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チェルノブイリ

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  ウクライナにおける放射線影響
                       (1997年)   ドミトロ・M・グロジンスキー
                        ウクライナ科学アカデミー・細胞生物学遺伝子工学研究所
 
                           (3)
 
 表11に認められるように,放射能汚染地域に居住している人々の罹病率は,ウクライナ平均
の罹病率よりも はっきりと大きい
表11 厳重な放射線管理下の住民の罹病率 (1996年,1000人当り)
病気の種類
被災者
ウクライナ全体の平均
造血器系の病気
30.2
12.6
循環器系の病気
430.4
294.0
内分泌系の病気
54.2
37.8
消化器系の病気
280.9
210.1
骨,筋肉系の病気
333.0
307.1
 
 1987年に 15.3%だった腫瘍罹患率は, 8年後の1994年には 33.4%に増加した.悪性腫瘍
の主な型は,消化器系(31.8%),呼吸器系(16.9%),リンパ・造血器組織(5%)の腫瘍である.
 
 チェルノブイリ事故に被災した大人・青年の死亡率は 1987年から増加してきた.その点を表12に
示す.              表12 被災者グループ別,1996年の死亡率
被災グループ
指標(1000人当り)
リクビダートル
9.06
30kmゾーンからの退避者
11.60
厳重な放射線管理下の住民
18.42
ウクライナの労働年齢人口
6.50
ウクライナ国民全体の平均
15.20
 
   チェルノブイリ事故被災者の死亡原因の構成は以下のとおりである.
    循環器系の病気   : 61.2%
    腫瘍           : 13.2%
    外傷              :  9.3%
    呼吸器系の病気   :  6.7%
    消化器系の病気   :  2.2%
 
 表13に示すように,最近 被災者の中から,疾病障害者と認定される人々が劇的に増加して
いる. 過剰な被曝を受けた人々の健康状態についての データ は, ウクライナの北部地域が,
人間が生きるには適していないことを 疑問の余地なく示している.
表13 疾病障害者と認定された割合 (1000人当り)
被災者グループ
その他
リクビダートル
30kmゾーンからの退避者
1987
9.6
20.5
5.4
1994
232.4
95.2
9.3
 
 
    
  1Ci/k㎡=37000㏃/㎡
                                                 ↓ 文科省の色分け
      桃色 :  37000〜185000㏃/㎡   厳重な放射能管理下        
      紅色 : 185000〜555000㏃/㎡  移住の権利         
      紫色 : 555000㏃/㎡ 以上    移住の義務                
 
 
子供たちの健康状態
表14 被災地域の子供の発病率と罹病率(1000人当り)
発病率
罹病率
1987
455.4
786.6
1994
1138.5
1651.9
 
 チェルノブイリ事故で被曝した子供では,1987年から1996年まで慢性疾患が 絶えず増加して
きた.表14は,チェルノブイリ 被災地域の子供の発病率と罹病率の値である.
この 約10年間で,罹病率は 2.1倍に,発病率は 2.5倍に増加した.
罹病率の増加が 最も激しいのは, 腫瘍,先天的欠陥,血液,造血器系の病気であった.
最も罹病率が高いのは,第3 グループ (厳重な放射線管理下の住民)の子供たちである.
同じ期間において,ウクライナ 全体の子供の罹病率は,20.8%減少していることを指摘しておく.
   このように,被災地域の子供たちの罹病率は,全 ウクライナ 平均での子供の罹病率をはるかに
超えている.  被災地域の子どもたちの病気の構成を表15に示す.
表15 被災地域の子供の病気の構成
疾病の種類
呼吸器系の病気
61.6
神経系の病気
6.2
消化器系の病気
5.7
血液,造血器系の病気
3.5
内分泌系の病気
1.2
 
同じ期間に,先天的欠陥の発生率は 5.7倍に, 循環器系 及び造血器系の罹病率は 5.4倍に
増加している. 
妊娠中と出産時の異常の増加に伴い,新生児の死亡率が増加している.また,1987年に1000人当り 0.5件であった 0〜14歳の子供の死亡率は,1994年には 1.2件に増えている.
神経系と感覚器官の病気(5倍に増加),先天的欠陥(2.4倍に増加),感染症・寄生虫起源の
病気,循環器系の病気などによって,子供の死亡率は増加している.
 
 他の地域の子供に比べ,問題の子供達のガン発生率も明らかに大きい.被災地域の子供の,腫瘍発生率は 1987年からの10年間で 3.6倍に増加している.ガンの種類によって,その死亡率
の増加傾向は,必ずしも一定していない.しかし,汚染地域の子供のガン死亡率は,他の地域の子供よりも大きくなっている. 
 
甲状腺ガン
 
 今日では,チェルノブイリ 事故が 甲状腺ガンを増加させたことに議論の余地はない. 甲状腺の
悪性腫瘍を引き起こした原因が,破壊された原子炉から放出された放射性ヨウ素にあることも
また確定されている. 事故前は,甲状腺ガンは 希な病気であり,主に 年長者に特徴的な病気
であった.子供や青年においては,甲状腺ガンの年間発生率は 100万人当り 約0.2〜0.4
件であり,全腫瘍の約 3%を占めたと推定されている.1981年から1985年にかけて,ウクライナ
子供にみられた甲状腺ガンは わずか25例に過ぎなかった
 
  被曝からガンが発現するまでの潜伏期は,平均約8年から10年の付近で ばらついている
被曝量の大きさと潜伏期の長さの間には関連がない.しかし,甲状腺ガン発生率の増加は
予測されるよりも はるかに早く,即ち 事故後4年にして始まり,現在も 増加中である
甲状腺ガンは 事故時年齢が 3歳以下の子供で著しい増加を示している.この甲状腺ガンの
特徴は 大変攻撃性が強いことである. 半数の症例では,ガンが甲状腺の外側に広がっていき,
周辺の組織や器官までもを冒している.子供の甲状腺ガン症例数を表16に示す.
 小児甲状腺ガンの大部分,94%は 乳頭状甲状腺ガンである.
小児甲状腺ガンの増加は 今後長い年月にわたって続くと考えるのが合理的である.現在まだ
その発生率はピークに至っていない.
 
