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帰ってきた狐
私のお寺には、ある旧家から預かったお稲荷さんがおられます。
そのお稲荷さんは、あまり人様の目に触れないように、御厨子に納めて
お祀りしていますが、最近になってどうも、様子がおかしい。
御厨子の扉が開いていることが度々あるのです。
私は又、車の振動かそれともお寺の中を人が歩く床の振動で開くのかなと
思い込んでいたのですが、ある夜遅く事務処理が残っていたため、事務所で仕事をしていると、何やら本堂の方でカタコトと音がしている、
『アッ!』又、ネズミが出て来て悪さをしているなと私は思い、暫らく
ほって置いたのですが、余りにも長く音がするので私は、そーっと、
覗いて見てやろうと思い、忍び足で本堂の方に向かった。
『エッ?』何やら本堂の方でひそひそと、人の声が聞こえる様な?・・・
何だろう誰か居るのかな?と思い、音と声のする方を覗いて見たのだが
誰もいない。
やっぱり、ネズミが何かを齧っていたな、と、私は独り言を言いながら
御厨子を見ると又、扉が開いている。
厨子でも齧っているのかと、みたがどこも傷んでもいない。
変だな?と、いいながら扉に手を掛けた、その時、お稲荷さんの声が。
『毎夜毎夜、誰か知らないが私の館の扉を叩いて、私が居るから貴方様は早くお山にお帰りなさいと、うるさくて堪りませぬ、何とかしてくれませぬか』と、声が聞こえてきた。
『エッ!・・・』思いもよらないお稲荷さんの霊示。
今までどんな事があっても、無言であったお稲荷さんが?・・・
よほどの事があるのか。
でも、本堂を見渡しても変なところは無い、私は護摩壇の前に座り
霊視をして視ることにした。
私の寺の本堂には本尊不動明王様と蔵王権現、地蔵菩薩、観世音菩薩様
又、秘仏が祀られています。 一仏、一尊それぞれに気を集中して、霊視を試みる、
不動明王様異常なし、蔵王権現様は異常なし、地蔵菩薩、異常なし。
観世音菩薩?…何か・・違和感がある?・
此の観音様は、ある信者様が自宅でお祀りされていた仏さまだったのだが、
信者様がお寺にお参りに来られる度に、信者様の行動に変な現象が起き
いたので、気になってよくよく調べてみると、信者様が私のお寺に
来られる以前にお参りされていた所の行者に、信者様の体に野狐を憑け、信者の口を使って喋らせていたのです。
それが、そのまま体に憑いたままに成っていたのです。
その時に信者さんが行者に貰ったのが観音様で、この観音様は
見た目は観音様なのだが、中身はキツネのお性根が入っていた、どうやらこれが原因のようだった。
このことをよく説明して、早急に信者さんの体を浄霊して再び野狐が憑かないように処置をしたのだが。
信者さんはお家に行者さんに頂いた観音様も、気持ちが悪いので何とか
処分をしてほしいと言われ、寺に持ってこられた。観音様から野狐の
お性根抜きをして、お山に帰っていただき、再び観音様の魂を入魂して
お寺にお祀りしたのです。
そんな観世音菩薩様で何か違和感がある?・・
何だろう、気を集中して観音様を視た、すると見えた、『エッ!・・』
又、帰ってきたのだ、茶色く光る毛に覆われた野狐。
はは〜ん、この野狐がお稲荷さんに、お山に帰れ、お山に帰れと、
毎日毎日声を掛けていたのだ。
お稲荷さんが居られると自分が思い道理にできないので、追い出しに
掛かっていたのです。
いつもお参りされていた信者さんも、最近は私の所にお参りも無い、
今は他のお寺に行っているらしい、何かその信者さんの体に異常が発生したのだろう、だから狐も戻って来たのです。
私は狐に厳しく引導を渡して、その信者さんが通うお寺に行きなさい、
そこには、あなたが入れる仏様が沢山有りますよと、云って私のお寺の
観音様を封印して、新しく観音様を入れ替えました。
慌てて寺から逃げ出した狐はその後どうやら信者さんが通う寺に行っている様です。こういった狐は人の心を惑わし、思いもよらない様な
悪さをするので油断は出来ないのです。
合掌
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