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少し時間が経ってしまいましたが、12月3日に、自民党のプロジェクトチーム(原子力規制に関するPT)が、原子力規制に関する緊急提言をまとめ、発表しています。
『原子力規制行政強化に向けての緊急提言. ―国民と世界からの「信頼と信認」確保を目指して』
9月以来、計12回の会合と非公式ヒアリングを経てまとめたものです。
内容は、原子力規制委への運営に対する厳しい批判と、今後の改善の方向性について提言しているものです。
「『独立』が『孤立』になっている」
という表現をしていますが、「孤立」という表現には多分に違和感を感じます。「孤立」というのは、「いろいろと外部とのコミュニケーションを図ろうとしているが、それがうまくいかず、他者が寄ってこない」という語感だと思います。
しかし、原子力規制委の問題はそうではなく、「外部とのコミュニケーションを拒否して、他者を寄せ付けない」というところにありますから、問題指摘するのであれば、
「『独立』が『独善』になっている」
とすることが実態に即したものでしょう。
おそらく、米国NCRの規制原則において「独立とは孤立を意味しない」という一文に即した表現と思われるほか、政治サイドからの指摘ということで、「独善」と表現してしまうと、かなりの批判的トーンとなりますから、それをあえて避けた結果なのでしょう。内容を読むと、「独善」の問題指摘になっています。
そこには、規制委への批判の声が多数紹介されています。PTとしてそう考えるという書き方ではなく、そういう内外の指摘があることの紹介の形をとっているところに、一定の配慮は感じられます。各指摘項目から、本ブログで提起している点と重なる部分を中心に抜粋してみます。
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1 国民との対話、コミュニケーション、説明等の不足
○立地県知事からの面会要請を委員長は拒否。
○敦賀発電所2号機直下破砕帯の活断層判断に関して、地元住民や敦賀市長から規制委員会委員に対して寄せられた説明要望を拒否。
○日本原電からの委員長、委員との意見交換の要請を拒否。
2 独立性、中立性への懸念
○活断層評価の有識者会議メンバーには、過去の安全審査に関わった専門家を完全排除するなど、バランスを欠いている。
3 「合議制」形骸化への懸念
○問題ごとの担当委員を決め、その担当委員の出した結論を、十分な議論をしないまま委員会決定としてしまうなど、意思決定過程が合議制の精神から逸脱しているのではないか。
○新規制基準の検討に際しても、担当の委員を指名しているが、そのこと自体が合議制の精神を放棄している、との指摘が多い。加えて、担当委員がその委員から「横出し」で有識者会議などを裁量的に設置・直接指揮し、委員会審議の際には、他の委員は担当委員の意見をほぼ丸呑みにしているのではないか。
○敦賀発電所敷地内破砕帯問題では、十分な審議が未だなされていなかった段階の第1回有識者会合で、島崎委員が「活断層の可能性が高い」と発言。委員長も「今のままでとても安全審査に入れない」と断言した。
○米国NRCの「良い規制の原則」に相当し、委員会の活動方針の基本哲学に相当する、極めて重要な「活動原則」に関しても、原案作成が一委員に委ねられ、委員会ではさしたる議論もなしに決定を行った。
4 原子力規制委員会と事務局<原子力規制庁>との関係
○昨年9月、前政権下で新たに組成された原子力規制庁の主要幹部に、原子力規制の経験が皆無の人材が充てられた。これは、福島第一原発事故の原因の一つとされる「専門性の欠如」に対し、余りにも反省と配慮がなさ過ぎる人事と言わざるを得ず、原子力規制への信頼醸成に資する事にならないのではないか、との指摘が国の内外から寄せられている。
5 適正手続き・透明性への懸念、緊張感の欠落
○原子力規制委員会は、設置が法定されている放射線審議会、原子炉安全専門審査会、核燃料安全審査会を立ち上げて来なかった一方、新規制基準の審査会合や破砕帯に関する調査などにおいて法的位置づけが曖昧な有識者会議を組織し、規制委員会や規制庁による検討をバイパスするなど、適正手続きへの配慮に欠けている、との声が広く存在する。
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●これに対して、12月4日付けの記者会見で、田中委員長が質問に答えてコメントしています。
おそらく、PTの提言書を十分に読み込んではいないのでしょう。国会でさんざん質問攻めにあって政治家には等しく答えている、記者会見で国民の代表である記者からの質問に答えている、審査内容については決めた後で説明する、というだけで、提言書の内容を真摯に受け止めようという姿勢は、この会見からは感じられません。
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○記者共同通信のナガオと申します。よろしくお願いいたします。
昨日なのですけれども、自民党の原子力規制に関わるプロジェクトチームの会合がありまして、その中で提言案がまとまったのですが、内容といたしましては、自民党の考えでは、田中委員長は自分たちに会うのを拒んでいるとか、立地県の知事に会わないことなどをもって、独立ではなく、孤立だという批判をしておるのですけれども、それに対する反論等がありましたら、お聞かせください。