表16 ウクライナにおけるチェルノブイリ事故後の小児甲状腺ガン症例数
(事故時年齢,0歳から19歳)
症例数
10万人当り件数
1986
15
0.12
1987
18
0.14
1988
22
0.17
1989
36
0.28
1990
59
0.45
1991
61
0.47
1992
108
0.83
1993
113
0.87
1994
134
1.00
1995
166
1.30
 
    ※ 福島県の未成年人口  平成23年03月01日現在      計: 377,297人
        0〜4歳: 81549、5〜9歳: 91386、10〜14歳: 101387、15〜19歳: 102975
                 
 
          2011年4月20−22日 チェルノブイリ25周年国際科学会議資料
      チェルノブイリ周辺の放射能汚染地域で子供の甲状腺ガンが増えているという話を私がはじめて
     聞いたのは、1990年の夏に同僚の瀬尾と一緒に現地調査へ出かけた時だった。ウクライナ・キエフの
     小児産婦人科研究所の医師が、汚染地域で それまでに 5件の小児甲状腺ガンが発生したと教え
           てくれた。WHOの専門家は 事故との関係を認めていないが、彼は事故による被曝が原因と考えて
     いるとのことだった。  
      ソ連国内の汚染地域のようすが少しずつでも私たちに明らかになりはじめたのは、事故発生から
     3年たった、1989年の春頃からである。ゴルバチョフ政権下で ペレストロイカ路線が行き詰まり、
     共産党の権威が崩壊するとともに、情報公開や汚染対策を求める運動が各地で広がり始めた。
     ソ連を構成するベラルーシやウクライナといった各共和国も 汚染対策の強化を連邦政府に求め
     出した。そうした下からの突き上げに手を焼いたソ連政府は、IAEAに助けを求めることにした。
      ソ連政府の要請を受けたIAEAは、事故による放射線影響と汚染対策の妥当性を調査するため、
     1990年春から国際チェルノブイリプロジェクト にとりかかった。1991年5月ウィーンで開かれたその報告会
     の結論は、「 汚染地域住民の間に チェルノブイリ事故による放射線影響は認められない。汚染対策は
     もっと甘くてもよいが、社会状況を考えると現状でやむを得ないであろう 」というものだった。
           報告会で、ベラルーシやウクライナの代表は、汚染地域の住民では 色々な病気が増加しており、
     子供の甲状腺ガンも増加していると主張し、報告書の結論を修正するよう抗議したが、結局は無視
     されてしまった。
     IAEAによると、汚染地域住民にとって最も悪いのは 「放射能恐怖症」による精神的ストレスであり、
          それを煽っているマスコミや一部の学者が けしからん、ということであった。
             1992年9月、ベラルーシでの小児甲状腺ガンの急増を報告するカザコフらの論文がイギリスの
          科学雑誌ネイチャーに発表された。カザコフ論文とならんで、甲状腺ガンが放射線影響であることを
          支持するWHOの学者の論文も掲載された。それまでベラルーシやウクライナの学者の主張を無視
          してきたIAEAなどの国際権威筋も、ネイチャーの論文が出るに及んで無視を決め込むことが出来なく
     なり反論を始めた。反論の要点は次のようなものである。・・・
      3.甲状腺の被曝量とガン発生率の相関が示されていない。
      4.発生数だけでは議論できない、母集団が固定された疫学的研究が必要である。
      5.被曝影響と考えるには潜伏期が短すぎる。
     こうした反論はいずれも、汚染地域で小児甲状腺ガンの増加が観察されていること自体は認めた
    上で、その原因について放射線被曝以外の可能性を指摘するものである。つまりは、甲状腺ガンの
    増加そのものを否定する反論というより、データに対する疑問、イチャモンに過ぎない。・・・
 
   チェルノブイリ原発事故と甲状腺がん    長崎大大学院 山下俊一氏 監修
    は 最後に、
   「以上、チェルノブイリの経験が 甲状腺研究を通じて科学の進歩に貢献しています
    というコメントで終わっています。
 
                            (つづく)
  ウクライナにおける放射線影響
                       (1997年)   ドミトロ・M・グロジンスキー
                        ウクライナ科学アカデミー・細胞生物学遺伝子工学研究所
 
                           (2)
 
 以下,放射能汚染地域に現れた 主な放射線影響の概要を示すことにしよう.
放射線障害には 大きく分けて2つある.すなわち,非確率的影響と確率的影響である.
  非確率的影響には,体細胞がうける損傷と免疫系の障害がある.これらの障害は,主として
放射線に特異的でない病気として現れてくる.同時に,急性の放射線障害もまた非確率的影響
に含まれる.こららの障害の現れ方は,被曝線量,線量率,放射線の種類,そして外部被曝と
内部被曝の関わり合い方によって決まる.
  確率的影響は,その発現が 確率現象であることに特徴がある.細胞の変質によって引き起こ
されるガン,体細胞 或は生殖細胞の突然変異発生が,放射線による確率的影響に含まれる.
 
