも、流産、妊娠後期には 子宮出血、貧血、子宮内での胎児の
低酸素症、子癇前症などの合併症が起こる可能性が高かった。
ここに挙げた合併症は、胎児−胎盤間の過程の発達にみられる 様々な変化によるもので
あった。調査した妊娠女性の 33.6%において、子宮内での胎児の発育が停止したことが
わかった。 さらに、血中の鉄含有量が著しく低下し、鉄欠乏性貧血であることが臨床的に認め
られた。 このことから、低レベルの放射線による影響を受けた地域に居住する妊娠女性を、
中絶後の妊娠女性の胎児 及び 胎盤い蓄積した放射性セシウムの濃度とその分布が明らかに
された。 また、少量の放射線線量が、先天性出生異常の形成 及び 構成に及ぼす影響が検討
された。 出生異常の主要グループのうち、最も大きな割合を占めたグループは、中枢神経系の
異常であったこともわかった。
この他にも、胎盤は 胎児そのものより はるかに大量に放射性核種を濃縮することがわかった。
特に、中枢神経系の先天性形成異常の場合は、胎盤の放射性核種の含有量が、他の先天性
出生時形成異常の場合よりも きわめて多かった。 胎児の放射性核種の蓄積は おそらく、
甲状腺の照射が 同患者の妊娠に及ぼされる影響に関して、極めて関心が高く有益な研究調査
が実施された。
この研究調査の結果から、幼少期に 甲状腺に放射線曝露を受けた女性の方が、妊娠の過程 で 多くの合併症が発症したことがわかった。 これは 特に、胎児が 女の子の場合に顕著で
あった。 また、これらの妊娠患者の方が、比較的汚染の少ない区域の居住者より、胎児の発育
が遅延する頻度が高かった。男の子の場合は、肥満の状態で出生することが多かった。
また、妊娠中に カルシウム欠乏の非特異的指標を示す頻度が 極めて高く、高リスクの女性の 1/3が、第1期 及び第2期の乳汁分泌過少症を発症、授乳に必要な母乳が十分に出なかった。
女性が 幼少時に受けた照射は、高齢になってから 生殖に関わる健康に悪影響が及ぼされた。 これらの女性が生理的に妊娠する可能性は 極めて低く、わずか 25.8%であった。
病変が現れる頻度は、幼少期に この女性の生体が受けた放射線負荷線量によって異なる。
この事実が、女性の生殖系の感受性が、幼少期 及び青年期の照射に対して 極めて高いという
裏付けとなっているもののひとつである。
さらに、比較的汚染の少ない区域の居住者とは対照的に、放射線量が高い区域の居住グループ
では、体重が けた外れに大きく生まれた子供が多かった他、異常に低い体重で生まれた子供も
多かった。 これは、子宮内での発育中に ホルモンのバランスが崩れていたことを示す兆候で
あった。 出生時の身体の発育速度が速まると、高齢時の発育過程が暖徐となるか減速すること
がほとんどである。
(未完成)
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3.チェルノブイリの犠牲者に対するいくつかの重要な健康問題の分析 (続)
上記の表 に表されているように、避難してきた子供の新生物の増大率は、通常の65倍以上
という異常な高さとなっている。 さらに、この子供達の甲状腺の悪性腫瘍は、1992年の60倍の
頻度で発生している。 避難した子供が受けた大量の照射線量が原因で、腫瘍形成の過程が
始まるという事実を否定するのは、全く筋の通らない話である。これは きわめて厄介な傾向で
あり、緊急に適切な措置を行って、この問題に対処しなければならない。
以上のことから 子供の健康に関する状況は特に厄介な問題となっている。3歳未満の ウクライナ の子供のほぼ 85%が、チェルノブイリ事故により 0.1〜1.0グレイの放射線量を受けているという
事実を踏まえると、結果が 今後 さらに良好となることは ほとんど期待できない。 4〜15歳の
子供の60%以上 と 十代後半の 50%が、0.05〜0.3グレイの線量を受けた。
※ 1グレイ=1㏜、 0.1グレイ=100m㏜、 0.05グレイ=50m㏜
表1. 被災した子供の様々な主要登録グループ間の病状拡大率の増加と疾患発生率の比較解析 1987〜1992年 と 2000〜2004年 との比較(続)