○田中委員長いろんな御意見があるのは承知しています。各議員個別に会うのは避けていますけれども、国会会期中は週に2回、3回呼ばれて、大変な質問攻めにあっていますし、ある場合には規制の中身にまでいろんな要求が出てきますので、そういう対応をさせていただいているということです。
いろんな意見に耳を傾けることについては、異存はないのですけれども、規制委員会の判断に対してのいろんな意見は、相当慎重に対応しなければいけないと思って、我が国の現状では、誰かに会えば、次々と意見のある人が皆やってくると思いますので、そこはタイミングを見ていると言った方がいいのかも知れません。規制委員会として審査を進めている最中ですから、そういうところへそういう意見は入れたくないというのが、正直なところです。
○司会よろしいですか。
○記者その関連で、週内にもプロジェクトチームは官房長官に提言案を提出した上で、できれば委員長に直接手渡したいと言っておるのですけれども、今のところ、お会いになるお考えはないということでしょうか。
○田中委員長どうするかは、事務方でさばいていただければといいと思っています。よろしくお願いします。
○司会次の方、カミデさん、どうぞ。
○記者フリーランス記者のカミデと申します。よろしくお願いします。
今の関連でお伺いします。田中委員長が、今、説明されたことは、すごく大事なことだと思うのですが、大臣によっては、あえて田中委員長のお立場を考えて、政治的なことに巻き込むことを避けられる発言をする大臣もおられます。今のように、独立ではなくて、孤立だという考え方もあるのでしょうけれども、今、お示しになったことが、余り皆に共有されていないという感じもしますし、タイミングを見てやるとも言っておられました。政治家と委員会、特に委員長との関係について、一応の目安みたいなもの、今の段階で国民向けに説明できるものがあるとしたら、もう少し具体的にお話いただけないでしょうか。
○田中委員長皆さんは国民の大きな代表かも知れないと私自身は認識していて、だから、毎週こうやってプレス会見に臨んで、いろんな御意見をいただいているわけですけれども、それを通して、かなりのことは申し上げていると私自身は思ってはいます。その中でも、何度か申し上げましたけれども、基準を作っている段階からいろんな意見があって、まず基準を作って、今、審査段階に入っているわけですが、規制委員会はどうしてそういう判断をしたのかという説明を求められれば、それは判断をした時点で説明することはやるべきでしょうということを申し上げてきました。
先程の繰り返しですけれども、どういう判断をするかというところが、まだ固まっていない段階で、いろいろ説明するというのは難しいというか、やってはいけないことだと私自身は思っていますので、我慢強く待っていただきたいということなのです。
○記者もう少しだけ補足させてください。一般論として、直接利害関係のある政治家の方、あるいは担当の閣僚の方などには、ある程度節度をもって、控えた方がいいというお考えなのでしょうか。
○田中委員長利害関係者、ステークホルダーは誰かということがありますけれども、ステークホルダーの最大は国民ですと、私は申し上げています。
事業者とか、被規制者と会う場合には、節度をもって会うということで、それは非常に大事な原則だと思っています。
政治家はどうかというのは、ちょっと分からないですけれども、政治家と一口で言いますが、ものすごくいろんな方がいるので、政治家と会わないわけではなくて、先程言いましたように、国会では全党派、全会派から、長い時間、何度も同じような質問を受けていますので、そこで私の考えはお答えしていると思っています。
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●これらの会見の後のタイミングになりますが、塩崎PT座長へのインタビュー記事が東洋経済オンラインに載っています。
東洋経済オンライン-2013/12/20
PTの審議過程でも来なかったし、提言の説明にも応じようとしていないということのようです。最終的には議員立法で、十分なコミュニケーションをとることを中心とした規制原則を書き込むことも選択肢として考えている由。
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○また、われわれは何度となく規制委員長に対し自民党のPTに来てくれるように言った。最近はあきらめて言っていないが・・・。そもそも規制委の設置法は川口順子先生(元外相)や私たちが中心になって作ったものだから、われわれの思いを聞いてもらおうと申し込みをしたけれども拒否された。
○(PTが11月に非公開ヒアリング・意見交換を行った)ウィリアム・マグウッド米NRC委員は「国会議員が議員会館に来てくれと言えばすぐに行く」と言っていた。英国も同じだ。日本だけだ、何もしないのは。われわれがこの緊急提言を説明したいといっても、非常に冷ややかな反応だ。
○日本の規制委のコミュニケーションチャネルはまったく詰まっている。やはり、幅広く意見を聞いたうえで、独立して判断していただきたいというのが緊急提言でいちばん言いたかったことだ。
――今回の緊急提言の実効性は。
それは規制委次第だ。規制委が受け入れなかったら終わり。国会の原子力調査特別委員会で対話を試みるが、規制委は3条委員会で独立しているので、強制力はない。規制委5人の考え方次第だ。
――規制委の設置法を改正するという考えは。