  人々の間に起きているこうした障害の発現について,現時点で何が分っているのであろうか?
大変 悲しいことであるが,事故後の10年間に 人々の健康状態は 大きく損なわれた.
チェルノブイリ 事故の大災害による人々の健康影響を評価するためのもっとも重要なデータベース は
被災者国家登録である. 1995年1月の時点で,ウクライナ の国家登録には,43万2543人が含まれ
ている. ウクライナ 内務省の軍医学登録には,約3万6000人が含まれている.
 ウクライナ においては,合計して 300万人を超える人々が チェルノブイリ 事故によって,病気になった
と考えられる.そのうち 約100万人は子供である.
      ※ 事故当時のウクライナの人口は 約5100万人。
        その約6%が原発事故で健康傷害を受けたと・・・。 これは 50人の3人の割である。
 近年ひどく悪化した ウクライナ の人々の健康状態に,簡単に触れておくべきだろう.その点を
以下の表に示す.
 表3は,ウクライナでは 1991年以降,死亡率が 出生率を上回っていることを示している.
近年,乳児死亡率の増加率が大変高くなっている(表4). 乳児死亡の主要な原因は,チェルノブイリ
事故に被災した住民の場合と同じである(表5).
 
    表3 ウクライナにおける チェルノブイリ事故後の出生率と死亡率 (住民1000人当り)
出生率
死亡率
人口増加率
1990
12.7
12.1
0.6
1991
12.1
12.9
-0.8
1992
11.4
13.4
-2.0
1993
10.7
14.2
-3.5
1994
10.0
14.7
-4.7
1995
9.6
15.4
-5.8
 
 
表4 ウクライナにおける チェルノブイリ事故後の乳児死亡率
乳児死亡件数
1000人当りの数
1990
8,525
12.84
1991
8,831
13.90
1992
8,429
13.98
1993
8,431
14.93
1994
7,683
14.54
1995
7,314
14.68
 新生児・乳児死亡率、国別順位 - WHO世界保健統計2012年版
     ウクライナとベラルーシの人口変動、激増する死亡と激減する出生
の表の粗出生率・粗死亡率の欄を見てください。
 
表5 1990-1995年の乳児死亡の主要な原因
病気
1万人当り件数
割合,%
出産前からの病気
48.4
33.0
先天性障害
42.6
29.0
呼吸器系の病気
14.5
9.9
感染症・寄生虫症
11.2
7.6
 
 
 ウクライナにおける労働年齢人口の死亡率も, 特に 男性で,最近 著しく増加している(表6).
チェルノブイリ 事故影響の疫学調査は,ウクライナ 全体で認められている健康状態の総合的な悪化
ふまえながら実施されなければならない.
               表6 労働年齢人口の死亡率(10万人当り) 
 
1990年と比較した
1995年での増加(%)
1990
1992
1994
1995
死亡全体
697.7
826.9
942.8
1055.1
+51.2
199.3
216.9
234.7
256.8
+28.9
腫瘍
226.5
279.9
312.0
349.7
+54.4
41.2
49.3
54.1
60.2
+46.1
循環器系
202.1
242.0
286.4
322.2
+59.4
50.4
54.1
60.2
65.9
+30.1
※ 労働年齢人口=生産年齢人口(15〜64歳)?
 
 
  チェルノブイリ 事故後,事故の被災者では 病気の発生率が年々増加している. 
住民の健康状態を示す一般的な指標,即ち 健康な人々の割合の変化をみると,被災した
大人,青年,子供の健康状態が 急激に悪化していることを示している(表7).
健康な人の割合は,チェルノブイリ 事故被災者の3つのグループにおいて,時間の経過とともに
劇的に減少している.1987年以降,健康人の割合は,80%から20%へと減っているし,場合に
よっては もっとひどくなっている.一例を挙げれば,ロブノ州ドブロビツキー地区では,ここ数年,
健康と認められる子供は 一人もいない.この地区では,高レベル の内部被曝が観測されている.                  表7 健康とみなされる人の割合,%
被災者グループ
リクビダートル
30kmゾーンからの避難者
被曝した親から産まれた子供
1987
82
59
86
1988
73
48
78
1989
66
38
72
1990
58
29
62
1991
43
25
53
1992
34
20
45
1993
25
16
38
1994
19
18
26
 
 
 
リクビダートルと30km圏内(強制退避区域)からの避難者の健康状態
 
   ウクライナでは,放射性核種の土壌汚染密度 と 平均被曝量の値に基づき,汚染地域を    4つのゾーンに分けている.
  • 避難ゾーン: チェルノブイリ原発周辺 30kmゾーン
  • 移住義務ゾーン:  放射性核種の汚染密度が次の地域.                       セシウム137: 15Ci/km2以上,ストロンチウム90: 3Ci/km2以上,プルトニウム239: 0.1Ci/km2以上.  ただし,放射性核種の地中からの移行が大きな場合には,セシウム137: 5〜15Ci/km2,  ストロンチウム90: 0.15〜3Ci/km2,プルトニウム239: 0.01〜0.1 Ci/km2.               このゾーンの平均被曝量の基準は,5m㏜/年.       
  • 移住の権利が与えられる居住ゾーン: 放射性核種の汚染密度が以下の地域.    セシウム137: 5〜15Ci/k㎡,ストロンチウム90: 0.15〜3Ci/k㎡,プルトニウム239: 0.01〜0.1Ci/k㎡.ただし,放射性核種の取り込み率の高い土壌の地域では, セシウム137: 1〜5Ci/km2,  ストロンチウム90: 0.02〜0.15Ci/km2,プルトニウム239: 0.005〜0.01Ci/km2.            このゾーンでは,被曝量は 事故以前のレベルから 1m㏜/年を越える可能性がある.
  • 厳重な放射能管理下で居住が認められるゾーン:  放射性核種の汚染密度が以下の地域.セシウム137: 1〜5Ci/km2,ストロンチウム90: 0.02〜0.15Ci/km2,プルトニウム239: 0.005〜 0.01 Ci/km2.                                                                                                              ただし,放射性核種の取り込み率の高い土壌の地域では,セシウム137:0.2〜1Ci/km2の値とする.このゾーンの被曝量は 年間1m㏜を越えてはならない.
 公式文書においては,チェルノブイリ事故被災者は 以下の4つのグループに分類される.
  • 第1グループ: チェルノブイリ事故の事故処理作業従事者.男 22万3908人,女 2万1679人,   合計 24万5587人.
  • 第2グループ: 30kmゾーン,強制避難ゾーンからの避難者 と 強制移住ゾーンからの       移住者.男 3万1365人,女 3万9128人,合計 7万483人.
  • 第3グループ: 厳重な放射能管理が行なわれる地域に 今現在も居住しているか,事故後 数年間にわたって住み続けていた住民.   このグループに属する人数は 大変多く,   209万6000人である(男 45.7%,女 54.3%).
  • 第4グループ:上記のグループのいずれかに属する親から生まれた子供.1995年の時点で 31万7000人以上.
  