http://nucleardisaster.web.fc2.com/img/p73_chart1.jpg 1979〜86年に生まれた子供では、1500人近くが甲状腺に 2グレイを超える放射線量を受けた。 50センチグレイの線量を受けた子供は 140,000人以上にも及んだ。 ここに挙げた子供の大半が、
放射能汚染地域に居住しており、放射性核種で汚染された食品を摂取し続けている。
※ 1センチグレイ=1/100グレイ=10m㏜、 50センチグレイ=500m㏜
また 今日では、これらの チェルノブイリの子供達が 「チェルノブイリの孫」 と呼ばれる子供を出産し、
直接的 又は 間接的に放射能の曝露を受けている。この子供達は、染色体突然変異、免疫系
疾患をはじめとする 未知の放射能からの「贈り物」に苦しむことになり、健康や生活が危険に
さらされる おそれがあると考えられる。
チェルノブイリ災害の医学的影響を効果的に評価するためには、過去20年間の被災集団の
死亡率を求めることが重要である。ウクライナにある医療科学学会の放射線研究センターの
医療人口統計学研究所所長のMykola I. 0melianets教授は、1987〜2004年(含.両年)の保健省
によって統治されている 様々な機関の医学的管理下にある ウクライナ の、チェルノブイリ 事故処理
作業者の死亡率を解析した。 登録簿によると、計 504,117人のチェルノブイリの死亡犠牲者の
うち、34,449人の事故処理作業者が この期間中に死亡している。 1995年以降毎年、2000人を
超える事故処理作業者が死亡しており、2000年以降の死亡者数は 年間3000人に増大した。
この死亡率の指標を、ウクライナ人口での 様々な年齢層の死亡率と比較し、このパターンから
さらに、2010年までの死亡率を推定した。この予測結果から、現行のパターンのままでいけば、
2010年までには 年間死亡者が 5,000人を超えるほどまで増大するのではないかと考えられる。
この災害が起きてから2004年までの間に、事故処理作業者の死亡率は 概ね5.5倍に増大し、 1994年には、労働年齢者の死亡率を上回り始めた。また、1998年までには、労働年齢の男性
の死亡率を上回り始めていた (図8 及び図9参照)。
表2. チェルノブイリ大惨事による ウクライナの犠牲者の現在と今後の死亡率(犠牲者1000人当たり)
http://nucleardisaster.web.fc2.com/img/p75_chart2.jpg 上段: ウクライナ人口における全犠牲者グループ 下段: 事故にかかわった事故処理作業者 死亡率の動向を このように解析した結果から、2010年までには、事故処理作業者の死亡率が 21.7% に達し、チェルノブイリ の全生存者(犠牲者)グループの全体的な死亡率が 17.6%に達する
おそれがあることがわかった(表2)。
2004年にみる中高年の生存者の主な死因は、これまでと同じく 循環器系疾患、癌、外傷 及び 中毒であった。チェルノブイリ大惨事から15年目を迎えてから明らかにされた この指標と比較すれば
、最近では 特に、ある変化が生じていることに気づくことができる。心血管疾患 及び呼吸器疾患
の罹患率は増大しているが、内分泌系 及び 消化器疾患は減少しているのである。このほか、
腫瘍性疾患による事故処理作業者の死亡率は ほぼ3倍に増大している(9.6%から25.2%以上
に増大。2004年の ウクライナの成人集団にみる死亡率は ほぼ変わらず、9.9%にとどまっていた)
(図表参照)
このことから、 チェルノブイリ大惨事後の20年間、事故処理作業者の死亡率が 労働年齢者の死亡率の 2.7倍を
上回るものとなっている。この大惨事から長期間が経過してもなお、事故処理作業者が依然と
して 死亡率増大リスクのグループに属していることは言うまでもない。 このことを踏まえると、
医学的スクリーニング 及び社会的予防措置を継続することが望ましく、必要不可欠である。
予測死亡率の超過と 新たな癌による推定死亡率 及び死亡率に関する この累積データは、
2005年9月に開催された 国連のチェルノブイリフォーラムの題材となったチェルノブイリ災害の
医学的影響に関する楽観的な評価結果と一致していない。