PTでは今日(12月17日)、そういう意見が出た。つまり、米国の「良い規制の原則」のようなものを法律化すべきとの意見だ。現在の日本の規制委の「活動原則」には、「国内外の多様な意見に耳を傾け、孤立と独善を戒める」とたった1行しか書いていない。私自身もそれ(議員立法による改正)は意味のあることだと感じている。
規制委は、原子炉安全専門審査会(炉安審)も事実上いらないと言っている。設置法にはこれまでと同じようにやりなさいと書いてあるのに、これまでと違うものでいいと言い張っている。こうした考え方も驚くべきことだと思っている。
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●この東洋経済の記事のあとの12月25日に、田中委員長と塩崎座長との会談が持たれています。報道をみると、
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●規制委員長 議員と異例の面会
NHK12月25日 18時54分
原子力規制委員会の田中俊一委員長は、原子力の規制を検討する自民党のプロジェクトチームの塩崎恭久元官房長官と面会し、「あらゆる関係者と会って考えを聞くべきだ」とする提言を受け取りました。
これまで田中委員長は「規制の独立性」を理由に政治家などとの面会を避けていて、今回は異例の対応となりました。
原子力規制委員会の田中委員長は、おととしの原発事故で当時の規制機関が「『事業者のとりこ』となって独立性は形骸化している」と批判されたことから、「規制の独立性」を理由に政治家や電力事業者などの関係者との面会を原則避けてきました。
これに対し、原子力の規制を検討する自民党のプロジェクトチームが、規制委員会に対する提言をまとめ、菅官房長官に提出したことを受け、田中委員長は座長の塩崎元官房長官と面会し、提言を受け取りました。
提言では、規制委員会の姿勢について「『独立』が『孤立』になっている」と批判し、政治家や電力事業者などあらゆる関係者と会って多種多様な考えを聞くことや、信頼されるために十分な説明責任を果たすことや人材育成を強化することを求めています。
面会で塩崎元官房長官は、「あらゆる立場とコミュニケーションしてから独自の判断を独立して行うべきだ」と述べたのに対し、田中委員長は「意見を聞くことに異存はないが、たくさん聞くと時間がかかるのは間違いない。来年はいろいろな関係者とコミュニケーションをどう取るのかが課題だ」と話していました。
25日の面会について、原子力規制庁の森本英香次長は記者会見で、「規制行政の強化について官房長官にも提出されている提言であり、内容を把握する必要性があると判断した」と説明しています。
また、原子力規制委員会の田中俊一委員長は、「独立性は規制機関の『命綱』で少しでも疑念を持たれるのは避けるべきだと思い、きょうの面会は公開で行うことを強く希望した。私なりに『独立性』を持って進めてきたし、今後も変わることはない」と述べ、「きょうの面会で規制委員会の独立性が揺らぐことにはならない」と強調しました。
一方で、田中委員長は「原子力の安全の確保には、電力会社の社風や経営者の考え方が大事だ」と述べ、今後、電力会社の経営陣とも個別に面会していく考えを示しました。
田中委員長がこれまでに電力会社の経営陣と個別に面会したのは、ことし10月、汚染水漏れが続く福島第一原発の安全管理について、東京電力の廣瀬社長を呼び出し話を聞いた1回だけです。
田中委員長は「電力会社にも安全を最優先させる考え方をしっかりと定着させてほしい。そのために、会社のトップに会い認識を確認していきたい」と話しました。
●自民党PT、原子力規制委に緊急提言
日テレ 2013年12月26日 0:02
原子力規制行政のあり方について協議してきた自民党の議員らが、原子力規制委員会・田中俊一委員長と初めて面会し、「規制委員会はもっと国民とのコミュニケーションを取るべき」などとする緊急提言を手渡した。
自民党原子力規制に関するプロジェクトチーム座長・塩崎恭久議員「広いコミュニケーションチャンネルを国民各層と持っていただきたいというのが、この提言の一番の眼目です」
田中委員長「科学は一刀両断で決められる所と、決められない所がある。今の段階では丁寧にやる必要があると思う」
塩崎議員は、規制委員会は国民との対話が少なすぎると指摘し、「政府や電力事業者、市民などあらゆる関係者とのコミュニケーションを維持しつつ、独自の判断をしてほしい」などと要望した。
これに対し田中委員長は、「色々な意見はあるが、科学技術に基づいて判断していきたい」と述べた。
政治からの独立を掲げる規制委員会のトップ自らが政治家と直接面会して意見を聞いた形で、極めて異例の対応となった。
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これらの会談後の田中委員長のコメントを見る限りでは、従来と変えるつもりはほとんどないということでしょう。
「関係者と会う時間がない。きりがない」
「(従来通り)科学に基づいて判断していく」
「今までも独立してやってきたし、これからも変わるところはない」
関係者と会う時間がないはずがありません。さまざまな関係者と会って意見を吸い上げた上で判断するのが規制委の役割であり、被規制者、地元自治体、国会、政党等、レベルに応じて会うことが必要です。
続く
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