 チェルノブイリ被災者の死亡率が 全体として,或は 個々の主要な疾病ごとに ウクライナの平均値
を上回っていること,そして 時とともに増加の傾向がはっきりしてくることが,疫学データ によって
証明された. 表8に示すように,罹病率の値が 急激に増加している. 主要な病気についての
罹病率データは 表9に示す.           
                             表8 チェルノブイリ事故被災者の罹病率 (1万人当り)
被災者グループ
大人と青年
14歳以下の子供
1987
4,210
7,866
1994
12,559
16,026
 表9  被災者の大人と青年の罹病率(1万人当り)
疾病の種類
国民全体の平均値
1987
1996
血液・造血器系の疾病
12.7
30.5
12.6
内分泌系の疾病
41.1
70.0
41.6
リンパ・造血器系の腫瘍
3.0
6.7
-
 
  チェルノブイリ 事故の事故処理作業者で病気になった人は,1987年に比べて,2.7倍に増加して
いる. 第4グループの子供達では 最近の数年間に 2.5倍に増加した.病人の数は,第3グループ
で 56.3%,第2グループで 33.6%,それぞれ増加している. 
 
  罹病率の疾病別内訳は,チェルノブイリ 事故被災者に特徴的なものとなっている.疾病の割合を
表10に示す. 血液 及び 造血器系の病気は,最近8年間のうちに 3.9倍になった.
表10 大人・青年の罹病率の内訳,1994年 
病気の種類
呼吸器系の病気
35.6
神経系の病気
10.1
循環器系の病気
8.6
消化器系の病気
6.4
骨・筋肉系の病気
6.4
生殖器,泌尿器科系の病気
6.1
 
                           (つづく)
                                                  (1997年)   ドミトロ・M・グロジンスキー
                        ウクライナ科学アカデミー・細胞生物学遺伝子工学研究所
 
                           (1)
  ・・・
 
 放出された放射能の総量は,5000万キュリーをはるかに超えた.破壊された原子炉建屋の
屋上では,1986年5月から6月にかけて,1時間あたり 10万レントゲンという猛烈な放射線量率
であった.     1キュリー   = 3.7×1010㏃   5000万キュリー= 1.85×1018㏃ (185京㏃)
            1レントゲン= 8.77m㏉        10万レントゲン   = 877㏉
 ウクライナ人全体の被曝は 主として,チェルノブイリ事故後に強制避難させられた地域以外の
放射能汚染によってもたらされた.
 セシウム137による ウクライナの汚染面積は以下の通りである。
   

土壌汚染 レベル、Ci/km2
汚染面積、km2
5-15
2,355
15-40
740
40以上
680
合計
3,775

     ウクライナの総面積: 603,500k㎡  日本の総面積: 377,914k㎡
                             < 日本の放射能汚染面積           
ウクライナの地図-Yahoo!ロコ
   1Ci = 3.7×1010 ㏃、  1Ci/k㎡=3.7×1010 ㏃/k㎡=3.7×104 ㏃/㎡=37 k㏃/㎡
   5Ci/k㎡= 185 k㏃/㎡  15Ci/k㎡= 555 k㏃/㎡  40Ci/k㎡= 1480 k㏃/㎡ 
    
 さらに,1〜5Ci/km2の レベルで汚染している農業用地の面積は 3万3160km2にも達している
ことが明らかになっている.・・・ この放射能汚染で,ウクライナは 数万km2の森林と耕地を失った.
                          福島県の面積: 13,782.76 k㎡  、北海道の面積: 83,457.00 k㎡
地表汚染は 大変 スポット的(斑点状)に生じている.この点状の汚染は,放射能雲が広範な地域
に拡散していく中で形成された. 現在では,ウクライナにおける汚染の地域的な分布が十分に
調査されている.斑点状の汚染の大きさは,直径数mのものから,数100kmに及ぶものまである.
 
 汚染地域に住むウクライナの住民の数は 以下のとおりである.

土壌汚染レベル、Ci/km2
住民数、万人
1-5
122.73
5-15
20.42
15-40
2.97
40以上
1.92
合計
148.04

              ※ ウクライナの人口(2008年): 4570万8000人
 
 国土の汚染は,その後,大規模に,そして長期間にわたって発生することになる大変危険な
放射線学的 および放射線生態学的な影響の出発点となった.
生態学的・放射線生態学的影響,経済的な重荷,政治的な圧力,そして 政治家の間に広がった
懐疑,さらには ウクライナ人の間に広がった巨大な倫理的・心理的な病気は,11年前に チェルノブイリ
原発事故が ウクライナにもたらした一連の帰結である.
 