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3.チェルノブイリの犠牲者に対するいくつかの重要な健康問題の分析
我々は、影響を受けた 様々な区分の集団を対象とした健康状態の統計結果を分析し、
事故後 数年間で 徐々に 一定のペースで悪化していることに目を向ける必要がある。
図4. 調査対象者に占める何らかの病状を抱えている人の割合 http://nucleardisaster.web.fc2.com/img/p67_fig4.jpg 図5. チェルノブイリ原子力発電所の事故の影響を受けた成人および青少年の罹患率
http://nucleardisaster.web.fc2.com/img/p68_fig5.jpg 影響を受けた集団の罹患率は、小児の罹患率も含めて着実に増大している。 特に、成人 及び青少年での罹患率は 4.2倍に増大した ( 1987年では 10,000人中1,372人
だったが、2004年には 5731.63人となっている )。(図5)
図6. チェルノブイリ原子力発電所での事故の影響を受けた子供の罹患率 http://nucleardisaster.web.fc2.com/img/p68_fig6.jpg 子供の罹患率は 3.1倍に増大した (1987年では 10,000人中 445.4人であったが、 2004年には 1422.9人となっている)。(図6)
罹患率が最も高かったのは事故処理作業者であり、その次が避難者であった。それ以降は 放射線汚染区域の居住者であった。
・ウクライナにある医療科学学会の放射線医療センター(CRMAMS)で実施した調査結果を 見てみると、汚染区域の居住者によくみられる疾患の程度が、比較的汚染の少ない区域の
居住者より有意に高かった(2.6倍)ことがわかる。
放射線汚染区域にみられた症例数の半年ごとの増大率(10%)は、比較的汚染の少ない
区域での増大率(0.39%)を上回っていたことが初めて明らかにされた。成人の避難集団の
健康状態は、非腫瘍性疾患が慢性化していることにより、大きく悪化している。
特に心配なのは、以下のような疾患の小児罹患率が 極めて大幅に増大していることである。 ・ 新生物 または腫瘍: 1987年の罹患率は 小児1000人中0.27例であったが、2004年には
2.31例となり、8倍以上(8.6倍)増大したことになる。
・ 上記期間中における悪性疾患の症例増大率が 5.5倍に達した。
・ 行動障害 及び 精神障害: 1987年の罹患率は 小児1000人中 2.6例であったが、
2004年には 5.3例となり、1987年の罹患率の2倍となった。
・ 泌尿器系、生殖器系: 1987年の罹患率は 小児1000人中 3.3例であったが、2004年には
22.75例となり 6.9倍、ほぼ 7倍に増大した。
・ 先天性異常: 1987年の罹患率は 小児1000人中 0.8例であったが、2004年には
4.4例となり、5倍(5.5倍)の増大となった。
いくつか試験を実施したところ、内分泌系が、放射線の影響を大きく受けやすいようである ということがわかった。被災した小児の内分泌系疾患の増大率は、ウクライナの平均増大率の3倍
を上回った。特に リスクの高いグループは、汚染区域に居住する子供と避難した子供である。
重要なのは、グループIVに登録された 事故処理作業者や避難者、汚染区域居住者に生まれた
子供の内分泌系疾患の罹患経験率が、ウクライナ全体での罹患経験率の 2.7倍を上回っていた
ということである。このことから、人体を調節する最も重要な構成要素のひとつである内分泌系
が本質的に、長期にわたる放射線曝露の被害を被っていることになる。
内分泌系障害は 極めて危険であり、さらに研究を実施していく必要がある。
被災した子供には、血液疾患の増大が認められていることにも注目していきたい。なお、被災
した子供の血液疾患の罹患率は、 ウクライナ全域の子供にみる罹患率の 2.0〜3.1倍となって
筋骨格系疾患の症例数が大幅に増大している。
ウクライナ全体でのデータと比較した場合、この疾患の罹患率の増加速度は 3.3倍であり、
発症頻度は 2.6倍となっている。
先天性の発達異常などの特定の異常が、大幅かつ着実に増大していることに 特に注意を