放射線生態学的影響
 
チェルノブイリ事故による放射線生態学的影響の主なものは 以下のとおりである.
  1. 厖大な核分裂生成物が大気中に放出され,生態系に侵入した.放射能は,地上の生態系のあらゆる部分に拡がり,結果的に,微生物,きのこ,植物,昆虫,その他の動物,そして人間まで,すべての生き物が放射能で汚染された.
  2. 放射能は 地下水に移動し,また表層の水をも汚染した.
  3. 放射能が食物連鎖に入り込み,人間に達した.大人も子供も,また人間の周囲にある    あらゆるものが放射能で汚染された.たとえば,キエフ中心部の樹木の葉は,1986年に   7万〜40万Bq/kgの放射能を含んでいた.
  4. 放射能が生物圏に侵入したため,多数の人間を含めて,すべての生き物に対して,被曝を与えることとなった.チェルノブイリ原発事故の放射性降下物から人間が被曝する経路には次の3つがある.第1に,地表に沈着した放射性物質からの外部被曝, 第2に,大気中を漂う放射性物質の吸入, 第3に,汚染した食べ物を食べることである.           全体の被曝の中で,汚染した食べ物から生じる被曝が特に大きい.外部被曝に比べて  内部被曝の方が,はるかに高い生物学的な影響を及ぼすことにも注意しておこう.
  5. 天然のバックグラウンド以上に被曝することは,人間に さまざまな病気を引き起こすし, 放射能汚染地域の動植物群の状態を変化させる.
  放射能で汚染された土壌で生育する植物は,土壌中の放射能濃度と,関連するキャリアー   (その放射能と挙動が似ているため運び手となる物質)の生物学的な重要度に比例して,それらの放射能を取り込む. 一例として,芝土ポドゾル土壌と いくつかの植物中の放射能濃度を表1 に示す.
        表1 土壌および,破壊された原子炉近傍の植物中の放射能濃度, 1987年7月
 
放射能濃度(Bq/kg,乾燥重量)
セシウム137
セリウム144
ルテニウム106
ジルコニウム95
/ニオブ95
土壌
51,800
296,000
92,200
40,700
カラスノエンドウ
71,780
17,430
3,700
410
クローバー
45,500
90,300
8,000
14,360
シナガワハギ
9,770
9,200
1,400
1,400
エンドウ
4,400
1,500
330
150
ルピナス
4,100
10,700
5,550
1,440
アルファルファ
1,800
2,150
1,400
70
カラスムギ
330
520
150
75
オオムギ
260
330
40
40
 
  表1から明らかなように,放射能の取込み率は 植物の種類によってかなり違う.また同じ種
の中でさえ,かなりのバラツキがある. たとえば,冬ライ麦の場合,乾燥重量1kg当りに含まれ
ている セシウム137の量は,1100Bqから 1万4900Bqまで変化していた.
植物への放射能の移行係数(CA)は,最近になって集中的に研究されている.この係数の値が,
植物や,放射能の物理・化学的状態,土壌中のキャリアーなどに依存して大きく変わるという
事実に,注目が集まってきた.
   CA=(ある植物中の乾燥重量当たりの放射線量その放射能の土壌中重量当たりの放射線量
は 土壌の酸性度にも依存する. エンドウ豆,トウモロコシ,冬小麦,大麦,砂糖大根,キャベツ
の場合の代表的なCAの値は,0.06から 0.30程度である.
このCAという係数の値は,塩分に耐久性のある植物の場合には はるかに大きくなる.その点を表2に示す.
            表2 耐塩性植物におけるストロンチウム90の移行係数(CA)
種類
CA
アカザ科 
クリマコペテラ
2.38
ホウキギ
1.59
ヒラホウキギ
2.03
アカザ
1.59
トガリアカザ
1.06
ペトロシモニア
2.80
アッケシソウ
1.70
 
 生態系の様々な構成要素に含まれる放射能の総量,及び 食品(主として,牛乳,肉,キノコ,
魚)への移行係数が,人間の被曝量を決める.
破壊された原子炉から 30km圏内のゾーンと呼ばれる場所で,特別に危険な場所は 4号炉を
埋葬した「石棺」である. この墓には,途方もない残骸と,炉心の残りの放射能が包み込まれて
いる.石棺は 現在でも危険な建物としてある.なぜなら,その中には 約200トンの核燃料が
含まれ,それは 超高レベルの放射能を含んだ溶岩状の固化体となっている.現在のところ,
核燃料を含んだ物質は 未臨界状態にある. しかし,石棺内への水の侵入,地震,石棺の状況
変化などにより,現在の未臨界状態が 臨界状態へと変化しうる.また,汚染地域の池や川に
沈殿している物質がどうなるか,大量の放射能が降り積もったために死んでしまった「赤い森」
の放射能が 今後どうなるかは,現在のところ予測するのは難しい. 石棺の運命もまた,現在
では予測できない.
 
放射線影響評価
 事故のまさに直後から,災害の規模についての情報は,不当に見くびられ,また誤解されて
きた. 今日でさえ,世間一般の見方は,人類に及ぼされた破局的大災害の実相から はるかに
かけ離れている. 放射線の専門家の間に ハッキリと浮かび上がってきた論争は 今日に至っても,
チェルノブイリ 事故の医学的影響を巡って続いている.
チェルノブイリ 事故後, ウクライナの人々の間に生じてきた おびただしい病気の真の原因が何なのか,
意見が分かれているのである.
   事故後  罹病率が増加した原因は,心理的な要因にあるのであって,それ以外にはありえない
とする見解を支持する人たちが たくさんいる.「放射線恐怖症」なる用語が,放射線関連の論文
の中に現れるようになっている.しかしながら,罹病率は 環境の放射能汚染と深く関連している
という見解もまた存在している.すでに,低線量被曝の効果,および甲状腺に対するヨウ素の
影響について,信頼できるデータがある.
 
  チェルノブイリ 事故の影響がなかったかのように嘘をついたり,それを忘れ去るべき過去のことと
して記憶から消し去ってしまおうとさえするような,恥ずべき また非人間的な動きがあることを,
私は注意しておきたい. チェルノブイリ 原発事故によって 原子力の権威は地に落ちたが,多くの
場合,上のような見方は 原子力への偏向した支持者たちによってなされてきた.
しかし 私は,この事故は 決して忘れ去られてはならないと信じる.むしろ それどころか,私達は,
事故の影響を 慎重に明らかにしなければならない.なぜなら,以下に述べるように,チェルノブイリ
事故による放射線の影響は, 未曽有で 大規模な生態学的な危険と関連しているからである.
 
   第1に,β線,γ線,α線によって 同時に被曝をうけるような場合には,放射線の効果が
   大きくなる.
   第2に,被曝人口が 前代未聞に厖大である.
   第3に,人々の本当の被曝量は,事故直後に考えられていた値より,はるかに大きい.
 
  このような状態においては,チェルノブイリ 事故による放射能汚染の本当の恐ろしさを明らかにし,
定量的に評価し,また予測するために,従来からの放射線についての知識を そのまま用いる
ことはできない.
汚染地域(0.5Ci/km2以上)に住む人々の数は 500万人を超える.チェルノブイリ 事故の被災者は,
被曝のうけ方によって 以下の6つのグループに分けることができる.
        5Ci/k㎡= 18.5 k㏃/㎡ =18500㏃/㎡   [object] フクシマの汚染区分け
  1. 破壊された原子炉の周辺で事故処理作業に従事した人々.この地域は,原子炉から  半径30kmの円内である.この地域は,「30kmゾーン」或は「強制避難地域」と呼ばれ,  このゾーン内で働いた人々は 「リクビダートル」と呼ばれている.
  2. プリピャチ市,或は 30kmゾーン内のその他の居住地からの避難者.
  3. 高レベルに汚染された地域からの移住者.
  4. 高レベルに汚染された地域に住み続けている人々.
  5. 放射性ヨウ素によって,甲状腺に大量の被曝をうけた子供たち.
  6. 被曝した親から生まれた子供たち.
 
 
                            (つづく)
 
                                     2011年04月26日          竹内敬二     朝日新聞・編集委員兼論説委員
 
 1986年に ウクライナ・チェルノブイリ原発で起きた爆発事故から25年がたつ。無人となった
広大な土地は、その間にどう変わったか。 畑は 森に少しずつ還り、動物はわき上がるように
増えた。 しかし、放射能は地表にとどまったままだ。 いったん高濃度の放射能汚染が起きた
土地は、長い間農業には使えない。
 チェルノブイリ原子炉は 黒鉛チャンネル炉という特殊なタイプだ。原子炉が水蒸気爆発した後、原子炉
の蓋が飛び、原子炉建屋も壊れて、炉心が直接、大気に露出するという最悪の状況になった。
http://img.chess443.net/S2001/upload/2011042400001_2.jpeg
http://img.chess443.net/S2001/static/images/icn_zoom.gif無人ゾーンで取れた葉をフィルムの上に置くと放射能で感光する。2006年、竹内敬二撮影
 
 ヘリコプターと地上からの決死の作業によって、大量放出は10日間でとまった。その後、突貫作業
で炉心を覆う「石棺」づくりにかかった。 こうした作業で多くの人が大量被曝し、後年、健康被害
に悩まされることになった。
 ソ連当局は、半径30キロの住民13万5千人を強制疎開させた。その後、正確な汚染地図を
つくり、1平方キロ当たり15キュリー (1平方m当たり55・5万㏃) 以上の汚染地を疎開地に
追加した。中心部は 1平方キロで 200キュリー以上の高濃度汚染地域も多い。
 その無人ゾーンの面積は はっきりしないが、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアで 4千数百平方キロ以上
になっている。約500の村が消え、疎開者の総数は 約40万人にのぼる。最初の11万人は
すぐに避難させたが、その後は 新しく住む家ができたところから避難したので、多くの人は 長く
汚染地にとどまっていた。
http://img.chess443.net/S2001/upload/2011042400001_1.jpg
http://img.chess443.net/S2001/static/images/icn_zoom.gif放射能で巨大化した松の葉。下の部分の葉が異常に長い。1990年、花井尊撮影
 
 外から無人ゾーンに入る道は 何本かある。出入りは ゲートで管理されているが、ゾーン内は
無人ではない。停止したままの原発やその近傍では、原発の管理、放射能の監視、警備などで
相当数の人が働いている。
 筆者は 4回現地を訪れた。 1990年、96年、2001年、06年だ。 行くたびにゾーンの中は 整備
され、過ごしやすくなった。 06年、原発の作業員は 「 原発関係で3800人いる。最近まで 除染
作業などで 1万人いた 」と話していた。
 ゾーンの中心部、つまり、原発の周辺には小さな町があり、レストランや簡易ホテルもある。
ウクライナ政府は 今年からゾーンを観光ツアーに開放している。 原発や隣接する無人の町・
プリピャチなどが目玉だという。
 汚染ゾーンで そうした活動ができるのは、舗装道路や建物の周辺を水で洗ったり、表土を
入れ替えたりして、放射線量を低く抑えているからだ。 06年では 線量は だいたい毎時 1或は
0・5μ㏜以下だった。 地面に 放射性のちりがなければ 線量はぐっと低くなる。
 しかし、草むらや森に入ると、放射線量は跳ね上がる。5〜10μ㏜のところが多い。事故直後、
高濃度の放射能雲の通過で 松が赤く焼けた「赤い森」ができた。その木を埋めている場所では、
測定器の針が 「カチーン」 と軽く振り切れた。
 計測の最高は 毎時30μ㏜だったが、針の勢いからいって、どのくらいあったか分からない。
案内してくれたバスの運転手が 「ここは怖い」 といって、写真を撮っている間に バスを発車
させかけたのを覚えている。
 