払う必要がある。被災した乳幼児の罹患率は、ウクライナ全体にみる同様の疾患の罹患率より
はるかに高い。
人体は、このような短期間で放射線量がこれほど急激に変化することに順応することができないため、集団にみる一般的な疾患の罹患率がこれほどまでに増大し、放射線で汚染された区域で新たな疾患が発生する原因には、複数の因子が関係している。放射性核種の汚染区域に居住する子供や青少年の健康状態の特徴で顕著なのは、長期の慢性疾患に冒された臓器や系の機能障害の進行が速まっていることである。このような病変の特徴は、持続期間と再発の進行であり、治療や治癒が非常に困難である。 放射線により誘発される病気で典型的なのは、その複雑な経過だけでなく、再起不能になる 患者の頻度が高いということである。ウクライナ政府は 毎年、チェルノブイリの障害給付金の受給
資格者として、きわめて多くの労働不能者を登録している。
たとえば、2004年に チェルノブイリ災害により 労働不能者として新規登録された生存者は 5,423人
であった。このうち、5,171人が 成人または青年であり、252人が 14歳未満の子供であった。
成人 及び青年のグループにおいては、1,621人が 事故処理作業者、126人が 避難者、3,362人
が放射生態学的監視地域の居住者、62人が 被曝生存者の子供として グループIVに登録された
十代の労働不能者であった。
成人 及び 青年にみる身体障害の形態においては、2004年の上位 3つは、悪性腫瘍を含む 新生物、循環器系疾患 及び神経系疾患などの疾患で占められていた。
14歳未満の子供に関する身体障害の原因には、先天性異常のほか、悪性腫瘍を含む新生物
などが挙げられた。
ウクライナにある傷病の医療社会問題に関する研究所の科学者らは、汚染区域に居住している 子供の身体障害の形態は、チェルノブイリ大惨事によって発症した、身体障害をもたらす疾患が
増大したことにより、注目を集めるようになったとの結論を下している。
ここで注目を集めた疾患というのは、リンパ管や血液供給系の悪性腫瘍、成長段階での先天性
異常、神経系疾患 及び呼吸器疾患などの病気を意味する。 汚染地域の再起不能レベルは、
ウクライナ全域のレベルより はるかに高いものとなっている。
我々は、チェルノブイリ事故の影響を受けたウクライナ人集団の健康状態に関する、ウクライナ保健省 の医学統計センターの統計結果をいくつか示した。犠牲者のグループに関する平均データを
このように一般化しても、因果関係を明らかにし、放射能因子の多様な種類と機能的役割を
検討することができないことが多い。このため、このデータを用いて、人体に対して放射線因子
が及ぼす病的影響の実際の結果を評価することはできない。
たとえば、グループ II(避難者)の子供達は、短期間で大量の照射線量を受けている。この他、
放射性核種による汚染区域に居住する グループIII の子供は、常に少量の放射線に被曝し、
それが 徐々に蓄積している可能性がある。 グループ IVの子供の場合は、放射線因子の影響が
さらに多面的となっており、子宮内照射を受け、出生後も照射を受けていた。ただ、照射線量と
照射期間は、程度や時宜によって異なる。
このような特性は すべて、極めて重要なものであり、子供の臓器に対応する病変の形成に
大きな影響を与えることは確かである。この特性は このほか、様々な疾患の発現頻度や経過
にも影響を及ぼす。
このような因子を考慮に入れ、被災した集団での健康障害を分析する個別の新しい方法を 開発しさえすれば、この チェルノブイリ 災害の影響に関する全体像を検討し、評価することが可能
となると考えられる。 我々の見解を確認するために、1987〜2000年、2000〜2004年の被災した
子供達の 様々な主要登録グループにみる罹病率の増大に関する比較統計解析を実施した。
我々は、いくつかのデータを追跡し、放射線の影響を取り巻く状況を考慮に入れて、子供の
罹病率の増大を明らかにした。(表1)
①表1. 被災した子供のさまざまな主要登録グループ間の病状拡大率の増加と、
疾患発生率の比較解析。 1987〜1992年 と 2000〜2004年との比較
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