 森の放射線量が高いのは、放射性物質が 地表面にとどまる傾向があるからだ。植物の根で
吸い上げられ、落ち葉として地表に落ちる。毎年毎年 放射性物質は 地表面近くでこの「サイクル」
を繰り返している。 事故当初は、雨で地中深く入り、地下水で動くと思っていたが間違いだった。
 地中の放射性粒子は 土の粒子とくっついて、表面から動きにくい。一部は植物に吸い上げら
れて、表面での サイクル を繰り返す。植物に吸い込まれる量は、「 土壌を浄化するほどは多くない
が、植物を放射能汚染するには十分な量 」である。だから、基本的にどうしようもない。
 無人ゾーンでの測定を続けている ウクライナ環境生態研究所で 06年に話を聞いた。「 セシウムは
今も土地の表層にある。ある地点では 1999年の測定で 表面から深さ15cmまでに 97%あり、
05年にも やはり97%あった。他の場所でも 深さ10cmまでに 大体90%があり、表面から動か
ない 」ということだった。
 ストロンチウムは 少し深く潜っていて、深さ25cmくらいまでに 90%があるということだった。
ストロンチウムは 水で移動しやすい。
 汚染の主因は セシウムだ。 表面にとどまる性質のため、地表面の放射能は ほぼ セシウムの
半減期(30年)で期待できるスピードでしか減衰しない。事故から20年後の06年で、放射能の強さは 事故直後の約60%ほどだった。 減衰は 遅々として進まない。
 
 放射能に汚染された地域では 何が起きるか。 家畜試験場などでは 事故直後に異常出産が
激増し、やがて減ったというデータがあった。 ただ、そうした出産は死産だった。
 森は どうなるのか。「 犬のような巨大ウサギを見た 」などの噂があったが、すべてうそだろう。
確かなのは、巨大化した葉っぱが増えたことだ。 ゾーン内の農業試験場では 異常率の変化を
調べていた。
 90年の取材時でも 巨大なキュウリなどをみた。異常がとくに出やすいのが 松だ。一部だけ
異様に長い針葉ができる。これは 事故から かなり時間が経ったあとでも見られた。
 90年の取材では、ゾーンの中のいたる所に高放射線量の場所があり、緊張した。 当時、事故
を起こした 4号炉の炉心に近づいて取材した 同僚記者の瞬間の最高線量は、毎時318μ㏜
だった。
 しかし、06年には 「石棺」から 約300m離れた場所に見学用の建物があり、1時間当り8μ㏜
ほどだった。高いと言えば高いが 驚くほどではない。
http://img.chess443.net/S2001/upload/2011042400001_3.jpg
http://img.chess443.net/S2001/static/images/icn_zoom.gif原発に隣接するプリピャチ市の小学校。学用品が散乱したまま。2001年、竹内敬二撮影
 
 人間の影が消えた無人ゾーンは 「 動物のサンクチュアリ 」 になっている。 01年の取材では、
「 イノシシ、オオシカ、ウサギ、キツネ、オオカミ、ヤギがすべて激増し、平均で10倍になった。
狩猟対象だったイノシシは30倍になり、大型化している 」と聞いた。
 しかし、動物も 放射能は免れない。調査捕獲をしているが、06年でも 肉1キロで 80万㏃の
イノシシがいたという。
 また 政府は、人がいないことを利用して 絶滅危惧種である欧州原産の バッファロー や モウコノウマ を放して、増やす試みを進めている。
 ゾーンに再び人が住めるかどうかは、作物をつくり、食べて売るという「自立した農業」ができる
かどうかにかかっている。
 ある種の肥料を播くと作物が放射能を吸収しにくいことがわかった。 肉牛には 60日間、
「放射能のないえさ」 を与えてから出荷するなど工夫している。
 最近では ナタネを栽培して バイオディーゼル油を製造する試みも進んでいる。油は燃料として
売り、搾りかすは 家畜のえさになるが、安定した産業にはなっていない。
 もっとも有効なのは 表土の入れ替えだが、「 新しい土はどこにあるのか 」「 どこに捨てるのか 」
「 客土の費用に見合う経済性があるのか 」などの問題があり、基本的に行われていない。土地
の放射能を減らす試みは、無人ゾーンではなく、人が住んでいる場所で行われている。
 
 一方、勝手に元の家に帰って住む人もいる。「サマショール」(わがままな人)とよばれる。
今では 政府も黙認して電気なども引いている。ゾーン外に住む家族がときどき会いにくるが、
「18歳未満」は立ち入りが禁止されている。あるサマショールは「孫に会いたい」と話していた。
・・・・・
 
            ◇    ◇    ◇         ◇    ◇    ◇  
      
 
  福島第一原発事故の6日前(2011年3月5日)に 収録された米国の番組
 
  Chernobyl: A Million Casualties (100万人の死者)
 
 
 
 
 
放射線障害は 癌だけではない!
ICRPの低線量・低線量率の生体へのリスク評価には 重大な瑕疵がある。
 
                         エレーナ・B・ブルラコーワ他15名
                                ロシア科学アカデミー・生物化学物理研究所(ロシア)
 
                            (6)
 
低線量被曝集団の健康指数の線量依存性
 
 リクビダートル の血液に観察された生化学的・生物物理学的 パラメータの変化と,彼らの具体的な
健康指標との関係について議論したい.
 我々は 先に,リクビダートル に観察されている,自律神経失調症中枢神経系疾患精神障害
胃腸系疾患などの疾患に関する線量・効果関係が,動物実験で得られる関係と よく似た傾向
単調ではなく,非直線型の線量依存性) を示すことを明らかにした.
原発事故で被曝を受けた人々に関する 一連の生化学的・血液学的検査結果もまた,複雑な
線量・効果関係を示している.
 
 ここでは,健康障害の総合的な指標として,リクビダートル の1000人当り疾病障害者率に着目し,
その値と 彼らの被曝量 或は チェルノブイリでの作業時期との関係を解析してみる.
リクビダートルのうち, 1986年に作業に従事した人々の平均被曝量が 最も大きく 15.9 センチグレイ
であり,1987年の作業従事者では 7.9 センチグレイ,1988年以降の従事者では 3〜4 センチグレイと
報告されている.
 図7は チェルノブイリ 原発で働いた 5年後のリクビダートルの疾病障害者率と 各グループ の受けた
被曝量との関係を示している.図にみられるように,7.9 センチグレイ のグループが 最大値を示す
という 極端な線量・効果関係が認められる. ※ 7.9 センチグレイ= 0.079㏉=79m㏉
図7 リクビダートルの疾病障害者率と被曝量の関係(作業から5年後)
 
 もっと興味深いのは,被曝に伴う晩発性の影響,すなわち 癌発生に関する線量・効果関係
を調べるてみることであろう.ガンや白血病の発現への低線量被曝影響の問題は,文献でも
広く議論されている.
放射線被曝は,ガンの プロモーター(促進要因)と インダクター(誘発要因)の両方の作用をすることが
わかっている.被曝線量率 と 被曝量が大きくなると,(ある程度まで) プロモーター としての作用
が低下し,インダクターの作用が増加すると考えられている.
 
 チェルノブイリ・リクビダートルのガン発生データを検討してみよう.
 チェルノブイリ・リクビダートルのガン発生と その死亡率は,科学 アカデミー 会員A・ツィプの指導のもとで
詳しく調査研究され,国家放射線疫学登録 レポートとして発表されている(1995年).
表6は,ツィプらが報告している リクビダートル のガン発生率と ガン死率データ である.線量依存性
は単調でないし,さらに,表に示した例の多くで ガン発生率 と 死亡率の値は,10〜25センチグレイ
で凸のピークを示し,25センチグレイ以上で小さくなっている.
               ※ 10 センチグレイ= 0.1㏉=100m㏉   25センチグレイ= 0.25㏉=250m㏉
                    5センチグレイ= 0.05㏉=50m㏉
表6 リクビダートルのガン発生率とガン死率(10万人当り)
 
0〜5
センチグレイ
5〜10
センチグレイ
10〜15
センチグレイ
15〜20
センチグレイ
20〜25
センチグレイ
25
センチグレイ
以上
 ガン発生率
白血病
7.68
6.18
8.03
8.48
6.23
3.04
全ガン
117.5
122.30
157.51
142.94
134.54
180.56
消化器官
と腹膜のガン
21.94
32.26
49.79
38.16
35.60
37.43
 ガン死率
全ガン
36.20
39.12
44.96
57.95
56.07
40.82
消化器官
と腹膜のガン
9.32
15.10
20.87
21.20
24.92
17.0
 
 
 このような線量・効果関係は,しばしば観察されるものの,それが ガンに関する唯一の線量・
効果関係である,というわけではない. 多くの例では,直線的 或は 2次多項式的な線量・効果
関係が認められている. ガン発生 やその死亡率の減少という現象が観察される被曝量範囲
は,そのガンの種類や被曝の線量率に依存しており,場合によっては 観察されない.
  たとえば,家屋内で ラドンに被曝した人々やラドンによる線量率が さらに大きい鉱山労働者
肺ガン死データ では,直線的な線量・効果関係が認められている
 多くの研究者は,被曝量とともに ガン発生が増加するという関係が認められた時のみ その
関係性に意味がある,と考えている. しかしながら,これまで述べてきた すべての実験結果や
人集団の観察結果は 文献データを含めて 直線的 or2次多項式的な 線量・効果関係の存在 ”
が,低線量被曝 及び 低線量率被曝に伴うガンの誘発や死亡の “必要条件ではないことを
明らかにしている.
被曝量との単調な相関性が認められないこと低線量域で最大値が観察されることは,
低被曝被曝における ガン誘発効果を否定するものではなく,むしろ そのことを示すものである.
 
 最後に,本研究を通じて明らかにしてきた,低線量 及び低線量率被曝に伴う効果の規則性は,
生体や細胞代謝に 放射線が及ぼす影響研究において 全く新しい概念であることを強調したい.
その効果の大部分は,被曝によって直接ひき起こされるものではなく,生体の免疫状態
や抗酸化状態の変化,或は 環境要因に対する感受性の変化といった 生体の調整システム
を通して間接的にあらわれるものである
 リクビダートル の血液検査と動物実験とにおいて,各パラメータ の変化に共通する規則性が認め
られたことに注目したい. 線量・効果関係だけでなく,生体 システム全体としての反応に関与して
いる多くのパラメータの変化においても,低線量率被曝に伴って共通する効果が見出されている.
 
                            (おわり)
 
                                               (25.1.28更新)

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